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世界の環境関連ニュース(2022年4月第1週)

AIを使った廃棄包装の選別を行うコンソーシアムが立ち上がっています。名前を「パーフェクトソーティングコンソーシアム」と言い、今後2年掛けて現在には無い廃棄包装の分別に役立つ可能性のある人工知能(AI)のモデルを開発・テストします。コンソーシアムのメンバーは9社の企業と2つの大学が主体で構成されています。また、電子透かしなどの既存のテクノロジーと整合し、HolyGrail 2.0とはいくつかの協業があります。AIによる選別は材料の種類によって分けるだけではなく、メーカーや特定の商品をも認識する為、リサイクルそのものが大きく変わる可能性を秘めており、欧米では大変注目され資金が投入されています。
https://spnews.com/perfect-sorting-consortium/

ウクライナ戦争による食料価格の高騰で欧州委員会が輸送用燃料に混ぜるバイオ燃料の比率を下げた国の行動を支持した事に対し、バイオ燃料団体が反対声明を出しています。業界団体の声明では、「欧州委員会が発行したRe Power EUコミュニケーションでは委員会自身が再生可能エネルギーの国内供給源を増やす重要性からバイオ燃料を推奨してきたにも関わらず、内容が矛盾している」と述べています。更にEUのバイオ燃料産業がヨーロッパの食品とエネルギーの安全に戦略的に貢献した、と述べています。欧州では基本方針は維持するものの、政策の大幅な修正が必要となっており、様々な業界に与えるインパクトが徐々に顕著化しています。
https://biofuels-news.com/news/eu-biofuels-chain-critical-of-statement-on-blending-mandates/

4月1日に3月の欧州のインフレ率が7.5%と発表されました。予測は6.6%でしたが大幅に上回っています。悪い事に、インフレの上昇は数ヵ月先まで続くと報じられています。内容はもっと悪く、エネルギーの高騰が原因ですが、食料、サービス、耐久消費財の全てがECBの2%目標を上回っており、価格の上昇が広範囲で、単にエネルギー価格の上昇によるものだけでない事を反映しています。エネルギーや生鮮食品、アルコールやたばこ等の嗜好品を除いても3.0%まで上昇しており、米国も同様ですが、ある程度政策的な失政は否めません。ドイツでは既にガソリン1Lが場所によっては300円近くになっています。企業活動にもかなり影響が出ており英国では2月の自動車生産が前年比41.3%減となり、スウェーデンでは、今年の景気後退の予測が正式に出ています。
https://www.reuters.com/world/europe/euro-zone-inflation-hits-another-record-high-with-worst-still-come-2022-04-01/

米国大統領の息子であるハンター・バイデンのウクライナと中国企業からの巨額の資金提供スキャンダルが今週、米国で火を噴いています。今までこのスキャンダルを「ロシアの情報操作」と主張してきた米国の主要メディア(ABC, NBC, CBS, CNN等)が一斉に反転して報道し始めました。これは、ハンター・バイデンが将来起訴される可能性がゼロでは無くなってきたからです。犯罪容疑者をメディアが保護したと捉えられる事を恐れて、一斉に報道を始めた、という事が理由のようです。
ハンター・バイデンが起訴される可能性があるものは、外国のロビー活動とマネーロンダリングに違反した罪です。ウクライナと中国の会社からの巨額の資金提供を受けていた事実です。一部はオバマ政権時代のバイデンが副大統領の頃も含まれています。大統領のジョー・バイデン氏の弟にも資金が流れていたという事です。現在も捜査が続いています。このスキャンダルとガソリン価格の高騰により、バイデン政権が強力に推進している脱炭素・クリーンエネルギー政策への批判が高まり、1日100万バレルの石油戦略備蓄を中間選挙のある11月まで放出する事を発表しました。しかし、米国の1日の石油消費量は2000万バレルなので、あまり効果が無いと言われています。欧州でも脱炭素で締めすぎた規制への緩和論がポツポツと出はじめており、今後の政策展開は注意が必要かもしれません。
https://nypost.com/2022/04/01/hunter-biden-should-have-been-indicted-says-us-attorney/

