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NEWSCONの気になるNEWS(2023年3月第3週)

欧米でグリーンテックへの補助金合戦が盛り上がっています。米国のホワイトハウスが声明を発行し、エネルギー省を通じて60億ドル(約8,000億円)の助成金を、金属産業を含むエネルギー集約型産業の脱炭素化プロジェクトに投入する計画を発表しています。重工業の脱炭素化の為にクリーンな製造技術の開発と初期の商業実証(パイロット)に資金の多くが投入されます。最大でプロジェクトの半額が助成金によって援助される見込みです。米国のアルミ二ウム協会はこの政策に歓迎の意を示しています。昨年のインフレ削減法前から米国ではアルミ産業の買収や拡張が行われており、脱炭素化を進める今回の政策で、よりアジア産との炭素排出差が出て競争力を増す事ができると見込んでいます。
http://bit.ly/3ZHI3Jd

米国や中国の補助金攻勢に対抗するように、欧州委員会は脱炭素排出量の削減に役立つグリーン・テクノロジーに対する国の援助規則を緩和する事を発表しています。今回採択した補助金のフレームワークはEU加盟国が迅速な方法で支援を行う事を可能としています。欧州政府は欧米中による補助金競争を促進する事に表向きは消極的ですが、欧州企業がアジアや北米での補助金や低いエネルギーコストで投資を海外に移したり、生産拠点を移す事を懸念しています。8日には独自動車大手のVWが「東欧での電池工場を進める前に欧州政府が米国のインフレ削減法(IRA)にどのように対応するか様子を見る」と発信し政策当局にプレッシャーを掛けていました。欧州政府の今回の措置ではバッテリー、ソーラーパネル、風力タービン、ヒートポンプ、炭素回収と貯蔵、重要な原材料の生産とリサイクル技術への支援を目論でいます。本来米国のIRAは対中政策の色合いが強かったのですが、その影響はEUにとっても多大であり、その対抗措置として補助金の緩和に踏み切っています。国際貿易量は伸びていますが、ブロック化による今後の影響は慎重に見ていく必要がありそうです。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_1563

欧州で提案されている包装及び包装廃棄物指令の改訂、更にプラスチックの国際条約に向け、大手企業が代替材の利用テストに動き出しています。食品大手の米多国籍企業ペプシコは、リサイクル率を上げる為の試みとしてポテトチップスWalkers Bakedの 6パック入りマルチパックの中の2つの味のポテトチップスの袋を紙ベースとする試みを発表しています。試用パックは英国の大手スーパーマーケットチェーンであるテスコの800店舗で販売している300,000個以上の6パック入り商品に投入され、Sea Salt味とOnion & Cheese味の袋で採用します。 開発に2年以上かけ、商業ベースでのテストを今回行い、採用に向け調査する計画です。
https://packagingeurope.com/news/pepsico-trials-paper-based-packaging-for-walkers-crisps/9499.article

オランダが半導体製造装置で世界的なシェアを持つ精密露光装置を含む機器の輸出を制限する事を発表しています。規制は「安全保障上の理由」としています。昨年10月に米国は米国製半導体製造機器を中国へ輸出する事を制限しました。その後市場シェアを持つ日本とオランダと協議を続けてきました。当初、オランダは規制にあまり乗り気ではありませんでした。昨日のオランダ政府の発表では、中国の名前も超精密露光装置メーカーのASML Holding(ASML)の名前も含まれていませんでした。しかし、明らかに両方が影響を受けます。ASMLが半導体製造企業に販売している「高度露光装置「DUV」リソグラフィ・ システム」は管理対象であると指定されています。ただし、販売済み機器のサービスに関する幾つかの問題は、まだ決定していません。戦争はロシアとウクライナで展開されていますが、分断は米(欧)対中国という構図にますます拍車をかけてきています。
https://edition.cnn.com/2023/03/08/tech/dutch-china-chips-ban-hnk-intl/index.html

米国でLIBに関し2つの企業が材料製造とリサイクルに投資する事を発表しています。
米国のLIBリサイクル企業アメリカン・バッテリー・ テクノロジー・カンパニーはネバダ州にあるリノ・インダストリアルセンターのテナント工場を買収しLIBリサイクル事業を拡張する事を発表しています。同社は既にパイロットベースの工場を持ちますが、早急に商業利用を拡大する為に、既存のテナント工場を買収しています。またLIB材料の製造会社であるCirba Solutionsは事業拡大の為にエンジニアリング企業のJacobs社と提携し、自社の生産能力を拡大する計画を発表しています。Cirbaは米国に既に6つの施設を持ちますが、これを2030年迄に13に伸ばす計画です。米国のLIB製造能力は数年前の50GWh/年から既に計画を全て入れると700GWh/年を超えるまで伸びています。2022年秋に成立したインフレ抑制法によってEV関連投資が増える中でバッテリーに使用する金属需要が急増しています。
https://americanbatterytechnology.com/news/
https://www.cirbasolutions.com/cirba-solutions-jacobs-form-a-strategic-alliance/

