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NEWSCONの気になるNEWS(2024年2月第3週)

IMFは日本との年次政策協議後の声明を発表し、詳細をHPに掲載しています。IMFは「日銀は今すぐイールドカーブコントロール(YCC)を止めて量的・質的緩和(QQE)の終了を検討し、その後は短期政策金利を段階的に引き上げるべきである」と記載しています。またエネルギーへの補助金や所得税減税計画を批判し「短期的には金融の安定を維持しながら、財政政策の引き締めと非伝統的金融政策の縮小に重点が移るべきだ」との見解を示しています。ロイターの調査によると、多くの市場関係者は日銀が年内にマイナス金利を解除するのが4 月になると予想しています。エネルギーへの補助金については「エネルギー消費を歪め、脱炭素化の取り組みを妨げる可能性がある為、脆弱な世帯への対象を絞った補助金に置き換えるべきである」としています。以前お伝えした通り、世界銀行グループ(WBG)はアメリカが率いており、そのトップはアメリカが決め、国際通貨基金(IMF)は基本的に欧州が率いてトップも欧州が決める、というのは歴史的慣行です。今回の内容も実に欧州色が強い内容(他国の政策に官僚的に介入する)となっています。ただしこの声明は、円と株の動きには影響がある可能性があるだけでなく、中期的には金融政策に影響を与える可能性があります。
https://www.imf.org/en/News/Articles/2024/02/08/mcs020824-japan-staff-concluding-statement-of-the-2024-article-iv-mission

タタスチールに続き、英国のもう一方の大手鉄鋼メーカーであるブリティッシュスチールは正式に電炉の申請を行いました。タタスチールはウェールズのポートタルボットに位置していますが、ブリティッシュスチールが電炉を申請したのは、中東部のスカンソープ地区となります。ブリティッシュスチールは電炉に最新の技術を採用し、混合材料を利用する事で様々な製品とグレードを生産できると述べています。銑鉄、又は直接還元鉄(DRI)を電炉溶湯に混合する事で製造上の課題を克服する計画です。混合原料を利用する事で鉄スクラップからの残留物が希釈され、製品の範囲が広がります。更に鉄スクラップの管理と選別技術の向上により、望ましくない元素が電炉に混入するのを防ぐ事が出来ることも実証されています。タタスチールの計画では電炉は2基、合計生産能力は年400万トン、ブリティッシュスチールの電炉は段階的に2基まで増える予定で、こちらも400万トンレベルと言われています。ブリティッシュスチールの電炉での生産開始は2025年末を見込んでいます。繰り返しますが、国単体で見た場合、世界で2番目に鉄スクラップを輸出している英国(年間約1,000万トン)が、後5年程で国際輸出市場から離れる事になり、更に米国でも欧州でも相次いで大手が電炉を稼働させる事から国際鉄スクラップ流通へのインパクトはかなり大きくなりそうです。
https://britishsteel.co.uk/news/british-steel-submits-application-for-electric-arc-furnace-in-scunthorpe/

アフリカ最大の独立研究機関であるアフリカ安全保障研究所(ISS)は、主にEUから、もしくはEUを経由してアフリカのガーナに流入する電子機器廃棄物(WEEE)について特別レポートを上げています。スペインのカナリア諸島(VAT対応の為)等を輸出地とし「中古品」として何十万トンものWEEEが「ガーナ」に送られ、30%は中古品として売買されますが、残りは人の手で分解、単純焼却による貴金属回収が行われています。その過程で起こされる重金属による土壌汚染は許容範囲の数十倍から百倍と言われています。昨年、フランス人記者のポール・マーシャルが「アフリカ:資本主義のゴミ箱」と題したレポートを掲載し、話題になっていました。今でも年間約15万トンのWEEEがガーナに輸送されています。欧米企業もガーナ企業も法の抜け穴や汚職の恩恵を受け、ガーナでの有害廃棄物活動を可能にしています。ISSはこの行為はマネーロンダリングに該当するとして、各国に対し厳しい刑罰や罰金、禁固刑を求めています。現在EUも英国も重い腰を上げ始めています。昨年12月11日には英国が環境犯罪法の基準をアップデートし、今年2月には環境省内に「経済犯罪課」を設置しました。EUも昨年12月22日に廃棄物犯罪に関する欧州理事会の見解をアップデートしており、今後、環境犯罪に対する罰則強化を明言しています。
https://issafrica.org/iss-today/despite-the-hazards-ghanas-illicit-waste-trade-is-booming

