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世界の環境関連ニュース(2022年3月第1週)

科学ニュースを扱うScience Xが、プラスチックの1種類であるポリカーボネートのソルベント・リサイクルについて報道しています。ソルベント・リサイクルとは化学薬品や触媒効果によってリサイクルする方式でエネルギー効率が高く有害物質の処理が安定している事が利点です。開発された技術は、亜鉛ベースの触媒とメタノールを使用して室温(非加熱)で20分以内に完全に短鎖分解する技術としています。開発したのは英国のUniversity of Bath(バース大学)です。溶解(分解)後には、ビスフェノールA(BPA)と炭酸ジメチル(DMC)に変換されるため、有害物質であるBPAを別で処理する事ができます。ポリカーボネートは、建設業や各種のエンジニアリングアプリケーションでの使用が多い堅牢なプラスチックです。今後は実験室レベルの少量リサイクルではなく、規模拡大を目指す、としています。ケミカルリサイクルの多くは「熱」を使う短鎖分解によるものが多く、エネルギー効率のよいソルベント式が開発されている事に意義があります。
https://phys.org/news/2022-02-upcycling-plastic-valuable-materials-recycling.html

New York Timesが、現在欧州(米)で起きている(ステルス的に報道されない)化石燃料の使用増とその根拠について、ロシアのウクライナ侵攻(侵略)を絡めて説明しています。多くはエネルギー危機と暴騰によるものです。英国は1月にウェールズの石炭鉱山に、今後20年間で生産量を4,000万トン増加させる許可を出し、オーストラリアは原料炭鉱山の開設/拡張計画があり、中国は石炭生産を更に強化し、今週になって 3つの新採炭プロジェクト(10億ドル)を承認しています。米エクソンモービルも新油井や他のプロジェクトへの支出総額を発表しています。昨年11月にグラスゴーでのCOP26で宣言が出たばかりですが、実際には今年1月に欧州連合が輸入した石炭は前年比56%以上の増加、との事です。域内で生産を縮小しても結局輸入するので、むしろ炭素排出量が多くなる可能性が、あります。米国では現在中道~保守系のメディアを中心にロシアからの石油輸入(米国の全石油輸入量の7%はロシアから)に関して猛バッシングが起きており、自国で産出できるのに、なぜ再生可能エネルギーに税金を膨大に投資して、ロシアの(汚れた)化石燃料を買うのか、という論調が毎時間のように放送されています。ドイツでさえ、化石燃料締め出し論調が少しトーンダウンしています。米国の政治家にとって環境問題と脱炭素が票田に繋がりにくい(むしろ逆の)状況がかなり出てきており、少し風向きが変わる可能性があります。
https://www.nytimes.com/2022/02/23/business/economy/russia-ukraine-energy-security-climate-change.html
https://www.forbes.com/sites/rrapier/2022/02/21/russia-is-a-major-supplier-of-oil-to-the-us/?sh=3bd6f14318c3

メディアバイアスでは比較的中道とされるアルジャジーラが、ロシア、特にプーチン大統領に関して冷静な分析をしている2つのレポートを上げています。歴史の繰り返しが行間に読み取れます。
https://www.aljazeera.com/opinions/2022/2/24/is-putins-gamble-on-ukraine-rational
https://www.aljazeera.com/economy/2022/2/25/ukraine-russia-crisis-will-china-be-putins-economic-lifeline

Euractiveからですが、バイオ燃料に関する新たな研究結果が議論となっています。ドイツの環境NGO「Deutsche Umwelthilfe(DUH)」が行った研究で、ドイツ国内で利用されているバイオ燃料の為に栽培(と伐採)される植物を、自然の状態のままにした場合と比較すると、およそ年間920万トンのCO2が削減できる、としています。業界団体は即座に反論していますが、この手の議論はバイオ燃料団体にとって持続可能性を保証する重大な危機となる為、政治的にも避けられる傾向がありました。森林バイオマスも同じですが、今後この手の話題が環境NGOや研究機関からより多く出される可能性が高くなってきました。
https://www.euractiv.com/section/biofuels/news/german-study-slams-crop-based-biofuels-as-a-cure-worse-than-the-disease/

ロシアが報復措置で36ヵ国に対してロシア領内の飛行を禁止しています。航空貨物(とそのコスト)にも影響が出る事が予想されており、船便へのある程度の影響も避けられない模様です。
https://www.marketwatch.com/story/russia-closes-its-airspace-to-carriers-from-36-countries-including-canada-and-eu-states-01646062044

