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世界の環境関連ニュース(2021年12月第2週)

特に先進国の政策に大きな影響を与える世界経済フォーラムがアルミのリサイクルに言及しています。「結論」という部分が様々な政策に反映される事が多く、今回は「企業は高コストの選別技術に投資し経済的に実行可である事を証明する必要がある。投資は二次アルミニウムに対する消費者の需要によって支えられなければならない」としています。つまり、製品メーカーがリサイクルまで投資せよ、というメッセージです。「Novelis」や「Tomra」等の実名を出しアルミリサイクルの技術開発と発展へ向けた動きも伝えています。この分野の技術的な深度は、今後製品メーカーに対するリサイクル会社の武器なっていくと思われます。
https://www.weforum.org/agenda/2021/12/aluminium-emissions-recycling-circular-economy/

米国の下院でコンテナ海上輸送に関係する法案、『The Ocean Shipping Reform Act, H.R. 4996』が可決されています。この法案では、四半期毎に米国の港に入出港する船舶毎に対して、その総輸出入数量(トン数)と荷物積載量、更に空の20フィート相当のコンテナの総数について連邦海事委員会(FMC)に報告する義務が生じます。連邦海事委員会(FMC)は、海上事業者の料金の調査を開始し、必要に応じて執行措置を適用する権限を与えられる、としています。この措置によって、海運会社は最低限のサービス基準を遵守する事が求められ、不当に少ない貨物を積む事が出来なくなります。結果的に滞留を防ぎ、不当に高い物流運賃を抑制する事になる、としています。中⇔米間のコンテナ滞留が世界に及ぼす影響が大きい為、この法案が上院でも可決される事が期待されています。
https://www.logisticsmgmt.com/article/ocean_shipping_reform_act_of_2021_is_passed_by_u.s._house_of_representative

欧州での一番大きなニュースは、「ロイヤル・ダッチ」の名前を冠したロイヤル・ダッチ・シェル(石油)がオランダから英国に本社を移し、英国の会社になる事を株主が決定した事です。オランダを代表する会社であるユニリーバに続いています。シェルは、会社名からもロイヤル・ダッチを取り外し、英国でシェルPLCと名乗り英国の会社となります。シェルとユニリーバは同じように英国領Jersey島やアイルランドを介した租税回避スキームを持ち、B株を所有する(特待遇)株主に租税回避を行ってきており、シェルは2005年から2018年までの総額9000億円近い「過去に回避した税金」の支払いをオランダ政府から求められる状況にありました。両社とも欧州ではサーキュラーエコノミーや脱炭素の中心的な多国籍国際企業で、株主には多くの欧米金融資本の機関投資家が存在しています。この構図は奥が深く大変複雑なので、読み解く人は少ないと思います。
https://www.theguardian.com/business/2021/nov/15/shell-move-hq-tax-netherlands-uk

USスチール関連で2つの重要なニュースが報道されています。
12月9日、米国のアーカンソー州議会議員は、廃棄物の削減、再利用、リサイクルプロジェクトに所得税控除を提供する法案を可決しています。アーカンソー州は米国の主要な鉄鋼生産地域の1つで、州のミシシッピ郡は米国で最も鉄鋼生産量の多い郡の1です。ピッツバーグが本拠点であるUS スチールは、アーカンソー州ミシシッピ郡で30億ドルの拡張プロジェクトを検討しています。本法案はこれを誘致する為の税控除です。30億ドルは3300億円に相当し、投資は電気炉ですので、ここでもスクラップ需要は大幅に増える可能性があります。USスチールには傘下に「Big River Steel」があり、拠点はアーカンソー州です。
また、同日USスチールは列車に用いる貨物車輌を製造する「Greenbrier Companies Inc.」、利用する「Norfolk Southern」と提携し、軽量貨物車輌を発表しています。この鉄道車輛は、金属スクラップ、コイル、木材チップ、スラブ、鉱石等の「ばら積み貨物」を輸送します。軽量化と高耐久により、より多くのスクラップを積むことが出来ます。導入予定は最大800台。米国内でのスクラップ需要は今後増加する見込みで、様々なプロジェクトが動いています。
https://legiscan.com/AR/bill/SB10/2021/X1
https://bit.ly/3lZCCDG