欧州議会とEU加盟国評議会は、鉱業、石油、ガス会社に対する企業持続可能性報告指令(CSRD)の実施を2年間延期する事を認めました。この措置により同分野の企業の持続可能性報告の開始は2026年6月からとなります。この延期措置は多くの業務負担を強いるCSRDを延期する事で「欧州の競争力の向上」を目指す為に行われました。EU持続可能性報告基準(ESRS)は非常に複雑で企業負担が重く、選挙年である今年、各分野で議論の対象となっていました。昨年1月から施行されているEUの企業持続可能性報告指令(CSRD)は上場企業に対して、社会的及び環境的リスクに関する情報を開示することを義務付けているだけでなく、違反した場合の厳重な罰則規定を各国で制定するよう義務化しています。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/02/07/council-and-parliament-agree-to-delay-sustainability-reporting-for-certain-sectors-and-third-country-companies-by-two-years/

Visual Capitalistが米国におけるESG投資の推移を調査した数値を図に纏め、非常に大きな反響がありました。その内容をZeroheadgeが分析しており記事が無料でOilprice.comに掲載されたのでリンクを紹介します。投資家は2023年Q4にESG上場投資信託(ETF)から50億ドルを引き出しました。資金の流出は5四半期連続となります。米国だけで年間130億ドル分の米国ESG ETFを処分し、世界の業界全体のESG投資に混乱をもたらしました。ESGファンドにとって2023年は最悪の年でした。ブラックロックは1月12日の決算会見でESGという用語の利用を止めました。欧州では今でもESGは重要な地位を維持していますが、米国ではESGという用語の利用は段階的に廃止されつつあります。
https://oilprice.com/Finance/the-Markets/Corporate-America-Retreats-from-ESG-Rhetoric.html
https://www.visualcapitalist.com/is-esg-investing-in-decline/#google_vignette

サークル・エコノミー財団とデロイトは「サーキュラリティ・ギャップ・レポート2024」を発行しました。2023年に世界で消費された原材料の内、リサイクルから得られた量は僅か7.2%でした。この比率は2018年には9.1%、2020年には8.6%、2022年は2023年と同様でした。報告書は世界の原材料の消費が急激に加速している事を示しています。過去6年間だけで約5,800億トンの原材料が消費されました。この量は人類が20世紀全体で消費した原材料の総量推定7,400億トンと比較すると著しく増加しています。報告書は循環経済(CE)への移行は多大な「プラスの効果」を約束すると指摘しています。CEが実現すれば有害な排出物を約40%削減出来る可能性があります。しかしCEへの動機を生む政策や法的枠組みは未だ整備されていないと指摘しています。報告書は食品、建築環境、工業製品について、取るべき対策についても言及しています。
https://www.circularity-gap.world/2024

インドの大富豪Gautam Adani(ゴータマ・アダニ)の企業の1つである、単一工場としては世界最大の銅製錬工場となるKutch Copper Ltd (KCL)は年間160万トンの銅精鉱を購入する契約を締結しました。現在、様々な鉱山問題により流通する銅鉱石(精鉱)は十分な量が無く、この契約は鉱石の価格を一段押し上げる可能性があります。最初の50万トンの銅製錬工場は3月末に稼働予定です。
https://www.moneycontrol.com/news/business/billionaire-adani-secures-ore-for-1-2-billion-copper-smelter-12233181.html

