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NEWSCONの気になるNEWS(2023年10月第3週)

10月14日はInternational E-waste Day(国際電子廃棄物デー)です。International E-waste Dayは、WEEEフォーラムとそのメンバーによって始められたもので、毎年10月14日に開催される「意識向上の祭典」です。国連によると2023年には世界中で1人当り8kgの電子廃棄物が発生する見込みです。これにより、年間で6,130万トンの電子機器が廃棄される事になります。この内、僅か17.4%が適切に処理またはリサイクルされ、残りの5,060万トンは埋め立て、焼却、違法取引、不適切な処理または家庭内保管されます。欧州では電子廃棄物の回収とリサイクル率も僅か54%であり、一般市民の認識不足が発展を阻んでいます。最近この分野で最も頻繁に注目されているものが「目に見えない電子廃棄物」です。目に見えない電子廃棄物とは、気づかれずに廃棄されがちで、リサイクルの機会を逃す電子機器の事です。例えば電気玩具、電子タバコ、ウェアラブルデバイス等が該当します。これらの製品は消費者のライフスタイルに溶け込み、寿命が尽きた時に放置されたり、単に棄てられます。本来、修理不能な場合にリサイクルされるべきです。英国では、新たに電子廃棄物専用のごみ収集箱(ピンクのごみ箱)の導入を検討している地区もあります。
https://weee-forum.org/iewd-about/

地政学や経済安全保障問題が益々重要になる世界情勢の中で、米国でアルミニウムが本格的な戦略物資として浮上し始めています。米国のシンクタンクの1つである「戦略産業資材センター」は、アルミニウムに関する新しい政策イニシアチブをレポートで掲載し、米国に一次アルミニウム産業を回帰させる為の実現可能性を検討するよう訴えています。8月末に最初にレポートが発行された後、アルミ二ウムの専門サイトの幾つかで拡散されてきました。今週、米国のアルミ関連企業が商務省と米国際貿易委員会に対し、マレーシアや中国を含む14ヶ国のアルミ製品に対する反ダンピング措置を請願し、政府が調査に入る事態に至りました。EUでも歩調を合わせ、中国や他の排他的な経済慣行のある国からのアルミニウム製品に10%の関税を課す検討が始まっています。年末迄には欧米によって締め出されたアルミ二ウムを取り巻く国際貿易に間違いなく変化が起こりそうです。
https://bit.ly/3Fmx6nH

My Steel Globalが中国での電池部材の生産と価格予測の詳細を材料毎に掲載しています。全体的に生産は若干伸びているものの、略全ての材料価格は横這いから若干の上下に留まる内容となっています。中国が顕著に強い炭酸リチウムは、生産の鈍化により、価格が反発する可能性は低いと見られています。その他の全ての原料については下記で10月の予測を見る事ができます。
https://www.mysteel.net/news/all/5043677-mysteel-lithium-ion-battery-industry-chain-production-monthly-report

日本の自動車産業にも影響するユーロ7の更新排ガス規制に関し、欧州議会の環境委員会の提案が委員会内で採決にかけられ、可決されています。内容は、欧州委員会の提案から大幅に緩和されました。
環境委員会の提案は11月8日か9日に議会の全体会議で投票が行われる予定です。
主な提案内容は、以下となります。
ユーロ7の適用時期が2030年7月1日まで延期される。
·乗用車にはユーロ6のテスト条件が適用され、内燃機関の基準はユーロ6からの変更は無い。
·大型車両には厳しい排出ガス規制が適用されるが、適用時期は2031年7月1日からとなる。
·タイヤとブレーキパッドからの排出物に対して、より厳しい取り扱いが求められる。
·電気自動車のバッテリーの耐久性基準が高められ、10年後も最大75%の容量を保持することが求められる。
·車載監視システムの追加が求められ、排気ガスの測定を行う。
この結果に、自動車メーカー団体のACEAは賛同しながらも、「まだ緩和が不十分」と述べています。
一方、グリーンモビリティNGOのT&Eは、環境委員会の立場を非難し、議員に対し、より野心的な基準を求めるよう促しています。
2年前であれば緩和は考えられませんでしたが、相次ぐ選挙結果や苦しむ産業からの声で大幅な妥協となっています。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231009IPR06746/euro-7-meps-back-new-rules-to-reduce-road-transport-emissions