来年には国連を中心として、プラスチック廃棄物汚染に対する条約の協議が始まる予定と報道されています。
米国では、現在それ以上に強力な法案の議論が学者を中心に始まっています。それは米国の環境保護庁(EPA)が、年間に生産できるバージンプラスチック材の量を決定する権限を持つ法律を制定する、というものです。この生産キャップ方式は、業界の大反対に合うと予測されていますが、有名なScience誌(Web)に発表された特別報告書では、科学者が2040年までに新しいプラスチックの製造を段階的に廃止する「法的拘束力のある合意」を求めています。こうした法規制が一部だけでも実現すれば、リサイクル材料の需要は一気に高まると思われます。
https://bit.ly/3oR7poc

今後自動車メーカーを悩ますであろう駆動用バッテリーの火災についてのニュースです。
フォルクスワーゲン傘下のスポーツカーメーカーであるドイツのポルシェによる内部告発があり、既に市場に出ている「ポルシェタイカンの10分の6」は、バッテリーセルを損傷し車両火災を引き起こす可能性があるバッテリー管理機器を持っており、セルとバッテリーの交換が必要、としています。7月には、ポルシェはソフトウェアのバグにより突然シャットダウンする可能性があることを懸念して、43,000台の車をリコールしています。
その前にフロリダ州での火災の報告もありました。タイカンは、充放電プロセスを上手く制御できない安価な車載充電器を使用していると内部告発者は伝えています。その為にバッテリーから火災が発生したと通報者は説明しています。今年に入りテスラ、シボレー(GM)、現代自動車等のリコールの負担費用はとてつもなく巨額に上っており、EV電池と制御システムの安全上の問題が懸念されています。
https://www.teslarati.com/porsche-whistleblower-taycan-battery-charger-fires-coverup/

リチウムイオン電池リサイクルの米国大手で最近NY証券取引所に上場した「Li-Cycle Holdings Corp.(NYSE:LICY)」が、韓国の「LG 化学(LG Chem)」及び、「LG エナジーソリューションズ(LG Energy Solution Ltd)」と製造工程のスクラップリサイクル、及び硫酸ニッケルのオフテイク契約の「同意書」にサインをしました。ただし、この同意書は法的拘束力の無いものです(Legal Non-binding) 。オフテイク契約の「正式」締結時には、LG化学(LGC)とLGエナジーソリューションズ(LGES)が両社でLi-Cycleの普通株を購入するために、同社に5,000万ドルの投資を行います。LGエナジーソリューションズは米国、ポーランド、韓国、中国にバッテリー生産拠点を持つ世界最大級のリチウムイオンバッテリーメーカーの1つです。正式契約後に、Li-Cycleはリサイクルによって製造された硫酸ニッケルに含まれる20,000トンのニッケルをLGCおよびLGESに販売します。更にLGESとLi-Cycleは、リチウムイオン電池材料のリサイクルに協力する事も発表しています。
https://bwnews.pr/3yr9BpB

世界各国の政策に大きな影響を与える世界経済フォーラムがプラスチック廃棄物汚染に対応する8つの組織を大きく取り上げています。これは6月に立ち上げた「Global Plastic Innovation Network(GPIN)」の活動を紹介するもので、来年予定されているプラスチック廃棄物汚染の国際条約への着々とした布石と見る事もできます。日本企業でプラスチックを大量に使用するメーカーは、早めにエレンマッカーサー財団のプラスチック・ニュー・エコノミー・イニシアチブを採用する事が必要になって来ると思われます。欧米の主要な企業は全て採用しています。
https://www.weforum.org/agenda/2021/12/fight-plastic-pollution-innovations/