中国では習近平氏がバッテリー業界の中でCATLの優位性を保っている事に対し「喜んでいると同時に懸念している」と発言した事で、業界が反応を見せています。これは不動産業等で見られた様な行き過ぎた過剰生産能力を警戒しており、政府系の機関紙である新華社通信は、習主席が「最終的に散逸するブームと無謀な突進」を回避する為に「着実かつ慎重な方法で発展する規制が必要である」と述べたと伝えています。CATLは市場における価格決定力が強い事から中国の自動車メーカーの反発に直面しています。コンサルタント会社によれば、中国のバッテリー生産能力は今年23%増加し、年末までに1,338GWhに達すると予測しています。CATLだけで、商業生産、又は建設中の工場を含めると542GWhの生産容量があり、1社で700万台以上のテスラ・モデル Y に相当するバッテリーを供給する能力があります。中国でのEV販売は補助金の終了と同時に減速する事が示された事もあり、CATLは2 月に中国の小規模なEV メーカーに割引を提供する代わりに、将来の受注を確保するような販売方法を取っています。3期目を迎えた習氏に1極化した中国で彼の発言が波紋を呼んでいるようです。
https://www.asiafinancial.com/xis-remarks-on-catl-a-warning-to-chinese-ev-battery-makers

欧州委員会は現在、EU加盟国の様々なリサイクル能力を評価する「早期警戒報告書(early warning report)」の準備を進めています。これは4月に発行予定ですが、現在各種の法規制の強化に対しリサイクルのインフラが不足している為、「加盟国の多くが規制違反のリスクに晒されている」という実態を明確にする為のものです。特に軟質系を含むプラスチックのリサイクル能力が不足しており、包装及び包装廃棄物指令だけでなく、非OECD諸国へのプラスチックの輸出禁止を目論むEUの廃棄物輸送規則の運用にも影響を与えかねません。最近では飲料メーカーが廃棄PETボトルに優先的にアクセス出来るよう欧州政府に要求していますが、欧州委員会はこれを却下しています。リサイクル率やリサイクル含有率が規定された法規制に対応する為の回収やリサイクル施設の能力不足は顕著で、欧州委員会はEU加盟国にリサイクルインフラへの投資を促しています。先行し過ぎた規制に現実が追い付いていないという実態が徐々に明らかになりつつあります。
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/13511-Waste-management-early-warning-report_en

ドイツ経済気候省(BMWK)が新しい太陽光発電戦略を発表しています。今後10年間でドイツの太陽光発電容量を現在の約3倍の215 GW/hにする為の具体的な方法を示しています。これに合わせるように、ドイツのソーラーパネル製造企業AE Solarはルーマニアに大規模なソーラーパネル生産工場を建設する事が伝えられています。投資規模は€10億(1千4,000億円)で初期の生産容量は年間2GW/h ですが、将来は10GW/hに拡張する計画です。10GWは今後の欧州需要の凡そ1/3に相当します。現在AE ソーラーは欧州とアジアの工場で年間2.5 GW/hの生産能力を持ち、メキシコ、ブラジル、サウジアラビアに子会社があります。同社は65%がドイツのAE Invest GmbHが所有し、残りの35%はChin Hope Co Ltd (台湾)が所有しています。
https://www.cleanenergywire.org/news/national-solar-pv-strategy-aims-strengthen-germanys-renewable-power-sovereignty
https://www.intellinews.com/german-investor-to-build-1bn-pv-panel-factory-in-romania-272233/

米国の鉄鋼メーカーCleveland Cliffsが2月末に続いて更に製品の値上をしています。同社の値上げは昨年11月末から数えて8回となり、その間に$560値上げしました。平鋼価格を100ドル値上げし、熱間圧延コイル(HRC)の最低価格を1,200ドルにする予定です。だたし、米国内でのスクラップの価格が急上昇しているという事は無いようです。
https://www.marketscreener.com/quote/stock/CLEVELAND-CLIFFS-INC-37488524/news/Cleveland-Cliffs-Raises-Hot-Rolled-Steel-Price-43231929/