同じく日本も踏襲してきたEUのELV指令に関する新しい提案は、欧州リサイクル産業協会(EURIC)の大きな注目となってきました。EURICは急遽、先月末にEU政策担当者とのイベントを開催し、その詳細な内容がRecycling Internationalに掲載されていますので送ります。
以下がアウトプットとなります。
·新しいELV指令の下では、リサイクル業者は自動車メーカーの協力が無ければ生き残れない。
·成功する為には循環性を中心に据えた方法を創り出す必要がある。
·今後、循環性の必要な要件、違法輸出への対応、新車へのリサイクル材料の組み込みなどについての立法提案がある。
·リサイクル含有量目標は、非常に重要なポイントである。
·リサイクル材の需要が高まる事から、車輛のプラスチックリサイクルが必要となる。
·車両メーカーにはより広範囲な生産者責任が課されるため、リサイクル産業との効果的な協力が必要である。
·循環型の設計を盛り込んだ車輛の増加が増える事になる。
·持続可能性は、今後、安全性と同じくらい重要となる。
·リサイクル業者は「化学物質に関する法律のリスク」(REACH規制等)に直面する。
·再製造市場(リユース品利用の修理車輛)は、2023~2030年の間に倍増すると見られる。
車輛の循環性が大幅に高められ、拡大生産者責任が広範囲に渡る為、リサイクラーが車両メーカーにどのような価値が提供できるかが、大きなポイントになっています。
https://recyclinginternational.com/business/eu-recyclers-prepare-for-elv-revolution/55152/

欧州委員会は、正式にマイクロプラスチック・ペレット(5.0㎜以下)に関する規制案を提示しました。この規制は年間5トン以上のプラスチック・ペレットを扱う施設と運送業者が対象となり、ペレット関連の全ての作業が規制の影響を受けます。規制要件は全ての事業者に対して適用され、年間1,000トン以上の場合は更なる規制が追加されます。中小企業に対する影響を考慮し、年間1,000トン未満の場合は要件を緩和するような制度設計となっています。先日提案された「意図的に添加されたマイクロプラスチックに対する制限の提案」(この提案にはゴムチップが含まれる)に続くものとなります。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_4984

大手LIBリサイクル企業Redwood Materialsは、使用済みEV電池を買い取る「オンラインポータルサイト」を開設しています。年式、車種・モデル、車体識別番号(VIN)、OEMによる電池の製造番号を入力する事で、買取価格が提示される仕組みとなっています。これらの情報によりRedwood Materialsは電池の種類や使われている金属が特定できます。このサイトは、主に解体事業者向けで、電池の輸送はRedwood Materialsが行います。使用済みのEVバッテリーには、高度な管理・追跡システムが組み込まれている為、全国のリサイクル業者や解体業者が使用済み電池を取扱う際にバッテリーの識別診断が可能となる為、このようなサイトは有効となります。
https://portal.redwoodmaterials.com/sell-my-battery/

欧州議会は16日の19:00~の予定で、「強制労働で作られた製品をEU市場から禁止する法案」について採決を行う予定です。採決の結果は17日の午前中に発表される予定です。この法案では企業による是正措置を含め、強制労働製品の規制を強化することを求めています。草案では強制労働製品の禁止に加えて、被害者の救済措置も提案されています。また「高リスク地域」で生産される製品に対しては、強制労働の推定も規制に盛り込むことが提案されています。この法案は中小企業に過度の管理負担が掛かる事が懸念されています。一方、市民団体や一部の業界はこの法案を支持しており、より野心的な禁止策を求めています。EU議会の投票後には理事会との交渉が行われる予定です。しかし加盟国は未だこの法案について全面的に同意していません。EU議会は加盟国に対して、より早い行動を呼びかけているものの、年末までに合意が成立する可能性は低いとされています。この法案はコンゴや新疆ウイグル自治区の労働問題などを起源としており、今後様々な輸入品に対する検証義務が生ずる事になりそうです。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231013IPR07137/ep-today

