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NEWSCONの気になるNEWS(2023年10月第4週)

中国政府は12月1日から黒鉛の輸出に関して、輸出業者に許可申請を義務付ける事を発表しています。これは8月にガリウムとゲルマニウムの輸出規制に続くものです。ガリウムは一部の半導体製造に使用されますが、実際に8-9月には輸出が停止していました。酸化ゲルマニウムも規制後わずか1Kgしか輸出されていないと伝わっています。黒鉛がこの措置に加わった事により、中国の電池メーカーの株価が上昇しました。ガリウムとゲルマニウムの輸出規制が発表された直後、中国政府の元商務次官である魏建国氏は「これは中国の対抗措置の始まりに過ぎず、更に多くの措置が用意されている」と述べ、将来的に別の鉱物資源や貿易政策にもこの措置が適用される可能性を示唆していました。黒鉛の輸出規制の発表は、米国による高度半導体規制の直後に行われた対抗措置と見られています。早くも欧米の電池製造計画に影響が出るとの懸念が上がっています。
https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3238603/china-ups-export-curbs-key-ev-battery-component-safeguarding-graphite-amid-us-tensions?registerSource=loginwall

EコマースのeBayは、英国で新たに家具産業向けのサーキュラーエコノミー(CE)の評議会を立ち上げています。eBay UKは英国での家具産業のCE評議会を設立しました。イケア始め、他の大手ブランドも参加します。家具を再利用する取組で可能な節約額は最大4200億円、二酸化炭素排出を最大62,255トン削減できます。eBay UK中古家具の販売に取組みます。将来は家具産業全体のCEの意識を広める取組を予定しています。
https://www.circularonline.co.uk/news/ebay-and-wrap-launch-circular-change-council/

国際的にも先行法規として他国が模倣する可能性の高い、欧州の繊維廃棄物の拡大生産者責任(EPR)の追加について、欧州リサイクル産業連盟(EURIC)は懸念を表明するポジションペーパーを発行しています。現在改定案が提示されている「欧州廃棄物枠組指令」には、繊維製品のEPRが明記されており、廃棄物の収集と処理は生産者もしくは販売者が責任を持ちます。これに対してEURICは個別に収集された使用済み繊維製品や履物の所有権を、収集・分別会社(リサイクラー)に残すように強く求めています。ELVや電池に続き繊維製品にもEPRが拡大された事で廃棄物は、収集・分別まで生産者が所有権を保つ(責任を持つ)ことになり、リサイクラーの自由度は狭まります。EURICは一貫して廃棄物の所有権の移転を主張しており、今回も同じ主張となります。
https://euric-aisbl.eu/resource-hub/position-papers/euric-comments-on-the-targeted-revision-of-the-waste-framework-directive-wfd

S&P Global Ratingは中国の地方銀行債務に関する報告書を発行しています。中国の地方銀行は地方政府融資ビークル(LGFV)に対するエクスポージャー(リスクにさらされる度合い)が高い為、今後不動産関連の債務危機が深刻化すると2兆元(約41兆円)の打撃を受ける可能性があります。地方銀行の約20%が規制上の最低自己資本比率を下回る可能性があり、下位の地方銀行は新たな資本注入が必要となります。重慶銀行、成都銀行、杭州銀行等、LGFVへのエクスポージャーが大きい銀行が最も苦しむ可能性があり、中央政府が介入する可能性が高くなっています。不動産業自体の債務危機も深刻であり、政府の景気刺激策にも関わらず、不動産市場は回復の兆しが見えていません。この内容に呼応するかのように欧州版Reutersは「中国指導者は日本化(日本のバブル崩壊)へ加速」という特別記事をあげています。世界的にインフレの中、中国だけがデフレという現象がそれを象徴しているようです。
https://www.spglobal.com/ratings/en/research/articles/231018-lgfv-strains-may-inflict-a-rmb2-trillion-hit-on-china-regional-banks-12883203
https://www.reuters.com/breakingviews/chinas-leaders-speed-towards-japanisation-2023-10-20/