米国でタイヤリサイクルからカーボンブラックを製造する「Monoliths社」が米タイヤメーカー大手のグッドイヤー(Goodyear Tire& Rubber Company)と協業契約、及びLOIを締結した事を発表しています。ただし、供給されるカーボンブラックは廃タイヤ由来のものでなく同社独自のメタンの処理(もしくはバイオメタン) に由来するものです。技術的には、再生可能エネルギーの電力を利用し天然ガスを高純度のカーボンブラックと水素に変換します。この技術はMonoliths社が開発したものです。タイヤに使うカーボンブラックの製造を脱炭素化する事で、製品そのもののライフサイクルGHG排出量を下げます。
https://tyretradenews.co.uk/news/goodyear-collaborates-with-monolith-on-carbon-black/

商品、及びエネルギー市場向けの情報、分析、ベンチマーク価格の大手プロバイダー「S&P Global Platts(S&Pグローバルプラッツ)」が、今週から世界初の「カーボンニュートラル水素(CNH)」の価格評価を開始しています。
公表された最新の価格は、オーストラリア産が工場渡しで3.45ドル/ kg、中東産で4.05ドル/ kg、極東アジアの価格は7.95ドル/ kgと高く、北西ヨーロッパも7.35ユーロ/ kg($8.30 / kg)と高い状況です。米国が一番安く$ 1.70 / kgです。高炉や直接還元炉で水素を使う場合、1Kgあたり10円を切る価格帯にしないと現実的でありません。現状一番安い米国産でも190円/Kg程度で、これから10分の1、あるいは100分の1のコストにする技術は、今の所目途もたっていません。欧州産は900円/Kgとべらぼうに高く、報道が殆どされませんが、多くの学者や専門家が相次いでグリーン水素への投資に警笛を鳴らしています。実は報道が封じ込められていますが、ドイツでは政府の諮問委員会がブルー水素(天然ガスを改質する方法でグリーン水素より安い)への投資を止めるよう政府に指針を出しています。天然ガスを改質して水素を取り出すなら、ガスを燃やした方がGHGが20%も少ないからです。水素は、過去の歴史で(日本でさえ)、何度も同じ「コストの壁」(製造だけでなく管理や輸送面でも)で実用化された事がありません。果たして鉄鋼業がグリーン水素を使えるのか?は欧州でも完全に意見が二分し始めています。政治家と推進派が投資を活発化させる施策をいくつも出し始めていますが、実際に大手のエネルギー投資機関はかなり慎重です。ちなみに、世界最大の大型トラックメーカーであるスウェーデンのスカニア(フォルクスワーゲン傘下)は、水素で走る燃料電池車の開発を凍結しています。
https://www.apnnews.com/sp-global-platts-launches-first-carbon-neutral-hydrogen-assessments/

米国電炉鉄鋼メーカー大手のNucor Corp.が2つのニュースを発表しています。 1つ目は、既に日本でも一部伝わっていますが、「California Steel Industries Inc.(CSI)」を買収した事です。買収は100%でなく過半数(51%)です。CSIはカリフォルニア州フォンタナに本社があり、熱間圧延、冷間圧延、亜鉛メッキ、電気抵抗溶接(ERW)、及びパイプ生産ラインを持ちます。51%の株取得は、ブラジルに本拠を置くVale SAの子会社からCSIの50%の株式を購入し、JFE Steel Corp.(JFE)から1%の株式を購入しました。 2つ目は、第4四半期の収益ガイダンスを発表した事で、過去最高レベルの1株当たり利益を出す、としています。今年に入り米国鉄鋼業のM&Aはかなり進んでいますが、Nucorのスピード感は際立っています。
https://www.nucor.com/investors/

電子機器処分業の最大手の1社である「Sims Lifecycle Services(SLS)」がフランスのIT機器販売会社の「BackMarket」と業務提携を発表しています。欧州では情報技術資産処分(ITAD)ビジネスは、今や「廃棄物処理」では無く「データ処分を軸とした保証ビジネス」で、Sims Lifecycleはこの分野で大きなプレゼンスがあります。情報技術資産処分(ITAD)では、「商圏の確立」が重要なテーマで、スクラップというよりサプライチェーンの一部として企業・業務価値を提供する必要があります。
https://www.simslifecycle.com/press-releases/sims-lifecycle-services-and-back-market-join-forces/