欧州では、リサイクルPETをめぐり様々な動きが加速しています。
世界最大のリサイクルPET材を製造しているタイの科学メーカーである「Indorama Ventures pcl (IVL)」がチェコの PETボトルリサイクル業者である「UCY Polymers CZ」を買収した事を発表しています。この買収によりIndorama社がリサイクルする廃棄PETボトルの追加総数は16億本で、チェコ共和国、ドイツ、中央ヨーロッパでから収集したものとなります。買収先のUCYは、年間40,000トンのrPETフレークを生産する能力があります。Indorama社は、2025年までに世界でのPETリサイクル能力を年間75万トンに引き上げるなど、リサイクル施設と持続可能な生産を拡大するため、世界で15億米ドルを投資する計画を遂行中です。下に記載の条約を見込んだ先行投資が情報通の多国籍企業では先行しています。
https://bit.ly/35e4grn

ケニアのナイロビで国連環境会議の第5回会合(UNEA-5.2)が行われています。この会合で話し合われる最重要議題の1つがプラスチック汚染に関する国際条約です。条約は、2024年までに制定させるように進めています。現在大きく分けて2案があり、主な違いは、1方はプラスチックの生産や流通にまで及ぶ全体を含めるもので、欧州連合を始めアフリカ、南米を含めた多くの国が賛成しています。もう1方は日本が提案したもので、条約の範囲を「海洋のプラスチック汚染」に集中(限定)しているものです。日本案でも「プラスチックのライフサイクル全体をカバーし、資源効率とサーキュラーエコノミーを促進する」事は掲げています。条約は国際的な拘束力を持つものとなる為、プラスチックを取り巻くビジネス環境が大きく変化するキッカケになりそうです。
https://to.pbs.org/3C6mcjF

欧州で一番大きなニュースはスイスが中立を覆して、ロシアに制裁を課すことです。ロシアの個人363人と4企業の資産を凍結します。第二次世界大戦中でさえ中立を崩さなく、クリミア問題でも中立の立場を保っていた為、中立を変えるのは、(国連の決議事項を除き)ほぼ初の出来事です。特に米国のメディアでは先週から頻繁にスイスの制裁参加の有効性が伝えられていました。スイス国立銀行のデータでは、ロシア人が2020年にスイス(の金融機関)で保有している資産は約113億3000万ドル(1兆2000億円)で、スイス側の発表では、ロシア人の資産の逃避先としては既に「マイナー」な存在、という事です(言われる程多くない。制裁参加は、そういう事情もあるらしい)。アルジャジーラは、今後は、中国の存在と立場が重要なポイントという主張の記事を載せています。
https://www.reuters.com/world/europe/neutral-swiss-adopt-sanctions-against-russia-2022-02-28/
https://www.aljazeera.com/economy/2022/2/28/as-russias-isolation-grows-china-hints-at-limits-of-friendship

ナスダックに上場する米国ネバダ州の「Aqua Metals社」が廃リチウムイオン電池のブラックマスから最初の水酸化リチウムを製造した事を発表しています。これは、同社のイノベーションセンターという開発部門での成果で、量産段階ではありません。リチウムの需要は既に急増しており、2021年に価格がおよそ3倍近くになりました。短期的には不足が続く事が予測されています。この不足分を採掘ベースで補うまでには時間が掛かり、更に環境にコストも膨らみます。採掘では、鉱山開発から操業を開始する為に5〜7年の期間を要します。欧州では法規制でリサイクル材料の含有量も指定されており、リサイクル技術の開発が重要課題になっています。
https://bit.ly/3C56UMf

IPCCの第6回評価報告書(AR6)による気候変動のレポートが発行され欧米メディアで取り上げられています。このレポートは、地球温暖化の影響とそれに適応するためにどのような努力を行うべきかに焦点が当てられています。国連事務総長のアントニオ・グテーレスがこの報告書にメッセージを出しており、石炭を中心とする化石燃料への依存を終わらせる事を強く強調しています。その中で「化石燃料への継続的な依存は、世界経済とエネルギー安全保障が地政学的なショックと危機に対して脆弱になる」と、エネルギー安全保障についても言及しています。
https://bit.ly/3tinGDq
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/