欧州のリサイクル業界団体であるEURICを含む複数の廃棄物管理業界団体は、現在激しい議論が行われている「EU包装及び包装廃棄物指令(PPWR)」の改訂の争点の1つとなっている「優先交渉権/優先拒否権 Right of First Refusal」を巡り、共同声明を出しています。この問題は再生プラスチックの義務と促進に関して、将来他の地域でも必ず大きな議論となるテーマです。「Right of First Refusal」とは法律用語で、最初に個人または企業と交渉を行うことができる契約上の権利の事です。PPWDでの定義は今後、包装業界(メーカー)の企業に対し、リサイクルと再生プラスチックの活用を推進する為に再生PETを含む再生プラスチックへの「優先アクセス権」を与えることです。採用が決まれば、包装企業がリサイクル材に最初に交渉する権利を得る為、リサイクラーが自由に販売先を決めることに一定の制限がかかります。2022年9月に欧州の清涼飲料業界を代表する協会Unesdaは、PPWR改訂時に、この「優先拒否権」を導入することを提案しました。現在、廃棄物管理とリサイクル業界は猛反対、飲料業界などの包装を利用する側は賛成で、ロビー活動が続いています(メーカー側がやや有利の模様)。リサイクル業界団体は、「優先拒否権」の導入は、リサイクル能力の発展に悪影響を及ぼし、リサイクルポリマーの独占的管理を促進し、自由市場の原則に反する可能性があると警告しています。現在、欧州のrPET市場は余剰状態であり、リサイクルプラントの稼働率が低い状況です。優先拒否権を設けると特定の参加者(メーカーと特別契約した会社等)がリサイクル材料の供給源となり、価格設定の権限が与えられ、リサイクル業者に収益性を確保する手段がなくなり投資が停止する可能性があります。
https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/how-the-myth-of-pet-bottles-downcycling-could-ruin-european-efforts-toward-packaging-circularity

英国政府は「よりシンプルなリサイクル(Simpler Recycling)」計画を決定しました。全ての地方自治体は2026年3月31日迄に金属、プラスチック、紙/カートン紙、食品廃棄物、及び庭の剪定・伐採廃棄物(Green Waste)を収集する必要があります。Green Wasteには有料化が導入される予定です。自治体の廃棄物処理施設運営会社や環境団体は、この計画を支持しています。一方でVeolia(ヴェオリア)等の廃棄物管理企業は政府によるリサイクル市場への投資に警告しています。また食品廃棄物の分別収集が循環経済の確立に重要な基盤であると強調する声もあります。この計画に含まれる自治体が収集するアイテムのリストも公表されました。金属、プラスチック、紙/カートン紙、及びガラスの包装が含まれています。英国政府の「よりシンプルなリサイクル計画」は2年前に最初に発案があり議論が延々を続けられて漸く正式な案が提示されました。政府による循環経済の推進の一環として行われる措置となります。
https://www.gov.uk/government/consultations/consistency-in-household-and-business-recycling-in-england/outcome/government-response

フォードやVWに続き、メルセデス・ベンツもEV市場で苦戦しているようです。報道によると、メルセデスのディーラーは、EVモデルの販売に問題を抱えており、販売に時間が掛かっていると言われています。ディーラーや業界関係者によると、EVの供給が豊富となった為、一部の高価なモデルには需要がないとされています。メルセデスは高価なEVモデルの生産を減速し、より手頃な価格のモデルの生産を優先する計画を立てていると報じられています。しかし車体や部品の供給不足や関心の低下等、様々な要素がメルセデスのEV販売を妨げているとされています。EV市場ではメルセデスの競合他社や中国の新興企業が先行しており、メルセデスが追いつく為には可也の努力が必要とされています。一部の報道では消費者の関心が下火になっていると指摘されています。メルセデスにとってこの状況は課題であり、今後数ヵ月間で厳しい決断が迫られる可能性があります。EV市場の競争激化や需要の変化に対応する為に、メルセデスは戦略を見直す必要があるかもしれません。こうした欧米自動車メーカーのEV苦戦の実情は殆ど発表や報道がなされず、少し偏向的な情報が多いと感じます。
https://www.thetruthaboutcars.com/cars/news-blog/report-mercedes-having-tough-time-selling-evs-44503384