インドネシアと中国はニッケルの生産量を削減し始めています。インドネシアはニッケルの生産量を少なくとも10万トン削減する予定で、中国も減産を検討しています。これまでに今年の供給量の約6%に相当する23万トン以上を削減していますが、価格を押し上げる事ができなく、更なる減産を予定しています。供給過剰と在庫高の殆どはステンレス鋼生産用のニッケル銑鉄(NPI)で、中国とインドネシアは世界のニッケル供給量の70%を占めており、その殆どNPIとなっています。現在ニッケル鉱石、電力、石炭等の原材料コストがNPI価格の最大73%を占めており、多くの中国のNPI工場は採算割れの状態が続いているという事です。
https://www.asiafinancial.com/indonesia-china-to-cut-nickel-output-as-ev-metal-loses-sheen

欧州が様変わりした典型的な例がありました。企業にサプライチェーン上での環境破壊や人権侵害が無い事を義務化する「EUデューディリジェンス指令(CSDDD)」は突然EU加盟27カ国特使会議の議題から削除され、日程が2月14日に変更されました。これはドイツとイタリアが同指令に関して棄権もしくは反対の意向を示した為です。欧州議会の最終投票に進むにはEU人口の65%を占める15ヶ国の「過半数」が必要となります。CSDDDでは規則に違反した場合の罰金は企業の世界売上高の最大5%と非常に重い罰則となっています。CSDDDはEU域内で事業を行うEU域外に本社のある約4,000社も対象となっており、米国や日本の企業も含まれます。CSDDDは米国企業からも批判の対象となっていました。CSDDDの提案が欧州委員会から出た時は欧州がこの分野で世界をリードするという大変誇り高い宣伝をしていましたが、肝心の身内から反対に合うという皮肉な展開になっています。2年前では考えられませんが、それだけ経済と経済安全保障で欧州が苦しんでいるという表れです。
https://www.euronews.com/green/2024/02/09/eu-corporate-sustainability-rules-postponed-given-german-italian-qualms

面白い研究成果が発表されているので紹介します。貴金属が含まれる基板は溶媒抽出等の方法により金属を回収します。今回開発された技術はチーズの製造過程で産出される副産物のホエイプロテインを使用して低密度の吸収性エアロゲルを製造し、複数の金属が溶解した液体の中に入れる事で「金」のみを回収するという方法です。この技術は生成された多孔性のエアロゲルを銅、鉛、ニッケル等の混合金属溶液に入れて、金のみをゲルに吸収させる事です。テストでは混合金属溶液から金を93%、その他の金属は10%未満で吸収する事に成功しています。本物の電子廃棄物を使ったプロテインスポンジをテストした結果、PCのマザーボードを王水(硝酸と塩酸の混合物)に溶かした溶液から金イオンがエアロゲルの表面に沈降し、還元されました。回収量はエアロゲル1g当り金190mgでした。このエアロゲルを燃やすと金を金属として回収できます。研究チームは、エアロゲルは高い容量と選択性で金イオンを迅速に吸着する能力がある事を証明したと報告しています。廃棄物から生成した物質での金の回収はライフサイクルでの環境負荷が少ないという点で注目されています。
https://cen.acs.org/environment/recycling/Food-based-aerogel-recovers-gold-from-e-waste/102/web/2024/02

中国の鉄鋼産業の鉄スクラップ使用量が過去6年間で最低であることを理由に、今後も中国での国内鉄スクラップ流通の増大は起きず、鉄鉱石価格は上昇すると見られています。モルガン・スタンレーは2月9日にメモを発行し、Q3には鉄鉱石価格が1トン当たり140ドルに戻ると予想しています。アナリストの多くは中国で建設活動が減速し、輸入鉄鉱石に代わって現地で集められた鉄スクラップの利用が増える事で鉄鉱石価格の下落を予測していますが、MSはそれが起こらないと予測しています。中国の鉄スクラップの使用量は4年間減少しています。MSは鉄スクラップを原料として製造する建設用鉄鋼製品の需要が悪く、メーカーは利益が取りにくい為、スクラップを利用する動機が薄れている点を指摘しています。また動機の低下はスクラップ自体の回収、収集を減らす事に繋がる点も強調しています。更にその根本要因である不動産業の低迷、デフレ、鉄鋼利益の低迷は、より根深い問題で長期化する可能性があるとの見解を示しています。
https://www.forbes.com/sites/williampesek/2024/02/09/chinas-7-trillion-crash-masks-the-really-bad-news/?