FTが「メガ・ブリュッセル効果」と呼ぶ、欧米の経済スーパーブロック化が急速に進行しつつあります。世界のGDPの約40%を占める米国とEUは不安定な世界情勢の中でより強い団結をする準備を進めており、気候、中国との通商、人権、重要なテクノロジーに関して、将来世界中の企業や産業に広範な影響を与える可能性があると評価しています。既に中国の鉄鋼とアルミニウムに対し、EUと米国は協調して関税を調整する見込みで、今後より広範な共通アプローチに向けて取り組むと見られています。米政権と欧州委員会は脱炭素化に取り組んでいない国に関税を課す「気候クラブ」を創設し、世界の企業に影響を与えることを検討しています。更にクリーンエネルギーと半導体補助金の統合やIT標準化の協力を進め、経済的及び規制に関する共同歩調を促進する「スーパーブロック」のアプローチも検討され始めています。又、端技術に関しても米国と欧州の連携を重要視し、中国との関係性についても協議が行われています。FTは米国とEUが強い連携をする事でデカップリングが一層進むと見込まれており、その効果を過小評価しない方が良いとの論調となっています。
https://www.ft.com/content/9173e128-b702-43cc-8c63-552a1dad4ac3

欧州で大型車両の運航費用の増加と、インフレに繋がる炭素削減の一般目標が大きく前進しました。欧州理事会はトラックやバス等の大型車両の二酸化炭素排出量削減目標について以下の方針を支持しました。
1.2030年迄に45%削減、2035年迄に65%削減、2040年迄に90%削減
2.ゼロエミッションバスの義務化:2030年迄に85%を削減、2035年迄に二酸化炭素排出を100%削減
3.水素トラックや電気トラックの燃料補給や充電の問題を分析する
4.バイオ燃料とカーボンニュートラル合成燃料の割合を考慮した大型車の炭素補正係数(CCF)の評価方法を作成する
2030年迄に45%削減となると、現実問題として大幅なバイオ燃料(バイオディーゼル)の利用拡大しか具体的な策がなく、炭素補正係数(CCF)が議論の最大の争点でした。何れにしてもコスト増は避けられない状況です。スクラップの運賃には影響が出ると思われます。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/10/16/council-agrees-on-new-rules-to-strengthen-co2-emission-standards-for-heavy-duty-vehicles/

欧州議会は予定通り「強制労働で作られた製品の禁止」を圧倒的多数で採決しました。議会では大きな修正が入り、今後、欧州委員会は「強制労働を利用するリスクが高い地域と産業部門のリスト」を作成する事になります。企業はリストに入った「高リスク地域」で生産された製品について、立証責任を課される事になります。鉱工業やファストファッションは大きな影響を受ける可能性があります。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231016IPR07307/towards-an-eu-ban-on-products-made-with-forced-labour

米国のカリフォルニア州は、修理する権利法(SB 244)を制定しました。この法律は小売業者への卸売価格が50ドル以上99.99ドル以下の電子製品、又は家電製品のメーカーに3年以上製品の修理に関連するサービス資料とパーツを提供する義務を課しています。更に100ドル以上の製品の場合は、製品のモデルやタイプに関係なく、最低7年間サービス資料とパーツを提供する必要があります。法律では修理権法に違反したメーカーに対して民事罰が科される事も明記されています。この法案はAppleやHP等の企業に支持され、修理を促進し電子廃棄物の削減に貢献するものです。ただし機器メーカー業界団体はこの法案に反対しており、法律が消費者のデータやビジネスに悪影響を与える可能性があると主張しています。修理の権利運動は全国的に拡大しており、カリフォルニア州の法案が促進力となる事が期待されています。
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billNavClient.xhtml?bill_id=202320240SB244

スウェーデンの新興トラックEVメーカーのボルタ・トラック・リミテッド社が倒産申請を行いました。2019年に創立し、ゼロエミッションの16トン車を開発製造し、欧州5か所でのパイロット試験を行っていましたが、資金繰りが悪化し倒産申請となりました。直接の原因は主な電池サプライアであるProterra社が連邦破産法第11条を申請した為に電池の入手が困難になった為と説明しています。同社は先行してEVトラックの開発製造を行ってきましたが、予定通り生産拡大に進む事は出来ませんでした。関連するグループ企業も同様の措置を取る予定です。今月に入ってもリース事業拡大の為に金融組織との提携を発表し、順調な事業をアピールしていましたが、資金の獲得に失敗したようです。今年後半に中国でも新興EVメーカーが相次で倒産する等、ブームに乗って投資が加速した3年前から大きく状況は変化しています。殆ど実態は伝わっていませんが、資金繰りに問題を抱える新興EV関連企業は多いと推測されています。
https://voltatrucks.com/