本日、欧州議会で建物のエネルギー指令(Energy Performance of Buildings Directive)案が採択されています。賛成343票、反対216票、棄権78票の為、反対意見も多く、今後幾つかの立法手続きで修正される可能性があります。法案は2030年迄にEUの建物部門における温室効果ガス(GHG)排出量とエネルギー消費量を大幅に削減し、2050年迄に「気候中立(Climate Neutral)」にする事を目指しています。具体的には非効率な建物を改善し、エネルギー性能に関する情報収集と開示を改善するものです。公的機関の新築建造物は2026年以降に建築されるものは2028年からゼロエミッション、ソーラーパネルを装備する事が必要になります。住宅も2030年迄にエネルギー性能クラスE、2033年迄にDを達成する必要があります。現在、EUの建物はエネルギー消費の40%、温室効果ガス排出の36% を占めています。反対意見も多いですが、の規模になる為、指令が発行されればコモディティ価格にも影響が出そうです。
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20230310IPR77228/meps-back-plans-for-a-climate-neutral-building-sector-by-2050

バーガーキングがドイツで再利用可能なプラスチック製カップのデポジット返還制度を展開する事を発表しています。RECUPデポジットリターンシステムというスキームで飲料やアイスクリームに再利用可能・リサイクル可能なPP製のカップを利用します。1カップで1,000個分の使い捨てカップの置換となると予想しています。顧客は1カップにつき €1.00のデポジット払いRECUPカップとデポジットの「蓋」を得ます。これはドイツ国内の750軒のバーガーキングまたはドライブスルーで利用可能で、返却はバーガーキングの施設またはドイツ国内の18,500ヶ所にあるRECUPポイントに返却し返金されます。使用済みのカップは洗浄後に再利用可能状態になり、店舗等に戻されます。提案されているEU包装及び包装廃棄物指令の改訂では2030年迄に包装材は全てリサイクル可能である必要がある為、大手を中心にリユースや代替材料への試みが急速に進み始めています。
https://packagingeurope.com/news/burger-king-rolls-out-deposit-return-scheme-for-reusable-plastic-cups-in-germany/9514.article

AG Metal Minorが最新の国際銅市場の状況をまとめています。テクニカル指標では下げ圧力が強くなっており、下げ前にやや横ばい状態を形成してその後下げトレンドに入りし易い状態となっています。中国は銅の52%を消費している為、海外投資家は中国市場の注意を払っている状態ですが、全人代で大きな景気刺激策の発表もなく、地方債の販売目標は控えめな為、景気浮揚に対する力強さにやや欠ける結果となっています。更にマクロ市場でも国際的に銅供給が増す要因が多数報告され始めている事も価格の下げ圧力を強めやすい原因となっているようです。市場は絶えず変化しますのでピンポイントでの予測は困難ですが、レポートによれば夏に掛けても銅価格は軟化し易い傾向を示している事が伝えられています。
https://agmetalminer.com/2023/03/13/copper-mmi-price-of-copper/

14日まで開催されていたOECDの鉄鋼委員会にて副議長のシェリル・グローネウェグ氏とリーベン・トップ氏が連盟で声明を出しています。この中で特に懸念される内容は、今年、世界の鉄鋼生産の成長率が1%以下と予測しているにも関わらず、中東と東南アジアを中心に世界の鉄鋼生産能力が更に増加する為に生産能力が過剰となり市場を歪める可能性がある、という事です。ウクライナでの戦争から一部の国ではスクラップ輸出に制限を掛けており、これも市場を歪める一因としています。ほぼ全ての内容を網羅したものが下のリンクにありますので、ご一読を。
https://www.miragenews.com/oecd-steel-committee-vice-chairs-issue-joint-966447/

INGが欧州のエネルギーコストの上昇でアルミ産業が大きな影響を受けている実態を纏めています。アルミニウムの製造には銅の約40倍近いエネルギーを必要とします。国際アルミニウム協会(IAI)のデータでは、昨年12月の西欧地域のアルミニウム生産量は年換算で 273万トンとなり、これは前年比54万トン減で、今世紀最大の生産減少率でした。IAIは今後EVや再生可能エネルルギー部門でのアルミの需要は増加し続けると予想しています。特に2050年迄に自動車メーカーのアルミニウム消費量は現在の2倍になると予測しています。年初にはグレンコア、ボリデン、オルビス等の欧州の主要な生産者を代表する非鉄金属生産者協会(Eurometaux)が、今後長期的な財政支援が必要であると警告しています。
https://think.ing.com/articles/aluminium-smelter-shutdowns-threaten-europes-green-transition/

