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NEWSCONの気になるNEWS(2024年2月第5週)

廃タイヤの輸入国の1つであるインドでは、中央公害防止委員会が全てのタイヤメーカーに対して、2023年度と2024年度に割り当てられた拡大生産者責任(EPR)義務を履行するよう通達を出しました。この厳格化措置は国際的な廃タイヤの流通にも影響が出ると見られています。この措置により熱分解でリサイクルを行う為の廃タイヤの輸入は明確に禁止されました。インド政府はタイヤの生産者に対して、登録リサイクル業者からEPR証明書を購入する義務を課しています。EPRの対象には、新品タイヤと廃タイヤの輸入業者も含まれています。EPRの対象企業は四半期及び年次ごとに報告書を規制当局に提出する必要があります。インドに廃タイヤを最も輸出している英国ではタイヤ回収協会(TRA)がインドの廃タイヤ輸入厳格化に支持を表明しています。
https://www.tyreandrubberrecycling.com/articles/news/indian-epr-steps-up-a-gear/

欧州最大の鉄鋼メーカーの欧州部門のトップは「EUのグリーン水素は高価過ぎて鉄鋼生産には使えない」と公式に認めました。アルセロールミタルはフランス、スペイン、ベルギーの水素鋼プロジェクトで、既に16億5000万ユーロ(約2700億円)を補助金として得ているにも関わらず本音を語る時が来たようです。巨額の補助金にも関わらず、一向にグリーン水素鋼の生産が進まず、欧州プロジェクトは殆ど商業的に失敗している事がある程度共通認識になりつつありました。同社は水素DRIを輸入する方針を示しています。しかし天然ガスを水蒸気改質したグレー水素ではグリーンスチールには認定されません。また産油国で比較的再生可能エネルギーの安い北米やブラジルでのグリーン水素DRIが本当に顧客の要望に適う価格なのか、その点も大きな疑問が残ったままです。世界の鉄鋼メーカーが一斉に電炉投資にシフトしている背景には、脱炭素化には他の選択肢が無いという現状があります。
https://bit.ly/3UM5amg

インドの大手鉄鋼メーカーが鉄スクラップ利用を大幅に増加する計画が伝わっています。アルセロールミタル・日本製鉄インドは全国に鉄スクラップ処理センターを設立する計画を発表し、タタ・スチールは電炉用のリサイクルプラントを設立しています。JSWスチールはドルヴィ工場で鉄スクラップを利用する予定です。JSWは昨年、金属スクラップ企業NSL Green Steel Recycling Ltdの株式を100%に引き上げ、NSLの合弁パートナーであるニュージーランドの金属リサイクル企業NSHLの株式を50%取得し、垂直統合を加速させています。インドは過去5年で2倍の金属スクラップを輸入しています。国内では上記の需要を満たす十分な量のスクラップの発生が見込めない可能性があり、今後も海外からの供給は増加すると見込まれています。インドは国家戦略として鉄鋼産業の強化・拡大を目指しており、鉄スクラップの国際流通に影響を与える存在になりそうです。
https://www.fortuneindia.com/enterprise/jsw-tata-arcelormittal-nippon-to-ramp-up-scrap-based-steel-production/115878

また1つビジョンシステムとAIがリサイクル業で紹介されています。米国のVisionCycleは銅とアルミニウムの混合ミックス材から99%の精度で銅を分離するカメラとAIを組合わせた選別用プラットフォームを発表しています。対象物は細粒化された銅とアルミのミックス品で従来のシステムより場所を取らず安価で選別が可能と宣伝しています。この技術は昨年、AMD Robotics Innovation Challengeで勝者となったPhuc Labs社の流体粒子選別技術Vision Valveを利用し、リサイクルに応用したものです。原理は「流しそうめん」のようなシステムで非常に少量の流水上にミックスメタルの粒を流し、カメラで捉えて物質別に分けるという方法です。大規模な実用化には課題がありますが、WSJやRecycling Todayに紹介される等、注目を集めています。
https://www.visioncycle.com/#process
https://www.phuclabs.com/

GSは、FRBの利下げにより、当面、金と銅がコモディティーで最大の価格押し上げ商品となる見通しを示しています。FRBによる米国の2年金利を0.1%下げた場合、価格押し上率は銅が6%で最も大きく、次に金(3%)、石油(3%)と続きます。鉱山問題が長期化する銅は南米やアフリカでの鉱山に関わる政治情勢を見る必要が出ています。
https://www.reuters.com/markets/commodities/copper-gold-see-largest-price-boost-fed-easing-goldman-says-2024-02-21/