欧州が更に保護的な動きを強めています。欧州理事会は「第三国の経済的強制からEUを守る為の規制」を採択しました。これは元々中国と米国の補助金政策に対抗する為に作られたものです。第三国の「経済的強制」とは、その国が自身の産業を保護し、他国を従属させる事で国際的な優位地位を築くために補助金等を利用することを指します。この中には、グリーン政策の為の補助金や一部の関税も含まれます。中国は特に市場操作や国家援助を通じて経済を操作し、欧州連合(EU)の発言力を削ぎ、世界での影響力を拡大しています。一方、米国も金融システムや国際機関を政治化し、世界的な公共財を利用して自国の経済利益を追求しています。この様な米中の競争の中で、欧州諸国は圧迫される可能性があります。欧州市場や企業は、域外からの制裁や機密データの強制転送、域外への輸出規制等の攻撃を受ける恐れがあります。中国からはパンデミックの間に医療資材の供給を制限する脅しがあり、米国も二次的な制裁で欧州企業を狙っています。これらにより欧州は政治的な譲歩を迫られる可能性があります。経済と政治は密接に関連している為、欧州諸国は地政学的な脅威に対応する為に有効な対策を講じる必要があります。具体的にはデジタルユーロの導入、EU強靱性局の設立、個別の制裁の発動等の提案がなされています。この規制によって欧州諸国は経済主権を強化する戦略を策定する必要性が強調されています。この措置の導入により更に保護政策とブロック化が進むと思われます。
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/10/23/trade-council-adopts-a-regulation-to-protect-the-eu-from-third-country-economic-coercion/

北米の大手LIBリサイクル企業が苦境に陥る可能性が出てきました。北米の大手新興LIBリサイクル企業Li-Cycleは、同社の主要ハブ工場であるニューヨーク州ロチェスターの施設建設を一時停止すると発表しました。主力ハブ工場として建設中であった同工場の中止は投資家の間で失望を呼び、株価は40%以上下落しました。理由は資金不足としており、この中断は現在、Li-Cycleが施設を完成させる為に米国のエネルギー省から受ける3億7,500万ドルの融資にも影響を与える可能性が指摘されています。Li-Cycleの経営陣は、策定した計画や戦略を上手く進めておらず、株価の下落も続いています。今回の建設中止はコスト予測を誤り資金が不足した為です。Li-Cycleのビジネスモデルはハブ&スポークというもので、今回中止したハブ工場が無ければビジネスは成り立ちません。以前よりLi-Cycleは宣伝が先行し業界の間では事業実態に懐疑的な見方も多く、ここにきて主力工場の建設中止は大きな企業価値の棄損になりかねません。一方のRedwood Materials は、リサイクルだけでなく正極材の製造に注力しており、株価はほぼ半年前のレベルを維持しています。
https://www.dhakatribune.com/financial-markets/328894/li-cycle-holdings-nasdaq-licy-down-50%25

欧州最大の経済大国ドイツの鉄スクラップ業界が困難な状況にあります。需要の低迷と同時に入手できる鉄スクラップ流通量が減少した事でドイツの鉄スクラップ販売業者は今年の終わりに向けて利益率が圧迫されています。景気低迷によりスクラップの供給が減少し、仕入れ価格競争が激化しています。しかしエネルギーコストを含む固定費は高水準のままであり、リサイクル会社が損益分岐点を達成するのは困難な状況となっています。現時点では利益を上げる事は非常に困難であり、被害の範囲を限定することに集中している会社が多いのが現状です。スクラップ市場は今年最後の2ヵ月間に回復することは予想されていません。今週に入り、好調だったインドの鉄鋼複合指数も下落しており、地政学と高金利の影響が、各国の鉄鋼産業を更に圧迫し始めているようです。
https://www.euwid-recycling.com/news/markets/no-recovery-in-sight-steel-scrap-prices-in-germany-soften-again-amid-weak-demand-231023/