世界最大のコンテナ船社であるデンマークのマースク(Maersk)社がロシアへの運航便を中止する事を発表しています。この措置は一時的なもので、食料品、医療、及び人道的な物資の供給は継続する予定です。ロシア便の中止は、「社会的責任」としています。オランダ、ベルギー、ドイツ等の欧州の国では、最近課された制裁、及び輸出規制の為にロシア向けの輸出・積み替え貨物の検査に時間がかかり、ロシアに向かう船舶を控えており、コンテナ輸送でも大幅な遅延が予想されています。アジアに波及する事は限定的ですが、コンテナ遅延が欧州でも発生しています。
https://www.maersk.com/news/articles/2022/02/24/russia-ukraine-situation-update

ウクライナ問題でロシア自身がキエフの住民に避難するよう警告をした事が伝えられ、紛争が新たな段階になる可能性がある事がつたえられています。英米のメディアでは、諜報活動の情報筋の話としてロシアによるretaliation(報復)が活発になる可能性がある事が徐々に伝えられるようになっています。一旦落ち着いたエネルギーやコモディティもまた急上昇しており、紛争次第で影響を受けそうです(特に欧州は・・・・)。
https://www.reuters.com/world/europe/russian-isolation-intensifies-ukraine-fighting-rages-2022-03-01/
https://www.dailymail.co.uk/news/article-10565205/US-officials-fear-Putin-start-arresting-Americans-Russia-retaliation-sanctions.html

エネルギーとコモディティが一段高になっており、欧州でのインフレ懸念が続いています。欧州の天然ガス先物価格は今週だけで2倍近くになり史上最高値を更新、英国でも朝方の取引で40%近くまで急騰しました。ほとんど伝えられていませんが、EUの炭素排出権取引におけるEU ETS Futureの炭素価格は急落しています。 恐らく、エネルギー価格の上昇により炭素を発生させる工業関連の生産があまり伸びないと予測していると思います。2月の欧州のインフレが+5.8%と市場最高レベルに達していますので、3月は更に伸びる可能性があります。英国ではインフレ時の資産保全として住宅投資が選ばれる事が多いのですが、2022年2月に史上初めて平均価格が26万ポンドを超え、2020年の平均から既に20%上昇しています。米カリフォルニア州では1ガロン6ドルのポンプも出始めたようで、米国ではエネルギー自給論が高まっています。紛争後、欧州では急激な再生可能エネルギーへの加速が政策的に出てきています。インフレもあり非鉄価格は引続き下値が重い展開になる可能性があります。ただ、オフショア風力も水素も開発会社は補助金無しでは殆ど儲かっておらず、一部で議論が始まっています(こういうネガティブ上昇がファクトとして伝わらないのが今の状況です)。再生可能エネルギーや電化に必要な白金類や希土類、更に蓄電用電池のグラファイトはロシアと中国の2ヵ国で世界生産の50-80%を持っており、結局、短期的には、あまり「依存状況」は変わらないのですが・・・・・。
https://reut.rs/3vtizmF

欧州の超大手5社の食品関連多国籍企業が食品用の「プラスチック軟質包装」のサーキュラ―エコノミーを進める為のイニシアチブを企画した事が伝わっています。会社は、マーズ、ペプシコ、ネスレ、ユニリーバ、モンデリーズです。いずれも業界を代表する多国籍企業です。食品用の軟包装材のリサイクルはコストが掛かり、世界的にもあまり進んでいません(ゴミ発電向けのRDFが多い)。国連環境会議でブラスチック汚染の条約制定に向けた協議が採択されているタイミングでこの種のイニシアチブが発表されている事は、多国籍企業の情報収集能力と対応能力の高さを伺わせます。ルール作りは着々と進められています。
https://bit.ly/3pwEwNU

ナイロビで開催されている国連環境会議にて、「プラスチック汚染を終わらせることを目的とした決議」を採択しています。175カ国の代表によって採択されました。2022年の後半に交渉委員会が設置され、2024年末までに法的拘束力のある協定(条約)を起草する作業を完了する予定です。注目された協定の軸は、環境汚染のみに焦点(いわいる日本案)を当てるものではなく、プラスチックのライフサイクル全体をカバーし、持続可能な製品設計と資源保護を促進する事が含まれるようです。詳細についてはまだ伝わっていませんが、欧州が賛成していた案が採択されたようです。協定(条約)案が2024年末までに完成してその後に批准となれば、国内法より優先する為、プラスチックを取り巻く全ての事業モデルが影響を受ける事になります。
https://wapo.st/3tmsibB
https://bit.ly/3K6Ld0Y

