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NEWSCONの気になるNEWS(2024年2月第4週)

インド最大のアルミニウムメーカーVedanta Aluminum(Vedanta Ltdの子会社)は鉄、非鉄を含む750品目の製品をWEB上で販売するVedanta Metal Bazaarを立ち上げました。このB2BサイトはAIを使い、価格情報や取引に関する高度な機能を備えています。Vedanta Aluminumはこのサイトが金属のECサイトとしては世界最大と宣伝しています。同社は2023年度にはインドのアルミニウムの半分以上、229万トンを製造したと述べています。AIを使ったECは新しいものではありませんが、材料産業でインドのアルミニウム大手が先陣を切って行うという事に価値がありそうです。
https://vedantametalbazaar.com/

世界第2位の海運会社であるマースクは、紅海での混乱による影響が今年下半期まで及ぶ可能性があると顧客にアドバイスしています。顧客に対してサプライチェーン全体の輸送時間を確実に長く取るよう促しています。1月24日に米国船籍のマースク船2隻が攻撃された後、現在、マースク・デトロイトとのマースク・ライン・リミテッドの何れも紅海の航行を停止し、現在も続いています。
https://www.hellenicshippingnews.com/shipping-giant-maersk-says-red-sea-vessel-diversions-could-extend-into-second-half-of-2024/

強力な国際ロビー団体であるHuman Rights Watchは、新疆ウイグル自治区での強制労働により生産された部品を使い自動車が製造されているという報告書を出しました。米国政府は新疆ウイグルで生産された部品を使うVW車の輸入停止措置を始めています。米政府は2021年に強制労働防止法を発効しており、ウイグルやその他の中国の地方で強制労働により製造された部品を使う製品の輸入を禁止していました。この措置に対してVWは「重大な違反が確認された場合、部品を製造したサプライヤーとの関係終了の可能性がある」とのコメントを出しています。ドイツメーカーは、対外的には人権などデューデリジェンス遵守の姿勢を取って来ましたが、現実的には中国依存での競争力確保の部分もあり、今回の米政府の措置は、少し恣意的な部分が垣間見えます。実はこの措置はドイツ連銀の公式データにより昨年のドイツの対中国直接投資が4.3%増加、過去最高の127億ドルを記録したというニュースの直後に出されました。ドイツ政府は最近まで「中国依存を減らす」との見解を示してきましたが、これも真逆のステルス積極投資となっており、米国が制裁に動いたと見るのが妥当かも知れません。VWは中国メーカー上海汽車と新疆で行っている合弁事業の再検討を示唆していました。ドイツ連立政権も実は内部で割れており、首相のショルツが率いる社会民主党(SPD)は積極的な中国依存の削減を求めていないという実情があります。米国の今回の措置は業界でかなりのインパクトを持って受け止められていますので、日本にも影響がある可能性が高いです。
https://inews.co.uk/news/business/vw-car-china-uyghur-xinjiang-2906687
https://www.reuters.com/markets/german-investment-china-rises-new-record-high-2024-02-14/

欧州で鉄鋼脱炭素化のコスト増に対する懸念が浮上しています。チェコ通信社(CTK)の調査によりチェコの鉄鋼業は2050年迄にGHGネットゼロを達成するために必要な全てが不足している事が判明しています。グリーン電力、水素、その他鉄鋼製造の脱炭素化に必要な資源が不足しています。更に技術面と財政面の両方共に準備不足と結論づけています。チェコ鉄鋼組合の会長は「生産工程に大量の電力が必要だが、電力価格は近年大幅に上昇している。更に水素は2026年から2030には検証試験をする必要があるが、2035年迄は水素鋼生産を導入する計画はない」と述べています。水素は他のEU加盟国も十分な生産能力が無い為、2035年以前の水素鋼生産は非現実的との認識を示しています。当面、電炉で鉄スクラップ利用が主となりますが、チェコで十分な鉄スクラップを保する事は難しく、これも実現が困難と見ています。チェコ政府はエネルギーコストの上昇に苦しむ鉄鋼業界向けに再生可能エネルギー賦課金の一部を補助する措置を取っています。実は鉄鋼の脱炭素化は経済的にも技術的にもかなり困難で、特に水素は水素自体の製造コストに加え、取り扱いが非常にシビアである事から、量産技術として確立できる見込みが本当にあるのか、未だ答えが出ていない状況です。
https://www.euractiv.com/section/politics/news/czech-steel-industry-unprepared-for-eu-decarbonisation/

