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世界の環境関連ニュース(2022年5月第2週)

英国が2022年以内にリセッションとインフレ率10%が同時に起こる事が予測されています。政府は「スタグフレーション」という言葉を使っていませんが、実質スタグフレーションに準じた状態に近くなると見られています。これは数週間前から徐々に言われてきましたが、一般紙でも大きく報じられています。英国経済は2023年に0.25%縮小(GDPがマイナス0.25%)する予測が出ており、今後2年間は弱含みに推移する、という事です。準大手のコンビニエンスチェーンのMcColl’s社も、借入の延長が金融機関と纏まらず、倒産する可能性が指摘されています。
https://bit.ly/3yz352b

ドイツは、今まで経済をけん引してきた輸出産業、製造業、エネルギー産業の3本柱が、アキレス腱となりつつあるようです。工業生産は3月に予想を3倍下回る悪化の3.9%に急落して未だに低迷が続いています。自動車産業は深刻で、3月に生産量が14%減少、パンデミック前の63%にまで低迷しました。これはドイツ経済全体を不況に追い込む深刻な製造業の低迷の始まり、とアナリストは予測しています。更にエネルギー価格(電機とガス)が大幅に上昇しており、エネルギー集約型の化学産業、金属産業の一部が危機に陥り始めているようです。
https://uk.finance.yahoo.com/news/germany-heading-recession-putins-war-090218032.html

リチウムイオン電池の原材料と金属の需給バランスによる供給懸念が日増しに高くなる中で、フォルクスワーゲン傘下のスポーツカーメーカーであるポルシェが、リチウムイオン電池用のシリコンカーボン製造メーカーである米国の「Group14 Technologies社」に1億ドルを出資することを発表しています。これは、Group14 Technologies社が複数の投資家から資金を調達する投資イベントで総額4憶ドルを調達したものの一部となります。この資金調達ラウンドを主導しているのはポルシェAGです。Group14 Technologies社はこの資金を利用して2022年末までに米国に新たな工場の建設を開始し、能力増強を図ります。生産するアノード材料はポルシェの親会社であるフォルクスワーゲンにも供給される、という事です。自動車産業は、原材料を中心に資本戦略に本格的に乗り出しています。
https://group14.technology/en/news

トルコ経済は現在、別の危機に瀕しています。2021年のインフレ率は61%、通貨リラの価値は対ドルで44%下落しています。特に4月のインフレ率は年率換算で69.97%に急上昇し、消費者物価は前月比7.25%上昇、年率でも68%になると予測されています。インフレは今年いっぱい続く見込みで、政治的にもトルコ品の輸入を禁止しているサウジとの関係改善など様々な動きがあります。首相のエルドアンが強権政治で中銀総裁や経済大臣を次々に変えて短絡的な事を繰り返しかなりのダメージとなっています。
https://cnn.it/389Ci1C

欧米の景気後退もあり中国製品の海外需要が弱まる中で、中国製造業向けの鉄鋼製品が5月も縮小する予測がHSNWより伝えられています。コロナによるロックダウンよりもエネルギー価格の高騰により海外消費者の購買意欲が低下し、中国製品への依存度が低下している事が懸念事項として伝わっています。ただし、中国は2022年のロックダウンからの回復と経済目標を達成する為に、下半期に経済刺激策を予測する声もあり、建設やインフラ用の需要は増える可能性があるようです。
https://bit.ly/3yolo9W

あまり伝えられる事はありませんが、ここ1年で米国の石炭産業関連企業の株価が暴騰しています。大手石炭販売会社の「Alpha Metallurgical Resources Inc.」の株価は前年比で980%以上、大手石炭生産会社の「Peabody Energy Corp」の株価は480%以上、上げています。温室効果ガス排出量の削減により投資家の投資対象が変わり、天然ガスや再生可能エネルギーに向けられた為、米国の石炭産業が破産・再編や上場廃止の対象となってきました。石炭関連産業に投資している主要な投資家はReclaim Financeと、そのパートナーが調査した石炭・石油への投資家リストと似ていますが、投資家のデータを見ると、2050年までに排出ネットゼロに向け投資を支援するという「ネットゼロアセットマネージャーイニシアチブ(NZAM)」のメンバーも含まれています。投資の理由は、現在の世界の石炭の需給バランスでは(供給余力が限られた地域の為)、ウクライナでの紛争やオーストラリアの洪水で市場価格が急上昇する懸念があり、投資家のポートフォリオに再び石炭が入る可能性を示唆しています。
https://bit.ly/3MZT5mu

最近ITADの買収のニュースが欧米で見られますが、英国でも大手電子機器リサイクル会社がITAD企業を買収しています。買収元は英国マンチェスターに本拠を置く電子機器リサイクル会社Tier1 Groupで、買収先は同じく英国のIT資産処分(ITAD)企業EOL IT Services Ltdです。買収金額は正確には伝えられていませんが、「8桁の投資」という事で1,000万ポンドを超えることから、少なくとも16億円以上の買収と見られています。
https://bit.ly/3FIo18t

