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世界の環境関連ニュース(2021年9月第1週)

ここ数日EU ETSの炭素オークション市場の価格が60ユーロを突破した事が複数のメディアで取り上げられています。価格の高騰でポーランドのような石炭に依存するエネルギー構成の国は大きな影響を受けるとしています。EUの2030年の気候目標(1990年比マイナス55%)を達成するには、ポーランドに1,360億ユーロの費用が掛かると見込まれています。ポーランドは2030年迄に予想される排出量(枠)が実際の排出量よりも6億トン以上少ないと推定され、構造的な排出枠不足に直面するようです。ポーランドでは現在の炭素価格では企業が不足を埋めるためにおよそ400億ユーロ相当の枠を購入する必要があり、エネルギー転換に回す為の資金が少なくなる、というクレームが起こっています。ポーランドと隣国のチェコには多数の日系企業が進出しています。
https://bit.ly/3DI0PFR

英国の「Geothermal Engineering Ltd (GEL)社」がCornwall地区で進めていた地熱発電所が2022年中に稼働予定です。この地熱発電から出る流体(水)中に高濃度のリチウムが含まれる事が判り、再生可能エネルギー源の新しいビジネスモデルを模索しています。具体的には2023年末迄に1,500トンのリチウムを生産する可能性がある、という事です。リチウムはEUでも最近「重要な原材料」のリストに含まれ、バッテリーの急増と共に供給不足と価格の高騰が懸念されています。リチウムはバッテリーからリサイクルして再利用するレベルに純度を高める事が相当難しい為、バージン材の供給が重要視されています。ドイツでも地熱発電からのリチウムの話があります。
https://bit.ly/3mXAHkn

ロイターがアルミ市場について報道しています。直近の価格と今後3年の構造的な供給不足による生産施設への投資です。2025年の世界のアルミ需要は10%増加し約7600万トン、現在の生産キャパでは世界で約200万トンの供給不足が予測されています。また脱炭素と需給ギャップを埋める為にスクラップ需要が増加する、としています。
https://yhoo.it/38EoVTu

独「ポルシェ」が欧州以外で初めての海外生産工場をマレーシアに作る事を発表しています。ノックダウン(コンポーネント部品を輸入し組立のみ)工場で小規模ですが、マレーシアに作った事に意味があります。ポルシェは、先行してマレーシアの脱炭素化に参画している蘭「シェル」と組んで充電ステーション網にも参画する予定です(シェルはガソリンスタンドから充電ステーションでプレゼンスを高める)。マレーシアでポルシェの販売が伸びている事と東南アジアの脱炭素 = 電動化に向けた足掛かりを(ポルシェという高級ブランドを利用してフォルクスワーゲンが)マレーシアに置いたという事が、戦略的に面白い取り組みだと思います。ポルシェは開発センターを中国にも設置しています。
https://bit.ly/3mWinbj
https://bit.ly/3BCUSYJ

Argusによると、中国政府がリチウムイオン電池の材料サプライチェーンの大幅な強化を伝えています。リチウム、コバルト、ニッケルを含む主要材料の供給システムを更に強化し、中国のEV産業の発展を支援する、としています。
https://bit.ly/3BPaUPE

欧州の独立した調査組織である「EU税務監査署(EU Tax Observatory)」による分析リポートが発表され、欧州で複数の一般紙が欧州銀行による膨大な額の租税回避地の利用を伝えています。このレポートによると、タックスヘイブンで欧州の主要銀行が計上した利益は従業員1人あたり約238,000ユーロ、非タックスヘイブン国では僅か65,000ユーロと3倍以上の差があり、銀行全体の総利益の14%をタックスヘイブンに計上しています。ただ、タックスヘイブンで雇用されているスタッフの割合はわずか4%だったという事です。2014年に世界的にタックスヘイブンが大問題となり透明性の確保やタックスヘイブンの利用に関する規制が強化されましたが、欧州当局の規制にはいつも抜け穴があり、結果は殆ど変わってなかった、という事です。
https://reut.rs/3DSdjdR
https://bit.ly/3DQvO2m