フランスのリサイクル企業SNAMが所有する置場で900トンの廃リチウム電池による大規模火災が発生しました。消防士のべ70人が対応、付近一帯には、カドミウムに起因する毒性ガスの警戒情報が一旦出されました。その後、この情報は取り消されているようです。英国でもリサイクルセンターでのバッテリー火災が毎週のように起こっており、リチウム電池による火災は社会問題になりつつあります。
https://www.france24.com/en/france/20240218-major-fire-breaks-out-at-french-plant-housing-lithium-batteries

米国の気候健全性センター(CCI)が最近出したプラスチックリサイクルに関するリリースが大変注目されています。特別レポートとして発表され、大手石油会社が行うプラスチックリサイクルのFraud(詐欺行為)について詳述されたものです。グリーンウォッシングの典型例として紹介されています。欧州議会の環境委員会は通称「グリーンクレーム指令」と呼ばれるグリーンウォッシングを規制する指令案を採択しました。この指令の最大の特徴はグリーンウォッシングを行った企業に対して、罰金の最大金額を「グリーンウォッシングを行った当該年度の世界全体の売上の4%」と巨額なものにした事です。既に米国の大手投資機関はESGから離れて、ESG関連用語の使用を控えるようになっていますが、今後、欧州企業も「エコ」、「グリーン」、「環境に優しい」、「ネットゼロ」等の用語の使用が容易に出来なくなります。過去3年半以上、ネット上を賑わせていたそれらの言葉は企業の宣伝から遠ざかるものと予想されています。
https://www.innovationnewsnetwork.com/plastic-producers-lied-about-plastic-recycling-for-decades-says-cci/43897/
https://climateintegrity.org/plastics-fraud

BIRは「BIR World Mirror」の最新版を発行しています。欧州では依然として製鋼コストの上昇による影響が続いていますが、今号では紅海の問題が新に加わっています。5月のBIR総会でのテーマには紅海/スエズ運河の混乱、EU炭素国境調整メカニズムの影響等が主なテーマになる予定です。英国のスクラップ業界は国内電炉の建設による需要増で「変革的な移行期を迎える」と定義しています。欧州だけでなく、この変革は鉄スクラップ市場の構造的な転換となる為、様々な分析が出始めています。
https://bit.ly/4bKYIlq

非常に厳しい規制である「EU包装及び包装廃棄物規則(PPWR)」は、現在法律制定の最終過程に来ています。EU議会、理事会、欧州委員会の交渉チームは6月の欧州選挙前に新規則を採択する事を目指しています。しかしドイツの財務大臣はこの規則の阻止に動くと見られています。先般イタリアは「EUデューデリジェンス指令」に反対する意思を表明していました。EUのG7加盟国である2つの国が大きく転換しています。ドイツの財務大臣はドイツで防衛産業投資を活性化する方針を示す等、環境政策から産業優先、経済安全保障優先政策に大きく舵を切りかえています。
https://bit.ly/48mlsoX

Rystad Energyが発表した最新のレポートによると世界で目標とされるエネルギー転換の為には2030年迄に3.1兆ドルの送電網投資が必要です。現在、エネルギー移行に最もネックとなっているものの1つに「送電網」があります。少なくとも1,800万Kmを拡張する必要があり、その為には約3,000万トンの銅が必要となります。しかし、この分量を供給する事は容易ではない為、既に供給不足が予測されています。2024年には新たな発電容量に6,440億ドルが費やされる予定ですが、送電網が障害となる可能性が高く、追加の銅の需要が増える可能性があります。世界中の送電網の総延長は2030年には1億400万Km、2050年には1億4,000万Kmにまで拡大する必要があります。今年中のどこかで銅の転換点が来そうな予測が増え始めています。
https://www.rystadenergy.com/