EVへの流れは確実に起こっていますが、以前よりスピードが鈍化しています。それだけでなく、中国の数社を除き自動車メーカーのEV部門はあまり儲かっていないという現実があります。ドイツの大手自動車メーカーであるメルセデスベンツが2023年度の決算発表を行いました。投資家向けの情報の中でEV需要が鈍化している為、EVへの移行ペースを再調整し、2030年迄に販売予定のEVモデルの数を半減すると発表しています。メルセデスベンツは2030年迄に全てのモデルをEV化する事を目標としていましたが、現在その目標は維持されていないようです。この傾向は米国のフォードでも起きていますし、ステルスで他社でも起きています。EV化を政治的に進めて補助金を出して販売しても、メーカーのEV部門が儲かっていないという現実があり、実は欧米メーカーは戦略の見直しを迫られている状況です。
https://group.mercedes-benz.com/investors/

英国のLIBバッテリーリサイクル企業のアルティリウム社は世界第2位のリチウム生産企業であるSQMの投資部門SQM Lithium Venturesより943万㌦(約15億円)の出資を受け、SQMからの合計の出資額が1,200万㌦になった事を伝えています。SQM Lithium Venturesとしては1社への投資としては過去最高額となっています。アルティリウム社は殆ど自己資金を利用せず、資金の殆どは公的援助と投資ラウンドを通じて第三者から得ています。しかし新興企業で過去に廃棄物の管理を行った事もなければリサイクルの経験も無い企業です。ただし同社はリサイクル材から電池に利用出来るカソード活物質をアップサイクルする事で差別化を図っています。欧米ではそうした企業でもLIBリサイクルという事で資金が集まる状況が続いています。
https://altilium.tech/2024/02/21/sqm-lithium-ventures-completes-altiliums-usd-12m-series-a-funding-through-follow-on-investment/

インドの小規模鉄鋼メーカーは中国の鉄鋼メーカーへの石炭輸出を禁止するように政府に求めています。この求めは昨年インドの石炭の輸出量が170%増の4,400万トンとなり、多くが中国向けであった事からきています。輸出が堅調で価格が高値で維持された事からインド国内の中小鉄鋼メーカーへの影響が出ました。インド政府は2022年5月に全グレードの鉄鉱石に50%の輸出税を課しましたが、僅か半年で輸出関税を撤廃しました。中国の鉄鋼過剰生産問題とダンピング輸出の背景には鉄鉱石調達問題が常にあり、この点はウォッチすべきポイントでもあります。
https://economictimes.indiatimes.com/industry/indl-goods/svs/metals-mining/indian-steel-mills-seek-iron-ore-export-ban-as-china-sales-jump/articleshow/107934885.cms?from=mdr

日本製鐵のUSスチールの買収問題は既に米国で大きな政治問題に発展しています。現米政権は米国産業の保護が優先事項と見ており、日本製鐵の中国へのエクスポージャーに懸念を示している事が伝えられています。現在、米国は関税232条を維持しており、中国からの鉄鋼輸入が大幅に減っている状況です。しかし米国の鉄鋼メーカーや連邦議会議員はメキシコ等の近隣諸国を経由して米国に入る中国製鉄鋼製品について警告を発し続けています。中国に拠点を持つ日本製鐵が米国の鉄鋼メーカーを買収する事が新たな懸念点として浮上している様で、買収が本当に今年中に完了するのか微妙な状況となっています。
https://www.mining.com/web/nippon-steels-china-assets-raise-concerns-over-us-deal/