欧州委員会は、水素を含む再生可能・低炭素ガスを促進し、EUのガス市場を脱炭素化、更にメタン排出を削減する為の新しい「EUフレームワーク」を発表しています。発表された重要な措置の1つは、再生可能/低炭素ガスを優先し、これらがEUエネルギー市場で利用される為の「EUガス市場規則の改訂」が含まれています。
欧州委員会は、水素が最大5%混合された天然ガスについて、国境を越えた輸送を受け入れる義務を含む、水素に対する支援の強化も提案しています。欧州の水素戦略は政治が主導していますが、実は、冷静なエネルギー国際機関投資家は殆ど欧州の水素プロジェクトに出資しておらず、膨大な政府補助金(税金)と僅かなベンチャーキャピタルが出資しているだけです。英国では8月に発表された「水素戦略」でも補助金に関する詳細は2022年まで延期される事になっています。
実際にEUが推し進める天然ガスの水蒸気改質とカーボンキャプチャーをセットとした「ブルー水素」は天然ガスの燃焼よりカーボンフットプリントで20%以上炭素排出量が多いとして、批判が相次いでいます。水素は天然ガスに比べ比重は15%しかなく、燃焼速度は7倍も速く、燃焼コントロールそのものが困難な気体で、エネルギー利用には製造以上に取扱いや安全管理でコストが掛かります。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_6682

米国の大手飲料会社「ペプシコ(PepsiCo Beverages North America)」が、包装関連企業の買収を主とするプライベートエクイティファンドの『Closed Loop PartnersのLeadership Fund』へ1500万ドルの投資を発表しています。どんな意味があるニュースかというと、ペプシコが2030年までにボトルを100%rPETにする為の廃ボトルの確保にあります。ペプシコはクローズドループファンドの創設メンバーでありずっと提携してきました。このファンド(基金)は、米国の都市(City)、郡、企業がリサイクルをしやすくする為の投資に使われます。新しいトラックや資源回収施設を支援する技術等への投資です。100%のrPETには現在の収集量では足りず、このファンドを使って、業界のペットボトルの収集量を改善する事です。直接やらずに、クローズドループパートナーの基金から拠出するという方法です。欧州でも顕著ですがrPETは「集荷」が全てです。
https://bit.ly/3dUUXNV

世界第2位のエストニアの木質ペレットメーカーである「Graanul Invest」に批判が噴出しています。Graanul Investは、今年米国の大手機関投資家のApollo Investment が買収しています。昭和電工と三菱マテリアルのアルミ部門を今年買収した投資会社です。エストニアの森林伐採面積は2016年から2018年の間の3年間だけで、その前の2004年から2015年の期間と比較して85%増加しています。しかし、再植林と植林を大量に行った為、総森林面積は2001年の220万ヘクタールから2020年には230万ヘクタールに増加しています。現在REDIIIが議論の真っ只中です。森林保護の流れから透明性を担保する力のある欧米投資機関が持つ世界3大ペレットメーカー(Drax, Enviva, Graanul)が有利になると見られています。
https://bit.ly/3p1i7Zb

欧州委員会が環境犯罪の刑法強化案を発表しています。
環境破壊による犯罪で(汚染が増加する等により)人が死ぬ場合は10年以下の懲役、それ以外の環境犯罪でも公的資金や調達手続きからの除外、または行政許可の撤回を含む制裁が盛り込まれています。更に調査と刑事手続をより効果的にして、罰則への対応を強化します。調査ツールの利用、関連機関の調整と協力、データ収集により、検査官、警察、検察官、裁判官のサポートを可能にするよう制度を改善します。欧州委員会は、各加盟国に対して首尾一貫したアプローチを確保する「国家戦略」を策定することを提案しています。違法伐採した木からペレットを作ったり、流通販売した場合、またはプラスチック廃棄物を不法に輸出入した場合、組織がより厳格な刑事罰になるという事です。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_6744

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