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世界の環境関連ニュース(2021年11月第4週)

世界で従業員47,000人、295拠点を有するパッケージ&エンジニアリングサービスの米国最大手の「ベリー・グローバル(Berry Global)」が、改定した新たなプラスチック・サーキュラーエコノミーのコミットメントを発表しています。これは同社が元々参画しているエレンマッカーサー財団のニュー・プラスチック・イニシアチブに則るものです。主なものは2030年までに日用消費財製品の包装の30%を再生プラスチックにする、というものです。再生プラスチックにはバイオプラスチックのような再生可能な樹脂が含まれます。又、この発表とは別に高度なリサイクル樹脂を製造販売する「Pure Cycle Technologies Inc.」ともリサイクル材の利用について提携を発表しています。同社はFDA再生プラスチック事業にも積極的に乗り出しています。やはり来年の条約協議が世界的に大きなインパクトを迎える前に廃棄物の確保の動きが必要で、アジアを除く欧米の大手プラスチック関連多国籍企業がこのようなコミットメントを作っていると推測できます。
https://ir.berryglobal.com/news-releases/news-release-details/berry-announces-goal-30-circular-plastics-2030-long-term-vision

欧州委員会によるEU廃棄物輸送規則の変更案が欧州の各方面で反響を呼んでいます。現状では欧州域内での(リサイクル)処理能力を超えるものが域外に輸出されており、域外輸出の規制を厳格にし、域内流通を緩和する事により、結果的に域内での埋立てや投棄が一部の地域で増え、違法取引が増える可能性がある、という懸念です。プラスチックリサイクルは値段が高いPET、PP、HDPEに集中する傾向があり、埋め立てされる軟質系が途上国に出ていた事を考えると、EU域内で処分するのは正しい話ですが、恐らくコストには全く合わないので、埋め立てコストとの比較になると推測できます。
https://www.letsrecycle.com/news/eu-waste-shipment-revisions-diverge-from-free-trade/
https://www.mrw.co.uk/news/eu-waste-shipment-change-sparks-concern-for-recyclers-18-11-2021/

中国政府が、質の悪いリチウムイオン電池や電池材料の生産能力拡大を抑制する計画を発表しています。産業情報技術省(MIIT)が発表した内容では、EV用としてはエネルギー密度が180Wh / kg以上、エネルギー貯蔵用としては密度が145Wh / kgを超えるもののみを製造する事を推奨しています。カソード材料は150Ah / kg以上の容量、三元材料のリン酸鉄リチウムは175Ah / kgを超える事が推奨されます。マンガン酸リチウムの場合は115Ah / kg以上の容量が推奨されます。これらの高品質バッテリーメーカーや、材料メーカーには援助が盛り込まれるようです。
https://bit.ly/3Czn27h

投資銀行アナリストによる環境サービス業界のM&Aの調査内容がRecycling Todayに記載されています。 環境関連サービス会社のM&Aは2021年に非常に活発になっており、過去最高になる可能性が高い事がデータで示されています。背景には家族経営の小規模事業者の世代交代、税率の変更、労働力確保の問題、サプライチェーンの制約により、2021年が会社を販売するのに適した年であると考えている事もあるようです。投資家が特に関心を示しているのは電気自動車とバッテリー市場に関連するリサイクル会社、という事です。環境サービス業のM&A活動は来年も続くと見られています。その理由はプライベートエクイティやインフラストラクチャに投資するファンドが基本的に(企業規模の)拡大が必要であると考えており、企業統合が必須と考えているからです。特に持続可能性に関連するイノベーションは投資家の関心と環境サービス全体の成長を長期的に促進する、としています。
https://www.recyclingtoday.com/article/trahms-william-blair-waste-recycling-mergers-acquisitions-2021-pace/

欧州の数紙が炭素市場について、ほぼ同じ内容を伝えています。現在の炭素市場は、各々の政府が主導する公式な「排出権取引スキーム」と、炭素排出者が植林などのプロジェクトにお金を支払う事で相殺する「自主的市場」があります。COP26での通称「グラスゴー協定」は排出量クレジットの二重カウントを防ぎ、現在ある個別市場が連携する為の「基盤を構築する」という結論に至っています。具体的にはこれから決まる事になります。将来、炭素排出量を迅速かつグローバルで削減できる機会が拡大する(あくまで)可能性があります。例えば、中国の石炭火力発電所が排出量を削減した場合、理論的には英国の鉄鋼メーカーに削減分の手当を売ることが出来るという事です。グラスゴー協定では、民間企業が開発途上国での排出削減を支援出来るように、自主的炭素市場が開発途上国で活動することを奨励しました。但しこれも、実際に排出削減に役立つのか、それとも市場が単なるグリーンウォッシングになるのかは先行き不透明な状況です。
https://www.theguardian.com/business/2021/nov/20/polluters-face-price-pain-as-global-carbon-trading-system-moves-forward

EUでバイオマスエネルギーに関するグリーンファイナンスの分類(タクソノミー)適用の問題が続いています。
これはバイオマスが「再生可能エネルギーか?」という問題とは別で、バイオマスに投資(銀行等がファイナンスを承諾)する際、「持続可能性の監視を強化する」事が求められ、その解釈に幅がある事が国によって問題となっている事です。林業とバイオマスに大きな補助金を出しているフィンランドはEU提案(森林監視の強化案)に猛反対しており、12月の投票によりEU内部でバイオマス産業がファイナンスを得る事が難しくなる可能性があります。あくまでEU内の事であり、他の地域での(政府や投資銀行による)バイオマスへ投資には、当面は大きな影響が無い模様です。
https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/finland-set-to-reject-eu-taxonomy-rules-over-biomass/