LMEが金融行動監視機構(FCA)とイングランド銀行(BoE)から調査を受けることが伝えられています。これは、最近起こった混乱をレビューし、講じられた対策を評価するものです。LMEに関しては、一部不適切な取引が懸念されており、この調査結果でどのような影響があるか、見極める必要がありそうです。調査はニッケルの取引に関するものが主体です。
https://www.lme.com/en/News

EUで飼料不足から肉の消費宣伝を削減する呼びかけが政府から出始めています。EUは家畜の飼料を輸入に依存しておりウクライナの戦争を機に価格の高騰と量の不足が問題となっています。ドイツでも経済協力開発大臣が消費者に肉の消費量を減らすよう、呼びかけています。最も大きな問題が起こるのは、南米でのタネ付から収穫に至る今年末から来年春にかけてと言われています。南米はロシア産の肥料の依存率が高く、今年は(ロジスティックスの制限で)その量が少なく、また価格も上昇している為です。
https://bit.ly/3uUo2AR
https://bit.ly/3r2fIxR

大手のレンタカー会社がスウェーデンのEVメーカーと5年間で65,000台の納入契約を結んだ事が報道されています。契約を結んだのは、世界的なレンタカー会社であるHerzとスウェーデンの高級電気自動車メーカーであるPolestarです。顧客へのサービスは欧州で2022年春から、北米とオーストラリアでは2022年後半に始まる予定です。
https://prn.to/3J6JF6e

HNSWによるとマレーシアのパーム油生産量が上昇していると伝えています。ロイターが行った調査で、3月には2月比16.4%生産量が増加、在庫も2月から0.51%増加して153万トンになり、5か月振りに増加すると予測されています。原因は「ひまわり油」で、ロシアのウクライナ侵攻により港湾利用に問題が起こり、主要な黒海地域からの食用油の供給が影響を受けた事によります。その為、代替品としてパーム油への需要が増しているという事です。特にウクライナからのひまわり油の輸入が多いエジプト、イラン、サウジアラビアは、季節需要を満たすためにパーム油購入をする必要が生じた、としています。アイルランドのスーパーでも、環境問題から一旦中止したパーム油製品を再び店頭に並べる事を始めています。食料油の問題は、来年にかけて国際的に大きな問題となる可能性が指摘されています。
https://bit.ly/3LFc8BN

オランダの多国籍銀行・金融サービス企業である「ING」が「世界的なエネルギー危機とアメリカの気候変動の野心」という現状分析を行ったレポートをHPに掲載しています。ポイントは、グリーンエネルギー移行前の段階では石油とガスが引き続き支配的であり、石油とガスの生産は増加、電力部門の脱炭素化の遅れ、原子力の再検討、気候変動への法律と措置は保留中となる、としています。エネルギー危機の中、再生可能エネルギーが十分に行き渡るまでの移行期間が欧州でも大きな問題となっており、この動きはエネルギー輸出国以外、欧米だけでなくその他の地域でも同様の事が起こると予測されています。
https://bit.ly/36Rz1mW

プラスチックのサーキュラーエコノミーに強い影響力のあるエレンマッカーサー財団がプラスチックの使い捨て軟質包装に関する新たなレポートを発行し、企業と政策立案者の両方が必要とする「緊急行動」を示しています。また、プラスチック包装に関する2025年以降の目標達成に向けて、必要な21の具体的かつ緊急の行動を特定しています。行動の1には、不要な柔軟な包装を排除することが含まれています。最も強調されているものの1つが、企業による使い捨て軟質包装がない状態での製品を供給する方法の確立です。それ以外にも、紙などのリサイクルが容易な代替材料への切替を推奨しています。エレンマッカーサー財団のプラスチックサーキュラーエコノミーは事実上欧米でデファクトスタンダードとなりつつあるので、この動きは要注意です。
https://bit.ly/35FA1d0