英国で大規模なロボット&AIのリサイクル工場が稼働を開始しました。この工場(会社)は英国中西部の5つの自治体と3つの評議会が株主となったリサイクルの新会社で、10億円を超える投資で、最新のフルオートメーションAIリサイクル施設となっています。会社の名前はSherbourne Recycling Ltdで英国では初となる本格的なロボットとAI技術を使用して廃棄物の分別を行います。各自治体による総投資額は6,520万ポンド(約12億円)で工場はゼロからの立上げとなります。工場では最先端の処理技術を使用し、電力の供給は太陽光パネルで行います。処理能力は年間17万トンで、同工場の使用技術は米国のMachinexが提供し、AIテクノロジーはリサイクル工場向けのスマートAI技術を開発製造する英国の新興企業SortFlow社のものを利用しています。英国では昨日Simpler Recyclingという新たな規制が示され、自治体が廃棄物を埋め立てや焼却でなくリサイクルする事が求められる事になります。自治体がサーキュラーの1つの機能となる政策でその最初の取組みの1つと言えます。
https://www.sherbournerecycling.co.uk/homepage

インド政府は新たに、銅製品、ドラム缶、ブリキ製容器に対し「品質基準」を導入します。この措置によりインドに大量に流入している「規格外品」の輸入を抑制します。この措置は国内製造業の品質向上促進を目指す狙いがあります。政府は製造業者に対して品質基準の遵守を義務付けると共に品質試験や認定の為の機関を設立し、製品の品質管理を徹底する事を計画しています。この取組により国内の製造業が競争力を持ち、雇用や経済成長が促進されるだけでなく、消費者の安全に寄与する事になります。
https://www.latestly.com/agency-news/latest-news-govt-rolls-out-mandatory-quality-norms-for-copper-products-drums-tin-containers-5508131.html

今、世界でESG投資から資金が引き上げられ転換期にある事は殆ど報じられていません。8月迄に世界では20を超える大手のESGファンドの閉鎖が相次ぎ、最近ではブラックロックも2つのESGファンドを終了する決断をしています。ESG格付けで高い評価を得ている会社がカラ売りにあったり、投資指標の再点検が盛んに行われています。ESG投資の役割は今後も変わりませんが、リターンを求める投資家からの資金移動は続いています。このような中でニューヨーク大学スターン経営大学院の金融学の教授であるAswath Damodaran(アスワス・ダモダラン)は、ESG投資に対する辛辣な現状分析をFTに寄稿しています。1年前ならばFTでこのような記事を目にする機会は無く、世界の流れが変わりつつある事を端的に示しています。下記は要約です。

要約:ESGは「神聖さの中で生まれ、偽善で育ち、詭弁で売りつけられ、問題に直面しています。」環境、社会、ガバナンスの枠組みを活用した投資は修正主義の歴史を反映し「評価の対象を評価」する事から始まります。ESGは責任ある投資の原則を宣言した国連文書に基づいて構築されましたが、投資の営業担当者は「リターンを主張する」ようになりました。ESGスコアの高さがリスクを減らし、資本コストを下げると主張されてきましたが、その一方でESGの主な目的は単に「開示」であるとの見方もあります。このようにESGの定義や実施には様々な問題があり「ESGの改善によって、企業の価値が高められる、とは限りません。」ESGを投資プロセスに組み込む事でリターンが高まると主張されていますが、その一方では内部的なコストの増加や事業規模拡大に制限を掛ける事から、収益性に殆ど又は全く影響を与えず、価値を高めるのと同じくらい価値を下げる可能性がある事が示されています。ESG投資はリターンが高まるという主張は矛盾しており一貫性に欠けています。企業に掛かるESGのプレッシャーは実際には「選択的に適用」されており、環境面では化石燃料への依存が変わらない状況です。気候変動との戦いに既に「何兆ドル」も投資されてきたにも関わらず、私達は今も10~20年前と同じように化石燃料に依存しているのは驚くべき事でしょうか? ESGにおけるガバナンスの存在には問題があり、経営者は全てのステークホルダーに責任を負う訳ではありません。そして状況はウクライナ戦争から反転しました。ESGは善意が良識を圧倒し「義務の為に販売をする」という結果となりました。(その一方で欧州委員会は「欧州グリーンボンド基準」を作成する規制を採択しています。政治が動き民間が投資するという構図が変化している事は間違いありません。)
https://www.ft.com/content/d4082c75-3141-4a58-935b-60a44c22897a