ブラジルの昨年の鉄スクラップ輸出量は過去最高を記録しました。約80万トンが輸出され、前年の2倍に増加しました。大きな理由は2つあり、1つ目は安価な中国鉄鋼製品の洪水により、ブラジル国内の電炉のスクラップ利用が制限された事、2つ目はインドの需要が急増した事です。輸出総量の内、インド向けは63%(50万1,744トン)を占め、大幅に増加しました。関係者によれば「(輸入)銑鉄価格が非常に安くなり、工場はコストを下げる為に銑鉄の消費を増やした結果、鉄スクラップの利用量が減り、国内に鉄スクラップ在庫が増した。輸出がなければブラジルの鉄スクラップ業界は大きな打撃を受けた。」と語っています。ブラジルは鉄鋼だけでなく他の製品も含めて中国の余剰過剰生産能力の向かう市場となっています。
鉄スクラップの国際流通は欧州、英国、米国、韓国での電炉の急速な増加と、過剰生産能力を輸出で補おうとする中国とロシアの洪水のような鉄鋼製品及び半製品の輸出で大変革時代を迎えていると言えます。韓国/ポスコは先陣を切り、光陽工場で年間250万トンの電炉建設を開始しました。2025年末迄に完成、2026年には本格稼働の予定です。
https://www.spglobal.com/commodityinsights/en/market-insights/latest-news/metals/020924-brazil-ferrous-scrap-exports-reach-record-high-in-2023-amid-india-steel-boom

既に日本でも伝わっていますが、中国はEV用全固体電池開発の為、国が主導する中国メーカーと研究部門によるコンソーシアムを設立しました。China All-Solid-State Battery Collaborative Innovation Platform(CASIP)と呼ばれるプラットフォームを設立し、参加企業にはCATL、FinDreams Battery (BYD の子会社)、CALB、EVE Energy、Gotion High-techが含まれます。中国は他国が中国よりも先に全固体電池を搭載したEVを発売すれば、自国のEV産業が競争力を失うと懸念し、全固体電池開発企業のコンソーシアムを結成しました。このコンソーシアムには政府支援の投資ファンドも含まれています。CASIPは2030年迄に全固体電池のサプライチェーンを国内に完成させる計画です。全個体電池に関しては極材料や電解質の問題以上に、実は量産技術が困難であり、更に大型化は難しく、長年の研究にも関わらず小型のものしか量産されていない現実があります。
https://electrek.co/2024/02/12/byd-catl-form-chinese-powerhouse-solid-state-ev-batteries/

欧州委員会は化学物質ビスフェノールA(BPA)の使用を段階的に廃止する為の協議を開始しました。今年中には食品と接触するプラスチックへの禁止法案を提出する見込みです。日本も欧州もBPAは使用限度量が規定されていますが、欧州では食品と接触するプラスチック包装への使用を完全に禁止する見込みです。欧州食品安全機関(EFSA)は昨年4月にBPAに関して「現在の規制値では消費者に健康リスクをもたらす」との結論を発表していました。欧州で商品を販売している日本やアジアメーカーは対応が必要となります。
https://www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/bisphenol#latest

インド鉄鋼省は、鉄鋼製品の品質管理に関する基準を改訂し発表しました。この措置はステルス保護貿易とも言えます。今後、指定された規格に適合しない規格外、又は欠陥のある鋼材製品はスクラップとして処分される可能性があると規定されています。ステンレスパイプや一次電池部品を含む111品種、145品目が対象となります。鉄鋼省は昨年10月にインド規格に適合しない鉄鋼輸入について、鉄鋼省の承認を義務付けました。今回の措置は業界からの強い輸入規制に対する要望もあり、関税や輸入を規制するのではなく、品質規格を義務化する事で保護的な政策を取ったと見る事が出来ます。
https://steel.gov.in/en/quality-control-orders