中国国家主席である習近平氏がEV用バッテリーで世界最大手のCATLに関して慎重な意見を述べたその1週間後、CATLはスイスのグローバル預託証券(GDR)市場でUS$50億を調達する計画を突如延期しました。中国企業によるスイスでの上場が実現すれば、過去最大級になる予定でした。CATLは昨年中国内での株式発行でUS$65億6000万を調達しています。中国当局は何故これほど多額の資本が必要なのか疑問を呈しています。情報筋によるとスイスでの調達資金はハンガリーでのバッテリー工場と一部は米国への投資の可能性がある、という事です。中国当局の介入には裏事情があるようで、一部では中国の投資家が資本をオンショア(国内)からオフショア(海外)に移すと、中国の外貨準備の一部が消費され減る事になります。株式発行者は通常、それらの調達した収益を中国外で使用する為に海外に保管します。このような理由から、中国の規制当局がCATLによるメガ GDR の提案に乗り気ではなくなっていると推測しています。いずれにしても、世界最大のLIBメーカーであるCATLの欧州事業計画に遅れが生じた場合、欧州のEV化のスピードにも影響が出そうです。既に米国市場では中国のVIEスキーム対する対策が始まっており、欧州で同じ事が起こった場合には中国本土の資本家にも影響がある可能性もあり、それが政治的なブレーキを掛けさせているとすれば、少しずつ中国も分断の準備をしているのかもしれません。
https://www.asiafinancial.com/beijing-regulator-delays-catls-5-billion-swiss-gdr-listing

欧州委員会は重要な原材料法(CRMA)とネットゼロ産業法(NZIA)の草案を出す予定です。CRMAではそれらの重要な原材料のリサイクルを含めたEU域内の採掘や処理能力を年間消費量の少なくとも40%まで引き上げ、更に使用済みのバッテリーからリチウム、コバルト、ニッケル等の重要な材料をリサイクルする事が盛り込まれる予定です。NZIAでは2030年迄にEUのクリーンテクノロジーの40% を域内で生産するという目標が掲げられる予定です。これはソーラーパネルや風力タービンの部品等を他国に依存している状況を解決する為のものです。本日これらの方針に加え、米国との通商摩擦解消に向け欧州委員会の委員長がスピーチを行い、かなり強い意志表明をしています。既に金属スクラップや電子廃棄物はこれらのリサイクルの枠組みに組み込まれている事から、詳細なテキストが発行後には、どのような方向性になるか見極めたいと思います。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/speech_23_1672

フランスの大手石油化学グループのTotal Energiesとフランスのリサイクル業者Paprecが、フランスでの「軟質プラスチック包装廃棄物」のケミカルリサイクルで協力する為の協定に署名しています。この契約は「プラスチックフィルム廃棄物の高度なリサイクルを開発するための長期的な商業協定」となっています。商業協定には現在フランスのGrandpuitsに計画しているTotal Energiesのプラスチック・ケミカル・リサイクル工場へ選別されたリサイクル材を供給する事が含まれています。ケミカルリサイクル工場はTotal Energies(60%)と Plastic Energy(40%)の合弁により建設予定で、処理能力は年間15,000トン、稼働は2024年を予定しています。昨年11月末に発表されたEU包装及び包装廃棄物指令の改訂によって、代替材や高度なリサイクルに向け投資が加速し始めています。
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/grandpuits-zero-crude-platform-totalenergies-and-paprec-develop-first

欧州委員会が「重要な原材料法(CRMA: Critical Raw Materials Act)」を提示しました。リサイクルに関係ある部分は以下となります。銅やレアアースを含む「重要な原材料」を法制度化する初の取組となります。EUの年間消費量の少なくとも15%はリサイクルから得る(これは内部でもっと野心的なものにするような声が多かったようですが、15%になりました)。

  • EU加盟国に対し、重要な原材料を含む(製品)廃棄物の収集、処理、および再利用を増やす義務を課す。
  • レアアースを含む永久磁石の循環性要件を確立する。
  • パートナー国と共に「重要な原材料クラブ」を設立する。
  • 重要な原材料リスト案に「銅」「ニッケル(電池グレード)」「マンガン」「天然グラファイト」が含まれている。銅と電池グレードのニッケルは今回追加されています。
  • 近い将来に供給リスクを生み出す可能性があると評価されるものを「戦略的原材料」として別にリスト化し、少なくとも4 年ごとに見直す。
  • この「戦略的原材料リスト」には、「銅」「コバルト」、「白金族類」「ニッケル(電池グレード)」「マンガン(電池グレード)」「リチウム(電池グレード)」が含まれる。
  • これらのリストの原材料のEU消費の65%以上を単一の国から得ないようにするスキームを作る計画です(主に中国が対象)。重要な原材料に「銅」が入った事で銅スクラップ、ニッケル(電池グレード)が入った事で廃LIBやブラックマス(BM)、タンタルや白金属類のある電子廃棄物や基板の流通にも影響が出そうです。
    https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/qanda_23_1662