世界最大級の7つの金融機関によって開発されている自主的炭素市場のプラットフォームである「Carbonplace」がクレジット決済の世界最大手の1社であるVisaとCarbon Credit Transfer(カーボンクレジットの決済)のパイロットテストを行い成功した事を発表しています。パイロットテストは、炭素クレジットプロジェクトの開発者である「Sustainable Carbon」からVerra認定の炭素クレジットをVisaが購入する事が含まれていました。これにより、将来、安全に国際間での炭素クレジット決済が可能になる可能性があります。2022年末に稼働する予定のCarbonplaceは、炭素市場の「SWIFT」システムになる事を目指しており、更なる開発も通知しています。
https://prn.to/3kSMle6
https://carbonplace.com/

自動車メーカーはEVを作る前からリスク回避の手段を要求されそうです。
オランダのEVメーカーであり自動車販売会社でもあるステランティスのCEOが、今後数年以内にEV生産は原材料不足に直面すると警告を送っています。これはミラノで行われている FT Future of the Car 2022 会議での発言で、2025年から2026年頃に掛けて、バッテリーの供給問題に苦しむだろう、と述べています。各社のバッテリー製造計画は将来のEV需要を満たすペースで進んでいますが、必要原材料の確保は保証されておらず、これが地政学の問題を引き起こすという懸念を述べています。充電インフラ、原材料のサプライチェーン、地政学、という個々の問題でなく「全体像」を、まだ誰も把握しきれていない、という事を強調しています。
https://bloom.bg/37ziggC

世界最大のナトリウムイオン電池製造メーカーで量産体制を発表した「Natorn社」の電池に関わる詳細情報が伝えられています。ナトリウム電池はエネルギー密度が低くEV向けではありません。CATLのナトリウムイオン電池は160 Wh / kgで現行のリチウムイオン電池の約半分です。Natronのナトリウム電池は独自のPrussian Blue電極を基に、高いエネルギー密度を確保する事に成功しています。また、0〜99%の充電状態で8分の超高速充電を可能にしており、充電も50,000サイクルが寿命と伝えられています。現行のリチウムイオン電池の5倍以上です。現在の利用用途はデータセンターのバックアップ電源や産業用車両等の産業用ユースを対象としており、EV向けには開発をしていませんが、EV充電器のバックアップ電源としての利用が検討されています。
https://bit.ly/3whtGxV

ロイターの欧州版がエネルギー転換における鉱業の重要性と対応の遅れを特別コラムとしてあげています。今週、南アフリカで2つの大きな鉱業会議が開催されています。その中で、鉱山開発企業や投資家から発せられた圧倒的に多いメッセージは、事態が悪化しており対応が急務である、ということです。端的に言えば、エネルギー転換に必要な大量の銅、リチウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、グラファイト等の新たな鉱山開発計画が少なく、投資家が資金を十分に鉱山開発に向けていない、というものです。これは、新しい鉱山が新規開発困難な(環境や先住民の)管理管轄区域にあることが多く、投資のリターンを得るまでに数年かかる事が要因です。非常に長く掛かる多くの環境アセスメントや開発承認を得て、更に地域社会と協議して土地利用が可能になり、その後にも輸送と物流の問題を克服する必要があります。仮にそこまでたどり着いても、現在の新しい鉱山開発コストは、生産する商品の価格よりも速いペースで上昇しているという現実があります。銅が今年1万ドルを超える記録的な高値でも、新しい銅鉱山を建設することが必ずしも経済的に見合うという事では無いという事です。操業後も環境破壊や労働問題にも対応する為リスクがあり、投資が活発にならない現状があるようです。
https://reut.rs/3Pqlap9

欧州議会環境委員会で炭素削減と炭素市場に関する投票があり、その中で自動車メーカーは生産する自動車の排ガス量を2030年までに75%削減するという提案は否決されましたが、ガソリンとディーゼルからのEVへの移行を加速する為に2025年迄に炭素排出量を20%削減するという暫定目標を求めました。今後、EV販売を加速させる為により野心的な排出削減と排ガス規制に向ける動きがあります。
https://bit.ly/3yvQywn

5月8日にチリで憲法改正評議会の提案の1つが議会に提出されて採決で否決されています。内容は、リチウム、レアアース、炭化水酸の採掘権を州に帰属させ、銅鉱業の過半数を州が所有する、というものです。これは、3月に発足した新政権の選挙時の公約でもありました。ただし、環境規制の厳格化は可決されています。否決された鉱業・採掘権の州の権益拡大は、総投票数の4分の1を得ている事から、再度憲法改正評議会に戻されて修正案が提出される予定です。フィッチレーティングによると、恐らく州の所有権を3分の1に減らしたものが出る予定である、としています。
https://reut.rs/3lhNpZj
https://bit.ly/3L2cSjJ