ロシア依存の特に高い欧州内の国で景気が急速に悪化しています。更に歴史的にも異常なエネルギーインフレが起きており、スタグフレーションへの備えを始めています。ウクライナのブチャでの無差別殺害によって、一旦収まったロシアからのエネルギー輸入に対する禁輸措置の議論が再び浮上しています。レーザー等の先端技術で比較的優秀なリトアニアは3月に15.5%のインフレとなり、既に原材料の入手もままならい状況です。ドイツの自動車メーカーも同様で、生産調整だけでなく、一部工場が生産停止になっています。また、大手投資機関でもあるJPモルガンがロシア投資により1ビリオン(1200億円)規模の損失が出る可能性を発表しています。欧州では先週から銀行や投資機関によるロシアでの潜在的な損失を発表しています。景気の鈍化と金融機関による損失によって、少し欧州の景気の先行ききが怪しくなり始めています。
https://bit.ly/3udx1ye
https://reut.rs/36QpBrS

英国でリチウムイオン電池リサイクルを計画している会社の許可が却下されています。会社名は「Fenix Battery Recycling」で、元々WEEE処理の会社の経営者が立上げ、リチウムイオン電池に関しては将来2万トン/年の処理能力を計画しているところです。却下の直接原因は廃棄バッテリーの輸出入、保管、処理の許可を得ず廃棄バッテリーを輸入した事及び防災や環境保全に対するその他の能力の不足という事でした。Fenix社は、2020年9月に計画を発表し、複数の種類のバッテリーのリサイクルを英国で初めて行うと主張していました。工場は、ウエストミッドランド地区で計画され、既に設備も導入済みでした。英国では、現在リチウムイオン電池による廃棄物保管所の火災が頻発しており、徐々に社会問題化し始めています。
https://www.letsrecycle.com/news/battery-plant-denied-permit-over-competency-fears/
https://fenixenv.com/

資源と廃棄物の専門サイトであるCircular(サーキュラー)が、「洞察」としてウクライナ戦争が欧州の廃棄物産業にもたらす影響を伝えています。最も影響を与えているのは廃棄物発電に用いられる製材廃棄物(おがくず等)、ドライバー不足、輸送用の燃料価格の暴騰、の3点です。戦争以前に既に木材廃棄物は不足していました。輸送用燃料に関しては、船舶用が2倍、ディーゼル価格は史上最高値付近で維持されています。特に輸送費の上昇は、価格に敏感な廃棄物産業に大きな影響を与えています。また、欧州域内でも国境を超える廃棄物には手続きが必要ですが、その処理に時間が掛かっており、その他の地域から入るものについては数ヵ月掛かる可能性も指摘されています。既に、あらゆる素材に影響が出始めています。
https://www.circularonline.co.uk/features/how-conflict-in-ukraine-affects-the-waste-industry-in-europe/

格付け会社のフィッチレーティングが経済見通しを発表しています。ロシアとウクライナの紛争によるエネルギー価格の上昇、インフレ圧力、更に(米国の)タカ派の金利見通しを考慮に入れています。2022年の世界のGDP成長予測を引き下げ、金利の予測を引き上げるだけでなく、マクロ経済と地政学的な不確実性が高まる中、スタグフレーションリスクの高まりにポイントを置いています。インフレと金利上昇の長期化で成長が急激に低下するスタグフレーションの可能性が排除できない事を示しています。「中程度の影響」または「中/高の影響」の影響を受けやすい地域の大部分は、欧州、中東、アフリカで、航空機リース会社、空港、航空会を含む空の旅に関連する産業もが高いレベルの脆弱性を持つ、としています。いずれにしても戦争が始まって一ヵ月なのでまだ影響も部分的ですが、戦争後にも影響は残るようです。
https://www.fitchratings.com/campaigns/outlooks/global-economic#forecast-highlights

ドイツが電力部門の大幅な刷新を図る為の法律改正案(パッケージ)を発表しています。目標は2030年までに、ドイツの総電力消費量の少なくとも80%を再生可能エネルギー源から得るというものです。再生可能エネルギー源を増やすとともに、送電システムやグリッドに関する改正も含みます。電力は需給バランスで成り立っているので、ベースロードをどのようにするのか分かりませんが、壮大な試みと言えます。現状でも風が吹いて再生エネが余ると他国に(格安で)売らざるを得ず、どこまで可能になるのか要注目です。
https://renews.biz/77054/germany-unveils-accelerated-renewables-strategy/