米国証券取引委員会(SEC)は2022年3月に通称「SEC気候情報開示規則2023」と呼ばれる気候変動に関する企業の開示規則案を発表しました。この規則は米国の上場企業に財務関連データ以外に温室効果ガス(GHG)排出に関する情報を公開・報告する義務を課すものです。スコープ3の排出量については「重大な」リスクがある場合、もしくは企業が削減目標を設定している場合には、その排出量を開示しなければなりません。この提案は米国の企業から猛反対を受けていました。
SECはスコープ3排出量の開示義務を撤回しました。
実はこの話の重要なポイントは、欧州がスコープ3を含めたCSRDを開始している点です。CSRDも欧州企業から負担増を懸念する声が多く発せられてきましたが、現欧州政権と議会では常に「環境正義」が勝利する為、CSRDも非常に厳格な規制となって開始されています。CSRDへの重大な違反には会社役員の禁固刑や多額の罰金が課されます。
IRA(米国インフレ削減法)が象徴する様に多国籍企業は、より負担が少なくメリットのある地域への投資を優先する為、IRA後、欧州から米国へと大きくグリーン投資がシフトしました。慌てた欧州政府はIRAに対して「EUネットゼロ産業法」を作り、補助金を充実させる政策を取りました。しかし現実には資金ショートであまり機能していません。実際に多くの多国籍企業がグリーン関連事業の軸足を米国に移しています。
今回、米国がスコープ3を企業開示情報から除く事で、より負担の少ない米国に投資がシフトする事は確実と思われます。今後、欧州が何等かの対応(現状の規制を緩和)を出すようですと、今までとは逆の緩和の連鎖が生れる可能性が高くなります。今までは気候変動の対応に関して厳しさが増す方向で規制強化が行われてきましたが、ここに来て、少し逆転の兆しが見えています。
https://www.reuters.com/sustainability/us-regulator-drops-some-emissions-disclosure-requirements-draft-climate-rules-2024-02-22/

サーキュラーエコノミー(CE)の成功と失敗を分ける良い例がスウェーデンのリサイクル企業で見られました。筆頭株主の1社が大手ファッションブランのH&Mであるスウェーデンの繊維リサイクル企業Renewcell(リニューセル)は事業継続に十分な長期資金を確保出来なかった事から破産を申請しました。破産理由は同社が予想した規模のリサイクル原料の需要が無かった為です。CEで成功する重要なポイントは、リサイクル原料の「市場規模」があるか、という事を端的に示す例となりました。金属二次原料の多くはリサイクル材の市場が国際的に確立していますが、PETを除くプラスチックや合成繊維市場にはリサイクル材の市場が殆ど存在していません。技術や規制以上に市場規模が重要という事を表す例となりました。ただしEUでは繊維製品へのEPRが法律として確立しつつある為、今後は緩やかに市場が形成されていくと見られています。同社は昨年12月には短期資金として1000万ドル(15億円)を調達していました。しかし、その僅か2ヵ月後に資金繰りに失敗し、倒産する事になりました。このニュースは持続可能な「新しい素材」を開発する欧州の新興企業の取り組みに打撃を与える事は確実と見られています。リニューセルはこの分野の先駆者であり、他社にとってはリトマス試験紙とみなされていました。同社のCEOは「環境、従業員、株主、その他の利害関係者にとって今日は悲しい日であり、ファッション業界にリーダーシップと必要な変化のペースが欠如していることの証拠だ」との声明を出しています。
https://www.renewcell.com/en/

PP、PE、PETの混合物からビジョンとロボットでPETを選別する為のソフトRecycleOSを開発するEverestLabs社のシステムが米カリフォルニア州のリサイクル企業Caglia Environmentalに導入されました。PETボトルの収集では蓋や外装フィルムが混合している為、PETのみを選別できる専用ロボット選別装置の必要性が高まっていました。今回の取組はThe Recycling PartnershipのPETリサイクル連合からの資金提供によって行われています。
https://www.everestlabs.ai/

欧米では、今、水面下で補助金合戦、規制緩和合戦が徐々に進行しています。典型的な例を1つ紹介します。
スイスの太陽光発電メーカーMeyer Burgerはドイツでの太陽電池モジュール(PV)生産を2024年3月から停止し、米国での生産能力の強化に取り組む方針を示しています。同社にとってドイツの工場は欧州で最後のPVの生産拠点でした。同社は中国製品の洪水で打撃を受け、欧州での生産は既に赤字続きとなっています。更に米国への進出でIRA(インフレ削減法)から14億ユーロの税額控除が受けられると見込んでいます。同社はコロラド州とアリゾナ州の新しい工場向けに既に2億6,200万ユーロを調達し、追加で2億8,300ドルの株主割当増資について株主の同意を求めています。CEOは「米国事業に更に重点を置く事で欧州の政治的決定から独立できるようになる」と述べています。このコメントが端的に示している様に規制緩和と補助金が進む米国(北米)に重点を置く企業が増えだしています。この動きは6月の欧州選挙以降、欧州での緩和の加速に繋がると予想されています。
https://bit.ly/49LhBD8