世界的なディーゼル不足が深刻な状態になりつつあります。ロシアから欧州へのディーゼル燃料の輸出は依然続いていますが、量が減少し、影響が北米やラテンアメリカまで広がりつつあります。ディーゼル燃料は農業生産(農機具)、製品輸送に欠かせないもので、不足により米国では過去最高の記録的な高値になっています。あらゆる商品価格を押し上げる事になりインフレを加速させている原因の1つとなっています。欧米ではエネルギー高騰に伴う高インフレで景気が悪化しており、製品販売や投資に影響が出始めています。欧州連合はロシアのディーゼルに大きく依存しており、Refinitivのデータによると、5月現在までの欧州のディーゼル総輸入量の約半分は未だにロシア産が占めており、英国、フランス、オランダなどには、他の要求先よりも1トンあたり30ドル程のディスカウント価格で販売されているようです。その為、輸入者(輸入販売)がより多くのマージンが望めるという事です。
https://bit.ly/3srFQDh
https://bit.ly/3l26AGm
https://yhoo.it/3L2d9Dm

英国が本格的にリセッション入りする予測が大手シンクタンクから出されています。今後政府の支援策が無ければ、約25万世帯が極度の貧困に陥り、最悪の場合は約100万世帯に上る、としています。このニュースは「英国」という事で例を挙げているのではなく、過去の経済危機やパンデミック同様、ショックはまずは英米で始まり、一番長く最後まで影響を受けるのが大抵は日本という事で紹介しています。
https://bbc.in/3MhqxEM

欧州委員会がグリーン水素による発電に補助金の1つである差金決済制度を提案する可能性がある事が伝えられています。欧州委員会の気候責任者フランス・ティメルマンスがオランダのロッテルダムで開催された「世界水素会議」で述べたもので、RE Power EUスキームの一環として、この補助金を提案する予定という事です。ただし、水素による再生可能電力を電力グリッド(電力網)に戻す(供給する)場合にのみ適格となります。補助金によりグリーン水素発電を大規模に行うインセンティブを与える事が目的です。対象は、新しい再生可能エネルギー施設から電力を調達するグリーン水素プロジェクトのみを許可する計画です。電気分解槽でグリーン水素を製造する場合、再生可能エネルギーから得られた電力を水素製造に利用する為、科学者の間では、そのまま再生可能エネルギーで発生した電力を他の用途に利用した方が効率的との指摘が多く、電気分解によるグリーン水素が本当に良いのかは今後状況を注視する必要があります。
https://bit.ly/3FC6OgG

ブラジルが炭素市場を創設する為の大統領令を発行する予定です。炭素市場の創設は議会での法案投票を経ず大統領令にて行い、より迅速な処理を目指しています。ブラジルの炭素市場は、キャップアンドトレード方式で幅広い炭素クレジット市場の規制を含んでいます。政府は市場の取引プラットフォームに接続するカーボンクレジットの集中レジストリを作成することを計画しています。また、炭素クレジットのコストをブラジルの消費者に転嫁せず、国内炭素市場を国際炭素市場と統合する必要があることを強調しています。ブラジル政府は今月下旬に市場を立ち上げるためのイベントを開催する予定です。
https://bit.ly/3wpOnHZ

米国大手工業用アルミニウム製造企業の「ノベリス」が、新しい「低炭素リサイクル、及び圧延プラント」を建設する為に25億ドルを投資すると発表しています。工場の製品生産能力は年間60万トンで、2025年半ばに試運転を開始する予定です。 同社によれば、この新工場は米国で40年振りに建設される「(リサイクルを含めた)統合アルミニウム工場」になるといいます。ノベリスは現在世界で740億個の廃棄アルミ飲料缶をリサイクルしており、この工場の能力を追加すると、900億個の缶をリサイクル出来るようになるという事です。炭素削減では、スコープ1、及び2のカーボンニュートラルを目指し、主に再生可能エネルギーを動力源とし、再生水を使用します。また鉄道輸送を主体にする事で、ロジスティクス関連の炭素排出量を最大70%削減できる、としています。
https://bit.ly/3FDIpHy

ドイツのコングロマリットであり重電や自動化で世界的な企業であるシーメンスがロシアからの撤退を発表しています。シーメンスは高速鉄道車輛の製造やシステム運用の一部をロシアで担っています。時期は明確ではありませんが、完全に撤退する模様です。既に、高速鉄道の保守サービスのみを行っているに留まっているようです。ロシアから撤退する企業が相次いで発表される中で、そのコストについてのニュースが相次いでいます。
https://reut.rs/3yxOQud
https://vivid.money/feed/renault-exits-russia-what-consequences-for-the-carmaker/

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