鉄鋼の保護貿易化はインドだけでなく、欧州でも継続しています。欧州委員会は今週より鉄鋼セーフガードを延長すべきか調査を開始しました。この調査はドイツ、イタリア、フランス、スペインを含むEU加盟14ヶ国の要請によるものです。過去3年間で世界の鉄鋼生産能力は約1億5,000万トン増加しています。東南アジア、インド、中東、北アフリカ等でも国内消費を上回る過剰鉄鋼生産能力が生れつつあり、問題は各国の生産者にとって深刻化しつつあります。米国は関税法S232条により鉄鋼とアルミニウムの追加関税を継続しており、欧州でもセーフガードの延長は既に政治による決定事項との見方もあります。Eurofer(欧州鉄鋼生産者協会)は中国を中心とする新たな過剰生産能力問題は鉄鋼の国際貿易を著しく歪めている、として欧州政府の対応を促しています。
https://bit.ly/3ODFJPN

日本のバイオマス発電所が最も多くの木質ペレットの長期購入契約を持つ米国のエンビバ社は連邦破産法第11条に基づく民事再生を申請する計画があるとWSJが伝えています。ただし、現在猶予期間中の社債の償還期限の延長が認められた場合にはチャプター11への申請は延期される見込みです。同社の株価は1ヶ月以上1ドルを下回り、過去2年で99%下落、集団訴訟やニューヨーク取引証券所から上場適格要件を満たしていない通知を受け取っています。
エンビバ社は元々米国の投資会社であるRiverstone(元GS幹部設立)とCarlyleが主体となり、株主還元に関する税繰延が可能なマスターリミテッドパートナーシップ(MLP)という形態で買収後に企業構築されました。欧米の有力投資機関が出資する「グリーン」企業として宣伝され、欧州のRWEやDraxを始め、日本向けの木質ペレットの長期供給契約を担保に資金調達と設備投資を繰り返し、事業を急拡大させてきました。欧州向け80万トンの木質ペレットの販売取引で失敗した事が明るみに出て株価は急落、更に資金繰りが悪化し、社債の償還期限も猶予期間を利用する等、逆風が吹き荒れる状況となっています。
https://www.wsj.com/articles/wood-pellet-maker-enviva-prepares-to-file-for-bankruptcy-c23395b0

ドイツでは銅の盗難が社会的な影響を与え始めています。昨年、欧州最大の銅製錬メーカーAurubisでの組織犯罪があったばかりですが、盗難は単独犯だけではなく特殊な機器を使い高度に組織化された犯罪組織によるものが含まれています。今週、ドイツ鉄道は鉄道インフラの銅が盗難に合い、列車が多数運休となりました。盗難はマンハイム中央駅と近くのランペルトハイム市の間で発見されています。ドイツ経済の停滞と高品質銅スクラップ価格の高止まりにより、盗難が組織犯罪によって行われる様になり社会問題化し始めています。
https://www.dw.com/en/german-fast-rail-traffic-paralyzed-in-south-by-metal-thieves/a-68231290

英国では昨年、経済犯罪透明性法(ECCTA)が成立しています。これは英国の会社法の歴史の中でも最大の変革と位置付けられています。ECCTAでは企業による「詐欺防止不履行」という新たな違反行為を定義しています。これは企業が利用する情報の透明性を保証し、更に企業は自社内で犯罪行為が行われる事を未然に防ぐ事が義務化されています。昨年のAurubisの電子基板及び銅の盗難事件では在庫情報を偽造する為に企業内部に組織犯罪に関係する人物が居た事が確認されています。例えばドイツ鉄道で盗難にあった銅をスクラップとして英国のリサイクル企業に販売した場合、その企業は事前にチェックし犯罪に加担しない仕組みが必要となります。金属リサイクル業は、金属スクラップの貴重性や価格の上昇、更に重要な原材料の国内確保の動きからマネロンを軸にした経済犯罪防止の1つのターゲットエリアになり始めています。既にアフリカでは多数の国が金属スクラップの輸出規制を実施し始めています。
https://bit.ly/3whQCAI