中国製のEVに価格で対抗できない欧州メーカーは、部品サプライヤーへのコスト削減を進める事で、サプライヤーが苦境に立たされつつある実態が伝えられています。中国メーカーはEV生産の為の部品を内製化又は垂直統合によりコストダウンを図っていますが、欧州メーカーは既存サプライチェーンに加えEV専用サプライチェーン(電池/モーター等)を持ち、コスト面で中国メーカーに対抗できていません。欧州の自動車メーカーが外部のサプライヤーから絞り出せるものには限界がある為、中国メーカーに対応する事は利益率を大幅に下げる可能性があります。こういう状態になると必ず環境や人権等、異なる理由からルールを変更するのが欧州政治なので、何れ中国EVへの対抗策が出されると思われます。
https://bit.ly/48yyRdP

EU議会は深刻な生態系破壊を「犯罪化」する決議を可決しています。可決された新しい指令は2年以内に加盟国で立法化する必要があります。犯罪の例としては違法な木材取引、水資源の枯渇、EU化学物質法の重大な違反、船舶による汚染、が含まれます。環境犯罪は、被害の長期化、深刻さ、回復の可能性に応じて懲役刑の対象となります。環境犯罪には8年、人の死亡が伴う場合には10年、その他の犯罪には最高5年の懲役が課されます。スクラップの違法取引の経済犯罪化の流れも同じですが、環境犯罪は世界経済の2~3倍のスピードで増加しており、世界で4番目に大きな犯罪行為となっています。麻薬、武器、人身売買と並んで組織犯罪の主な収入源の 1つとなっています。生態系破壊に対する厳罰化の動きは確実に進んでいます。EUの活動を見る限り、この流れは先進国で進む方向に動いています。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240223IPR18075/environmental-crimes-meps-adopt-extended-list-of-offences-and-sanctions

欧州委員会はEU重要原材料法に続く、経済安全保障を強化する為の新たな取り組みを提案しました。外国企業のEU投資の審査の改善、輸出管理の調整、特定のテクノロジーの対外投資によるリスクの特定、等が含まれています。材料に関しては科学研究プログラム「ホライゾン・ヨーロッパ」の下、産業界と提携し、2025年から2027年にかけて5億ユーロを投資し、域内の先端材料拠点を確保します。公的調達機関に対しては先端材料の使用を増やすよう促します。更にホライゾン・ヨーロッパ関連諸国の大臣や業界・研究代表者で構成される「技術評議会」を設立する予定です。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_363

中国政府は国内企業のGHG排出報告の不正が相次ぐ事から5月より罰則を強化する方針です。中国の国家排出量取引システム(ETS)への排出量データの不正行為は中国の炭素取引制度にとって大きな問題となっています。新たな罰則では最低罰金は50万元(約7万ドル)に引き上げられます。会計事務所が不正な排出量報告書を作成した場合には「違法な利益の没収及び得た利益の5倍から10倍の罰金が課せられる」予定です。電力、鉄鋼、セメントは中国でも3大排出産業の為、この措置で排出量削減に向け鉄スクラップの利用が増える可能性があります。
https://www.asiafinancial.com/tougher-penalties-in-china-for-firms-understating-emissions-cd

中国のリチウムイオン電池材料市場の最新予測が掲載されています。炭酸リチウムは需要がやや弱く在庫もある事から価格変動が小さくレンジ内。硫酸ニッケルは供給問題から価格上昇見込み。硫酸コバルトは(価格上昇に)楽観的だが顧客は弱気姿勢。三元系前駆体メーカーは赤字状態で需要回復を待つ。カソード材料は需要増期待も市場回復の兆しは未だない、ただしメーカーは生産継続中。LFPは3月分でやや需要回復、ただし予想より低い。LIBスクラップは短期的にはレンジ内で回復、取引もやや活発化。
https://www.mysteel.net/news/all/5049338-a-glance-of-china-lithium-ion-battery-materials-market-20240227

中国で老廃スクラップが増す政策が取られる計画です。中国金融経済中央委員会は、耐久消費財や設備の更新を加速させる方針を示し、その内容を国務院が発表しています。中国国内で使用中の家電製品はエアコン、冷蔵庫、テレビ等を含み30億台以上あり、これらの更新を促進する計画です。更新には自動車も含まれます。中国金融経済中央委員会はリサイクルや廃棄物の利用も強調しており、中央と地方自治体が共同で策定する支援策についても言及しています。これは景気テコ入れの内需拡大刺激策と見られていますが、この措置により大量のスクラップが発生すると見られています。国内建設業の低迷で甲山スクラップは減少しています。
https://www.mysteel.net/news/all/5049419-mysteel-china-scrap-supply-to-rise-as-beijing-pushes-upgrading