中国政府は地方政府の債務リスクを軽減する為に国有銀行に対し、低金利の融資で既存債務をロールオーバーするよう要請しています。地方政府の債務は2022年には92兆元(12兆5,800億ドル)に達しています。中国の中央銀行は、市中銀行に対して膨大な負債を抱える地方自治体融資機関(LGFV)への融資を調整し、期間延長や金利引き下げを命じました。中国政府は、地方政府の債務問題を解決する為の一連の措置を検討していますが、詳細な計画はまだ発表されていません。専門家は借金を抱えた地方自治体が財政の安定にとって大きなリスクとなっていると認識しています。2021年半ばに中国の不動産ディベロッパーの債務危機が発生して以来、中国の住宅販売の40%を占める企業がデフォルト(債務不履行)しており、その殆どが民間開発業者となっています。最近は鉄鋼だけでなくコンクリートやアスファルト企業の業績にまで影響が出始めているようです。キャピタルフライトの強力な規制や元安への対策等、システミックリスクがどの程度まで進んでいるのか、実態は分かりにくい状況です。
https://www.reuters.com/world/china/china-instructs-banks-roll-over-local-government-debt-sources-2023-10-17/

欧州で今年最大の選挙と言われたポーランドの議会選挙の最終集計が終わり、与党「PiS」が得票率35.4%、最大野党の「市民連合」が30.7%、第三政党の「第三の道」が14.4%、左派「レウィカ」が8.6%、極右連合が7.2%となりました。市民連合、第三の道、レウィカの3党は連立を組む可能性が高く、その場合、議会の過半数を満たす事から8年間続いた右派政党の支配から、親EU路線の野党連立政権へ移行するものと見られています。ハンガリーと並び欧州政府の政策にことごとく抵抗してきた現ポーランド政権の交代に対し、欧州当局は歓迎している様子です。
https://www.theguardian.com/world/live/2023/oct/17/poland-election-donald-tusk-reaction-europe-latest-updates

LIB内のグラファイトのリサイクルについて、現在意見が分かれています。米国の大手LIBリサイクル企業であるAscend Elementsはパートナー企業と提携する事でLIB内のグラファイトのリサイクルに乗り出します。パートナーはフッ素製品と技術の世界最大のメーカーの1つであるOrbiaのフッ素ソリューション事業会社のKoura社で、同社は特許技術である「Hydro-to-Anode®グラファイトリサイクル」を開発しています。この技術を使い、共同で商業化をめざしたグラファイトリサイクル施設を米国に建設する計画です。北米でバッテリーグレードの負極材料の供給源が増えることが期待されています。Ascend ElementsとOrbiaは、現在IRAの条件を満たすバッテリーグレードのグラファイトを供給する為の協議を進めています。新施設の建設場所やスケジュールはまだ明らかにされていません。
https://ascendelements.com/orbias-koura-and-ascend-elements-to-explore-joint-commercialization-of-advanced-graphite-recycling-technology-in-the-united-states/

大手多国籍材料技術企業でLIBの湿式&乾式製錬リサイクルも行うUmicore(ユミコア)は、中国のLIB生産メーカーAESCと北米でのEV電池材料の長期供給契約と技術提携を強化する事を発表しました。契約期間は10年で、契約によりAESCのEV電池の生産や需要確保が可能になります。ユミコアはカナダにEV電池材料の工場を建設することも決定しました。このパートナーシップは、AESCを支援すると同時にユミコアが北米のEV電池材料市場へのアクセスを強化する事を目的としています。更にUmicoreとAESCはカソード活物質の開発を主導するパートナーシップを強化する予定です。UKやフランスでのAESCとの活動にも影響がありそうです。
https://www.umicore.com/en/newsroom/umicore-and-aesc-enter-into-long-term-supply-agreement-for-ev-battery-materials-in-north-america/

先週、BIRの非鉄部門が機関誌であるMirrorを発行しました。
非鉄金属市場は、足元は弱気ですが、持ち直しの兆しを見せています。特に中国やインドの需要の増加が非鉄金属市場にプラスの影響を与えています。一方で供給側では素材の不足が依然として懸念されており、リサイクル非鉄金属の需要も徐々に増加しています。リサイクルの重要性が再認識され、リサイクル業者への需要が高まっています。また環境に配慮したサプライチェーンの構築が求められており、持続可能な資源利用への取組が生産者を含め進んでいます。非鉄金属市場の足元は弱含みですが、全体的には回復傾向にあり、今後も成長が期待できます。特にインドは設備投資ブームが始まっており、過去数四半期にわたる政府の支出加速によってその基礎が築かれています。最近は民間の設備投資サイクルも改善しつつあります。インドの予算はインフラ投資に1,220億米ドル(1,160億ユーロ)を割り当てており、これは昨年比33%増、2019年の3倍に相当する金額となっています。
https://www.bir.org/news-press/news/item/bir-world-mirror-on-non-ferrous-metals—issue-october-2023-industrial-slowdown-clearly-visible-in-lower-yard-intakes-of-scrap