欧米ではロシア資本やロシア人が出資している企業や資産への圧力が高まっています。イングランドのプレミアリーグに所属するチェルシーがクラブの売却を発表(オーナーがロシア富豪)したばかりですが、ロシア企業で米国コロラド州、オレゴン州、カナダにも工場を持つ電炉メーカーの「Evraz(エブラズ)」と、同じくロシア資本で英国領のジャージー島に登記されている貴金属鉱業会社で大手の「ポリメタル(Polymetal International plc)」の2社がロンドン証券取引所のFTSE100銘柄から外されています(共にロンドン市場に上場)。両社とも株価が60%近くダウンしており、相当なプレッシャーが掛かっているようです。殆ど語られる事はありませんが、ロシア富豪は英国(特にロンドン)の不動産への投資が活発(大好き)で、過去11年で、直接分かるだけでその数は12倍以上になっています。実際は英国や欧州地域にPaper会社を登記して、その会社が不動産投資をしている為、この数の数倍と言われています。現在、英国ではこの洗い出しを行い、資産流出を止める動きを始めています。思わぬところでのロシア関連(企業)の締め出しで、コモディティ価格が乱高下しそうです。
https://www.inquirer.com/business/russia-london-homes-ukraine-invasion-20220228.html
https://reut.rs/35L99YI

英国バーミンガム大学が開発した超臨界水を使ったプラスチックの熱分解リサイクルを、同大学がライセンスする事を発表しています。この超臨界水短鎖分解技術は『CircuPlast』と名付けられており、技術開発とエンジイアリングの専門コンサルタント&設計会社である「Stopford社」とパートナーシップを結ぶことで、同社にライセンス供与されています。ライセンスの目的は、商業利用に向けての技術開発を加速する事にあります。Stopford社は、技術コンサルタント、エンジニアリング設計、プロジェクト管理サービス会社で、イノベーション的な技術を商業利用にまで開発する実績の高い会社です。
https://bit.ly/35pJvck
https://bit.ly/3pvnOhF

EU筋の漏れ伝わった情報としてEuractiveが伝えているところによると、「EUガス価格通信」(EU’s communication on energy prices)の草案で、EUがロシアからの天然ガス依存を完全に無くす方向で進んでいる事が伝えられています。元々この「EUガス価格通信」は3月2日に公開される予定でした。目的は欧州の継続的な高エネルギー価格の影響を緩和し、将来的に価格高騰を防ぐ方法を検討するものでした。紛争が始まった為、内容に修正が加えられ、発行時期が延期されたという事です。ガス供給先の多様化と再生可能エネルギーの推進が主なものです。ドラフトでは2030年までにガスへの依存度を23%削減し、再生可能エネルギー推進の為に「新エネルギーコンパクト」という電力グリッドの再構築、更に1000万トンのグリーン水素を輸入する必要があり、350億立方メートルのバイオガスを生産する事を目標とする、としています。 ロシアは世界最大の天然ガス「輸出国」で輸出額ベースでは2位のカタールの1.5倍程度です。今後、中東カタールや米国産のLNGの需要が増え価格が高止まりする可能性があります(日本への影響あり。特に欧州は来年の冬に向け、今年の夏の間に備蓄を大幅に増やす為)。中国がロシアの天然ガスの一大需要先になれば、脱炭素(炭素排出量が石炭比44%)とエネルギー価格のメリットからグリーンメタルでの競争力が増す可能性があります。国際的な産業パワーバランスが少し変わりそうです。
https://bit.ly/3tnFblX

欧米では、投資家がクリーンエネルギーへの投資を判断する指標として参考にするものが、「S&P Global Clean Energy Index」と「WildersharesのClean Energy Index」と言われています。紛争前の昨年末より原油価格が上昇し、短期的な化石燃料供給確保の為にクリーンエネルギーへの投資のセンチメントが弱い中で、インデックスが下がり続けていましたが、紛争後からまた若干戻しています。ただし、全体の流れはやや下降気味です。しばらくエネルギー価格による生産コスト増と供給先からロシアが抜ける事でクリーンエネルギープロジェクト用の非鉄価格は下がり辛い環境です。
https://wildershares.com/

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