「欧州ブランド協会」と欧州の「プラスチック廃棄物終焉同盟」が電子透かしのイニシアチブである「HolyGrail2.0」の下、分別技術開発を進めるパートナーシップを発表しました。同パートナーシップは、コペンハーゲン市と協力して、段階的にパイロット試験を実施します。電子透かしにより廃棄物の識別が可能になり、これによって、究極的にはブランド別の選別も可能になります。この技術はサーキュラーエコノミーの切り札の1つになる技術として期待されてきました。電子透かしの露光技術とそれを識別するセンサー、更に判別情報でピッキングするロボット技術の3つを確立できれば、基本的に「廃棄物」をまとめて中間処理する独立したリサイクラーは必要なく、メーカーと協業する選別メーカー(別会社)が誕生する可能性があります(欧州ブランド協会が参画している事がその証)。
https://bit.ly/38GADND

コンテナ船やバルク船に課される炭素課金(税)に関するニュースです。これにより、近い将来、旧型船の運賃が上昇する可能性があります。世界の商船数の80%以上の船主を代表する国際海運会議所が、特定のサイズを超えて国際的に航行(商業行為を行う)する全ての船舶に、排出する二酸化炭素1トンあたり一定の金額(税金相当)を支払うことを国連に提案する、と伝えられています。但し、その炭素価格については明確にしていません。
https://yhoo.it/3h7EJmh

シーメンス傘下のエンジニアリング会社で風力タービンブレードの大手であるシーメンスガメサ(Siemens Gamesa)が、リサイクル可能な世界初の風力タービンブレードを発表しています。これまで、風力タービンのブレードに使用されている複合材料はリサイクルが困難で、殆どが埋め立てられていました。通常、複合材はガラス繊維等に樹脂を流し込み成型するのですが、新型のブレードでは材料を樹脂と一緒にCasting(鋳造)する、という製法を取り、リサイクル時に分離できるようにしていると説明しています。既に6基の受注があるとしていますが、量産性やコストについては明らかにしていません。シーメンスガメサは、風力タービンの全てを2040年までに完全にリサイクル可能なものとする事を発表済みです。
https://bit.ly/2Vnc7Ov

「American Zinc Recycling LLC(AZR)」を買収したルクセンブルクの「Befesa SA」が、ドイツ証券取引所(DAX)に上場した事が伝えられています。買収したAZRは亜鉛をリサイクルの大手です。Befesa SAは現在のヨーロッパ、アジア、米国の12個所の施設で計200万トン以上の金属リサイクルリサイクル(鉄鋼とアルミが主体)で発生する有害物質を含む金属(主にダスト)のリサイクルを専門としています。Befesaは中国で2つの電炉ダストのリサイクルプラントを設立する事も発表しています。金属価格の上昇により、欧米にてこうした特殊リサイクル会社による周辺事業の買収や協業、IPO等、様々な動きが継続して活発な状況です。
https://bit.ly/3jNXLzR

スイスのプライベートバンクでも老舗の1つである「Lombard Odier銀行」のチーフ・インベストメント・オフィサーが炭素市場の動向につて述べています。これと言った新しい内容ではありませんが、概要がまとまっています。炭素価格が今年だけで2倍以上に跳ね上がっている事も注目を集めているポイントです。
https://bit.ly/3n7mL7h

世界的な大手石油化学会社であり自動車を含む産業向けのスチレン樹脂の大手「Ineos社」が、機械的なリサイクルから得られた最大70%再生樹脂で作られた「Novodur ECO ABS」と最大40%の再生樹脂から作られた「ECO HH」という製品を発表しています。石油化学系の会社が機械的リサイクルでリサイクル再生樹脂を製造して製品化するという事で、技術の詳細は調べる価値があると考えています(集荷選別方法が特殊な可能性があります)。
https://bit.ly/3tmIXeV