欧米でプラスチック包装に対する規制が大幅に強化されつつあり、現在、代替品として紙(セルロース繊維)を利用した包装材が急速に注目され始めています。問題は水の利用や効率的な量産システムの不足で、開発する企業も非常に少ないのが現状です。プラスチックの代替として紙(繊維)のプレス成型を「乾式」で行うPulPac社は、最近、世界初の紙ベース(繊維)材料を射出成型するシステムを発表しました。この情報は欧州の包装業界では大きな注目を集めています。機械は台湾のHuarong Groupと協力し、初期投資を抑えるコンパクトなシステムとなっています。技術的な特徴は、乾式の工程にあり(紙の繊維である)セルロース繊維に熱と圧力を加えて硬度のあるプレス成型品を形成します。乾式により工程のサイクルタイムが極めて速い為、生産性と経済性に優れたものとなっています。今年、米国で使い捨て衛生製品を製造する老舗のCurt G. Joa, Inc.は北米市場での持続可能な包装品の需要が増している事からPulPacと提携し乾式繊維成型の生産設備を導入しています。またPulPacは米国加州のベンチャー企業SustainaPac LLCにライセンスを供与し、北米での乾式繊維成形技術を普及する目論見です。現在提案されているEU包装及び包装廃棄物指令の改訂案は「あまりにも厳しい」内容となっており、業界がかなり批判的です。そうした中で代替材への需要、生物分解材料への投資が徐々に加速し始めています。
https://www.pulpac.com/

「有機酸」を使ったBMの湿式製錬方法が注目されています。スウェーデンのチャルマーズ工科大学はシュウ酸(oxalic acid)を利用した新たなブラックマス(BM)の湿式製錬方法を開発し、大きな話題となっています。シュウ酸は植物界に広く存在する有機酸の為、環境に優しく、現在利用されている無機酸(Mineral acid)よりも安価で有害性が遥かに低い特徴があります。今までではBM内のアルミニウムを全て除去しながらシュウ酸を使用して大量のリチウムを分離する正確な条件を発見した研究者は居ませんでした。この方法では、アルミニウムを100%、リチウムを98%回収する事ができます。現在主流の湿式製錬の順序とは異なり、最初にリチウムとアルミニウムを回収します。具体的なプロセスはBMをチャンバーに入れ、最初にシュウ酸の溶液で溶解します。アルミとリチウムが溶解され、その後、リチウムを分離回収します。この工程ではニッケル、コバルト、マンガンの損失は最小限に抑えられる為、バッテリーリサイクルの新しい有望な方法であると主張しています。このニュースは欧州のリサイクルや化学系サイトで一斉に報じられています。
https://www.chalmers.se/en/current/news/k-new-recipe-for-efficient-environmentally-friendly-battery-recycling/

世界最大の電池メーカーである中国CATLのQ3の財務結果が発表され、需要の鈍化と競争により成長スピードがやや落ちている結果となりました。Q3の利益は10.7%増加しましたが、昨年以来最も低調な四半期となりました。また9月の中国市場でのシェアも低下しました。CATLのQ3純利益は104億元(約14億2000万ドル)で2022年第1四半期以来の最も低い成長率となりました。アナリストは中国のTire 2電池メーカーとの競争やリチウムイオン電池の需要が予想を下回った事が減速の要因と分析しています。中国自動車電池革新同盟(CABIA)のデータによると、CATLの中国市場シェアは9月に39%に低下し、昨年6月以来の最低水準となりました。2位のBYDと3位のCALBは市場シェアを伸ばしています。CATLの利益成長の鈍化は、中国のEV市場の低迷と価格競争の激化により、コスト削減の圧力が電池会社やその他のサプライヤーに掛かってることが要因とされています。中国のEVバッテリー製造量は今年の1~9月で32%増加しましたが、下半期は上半期の成長率に比べて鈍化しています。テスラもQ3の決算では、販売台数増により増収でしたが、値下げによる利益圧迫等から44%の大幅な減益となりました。中国では、生産能力の増強と過当競争、そして淘汰のサイクルが早いのが特徴と言えます。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-10-19/world-s-biggest-battery-maker-catl-earnings-miss-as-ev-sales-dip#xj4y7vzkg