米国の鉄鋼メーカー「Cleveland-Cliffs社(クリーブランド・クリフ)」によるスクラップ回収業者FPTの「買収終了」のニュースが伝わっています。ニューヨーク証券取引所に上場する米国最大のフラットロール鉄鋼メーカーのCleveland-Cliffsは10月初頭にミシガン州のスクラップ回収業者である「Ferrous Processing and Trading Company(通称:FPT)」の買収を発表していました。同社は米国で9番目に大きい鉄スクラップの加工業&流通業者で年間スクラップ扱い量は約300万トン。主にプライムグレードの鉄スクラップ取扱業者です。買収額は約7億7500万ドル(約850億円)です。米国でのEAFへの投資が継続している事から、このセクターのM&A市場が今後も活発な状況であると見込まれています。
https://www.clevelandcliffs.com/news/news-releases/detail/538/cleveland-cliffs-completes-acquisition-of-ferrous

英国政府が正式に「バイオマス政策に関する声明」を出しています。科学的に炭素排出が石炭以上であり多額の補助金をつぎ込んでいる木質ペレットに対して、あまりにも世論を含む反対意見が多い為、重い腰を上げた内容となっています。英国政府の発表はバイオマスに関する持続可能性の基準、ガバナンス、規制の状況に「現実と科学のギャップがある」ことを認めているようですが、英国の気候目標を前進させるために「利害関係者と協力する」という事に留まっています。政府は「バイオマス燃料」を調達する為の基準が最新の科学的証拠と一致している」ことを保証したい、という記載に留めており、規制に関する内容までは言及していません。
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1031057/biomass-policy-statement.pdf

軟質包装の設計ガイドラインが欧州の民間団体から発表されています。欧州で複数の商品包装及びプラスチックの団体が共同署名しポジションペーパーを発行、その一環として業界団体のCEFLEX(軟質包装のサーキュラ―エコノミー団体)から、初のガイドラインが出ています。このガイドラインは、PE、PP、PE / PP混合物に関するもので、軟質包装をリサイクル可能にするための設計のガイドラインと実践的なアドバイスが含まれています。EUでは軟質包装の約17%しか収集・リサイクルされておらず、現在大きな問題となっています。来年から欧州でもプラスチック包装税が順次導入される事もあり、今年~来年一杯にかけてかなり容器包装と廃プラについて動きがあると見られています。
https://guidelines.ceflex.eu/guidelines/

ドイツの新連立政権が大幅な再生可能エネルギー比率の前倒しを発表しています。銅相場への影響が出そうです。2030年までに国の電力の80%を再生可能エネルギーで、暖房の50%を再生可能エネルギーにする、という事です。陸上風力発電用に土地の2%、洋上風力発電容量を3倍以上(30GWまで)、太陽光発電設備を4倍(200GWまで)確保する、としています。表向きはクリーンエネルギーの前倒しですが、欧州は現在、再生可能エネルギーが供給力不足で天然ガスへの依存度が高まっています。欧州全体で消費する天然ガスの40%はロシアの国営企業ガスプロム1社からで、その80%は旧西ヨーロッパで消費されています。ロシアは契約分を履行して供給していますが増産に応じておらず、完成したばかりの新しいガスパイプランである「ノルド・ストリーム2」は安全保障上の問題から出口のドイツで止まっており使用していません。元々米政権はこのパイプラインに反対して制裁を行っていました。ガスの暴騰は(票田を得る為に)欧州政府の政策的な失敗の部分も大きいのですがそれを認められない為、再生可能エネルギーの大増産に踏み切るようです。
https://www.spglobal.com/platts/en/market-insights/latest-news/electric-power/112421-german-coalition-agrees-2030-coal-exit-aims-for-80-share-of-renewables

知的財産情報サービスの「Appleyard Lees社」が、「Inside Green Innovation:Progress Report 2021」を発表しています。グリーン分野の特許出願分析、及び業界評価を分析したレポートで、日本の企業にも言及しています。Packaging Europeの本レポートの分析によると、グリーン分野の知的財産に関する内容ではバイオプラスチック開発の世界的な特許活動が2020年に活発化している、という事です。また1989年から2003年の間には日本のバイオプラスチック特許活動が世界で最も多く、技術革新の中心国でした。その後、日本での特許出願件数は「大幅に」減少し、東レやユニチカなどの大手企業は過去20年間で他地域に遅れをとっている、という事です。ただし、昨年度から日本も特許出願を増加させているようです。ドイツのBASFと韓国のLG化学は現在、日本以外で特許活動を主導している2社、としています。プラスチックのリサイクルとバイオプラスチックに関する特許活動が米国だけでなくヨーロッパでも増加しているという事です。
https://appleyardlees.foleon.com/igipr/inside-green-innovation-progress-report-2021/contents/
https://packagingeurope.com/report-upward-trajectory-bioplastics-and-chemical-recycling/

欧州初のPS(ポリスチレン)廃棄物のケミカルリサイクル施設の計画が発表されています。ドイツの「Ineos」が発表したもので、「Recycling Technologies社」との合弁事業で、稼働は2022年後半になるようです。PSのリサイクルはプラスチック廃棄物の課題の1つとされており、この種の投資が本格的になるという事は、将来規制への対応と考えられます。
https://bit.ly/3DXptSw

米国で融資された商用機器の量を反映する唯一のインデックスである「機器リース金融協会(ELFA)」が発表したデータによると、10月の設備投資用の機器融資の新規取引が2桁の成長を示しており、11月も引き続き順調な予測となっています。インフラ法案や各種の環境・脱炭素関連投資もあり、来年も引き続き産業機器融資への需要は高い見込みとされています。リサイクル機器や再生可能エネルギー関連も含まれています。
https://bit.ly/3CQAq7c

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