国連の研究部門(UN University)が最新の報告書を発表し、非常に強い警告を発しています。気候変動の影響と資源の過剰使用により世界は生命維持システムに回復不可能な損害を引き起こす「転換点」に向かっています。転換点を超えるとシステムは機能しなくなり、新たなリスクが「連鎖的」に発生し、他のシステムにも転移する可能性があります。具体的なリスクとして、絶滅の加速、地下水の枯渇、氷河の融解、極端な暑さ、が挙げられています。また世界最大の帯水層は既に枯渇し、氷河の融解による水の減少も予想されています。また宇宙活動におけるスペースデブリの衝突により、地球外の衛星軌道が使用不能になるリスクがあると警告しています。自然システムの崩壊による連鎖から、保険料の支払いが困難になり、住宅の保険加入が出来ないという経済的な影響も懸念されています。本来、自然には許容範囲がある為、規制では「総量キャップ」を設ける事が最も有効な手立てなのですが、人口、ポリマー製造量、エネルギー・資源産出量、水使用量、食料生産量、等に総量キャップが掛かる事はありません。この問題は根が深く、残念ながら「強い警告」で終わる、という繰り返しです。
https://unu.edu/press-release/new-un-university-report-warns-about-risk-tipping-points-irreversible-impacts-people

衣料界の超大手がサーキュラーエコノミーに本格的に動きました。ZARAブランドの親会社であり世界最大の衣料品小売業者Inditex社は、米国の新興科学企業Ambercycleと提携し、リサイクルポリエステルを同社から購入する事を発表しています。契約は3年間で購入総額は7,000万ユーロ以上、Ambercycleの工場で繊維廃棄物から作られたcycoraというリサイクルポリマー繊維を新たに製品に使用します。Inditexは、2030年までに繊維の25%を持続可能な「次世代」素材から使用する事を目指しており、Ambercycleとの契約はその目標達成に向けた取り組みの一環となっています。またInditexは衣類廃棄物管理協会においてはH&M等の競合他社と連携しており、繊維廃棄物の分別回収に取り組んでいます。現在、欧州では一部のアパレルブランドがペットボトル由来のリサイクルポリエステルに切り替えを推進している為、使用済みペットボトルの需要が急激に増加し価格が上昇しています。その為、他業界からはペットにのみ由来した製品への批判の声が上がっています。
https://www.reuters.com/world/middle-east/israel-hamas-war-rages-finance-chiefs-meeting-saudi-pessimistic-2023-10-24/