欧州議会の環境委員会はEU廃棄物枠組み指令(WFD)の改正テキストを採択しています。3月に本会議で投票予定です。EU廃棄物枠組指令はEUの全ての廃棄物規制の最上位に位置する指令で全ての廃棄物規制に影響を与えます。今回の改正で最も大きな変更点は食品廃棄防止目標を明確化した事、繊維製品に対する拡大生産者責任(EPR)範囲をさらに拡大し収集やリサイクルにまで広げた事、更にWFDでの義務化の発効時期をより早める事、が含まれています。EPRの拡大によりメーカーが責任を負う事から、古着と称して「廃棄衣類」を国外に輸出する事に一定の歯止めが掛かると予想されています。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240212IPR17625/textiles-and-food-waste-reduction-new-eu-rules-to-support-circular-economy
https://environment.ec.europa.eu/topics/waste-and-recycling/waste-framework-directive_en

欧州の炭素国境調整メカニズム(CBAM)が中国、インドの鉄鋼業界に与える影響についてGSが分析した内容が話題となっています。炭素価格を現在の約70ドルと仮定した場合、インドの鉄鋼製品は、将来1トン当たり102~190ドルの炭素税が課せられる可能性があると分析しています。熱間圧延コイルの場合には価格の15%~28%に相当します。インドの鉄鋼業界はCBAMを「貿易障壁」と呼び、インド政府はEUと協議を行っています。中国製の鉄鋼製品については、2026年から約6%、2032年には21%に相当する関税率となると予想しています。中国製のアルミニウムに関しては2026年には3%、2032年には7%になると予想しています。中国もCBAMを保護主義的な動きと捉えています。CBAMの導入により欧州の鉄鋼やアルミ二ウムメーカーは炭素排出権取引市場での「無料排出枠」が段階的に廃止され、輸入品と同等の炭素負担が始まります。Acuity Knowledge partnersは既に昨年夏に世界の鉄鋼生産の余剰能力が国際問題に発展する事を分析しており、今後も保護政策の台頭で問題が顕在化していくと思われます。鉄鋼製品のダンピング輸出が続く事で鉄源の価格に押し下げ圧力が常に生ずるという構図が一部で現れるという事になります。
https://www.hindustantimes.com/business/indian-steel-exports-at-high-risk-from-europes-new-carbon-tax-goldman-sachs-101707903529718.html
https://gmk.center/en/news/european-cbam-will-reduce-chinas-advantage-in-steel-exports-goldman-sachs/
https://www.acuitykp.com/blog/steel-overcapacity-a-global-problem/

日本に法人を設立し、昨年から銅製品を販売、銅スクラップの輸出も事業強化目的に入っているインドの金属大手ヒンダルコ・インダストリーズは政府に対してFTAを締結する国とのアルミニウムと銅の関税撤廃を避けるよう、要請しています。インドはUAEとFTAを締結しています。UAEにアルミや銅産業があるだけでなく、アルミや銅の原料や中間品をタイから輸入し製品化しています。タイ経由の原料や半製品は在タイの中国企業により本土から輸入し、UAEによるFTAのメリットを利用した迂回輸出が行われ、それがインドの産業に打撃を与える可能性が高い事から、このような要請になっています。中東のオマーンもインドとのFTA交渉が続き、条約締結に近づいています。こうした迂回ダンピングは今後も広がる恐れが指摘され始めています。
https://www.thehindubusinessline.com/economy/keep-aluminium-copper-out-of-fta-hindalco-chief/article67844357.ece