自動車関連情報のみを扱うJust Autoがウクライナ戦争による欧州自動車産業への影響の特別ページを開き、トピックを集約しています。今後鉄鋼を始めとする資材の需要にも影響が出る事が予測できる情報が散見されます。参考まで。
https://www.just-auto.com/ukraine-crisis/

カナダのトロントに所在し、米国アイダホ州でアイアンクリーク・コバルト銅プロジェクトを所有する「Electra Battery Materials Corporation社」がスイスの「グレンコア」とリチウムイオン電池をリサイクルしたBlack Mass (BM)から採取したニッケルとコバルトのオフテイク契約を締結した事を発表しています。Electra社はトロントの北部に「バッテリー材料パーク」を建設中で、2023年に商業稼働を開始する予定です。北米では廃リチウムイオン電池からBMを湿式製錬する施設が限られています。また、抽出したコバルトやニッケルをオフテイク契約で鉱業会社と合意する事も始まったばかりです。まずは2022年に既存の機器を使用して300万カナダドル(230万ドル)でバッテリーリサイクル実証プラントを稼働させる計画です。リチウム、銅、グラファイトのオフテイク契約は他のメーカーと協議中と伝えています。Electraはエネルギーとして水力発電を100%使用する予定の為、温室効果ガス(GHG)の排出量を大幅に削減できる、としています。同社は、所有する鉱業資産とビジネスパートナーを活用して、硫酸コバルトとニッケルの生産工場、及び大規模なリチウムイオン電池のリサイクル施設により、電池前駆材料の生産を目指しています。
https://bit.ly/3Kl4Xyu

4月5日に欧州はロシアからの石炭輸入を停止する事を発表しています。およそ3週間前には、ロシアからのガスを年末までに2/3減らす目標を出しています。4月6日にドイツで再生可能エネルギーを2030年までに全電力消費の80%に引き上げる改正案が出されています。この改正案には、陸上風力発電を促進する為に、環境アセスメントに対する緩和措置も含まれています。これらの政策転換に対してEuractiveが伝えていますが、欧入する予算(というよりお金)がどこから捻出されるのかは、まだ何も明確になっていません。専門家の多くが現実問題としてかなり達成が難しい事を発言し始めており、達成するにはかなりのコスト増を招くと指摘しています。戦争でのロシア排除の為の政治的側面もあり、今後、修正が入る事が予想されます。英国は、原子力発電を最大8基まで増設する事を発表したばかりです。
https://bit.ly/3uf8VmE

英国では2022年4月6日から、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告どおりに1300社以上の大企業、及び金融機関が気候関連財務情報を開示する義務が生じています。大手貿易会社、銀行、保険会社のほか、従業員数が500人以上で売上高が5億ポンド以上の民間企業が含まれます。気候関連財務情報開示タスクフォースは、金融安定理事会(FSB)とマーク・カーニー(元加・英中央銀行総裁)、気候行動と金融に関する国連特別特使、及び英国を主とする金融顧問によって2015年にパリCOP21で開始され、それ以来、気候に関する財務情報開示の指針を発表しています(残念ですが、これも英国を中心とする国際金融業界とそのグループによるルールが創られ英国で実施、その後世界のデファクトとして進められる「いつものパターン」になりそうです)。
https://bit.ly/3KiTn75

ドイツ銀行が世界の大手銀行としては初めて来年米国がリセッションになるとの見解を出しており、欧米の様々なメディアで報道されています。ドイツ銀行はFRBが次の3回の会合で、それぞれで公定金利を50ベーシスポイント(0.5%)引き上げると予想しており、来年には金利が3.5%を超えると予測しています。景気後退予測の兆候として、米国の債券イールドカーブが反転している事を指摘しています(過去のリセッションと同様)。ただし、ややマイルドなリセッションとしているようです。ただし、市場関係者は米国政府やFRBが景気後退を回避する施策を実施する事を期待しており、また、労働市場の強さと消費者貯蓄が高水準であるからリセッションになりにくいとの見解を持っています。いずれにしても日米金利差は開くので、資源高で日本の経常赤字もあり、円安方向の圧力はしばらく強いかもしれません。
https://bit.ly/3LR3Uqr

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