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世界の環境関連ニュース(2022年2月第1週)

インド鉄鋼協会がインド政府に対してグリーンスチール製造に向けた政府支援を行うよう要求している事が伝えられています。インドは世界第三位の炭素排出国、且つ2070年のカーボンニュートラルを宣言しています。 現状の鉄鋼生産方式から大幅なアップデートが必要で、今後投資が徐々に活発になる事が予想されます。生産方式の変化に伴いスクラップ需要が増す可能性があります。
https://bit.ly/3r7JP7w

世界最大の銅鉱石及び銅の生産国であるチリの銅委員会(Cochilco)が2022年の銅平均価格予測を1月28日に発表しています。2022年は、$ 3.95 / lb(ポンド)、2023年は$ 3.80 / lb(ポンド)と予測しています。2022年から23年に掛けて需給のバランスが改善される事と米国の金利上昇で緩やかに下落基調としています。ただ、歴史的には高値圏にある事は変わりません。世界の銅生産は2022年に4.1%増加、2023年には5.5%増加し、市場は2023年末までに供給が需要を上回ると見られており、上値は重い可能性があります。
https://www.miningweekly.com/article/chiles-cochilco-maintains-2022-copper-price-forecast-2022-01-28/rep_id:3650

年間1億9千万本以上のタイヤをリサイクルしている米国のLiberty Tire Recyclingが業務拡大を発表しています。新工場はノースカロライナ州サンフォードに設立される予定で、廃タイヤから作る高弾力性のゴムチップ(公園等で使う木質チップ代替え材)を製造します。同社の宣伝では、カラー10年保証、木質チップ比較2.5倍の弾力性、木質チップ比較73%のコスト、としています。
https://bwnews.pr/3KOKD9f
https://www.groundsmartrubbermulch.com/

4月1日から英国で始まるプラスチック包装税に対応する為にメーカーが相次いてリサイクル材の利用を発表しています。英国で様々なプラスチック包装やトレーを生産しているMacpac社が再生PET80%を使うパッケージの種類を増やし新税に対応する事を伝えています。この新税と同様の税金は来年から順次欧州の各国でも採用さえる見込みで、現在欧州のプラスチック包装メーカーは再生材を利用した製品の開発と発表を継続しています。また、英国では課税対象になるか大きな議論を呼んでいた農業で使用する干し草のラップ材は非課税となることが決まっています。この税政策は運用を含め他国のシステムにかなりの影響があるため、注目されています。
https://www.macpac.co.uk/2021/12/17/plastic-packaging-tax-no-need-to-worry-with-macpac/

欧州のエネルギー価格の暴騰と炭素価格の高騰が招く難問についてMarket Screenerが分析しています。エネルギー資源の大半を輸入している日本は対岸の火事では無くなる日が来る可能性があります。
https://www.marketscreener.com/news/latest/Europe-s-energy-crisis-conundrum–37674642/

化学メーカーがリサイクル材混入量を上げたポリマー材料を製品と追加しています。家電メーカーがリサイクル材料の含有量目標を定め始めている中で、家電向け高性能ポリアミド(HPPA)を欧州の大手化学メーカーが発表しています。ベルギーの多国籍化学企業の「ソルベイ(Solvay)」がリサイクル材料を33%含むHPPA製品である『Omnix®ReCycleHPPA』を発表しています。化学メーカーが自社の製品(材料)に最初からリサイクル材料を一定比率含むものを市販品として販売する事が先進的と言えます。
https://bit.ly/3odsTL4

カナダ最大のLibリサイクル会社であるLi-Cycle社が4半期決算報告を発表しています。同社は今月に入りノルウェーでの工場設立や米国オハイオ州のUltium Cells社(米国GMとLG化学の合弁会社)のLib製造工場に併設したリサイクル工場(BM製造工場)を発表したばかりです。4半期結果は売上が前年同期の50万ドルから440万ドルに大幅に増加しているものの、純損失は、前年同期の約440万ドルに対し、約2億500万ドルと大幅に増加しています。これは、事業の拡大に関連する人件費とネットワーク開発費の増加、更に上場に関わる費用の増加、としています。売上が440万ドルに大幅に増加していますが、リサイクルサービスからの収益は約10万ドルと、まだまだ事業として収益を上げる段階にないようです。それでもオフテイク契約による量とネットワークの確保に膨大な資金を投入しなければこの事業で先頭に立てない、という事を示しています。
https://li-cycle.com/news/li-cycle-holdings-corp-reports-financial-results-for-fourth-quarter-and-full-year-2021/

ドイツの産業と鉄鋼のコングロマリットである「ティッセンクルップ(Thyssenkrupp)」が、電解槽(製造)による水素ビジネス部門(ブランド名:Nucera)のIPOを今年前半に考えている事が伝えられています。IPOにより最大6億ユーロの資金調達を目指している、という事です。電解槽によるグリーン水素製造については未だに民間投資が活発化しておらず、政府支援が大半を占めている事からIPOによる資金確保が狙いと思われます。ティッセンクルップのNuseraは、水素製造用のクロールアルカリ膜技術では世界的なサプライヤーで、競合は旭化成、中国のブルースター北京化学機械、英国の化学グループイネオスです。このIPOにより市場で株が売買されてどの程度の株価になっていくか、投資家の判断を見る良い機会と考えています。
https://www.reuters.com/business/thyssenkrupp-could-decide-hydrogen-unit-ipo-first-half-ceo-2022-01-31/