米国の環境保護庁(EPA)はEV移行を推進する為に政府が計画している自動車の排ガス規制を延期、もしくは段階的削減の緩和を検討している事が伝えられています。緩和措置が実施された場合、2030年に目標とされるEV販売の割合をメーカーが減らす事が可能となります。EPAは昨年、非常に厳しい排ガス基準を提案しました。提案された排ガス基準に対応する為には自動車メーカーは2030年にはほぼ全ての販売をEVにする事を強いられる見込みでした。米下院議会は昨年12月にこの排ガス規制を廃止する法案を可決しています。また自動車ディーラーも排ガス規制案に対し大規模な反対運動を展開していまいた。同時に自動車製造の労働組合も反対しており、選挙戦を睨んでの動きとも見られています。
https://edition.cnn.com/2024/02/18/politics/emissions-rules-ev-growth-biden-administration/index.html

最近、AI技術をリサイクル産業へ展開する流れは、ちょっとしたブームとなっています。
リサイクル選別機大手のTomuraは、AIの新興企業Poly Perception(ベルギー)の25%を取得しました。Poly Perceptionは設立4年目でAI技術を利用し廃棄物の監視を行います。両社は既に2022 年末から協力しており、TomuraはAIを活用した資源回収技術の変革を目指しています。Poly Perceptionは立法制定プロセスに入っている様々なEUの廃棄物規制の厳格化に伴い、AI選別システムの需要が増すと予想しています。
https://www.tomra.com/en/news-and-media/news/2024/tomra-acquires-25-percent-stake-in-polyperception
https://www.polyperception.com/

リサイクルシステム開発会社Bollegraaf Recycling Solutions(オランダ)とAIリサイクル分析ソフトウェア開発会社Greyparrot(英国)との戦略的パートナーシップに続き、米国でも同じような事が起きています。

廃棄物の回収箱に監視システムとAIを組み込み、廃棄物の特定及び最適なリサイクル工程への流れを目指す「SmartSort AI」を開発するSmart Sort Technologiesは自社製品をクラウド管理のワイヤレス エッジ ネットワーキング開発企業Cradlepointの製品と接続する事を可能としました。回収ボックスで収集される廃棄物の情報がクラウドベースのアプリケーションに供給され、分別回収に向けたレポートを作成するソリューションが市販される事になりました。回収したものを工場でどのラインで選別するかをAIが判断するだけでなく、回収そのもののプロセスに画像とAIを組み込みクラウドから管理するという手法の為、今後ボトルの回収等で広く利用される技術になる可能性があります。
https://www.smartsortai.com/

鉱業及びコモディティー大手のBHPは「経済及び商品見通し」と題した最新の長文レポートを発行しています。中国は引続きコモディティー市場での大きなインパクトを持ちますが、政治的な懸案事項が注視される内容となっています。鉄鋼、非鉄金属、肥料については今後数十年間で需要は確実に高まると予想しています。世界的に人口が増加し、都市化が進み、脱炭素化のインフラ整備が行われ、生活水準が向上する事で、コモディティーの需要は安定して伸びると分析しています。しかし温暖化対策でパリ協定の1.5度以内に気温上昇を収めるという目標は、銅やニッケル等の「重要な鉱物」の供給が大幅に増加しない限り、簡単には達成出来ないと結論付けています。また現在懸案となっているニッケルについては2020年代後半まで供給過剰を解消できないと分析しています。
https://www.bhp.com/investors/economic-and-commodity-outlook/2024/02/bhps-economic-and-commodity-outlook