話題に上がる事が少ないですが、将来、特に多国籍企業の財務報告で重要なテーマとなるTNFDについて概要を簡単にまとめます。
2023年9月、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は自然関連のリスク管理と開示に関する最終枠組みを発表しました。
TNFDは以下の枠組みとなっています:
1.自然関連のリスク管理と開示に関する枠組みであり、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と連携しています。
2.ガバナンス、戦略、リスクと影響の管理、指標と目標、の「4つの柱」と、「リスクと影響の管理に関する考慮事項」が追加で報告内容に加わります。
3.企業が自然関連の依存関係、影響、リスク、機会について報告し、行動する為のガイダンスを提供します。
4.企業が明確かつ比較可能な開示を行うことで、消費者、投資家、利害関係者が必要な情報を得ることを目指しています。
現時点ではTNFDは任意です。しかし将来は世界的に規制が導入され、自然関連の開示が標準化される事が予想されています。保険会社にとっては企業のガバナンス構造や投資戦略、ポリシー、ステークホルダーとの関わりを見直すことが推奨されています。また企業自身はこの枠組みを適用する際に正確かつ透明な開示を行い、「グリーンウォッシング」のリスクを避ける必要があります。このような取組は企業、D&O保険(会社役員賠償責任保険)会社、そして保険契約者との関係性を改善する上で重要と見做されています。
https://tnfd.global/tnfd-publications/

EUの包装廃棄物発生量が記録的な増加になった事がデータにより明らかになりました。2021年にEUでは1人当たり188.7kgの包装廃棄物が発生し、2020年よりも10.8kg増加しました。これは過去10年で最も大きな増加であり、2011年からほぼ32kg増加しました。EU全体では8,400万トンの包装廃棄物が発生し、その内訳は紙・ボール紙が40.3%、プラスチックが19.0%、ガラスが18.5%、木材が17.1%、金属が4.9%でした。2021年にはEUでは1人当り平均で35.9kgのプラスチック包装廃棄物が発生しました。その内、14.2kgがリサイクルされました。2020年と比較してプラスチック包装廃棄物の発生量は1人あたり1.4kg増加し、リサイクル量は1人当り1.2kgの増加に留まりました。リサイクル率は2019年の41.1%から2020年には37.6%に低下しましたが、2021年には39.7%にやや戻しています。
https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-eurostat-news/w/ddn-20231019-1

エネルギーのグリーントランジッションの為の洋上風力発電とグリーン水素は、多くの科学者が警笛を鳴らしてきた分野です。洋上風力発電は積み上がるコストでリターンが得られないどころか、欧米の関連企業は相次いで減益、リストラ、更に縮小に苦しんでいます。元々、洋上風力発電に適した場所は既にそれ程多く無く、科学を無視して政治的に「2倍にする」という目標だけが独り歩きし、補助金頼みの開発プロジェクトが「頓挫」しているのが実態です。2年前には内部告発が相次いでありましたが、それらは何故か大した報道もされませんでした。グリーン水素のエネルギー利用については、欧州の科学者の一部がルイヴィトンを燃やすと同じ位高価だ、と警告してきました。欧州委員会は、窮地に陥ったEUの洋上風力発電産業を支援する為に9月24日に「風力発電パッケージ」を発表する予定です。2022年に大手風力タービンメーカーの全ては大幅な営業損失を計上しました。洋上風力発電のプロジェクトは、通常オークション形式で発注先が決まります。最近はオークション自体が不成立になる等、大きな壁に直面しています。その為「オークションは価格以外の評価基準」を導入する予定で、サイバー攻撃からの耐性等を条件に入れる予定です。またEUの風力関連製品への補助金の可能性、海外の風力発電メーカーに利益をもたらす不公平な貿易慣行の監視等も入る予定です。これらが採用された場合、欧州委員会は洋上風力発電に通商防衛手段(保護貿易政策)を発動する可能性が高くなっています。最近こうした失敗事例が相次ぎ、それを更に補助金と政策でカバーする傾向にあります。失敗の教訓として多くを学ぶ事が出来ると思います(最近、実現が不可能と言われ始めているのは2030年以降のプラスチック包装規制の厳しい条件です)。
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/leak-brussels-finalises-wind-power-package-to-help-beleaguered-eu-industry/



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