ドイツの大手鉄鋼メーカーの「ザルツギッターAG(Salzgitter AG)」がプレスリリースを発表しており、2026年からBMWグループの欧州全工場にグリーンスチール(将来的にCO2を95%以上削減した鉄鋼)を供給する事を伝えています(Green Steelがもう目の前まで来たという事です。この発表は欧州でも驚きを持って受け止められているようです)。BMWは欧州工場で年間約50万トンの鉄鋼を使用しており(全量がすぐに切り替わるわけでは無いが)、将来、BMWグループの工場から排出された鉄スクラップはザルツギッターに戻されて直接リサイクルされます。BMWの車両で使用される鉄鋼製品の最大4分の1は既にリサイクル材料が使われていますが、この比率を2030年までに最大50%まで段階的に引き上げる計画です。ザルギッターは鉄鋼の生産を水素ベースの工法(電解槽からの水素利用のDRI:直接還元鉄)に切り替える予定、としています。BMWは日本のスバルと並び世界でも突出した1台当たりの利益率の高い会社の為、高価な材料が利用できる利点があります。また、BMWは多国籍な自動車メーカーとしては異例の40%以上を一族が支配(正確には一族の持つ財団)する会社で意思決定が迅速な会社です。EV化で車そのものの廃棄がメーカー主導になっていく中で、この直接ループが始まると「リサイクル材を扱う商社」にとっては大きな転換期になる可能性があります。
https://bit.ly/35HV3re

英国ではBrexit後に不足しているメタル回収(主に精錬)への投資が徐々に活発になっています。ロンドン証券取引市場に上場した「Technology Minerals社」の子会社である『Recyclus Group』は、鉛とリチウムイオン電池リサイクルを行う会社として設立されました。そのRecyclus社が、英国のウェストミッドランドで鉛蓄電池リサイクル工場を完成させて、2022年2月7日から操業を開始する事を伝えています。鉛蓄電池のリサイクル生産能力は年間の16,000トンで、2027年までに年間約80,000トンにまで能増する予定です。同社はリチウムイオン電池のリサイクルでも英国の様々な機関と協働しており、今後6年間で鉛とリチウムイオン電池のリサイクル工場を10個設立する事を目指しています。 来月には英国のバーミンガム北西に位置する「Wolverhampton」にリチウムイオン電池のリサイクル工場を設立する予定です。カナダのLi-Cycle社と同様、IPOにより一気に資金を集めて急拡大する戦略を取っています。ロンドン証券取引市場やニューヨーク証券取引市場は資金調達規模が大きく有利に働いていると言えます。
https://www.technologyminerals.co.uk/news
https://www.recyclusgroup.com/latest-news

欧州委員会が法規制を目指している「持続可能な製品イニシアチブ(SPI)」が2022年第1四半期末までに採択する予定で進められています。昨年第2四半期までにパブリックコンサルテーションが終了しており、欧州委員会の採択を待つ状況です。このイニシアチブは、EU市場に出回る全ての製品を、より高耐久、再利用可能、修理可能、リサイクル可能、高エネルギー効率にすることを目的としています。また、このイニシアチブでは、エネルギー関連製品に焦点を当てた現在の「エコデザイン指令」をより幅広い商品に拡張します。既に改正欧州バッテリー指令では持続可能な製品イニシアチブの要件が幾つか採用されています。現状のサーキュラーエコノミーが製品末期や廃棄のリサイクルに比較的焦点が当たっていますが、このイニシアチブ(法規制)により、製品の末期前に修理やアップデートを行うという事が追加されてきます。製品のライフサイクル全体に焦点が当たる為、リサイクラーにとっても少なからぬ影響がある内容です。
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12567-Sustainable-products-initiative_en

USスチールが2021年の決算を発表しています。下記リンクのP16にあるとおり、調整後のEPITDAが2020年の$162ミリオンの「損失」から2021年には$5,592ミリオンの利益へと大転換しています。2021年はキャッシュフローを含め、いずれもほぼ過去最高のパフォーマンスだったことが伝えられています。同社は現在「Best for All」という事業戦略をとっており、アーカンソー州のBig River Steelの買収 、アラバマ州のEAF炉の設置等を含めた拡大戦略を推進しています。2022年もポジティブな予測である事が伝えられています。
https://investors.ussteel.com/events-and-presentations/default.aspx