世界第4位の自動車メーカーであるステランティスは、バッテリーのリサイクル企業として、フランスの大手核燃料サイクル会社Orano SAを選んでいます。Oranoの過半数はフランス政府が所有し、同社は世界で2番目にウラン生産量が多い企業です。またOranoはPaprec、MTB Manufacturing、Saft、CEAと協力して、EVバッテリーのリサイクル技術を開発するプロジェクトを進めてきました。ステランティスとOranoは使用済みのEVバッテリーだけでなく、欧州と北米の自動車工場から出るスクラップを扱う合弁企業を設立します。合弁会社ではOrano社が持つ低炭素技術を活用し、リチウムイオン電池からの材料の回収と新しい正極材料へのクローズドリサイクルを目指します。工場はブラックマスの生産だけでなく、Oranoが開発した前処理、及び湿式製錬技術を利用し、90%以上の金属を回収します。ステランティスは2030年迄にサーキュラーエコノミー事業からの収益を20億ユーロにする目標を掲げており、その一環となります。合弁事業は2026年前半に商業稼働をする予定です。LIBリサイクルの新興企業が次々に資金難で延期や中止が伝わる中、ステランティスは資本力のある大手でありフランスが推進するEVハブ構想に準じたパートナーと組むという方針を示しています。EV化は原子力を推進するフランス政府にとっての大きな産業政策でもあり、この点は国レベルでの動きと言えます。
https://www.orano.group/en/news/news-group/2023/october/stellantis-and-orano-enter-electric-vehicle-battery-recycling-agreement

物議を醸してきたEU包装及び包装廃棄物指令の改訂は、初期の立法手続きとなる欧州議会の環境委員会の投票に掛けられ、幾つかの妥協がありました。今後、この指令が世界的に影響を与える可能性がある修正内容は2つで「食品包装における“永久化学物質”の禁止」と「新品に含まれるリサイクル材含有量にバイオベースのバージンプラスチックの使用を可能とする」というものです。「永久化学物質」とは、過フッ化アルキル物質、ポリフッ化アルキル物質、PFAS、そしてビスフェノールAであり、それらを食品と接触する包装に使用することを禁止します。これらの物質は耐火性または防水性の包装、特に紙やボール紙の食品包装に広く使用されていますが、健康への悪影響が懸念され始めています。議会の修正に対し欧州廃棄物管理協会(FEAD)が最も懸念し警告を発したのは「リサイクル材の含有量について、バイオベースのバージンポリマーを利用できる可能性がある」という部分です。この修正は、リサイクル設備への投資に大きな影響を与えます。リサイクルプラスチックの品質をバージン材と同等にする為にはコスト増が避けられず、包装業界から猛烈な反発が起きていました。その流れでこの部分が大きな妥協となりました。
https://fead.be/position/the-envi-position-on-ppwr-is-on-the-right-track-to-create-a-strong-circular-economy-for-packaging/

真夏のダボス会議と呼ばれ、世界の大物政治家や投資機関のCEOが集まる「未来投資イニシアティブ(Future Investment Initiative)」が現在サウジで開催されています。中東紛争にも関わらず人気が衰えず、今年は約5,000人以上の参加者が90カ国以上から集まっています。これは中東の経済成長が順調な事が大きな要因です。しかし、ここでのパネルディスカッションや講演には異変がありました。特に投資家や商業銀行からの経済見通しについて悲観論が相次いでいます。世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターの創業者レイ・ダリオ、シティグループCEOのジェーン・フレーザー、JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモンは何れも現在と今後の欧米の金融政策は世界に大きな影響を与え、楽観的な見通しを立てる事が出来ないとの一致した見解を示しています。特にHSBCグループCEOのノエル・クインは、世界の中で各国の政府が抱える債務の危険性について非常に強い警告を出しています。同氏は「(高金利下で)財政赤字の“転換点”を懸念している」と述べ、「転換点はある日を境に急速に訪れるだろうし、世界には転換点があり、大きな打撃を受ける可能性がある経済や国が数多くあると思う」との見解を示しています。同じ様な懸念を国際通貨基金の事務局長リスタリナ・ゲオルギエワも発しており、「低金利時代は終わった」との注意喚起をし「高金利が長く続く」事を示唆しています。
https://uk.investing.com/news/economy/dalio-fink-fraser-beware-of-the-economic-alert-of-financial-ceos-3204128