プラスチックのリサイクル材を製品に利用する場合の問題提起が欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)より行われました。EUはEU包装及び包装廃棄物規則(PPWR)の中で製品に利用されるリサイクル材の比率を定めています。しかし現実にはEU以外からの安価なリサイクル材の流入により、投資を行ったプラスチックリサイクル業者は苦境に立たされています。EuRICはリサイクル材の使用は「EU内で収集されたプラスチック廃棄物由来である事」を規則の要件として求めています。しかし、この条件を規則に盛り込む為には「トレーサビリティシステム」が不可欠となり、実現が難しいと考えられています。本来この規則は廃プラは輸出禁止とし、国内(域内)で発生した廃プラをリサイクルし新製品へ利用する事です。しかし現状には国内で発生した廃プラは完全なゴミとなり、輸入されたリサイクル材をメーカーが使うという法律が想定したものとは違う状態が発生しています。先進国でのリサイクルはコストが掛かりリサイクル材の価格が輸入材料に敵わない為です。つい最近、欧州委員会はプラスチックのリサイクルコンテンツの比率についてケミカルリサイクルを念頭に置いた「マスバランス方式」の採用を決めたばかりです。
https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/recyclers-urge-eu-action-to-protect-europes-plastics-recycling-industry-from-recycled-plastics-influx-amid-ppwr-talks

昨年末、欧州政府は中国政府が国内EV企業へ補助金を支出している件で調査を開始しました。欧州に続き、英国政府も同様の調査を行うか検討に入っています。この調査は英国の自動車メーカーによる要請から来ています。欧州政府による中国EVメーカーの調査は今年後半に終了する予定です。調査結果で「黒」となり、EUが中国製EVに関税をかければ、欧州市場から締め出された大量の中国製EVが英国の市場に流入するとの懸念が高まっています。英国の自動車メーカーは、英国政府に対して独自の取組を加速するよう求めています。現在、欧州では欧州メーカー製のEVと同型の中国製EVでは価格に25-30%の差があります。このままの状態では市場を席捲される恐れがあり、何等かの措置は行われると見込まれています。
https://www.politico.eu/article/uk-considers-probe-chinese-ev-subsidies/

メーカーによるEV熱が若干冷めている状況が続いています。
英国の高級車メーカーのアストンマーチンは、2025年に発売を計画していたEVを1年延期しました。更にブルームバーグによればAppleはEVの社内プロジェクトを既に中止したと報じています。AppleはEVプロジェクトを正式に認めた事はありませんが「プロジェクト・タイタン」と呼ばれるこの計画には、数十億ドルを費やしてきました。プロジェクトの中止に伴い、スタッフは人工知能(AI)に取り組むようシフトされており、今後数年間はEVでなくAIが主要なイノベーション分野となる予定と伝わっています。
https://techcrunch.com/2024/02/27/apple-cancels-electric-car-project-titan/

日本がEnvivaの次に多く木質ペレットを輸入する予定のカナダのDrax(英国資本:旧Pacific BioEnergy)はカナダで自然林の大量伐採を行なっている事で大きな問題となっています。この行為により英国では、Draxの発電所への補助金を差し止めする運動が起こっています。日本への木質ペレット最大の輸出企業Envivaはチャプター11寸前に3月4日まで社債償還延長を投資家と合意しています。地元紙は3月4日が「山場」との報道を続けています。日本の発電所向けの上位2社の供給企業が問題を抱えている事から、代替としてのベトナム産木質ペレットの要求は一層増す可能性があります。
https://www.bbc.co.uk/news/science-environment-68381160

欧州のリサイクル業者にとって大きな影響のある「EU廃棄物輸送規則(WSR)」がEU本会議を通過しています。OECD非加盟国へのプラスチック廃棄物の輸出は禁止、更に他のEU加盟国で処分する為の廃棄物の輸送は例外的にのみ許可される事になります。当然ですが欧州リサイクル産業連合(EuRIC)はすぐさま反応し「改訂された廃棄物輸送規則によりヨーロッパでのリサイクルが脅かされる」とのリリースを発行しています。古紙や再生金属スクラップは「商品」として国際市場で取引されており、欧州内ではこれらの資源の需要が不十分な為、欧州ではリサイクルのレベルと活動が低下する恐れがあるとの懸念を示しました。WSRは指令から規則に格上げされた事と「リサイクルされた再生原料」という明確な定義を採用しなかった事で当局はスクラップを「廃棄物」として規制を行う事が可能となります。純度の基準やしきい値等はまだ示されておらず、低品位の金属スクラップの輸出に不確実性が増しています。しかし立法府はEUから非EU諸国への廃棄物の輸出量が2020年に3,270万トンに達し、特に途上国での環境汚染の原因となっている事から輸送規則の強化を進めてきました。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240223IPR18069/waste-shipments-meps-adopt-tougher-eu-rules
https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/revised-waste-shipment-rules-threaten-recycling-in-europe


