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日本が発電エネルギー燃料としてPKS(アブラヤシ殻)を使うべき理由

パーム核油の生産に使われるアブラヤシの種子の絞り殻である「PKS(Palm Kernel Shell)」は発電用のバイオマス燃料として利用されている。アブラヤシは油料作物の中でも含油量が50-60%(果肉・種子)と最も高い植物の1つで、単位面積当たりの油脂生産量は他の油料用植物と比較しても最高の部類に入る。 発電用のバイオマス燃料として広く利用され始めた「木質ペレット」のように、多くが森林残渣と共に木そのものを伐採し製造されるものとは違い、アブラヤシの木は数十年間で果実を実らせ続ける事ができる(木そのものの寿命は最大100年とも言われるが、商業用のものは25~30年で伐採、再植林される)。他のバイオマス燃料用の植物は、多くが収穫時に全て栽培され、また種付けから栽培を始める為、土壌への負担がアブラヤシよりも大きいものが多い。 また、PKSはパーム核油を搾った後の「残渣」であり、通常廃棄されている殻の部分を発電燃料として利用する事が特徴である。
<PKS> <木質ペレット>

ただし、これらは既に言い尽くされており、本稿で特別に取り上げる事ではない。 本稿では、PKSを日本がバイオマス発電用の燃料として使うべき重要な理由と思われるものを2点、挙げてみたい。

まず、石炭との混焼ができる発電用バイオマス燃料として広く利用され始めたものに、「輸入木質ペレット」(エネルギーの為に再生林を利用する森林バイオマス)がある。大量に生産されている事からPKSとの比較になっており、再生可能な燃料として電力の固定価格買取制度(FIT:補助金)の対象にもなっている。

1点目は、バイオマス発電燃料としての「輸入木質ペレット」は、温室効果ガス排出量の点でも生物多様性の点でも石炭等の化石燃料より悪く、補助金の対象である事が欧州を始め、世界各国で既に長年議論の対象になっている事である。
欧州委員会と科学者達による合同調査センター(JRC)の2021年1月25日発行「EUのエネルギー生産における森林バイオマスの使用」という公式調査レポートで、化石燃料よりも炭素排出量が多く、かつ生物多様性に害を与える、とデータを基に結論付けている(「EUのエネルギー生産における木質バイオマスの使用」の全文レポートは以下参照 https://bit.ly/3J9dvaB)。
オランダでは、既に輸入木質ペレットを利用する新規発電プロジェクトへの補助金は議会が停止する事を決議している。
2点目は重要な点であるが、一般的には殆ど知られていない事である。

実は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の対象となり一般市民が「輸入木質ペレット」に支払っている補助金(税金や燃料サーチャージ)は、結果的に海外の金融・投資機関の利益に還元されている可能性が極めて高い事がある。それらの補助金は全てが地球環境を守る為に使われている訳ではない、という事が挙げられる。

従来、発電用の木質ペレット産業は、海外では国際的な投資機関が深く関わり発展してきたのである。詳しくは左記のリンク( https://bit.ly/3dO4lCG )をご覧頂きたいが、端的に以下に事実を記す。

現在、日本が最も購入(輸入)量が多い「輸入木質ペレット」を販売している企業、すなわち日本の市民が支払うお金が原資となる上記補助金が最も支払われている「輸入木質ペレット」を生産する企業は「米国」にある。同社は米国最大の木質ペレット製造企業で、2010年に投資会社2社(内1社は米国でも最大級)がファンドを設立し、その資金で買収した会社である。2022年1月末時点での同企業の株主を調べると、1位が45.6%を保有する親会社である投資会社、2位が9.84%で同社の関連会社、3位は9.37%を保有する米国の新設投資会社であり、上位6社は全て多国籍な金融・投資会社である(出典:Market Screener:2022年2月1日現在)。3位の新設投資会社の創設者の名前をホームページで調べると、写真付きで「リン・フォレスター・ロスチャイルド」と記載されている(https://bit.ly/3B2qVlS)。

次に日本が「輸入木質ペレット」を多く購入する「カナダ」の木質ペレット製造企業は、英国の発電・エネルギー会社が所有しており、この発電・エネルギー会社は世界最大の「輸入木質ペレット」消費会社でもある。同社の株主の上位10社は、やはり全て国際的な超大手投資会社である。同社は過去ずっと赤字の企業だが、英国の再生可能エネルギーに対する補助金と優遇税制によって黒字化し、株主に安定した配当金を出し続けている。
2020年の同社の税引前利益は約364億円の赤字(マイナス£234.7百万)だが、受け取った補助金は約1,280億円(£832百万)。1株当たりの「利益」は約37.6円(≒£0.243)で、そのうち株主に支払った配当金は1株当たり約26.5円(≒£0.171)である。

事業では赤字の会社だが、補助金と税制優遇によって2020会計年度に株主に支払った配当の総金額は100億円を超えている。更に同社が消費する年間800万トン以上の輸入木質ペレットの半分は、実は同社の米国やカナダにある製造拠点以外の、前述の投資会社が持つ米国最大の木質ペレット生産企業である。
英国の一般市民が支払う補助金(税金)や燃料サーチャージは、こうして国際的な金融・投資会社に渡るという仕組みが出来上がっている。
(英国の発電・エネルギー会社の木質ペレット発電事業と補助金に関するデータは、英国の環境シンクタンクEMBERの以下のリンクのレポートをご参照願いたい。https://bit.ly/3rvOKiU)。

日本には直接関係は無いが、世界第3位の木質ペレット製造企業である「エストニア」の企業は、米国の大手グローバル・オルタナティブ・投資管理会社が所有している(オルタナティブ投資とは、伝統的な株式や債券以外に投資する事をいう)。同社の木質ペレットの販売先は、英国(上記の英国の電力会社)、ドイツ、オランダ、デンマークの発電会社が90%以上を占めている。理由はデフォルトのリスクが極めて少なく、安定した長中期の売買契約を締結できるからと思われる。

何より問題なのは、これらの世界3大木質ペレット輸出会社の全てが、各国の発電会社に対して5~15年の「長期売買契約」を結んでいる事である。消費者から見れば、再生可能なクリーンなエネルギー燃料として納得して補助金や燃料サーチャージを支払っているのであるが、実は欧州委員会が科学的なデータに基づいて検証した結果、輸入/輸出木質ペレットの使用は化石燃料より温室効果ガスと生物多様性の面で疑問符が多く、更に一般市民には見えない形で、それらの補助金が配当金等により間接的に国際的な投資会社に支払われている事である。それが5年から15年も続くのである。

PKSには、上記の「輸入木質ペレット」の様な、国際的な金融・投資会社が介在している仕組みが殆ど無い。PKSの消費者である電力会社もPKSを輸入し販売する企業も、基本的には日本企業や日本企業と関連した企業が多い。

上記2つの理由から、PKSは日本が独自の道を進む事ができるバイオマス発電燃料として、今後一層の利用促進が期待される。
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