フランスの気候経済研究所(4CE)は「欧州気候投資赤字報告書」と題する特別レポートを発行しました。EUが2030年の気候変動目標を達成するには年間4,060億€(約75兆円)/毎年の投資が不足しており、不足分を埋めなければ達成はできません。またEUが2030年の産業の脱炭素化目標を達成するには産業22部門で少なくとも合計で年間8,130億€(132兆円)が必要と計算しています。このレポートに先立ち2月6日に発表された欧州政府による「2040年気候政策提言」では、エネルギーと交通分野だけでEUの脱炭素化目標を達成する為に2030年から2050年にかけて年間1兆5000億€(243兆円)が必要との認識が示されています。しかし不足する資金に対して公的資金と民間資金を組み合わせた「包括的な投資アジェンダ」が必要との認識を示したのみで、具体的な資金確保の目途は全く立っていません。I4CEはグリーン投資のギャップを埋めるには「規制」「炭素価格政策」「公的資金の追加」の3つを組み合わせる事を提言しています。しかし、これ以上の規制と炭素価格政策は産業力を弱めて公的資金の追加は民意の同意を得る事が困難な為、実現は難しいと考えられます。今の欧州政府と議会は2016年のパリ協定で「グリーン化」の主導権を京都議定書(国連)から欧州に移した事で、グリーン運動を起こし、経済と雇用の問題を解決しようと試みました。しかし殆どの政策が科学的根拠や経済原則を尊重しない理想主義的なものに終始した為、結局資金も足りず都度「パッチを当て続ける」という好ましくない結果となり混乱とインフレだけが実態経済となって表れています。
https://www.i4ce.org/en/

世界最大の金属スクラップ企業Sims Limitedは2024年会計年度(7-6月)の半期決算報告を発表しました。売上は前年同期比7.4%増となったものの、利払済税引前利益(EBIT)は85.6%減少しました。全ての金属取引で厳しい状況が続いており、金属取引のマージンが低下した事、更にインフレ圧力により利益を圧迫したとの認識を示しています。英国事業は鉄鋼メーカーの電炉投資により今後、戦略を見直し、今月末迄に提案を行う予定です。
https://www.simsltd.com/investors/

ドイツのバイロイト大学はLDPEの化学構造をモデルにした代替ポリマーを開発したと発表しました。LDPEは独特な構造の為、これまで模倣するのが困難でした。この新素材はよりエネルギー効率の高い方法で生産が可能で、リサイクルも容易であると伝えています。LDPE代替品はモノマーの構造を持つ2つのマクロモノマーで構成されており、それらが結合して分子を形成し、架橋または重合する事が出来ます。このポリマーは化学的にリサイクルが可能で主にエチレンから構成されています。適度な温度で有機溶媒に溶ける為、リサイクルが可能となります。リサイクル後の物質を再結合する事で完全なクローズドループサイクルが達成出来ると強調しています。
https://www.uni-bayreuth.de/en/press-releases/recycling-loop-for-plastics

現代社会においては、正確な情報を迅速に入手して緻密な分析を行う事はあらゆる分野で必要不可欠な能力になっています。およそ2ヵ月前、米国の大統領選挙戦が始まる頃、全米第3位、235のラジオ局と48のメディア媒体を所有する企業Audacyが債務超過に陥り民事再生を行う事が決定的となっていました。アメリカ人は公共交通機関を使わず、殆どは車で通勤(移動)します。その為、地元のラジオ局は未だに根強い人気がある所も多いのが現状です。Audacyは200ヶ月連続で月間リスナー数100万人を継続している人気のコンテンツ配信者でもあります。このAudacy社を欧米政治のフィクサーとして長年君臨し、昨年引退したはずのジョージ・ソロスが率いるソロス・ファンド・マネジメントが4億ドル以上の債権を買い取る事で筆頭株主(約40%)となる事が決まりました。Audocyは裁判所に子会社47社と共に破産法第11条(民事再生計画)の適用を申請し受理されています。こうしたメディアを使う戦略は欧州でも選挙の度に多かれ少なかれ起きていた事です。今回の様に選挙戦期間中にラジオ局群を持つ企業が一方に(今回はリベラル派)買収されるという事は少し珍しいですが、それだけ右傾化への警戒があるのだと思います。この動きに対してメディアの偏見、メディア・リテラシー、フィルターバブル、政治的二極化、政治的分断などを分析し、校正中立な報道を評価するAllSidesは情報操作と戦うツール、AllSides Balanced News Minute™の展開を開始しています。
実は正確な情報を得る事が難しい時代になっている事は確実です。リベラル派の環境政策は過去3年間リサイクル産業に追い風でした。しかし現状では環境よりも産業を優先する右派が優勢となっており、ソロスのこの動きはリサイクル業界にとっては良い方向かも知れません。
https://www.allsides.com/blog
https://audacyinc.com/
https://finance.yahoo.com/news/billionaire-george-soros-takes-control-185800688.html



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