国連環境計画(UNEP)は国際固形廃棄物協会と纏めた報告に関するプレスリリースを発行しています。都市固形廃棄物は2023年の23億トンから2050年には38億トンに増加すると予測されています。2050年の廃棄物の直接管理コストは6,403億ドルに達する可能性があり、循環経済に移行する事が急務である事を強調しています。予測では投棄と野焼きに大きく依存している地域で廃棄物が最も増加しており、これは環境汚染の急速な増加を齎すと警告しています。この報告は2月26日から3月1日までケニアのナイロビにあるUNEP本部で開催される「第6回国連環境総会(UNEA-6)」で発表されています。この報告は今後の各国の廃棄物行政に少なからず影響を与えるものと考えられます。
https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/world-must-move-beyond-waste-era-and-turn-rubbish-resource-un-report

フォーチュン500社で第3位、2023年の利益は360億ドルの米国最大の石油企業エクソンモービルのCEOが、ネットゼロに関して「誰も語らない汚い秘密」を発言した事が取り上げられています。CEOのダレン・ウッズは「現状では2050年迄に排出量実質ゼロへの道には進んでいない、そして恐らくそれはビッグ・オイル(大手石油企業)のせいではない」と述べています。問題は「現状ではネットゼロへの問題の解決に費用が掛かり過ぎ、低炭素燃料の製造は可能だが、人々は値段が高くなる低酸素燃料にお金を使いたがらず、企業も大金を投じる事には積極的ではない」と強調しています。ウッズはネットゼロのソリューションの有用性を高める「低コスト化」こそが問題の解決策で補助金政策やビッグ・オイルを悪者にする事は解決にならない事を述べています。ウッズの理論は正当で当たり前の話です。ただし何故、補助金をばらまく政策と化石燃料を悪者にする事が欧米主導で政治的に起こされてきたのか、欧米の多国籍企業の幹部は分かっていても言わない、そこに欧米主導のネットゼロ政策の本当の闇があるのかもしれません。最近状況が変化し、ウッズのような発言が出てくる事自体が欧州の環境原理主義からの変化と見ても良いと思われます。
https://fortune.com/2024/02/27/exxon-ceo-darren-woods-interview-pay-the-price-for-net-zero/amp/

米国でも繊維廃棄物への取組強化がメーカー主導で行われ始めました。アウトドアアパレル企業のパタゴニア社と特殊素材メーカーのイーストマン社は繊維廃棄物のリサイクルで提携する事を発表しています。両社は既にリサイクルに共同で取り組んでおり、工場廃材や売れ残った商品、衣類廃棄物をリサイクルしてきました。イーストマンは自社の「分子リサイクル技術」を利用し、廃棄品からリサイクル材料を製造します。
https://www.telegraph.co.uk/news/2024/02/27/russia-red-sea-nord-stream-gugi-sub-cables-pipelines/

世界の億万長者が相次いで自社株式の売却に動いています。
JPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモンだけでなく、アマゾンのジェフ・ベゾス、メタ(フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグ、アポログローバルマネージメントのレオン・ブラック、更に単純な売上高では世界最高の企業であるウォルマートを所有するウォルトン・ファミリーは合わせて110億ドル(1兆6500億円)の自社株を売却しています。S&P500指数は過去1年間で28%上昇し、最高値を更新しています。またナスダックの総合指数は過去1年間で40%近く上昇しています。特に前回紹介したジェイミー・ダイモンは「株を売らない事」で有名だったので、この時期に売却に出たという事は「将来への懸念」との憶測が出ています。欧州選挙、米国の大統領選挙、更に地政学的な問題から1年後に今より良くなっているという予測が立てにくいという背景があるようです。彼らは一般人が持たない情報を持っていますので、発言より行動を見た方が良いかもしれません。ただしBusiness Insiderは、まだ米株式市場は「バブルではない」との見解を示しています。
https://bit.ly/49xigZg



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