    同時に、欧州委員会が「ネットゼロ産業法」案を提示しています。この法律はソーラーパネル、風力タービン、バッテリー、水素用の電解槽等、ネットゼロ達成の鍵となる技術と製品の製造を発展させる事を目的としています。2030年迄にEUで製造される戦略的なネットゼロ技術(とその製品)の年間需要の少なくとも40%を域内で製造する事を目論むものです。鉄鋼に関係ある所ではEU内での再生可能水素の生産、及びパートナー国から欧州への輸入を促進する「欧州水素銀行(European Hydrogen Bank)」の設立も含まれています。
    https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/QANDA_23_1666

    上記2つの法案は、グリーンディール産業計画の一部で、表向きはグリーン化達成の為の法制度ですが、戦争による主にロシアからのサプライチェーンの崩壊、グローバリズムで安全保障を軽視した結果の反省から中ソ外し、昨年秋の保護主義的な米国のインフレ削減法以降、豊富な補助金を背景に米国に投資資金が流入し続けている事への対応、と分析した方が妥当だと思われます。これで欧州も(米国同様に)保護主義、ブロック経済化、保護貿易化、規制緩和と補助金攻勢を掛ける法制度が整ってきましたので、インフレ懸念と金利の上昇の可能性がまた出てきそうです。この法案により巨大な欧州経済圏が保護主義的になりますので、マクロ市場でも金属コモディティには影響が出てくる可能性は十分あります。修正を含む法律の実施は1-2年後になりそうなので、その時点までに準備が必要と思われます。アジアは別の動きをすると思われますが、資源の乏しい日本の対応は急務かと思われます。米国のABCニュースは、自身のサイトで「EUはクリーンテクノロジーを推進:補助金は増加、自由市場は減少」と題してこの辺りの事を紹介しています。
    https://abcnews.go.com/International/wireStory/eu-moves-critical-raw-materials-boost-home-production-97905192

    欧州リサイクル産業連盟は自身のサイトで「重要な原材料法案」を歓迎しつつも、最終製品に含まれるリサイクル材料の確固たる目標を設定することが不可欠と訴えています。更にこの法案によって、今後提案されるリサイクルや循環型経済を抑制/促進する他の EU法と切り離す事を強調しています。他の法案とは今年改訂案が出てくる予定の「持続可能な製品のためのエコデザイン規制(ESPR)」「使用済み自動車(ELV)指令」「WEEE指令」の名前を挙げて示しています。これらの改定案では「拡大生産者責任」がより広範囲に設定される事が予想されており、メーカーの廃棄物に対する所有権が拡大される見込みで、リサイクラーとしては「自由が奪われる」として警戒をしています。スウェーデンの鉱業・製錬グループ大手のボリデンは、銅とニッケルの主要プロジェクトが優先事項であるとのコメントを出しています。
    https://euric-aisbl.eu/resource-hub/press-releases-statements/critical-raw-materials

    2022 年に設立されたばかりの米国カリフォルニア州のソーラーパネル専門のリサイクル企業が3,000万㌦を調達したことを発表しています。同社は2023年末までに年間100万枚のソーラーパネルをリサイクルする能力を導入する予定です。同工場にはパネルを分解処理できる工程と、それに垂直統合された高度なリサイクルを実施する工程が含まれます。同社は独自の技術開発により、ソーラーパネルをリサイクルして、銀、シリコン、銅、アルミニウム等の金属の 95% を抽出する事ができる、と発表しています。
    https://www.solarcycle.us/press-releases/solarcycle-raises-30m-equity-financing-to-scale-advanced-recycling-for-the-solar-industry

    米国ワシントン州で州内でのバッテリーのリサイクルを増やす法案が可決されています。上院法案5144と呼ばれるこの法案は、州内のバッテリー「生産者」に対し、リサイクル率を高め、安全な廃棄を促進し、廃棄物を削減する責任を課します。拡大生産者責任が廃棄物管理にまで及ぶものです。この法案によりワシントン州の市と郡はバッテリーの回収費用の一部を免除されます。多発するごみの中のバッテリーの安全に対する生産者への責任拡大を目論むものです。相次ぐ火災で、この流れは、全米に波及する可能性があります。
    https://senatedemocrats.wa.gov/stanford/2023/03/07/2653/

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