幾つかの専門サイトで報道されていますが、未だに課題が多い自然を保護及びその回復プロジェクトに対して、多くの投資家がより資金を投入しようと考えている、という調査結果が出た事を伝えています。スイスのコーネルアトキンソン持続可能性センターと国際自然保護連合(IUCN)が主導する保全金融の分析レポートで明かされた内容で、金融業者(投資家)の70%が、2020年と比較して2021年に自然保護PJTにより多くの資金を投資することを計画していたが、適切なプロジェクトを見つけるのに苦労していたことが分かった、という事です。炭素市場で主要な問題であるオフセットプロジェクトの透明性や法的担保は11月のCOP26の最重要課題の一つとして議論される予定です。
https://news.trust.org/item/20210908114904-riu9p

独ミュンヘンで欧州最大級の自動車展示会が行われており、業界団体とメーカーが本音として急速な電動化と内燃機関の禁止を事実上好んでいないという旨の事をEuractiveが伝えています。自動車メーカーにとって電動化は必須で進むべき道です、と認めつつ、EV販売が伸びている地域はインフラや電力供給の整備が整った一部の国々に限られており、実際の収益を上げているその他の大多数の国での電動車販売(欧州でも南欧と東欧)が伸びていない事と、内燃機関に関わる裾野の広い部品メーカーを含めた雇用の問題を上げています。利便性や経済原則に適ったイノベーションは急速に進みますが、倫理と政策により起こされた改革には課題も多く、当事者の中にも問題意識があるという事のようです。
https://bit.ly/3DWUzdp
https://bit.ly/3zUNFTD

サウジアラビアの巨額なマネーが金属リサイクルや脱炭素分野にもより進出するというニュースです。サウジアラビアの石油化学会社「Aramco(アラムコ)」は、同社の産業投資プログラム「Aramco Namaat」の大幅な拡張を発表し、様々な企業と22の覚書(MoU)を交わした事を発表しています。投資は4分野で、持続可能性、技術、産業とエネルギーサービス、そして高度な材料です。金属分野では、オランダの「Shell & AMG Recycling」と「金属再生と触媒製造に関する三国間MOU」、廃棄物ではフランス「ヴェオリア」とMOUを交わしています。「戦略的な先住民の利害関係者と世界クラスの統合廃棄物管理会社を設立する商業的Feasibilityを確認する独占的MOU」という事で、これは先住民という言葉が出るPJTは脱炭素クレジットと関係がある可能性があります。
https://bit.ly/3jXG15u

欧州の主要メディアで世界初の大規模なカーボンキャプチャーPJTがアイスランドで稼働した事が伝えられています。このPJTでは、毎年4,000トンのCO2を空気中から取り出し、地中深くに注入して「鉱化」する、としています。ただし、コスト度外視のPJTで実用化には目途が立っていません。カーボンキャプチャーの話は欧州で盛んになってきましたが、政治的な側面が強く、炭素価格が上がっても商業ベースでの実用化の目途は立っていないのが実情です。
https://bit.ly/3nddSt3

欧州のプラスチック製造者の業界団体である「Plastic Europe」が過剰包装と包装廃棄物の削減からEU包装廃棄物指令(PPWD)の改訂を歓迎し、2030年までにプラスチック包装の30%がリサイクル再生材を利用するという目標を掲げています。Plastic Europeは、30%のリサイクル材料の利用目標を達成する為には、バリューチェーン(製品と廃棄物の流通経路)とのコラボレーションが必要としており、リサイクル技術の最適化も含まれています。プラスチックに関しては、欧州では、いよいよ生産者が廃棄物を扱う主導権を握る時代が迫っています。Plastics Europeは、欧州委員会が関連する「Circular Plastics Alliance」とコラボレーションしており、290(社)を超えるバリューチェーンのメンバーと、2025年までに製品に1,000万トンのリサイクル材料の利用を目論んでいます。
https://bit.ly/3zZwd03

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