EVとグリーン化を巡り、実は中国政府がアフガニスタンのタリバンと急速に接近している事は殆ど知られていません。最近象徴的だったのは2024年1月29日の公式式典で中国政府はタリバン統治下のアフガニスタンから北京への特使の信任状を受諾した事です。41ヶ国の大使が中国に信任状を提出し、アフガニスタンが含まれていました。前月、中国の王毅外相とアフガニスタン大使ビラル・カリミは会談したばかりでした。実はインドも1月31日にタリバンが招集した外交代表者会議に参加した10ヶ国の内の1つです。
2010年、米国の国防総省は、地質学者の調査に基づき、アフガニスタンに埋蔵されている膨大なリチウムやその他の鉱物の価値は「1兆ドル」に達する可能性があり、アフガニスタンのリチウム鉱山と銅鉱山を必要としている、という報告書を出しています。ただし鉱床が存在しているだけでは価値はなく開発の必要があります。
最近、カザフスタンでも推定860万トンのリチウム鉱床が特定され、埋蔵量としては世界で5番目に大きいと推定されています。欧州政府はカザフスタンが行うリチウムとタングステンのプロジェクトに資金を提供する事を約束しています。南米やアフリカでの鉱山問題と政治リスクの増大から、電池の資源戦争はアフガニスタンとカザフスタンを含む地域へと最前線が移っています。
https://www.eurasiantimes.com/china-pulls-taliban-out-of-isolation-beijing-eyes/

EU経済の今年の成長率予測が発表され、前回の予測より下げています。2024年の成長率はEU全体で前回予測の1.3%から0.9%に下落、ユーロ圏19ヵ国で1.2%から 0.8%に下落しています。EUのインフレ率は2023年の6.3%から2024年には3.0%に低下し、その後2025年には2.5%に低下するとの見込みが出ています。ここ最近は下げ予測だけでなくインフレ率の予測も正確性に欠ける事が多く、常に政治的事象により影響され続けています。
https://commission.europa.eu/news/inflation-eu-will-fall-faster-and-economy-grow-more-slowly-new-forecast-says-2024-02-15_en

欧州中央銀行(ECB)の理事会メンバーで、ベルギー国立銀行(中央銀行)総裁であるピエール・ワンシュがEU議会に対し発言した内容が大きな話題を呼んでいます。ワンシュは欧州議会の中で「経済のグリーン化に伴うコストとグリーン化で失う富について真実を語るべきだ。それが出来なければ国民の怒りに直面することになる。当局は信頼を維持したいのであればグリーン化に伴う高額な費用を誰が払うのか説明すべきだ。グリーン移行によって私たち全体が豊かになる訳ではない。グリーン化がGDPを押し上げ、高賃金の雇用を生み出すと人々を誘導しないで欲しい。炭素価格と環境に優しい資源のコスト増により欧州のエネルギー価格は米国の5倍から8倍になるだろう」と述べました。EUの金融部門の上級官僚で国の中銀総裁がここまでの発言をするというのは異例中の異例です。過去5年間、EUは産業のグリーン化に伴う膨大なコストについて明確な財源も無く進めた事で社会的なコスト増とインフレを起こし、それを政府支出でカバーする為に膨大な政府債務が膨れ上がり、最終的には納税者の負担になるという状況が今の欧州の右傾化を生み出している原因であるという事をあからさまにした発言でした。実は欧州政府が主導するグリーン化は環境や市民の為だけでなく、投資家や企業の為に行ったグリーン化の側面もあり、誰かがツケを払う結果となり、事態を悪くしています。
実際、オーストリアのロシアのガスへの依存度はウクライナ紛争前の80%から現在は98%にまで上昇しており、上昇したエネルギー価格を補う為、各国政府は「ステルス」でイデオロギーと真逆な事をしている現状があります。欧州最大の化学企業であるBASFは欧州の化学品が競争上不利な状況にある為、いくつかの事業を売却し、更に幾つかの部門を独立した子会社に変える計画があると伝えています。
決定的な出来事の1つはJPモルガン・アセット・マネジメントが気候変動活動家団体「クライメート・アクション100+」の会員資格を更新しないと発表した事です。投資家は潮が引くように去っていくものです。これらは氷山の一角で、膨大なステルス矛盾は欧州のあちこちで見られています。
https://www.politico.eu/article/belgium-central-bank-chief-going-green-wont-make-you-richer/



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