国際リサイクル局(BIR)鉄部門の年次会合がアブダビで開催されました。今年、世界の鉄スクラップ市場が好況にならなかった主要因は、トルコと欧州市場にある事が鮮明に示される結果となっています。
・中国の2023年上半期の鉄スクラップ消費量は、前年同期比2.9%減の1億1,620万トン。
・EU圏のスクラップ消費量は、前年比で9.6%減少。
・トルコは今年上半期の鉄スクラップ消費量が16.4%減少。
・日本のスクラップ消費量は、4.3%減少。
・米国のスクラップ消費量は、3.1%減少。
・スクラップ消費量の減少は、EU、米国、トルコ、日本の鉄鋼生産量の減少と一致している。
・インドは上半期に世界第2位の鉄スクラップ輸入国となり、前年比105.5%増を記録。
またBIR鉄鋼部門は、今後「鉄スクラップ」という用語の利用を止め「リサイクル鋼」という用語を使用します。これは先に決めた「廃棄物リサイクル」を止め「資源リサイクル」という用語を利用するという事に続くものです。やはり世界最大の輸入国であるトルコが経済的苦境に陥っている事と中国鋼材の国際流通の増加で他国のスクラップ購入が減っている事が大きな要因のようです。
トルコは6月から数えて計6回目の利上げを行っています。年末までにインフレ率が70%に達するという予測が出ており、当面厳しい状況が続きそうです。
https://www.bir.org/news-press/news
https://www.recyclingtoday.com/news/bir-steel-scrap-recycling-world-first-half-2023-india-china/

欧州議会の市場・消費者保護委員会は、「EU修理権指令」(消費者が修理をする権利)の修正行い、採択しました。11月に議会本会議で審議され、採決される予定です。主なポイントは以下となります。
・自転車を対象に含める。
・製品に欠陥があった場合の修理の優先や、一定期間の修理義務を導入する。
・修理後1年間は保証期間が延長され、メーカーにも直接連絡できるようにする。
・修理業者の利益確保や修理業者のメーカーへのアクセスを拡大する。
・修理を利用するための金銭的インセンティブを導入する。

消費者が買い替え以外に選択肢が無い状態を無くし、「修理をする権利」を義務化する、という動きは、今後、世界的に普及していくものと考えられています。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231023IPR08128/packaging-new-eu-rules-to-reduce-reuse-and-recycle

インドで相次ぐWEEEへの投資が計画されています。フォーチュン500企業で売上が650億㌦にのぼるインドのAditya Birla Group は8月にインド国内初の銅と電子廃棄物のリサイクル部門を設立する為に2000億ルピーを投資すると発表しました。それに続きインド最大(世界第2位)の総合亜鉛メーカーであるHindustan Zinc LimitedがWEEEリサイクル事業に乗り出す意思があり、リサイクルの研究を進めている事が内部情報として地元紙に掲載されています。インドは地方政府を含めたWEEEリサイクルへの機運が高まっており、今後もこの流れは継続されるものと見られています。
https://hindi.business-standard.com/todays-epaper/hindustan-zinc-bets-on-industrial-e-waste-recycling

今年1月にEUは企業持続可能性報告指令(CSRD)を採択し、域内企業に対し、年次持続可能性報告書の提出を義務付けました。先週、現在の厳しい経済情勢から企業の負担増を減らす為、欧州委員会は、修正案を採択しました。修正された報告基準はEUの大企業やグループには2025年1月1日以降の会計年度、特定の中小企業には2026年1月1日以降の会計年度から適用されます。またEU以外の親会社については、2028年1月1日以降の会計年度から基準が適用されます。修正案は今後欧州議会や欧州理事会によって拒否されない限り、正式に発効されます。また欧州持続可能性報告基準(ESRS)には変更はなく、ESRSは2024会計年度からEU域内の大企業に適用される予定です。非EU企業向けのESRS草案は遅れており、2024年6月に採用予定でしたが、2年間の延期となる予定です。
https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=6bbfa698-fe9c-417c-8f0f-84bb5bb8e9ca




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