米国のアルミニウム協会が自動車産業向けにロードマップを発表しています。ロードマップは研究開発(R&D)を行う優先的な新技術を示し、業界(アルミサプライヤー、リサイクル業者、自動車メーカー、政策立案者、非政府組織、業界の利害関係者)が今後10年間のイノベーションを推進するため、コラボレーションを推奨する為のものでもあります。EV化やコネクテッドカーにより消費者の需要を満たす為に最先端の自動車用アルミ合金とアルミ製品の新たな設計が重要である、という背景があります。また、このロードマップには「リサイクルと持続可能性」がテーマの1つとして掲げられています。米国の動きは、始まると早いです。
https://bit.ly/3goiEPz

ノルウェーが本社で欧州数ヵ国に処理施設を持ち180以上のリサイクル及び廃棄物発電施設と(固形燃料)供給契約を持つ大手廃棄物処理会社の「Geminor社」が2021年に欧州全土で173万トン以上の廃棄物を処理し、およそ65%を燃料化(RDF/SRF)した事を発表しています。老朽廃棄物は70,800トン増の382,727トンになり、故紙も36%増の88,000トン、廃プラは5,300トンから10,500トンに増加しました。固形値燃料以外にも、マテリアルリサイクル用にリサイクルした原料は38%増加し23万トンになった事を伝えています。欧州や英国での規制の強化(輸出規制含む)や輸送コストの上昇でこの分野の処理業は順調に推移しています。
https://geminor.no/en/2022/02/significant-growth-in-material-recycling-in-2021/

欧州委員会は、ガス、及び原子力活動を対象とする気候変動の緩和と適応に関する分類法(タクソノミー)の補完気候委任法を提案しています。これは、EUが原子力とガスについて「グリーンラベル」である事を正式に発表した事を意味します。具体的には、「明確な制限と段階的廃止期間を条件」とし、持続可能な金融分類法(タクソノミー)に原子力とガス発電を含めることです。この提案に至るまでには加盟国で異なる主張が続いてきました。フランスは欧州委員会に原子力を(EUタクソノミーに)含めるよう圧力をかけ、ドイツはエネルギーを必要とする産業の為にガスを含める要求を行っています。これに対し、オーストリアとルクセンブルグは、EUのグリーン投資リストに原子力とガスを追加したとして欧州委員会を訴えると脅迫しています。新設のガス施設は、2035年末までに再生可能燃料または低炭素燃料で100%稼働し、その寿命全体で「少なくとも55%の排出削減」に貢献するように設計する必要もあります。直接排出する炭素量は270gCO2e / kWh未満である必要があり、20年間で平均550kgCO2e / kWを超えない事としています。この提案は、(エネルギー政策の変更が含まれる為)、政治的な背景による決定との見方が大勢です。現実的には、石炭を含む化石燃料を急激に排除し過ぎた為、地政学の影響もありエネルギー価格が暴騰し結果的に現実路線に戻さざるを得なかったという事です。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_711

英国の新興Libメーカーである「ブリティッシュボルト」が出資者である「グレンコア」と共同で、Libのリサイクル工場を設立する事を発表しています。場所はイングランド南東部のノースフリート(ケント)です。この工場は、将来的には再生可能エネルギーを100%使用し、2023年半ば迄に稼働する予定です。このリサイクル工場は、グレンコアが所有するBritannia Refined Metalsの施設内に設備を入れ設立します。処理能力は、年間最低10,000トンです。製品バッテリーを作るギガ工場は、イングランド北東部のブライス地区(当社の欧州駐在事務所から車で約30分)で建設が進められています。電池メーカーそのものがリサイクルに乗り出すのは、欧州の大手であるノースボルトも同じです。
https://bit.ly/3Gjc4EI
https://bit.ly/3HvgdXx

欧州ではrPET価格が上昇し続けている為、欧州委員会が各国でデポジットスキームを条件とし、その最低要求条件を提案している事が業界トップのインタビューで示されています。EUでは「使い捨てプラスチックに指令」により、飲料用PETボトルは再生プラスチックの含有量を2025年から25%、2030年から30%にする事が決まっています。現在rPETの価格が上昇し続けており、無着色品は1トンあたり1600ユーロを超える事もあります。今後、欧州委員会がEU加盟国における包装(廃棄物)の流通を保護する「EU包装、及び包装廃棄物指令」を検討する事が付け加えられており、原料としてPET廃棄物のEU域外への流通に規制が掛かる可能性があります。rPETは、将来同じ規制を踏襲する別の地域でも同じ事が起こる可能性があります。
新たに英国でのプラスチックの大型ケミカルリサイクル工場が計画されています。ノルウェーの新興企業で廃棄物発電やプラスチックのリサイクル、その技術開発を行う「Quantafuel社」がイングランド北東部で大型プラスチックのケミカルリサイクル工場を計画している事が報じられています。欧州と英国ではプラスチック廃棄物の非OECD国への輸出が禁止になり、また英国では製造されたRDFの主要輸出先であったオランダがBrexit後に関税を掛けた事で行き場が限定され、多くがデンマーク等に輸出先を切り替えていました。英国ではプラスチック包装税が4月から開始される事もあり、英国内での軟質包装プラスチックのケミカルリサイクルの必要性が増しており、投資に至ったようです。
https://www.quantafuel.com/
https://bit.ly/3GqIpJV

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