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特別コラム:中長期的な銅価格の上昇要因

2022年10月、EU代替燃料インフラストラクチャ規則(Alternative Fuels Infrastructure Regulation (AFIR))の法案が欧州議会を賛成多数で通過した。欧州の法律制定の手続き上、今後も幾つかのプロセスが必要となるが、法案が提案通りに制定された場合、欧州の主要高速道路に充電ステーションが最低60Km毎に設置される事になる。EU加盟国には約377,000の充電ステーションがあるが、これは過去に設定した目標の役半分程度に留まっている。この法案が提案通りに成立するとEU加盟国は2024年までに目標達成の為の国家戦略を制定する事になり、早ければ2026年にも制度が義務化される予定である。
https://bit.ly/3MUyTUj

2022年10月、鉱業大手のBHPとチリのAntofagasta Minerals(アントファガスタ・ミネラルズ)は、チリの鉱業ロイヤリティー法案が自社の競争力に影響を与え、投資を再考する可能性がある事を示した。チリは世界最大の銅生産国であり、CODELCO(コデルコ)、グレンコア、アングロ・アメリカン、フリーポート・マクモラン等の世界的な鉱業大手もチリで操業している。 現在、チリ政府は新しいロイヤルティ法を提案している。この提案は大手採掘企業に適用され、売り上げ(銅価格)と収益の両方に応じたロイヤルティが課される事になる。提案された変更が適用された場合、大手企業が支払うその他も含めた税金の総額は売上の48%を超える可能性がある。鉱業ロイヤリティー税の増税はガブリエル・ボリッチ大統領の選挙公約でもあり、当初提案より軟化しているものの、増税路線に変化が無い。
https://reut.rs/3yX3Xgl

2022年9月調査機関のフィッチソリューションズ・カントリーリスク&インダストリーリサーチが銅価格の予測を修正した。2022年第四半期の銅価格は世界の経済成長の減速から下方修正したが、2023年は上昇に転じ、更にグリーン経済への移行で銅消費が伸び、2023年は需給が供給を上回る可能性を示した。また2026 年までに引続きグリーン経済への移行が進む事で需要が伸び、市場がより需要過多になり2020年代の終わりに向かって価格を上昇させる、との予測を示した。
https://bit.ly/3MQKL9P

2022年3月にチリのサンチアゴで開催された世界銅会議(World Copper Conference)では、鉱業コンサルタントグループのCRUが、今後10年で銅の供給不足が年間600万トンに達するというプレゼンがなされ、この不足分を埋める為には1,000億ドル以上の投資が必要との見解が出された。 需要は2030年までに年間約2,550万トンに達すると予測されている。しかし、供給はそこまで伸びない可能性が指摘された。理由は、品位の高い新規銅鉱床へのアクセスコストの問題や低品位の鉱床に掛かるコスト増で、銅価格に上昇圧力が掛かる、としている。銅需要を牽引するのは、再生可能エネルギー、建設、運輸、そして軍事産業との見方を示した。
https://bit.ly/3rfjsw0

同じく2022年3月にオーストラリア・ファイナンシャル・レビュー紙(AFR)が主催したビジネスサミットでは、世界最大手の金融機関や鉱山関係会社のCEOが出席してパネルディスカッションを行い、世界で急速に進むグリーン経済への移行が銅やニッケル需給に歪みをもたらす懸念を相次いで伝えた。その一部はAFRのウェブサイトで一部公開されている。
https://bit.ly/3pLucS4

銅の供給問題は、銅鉱山への新規投資が今後増加する需要に追い付かないという事が大きな要因である。 鉱山開発には環境アセスメントや労働規制の問題等があり投資回収に時間が掛かる事と、チリに見られるような政権の交代による政治的なリスクが挙げられる。低品位の鉱床からの採掘ではコストが掛かる。 今後、銅の価格がまたハイパーサイクルで上昇した場合、低品位鉱床を含めた鉱山開発への投資が増えると考えられるが、それまでは需給バランスの均衡が難しいという時期が続くと予想されている。 欧州では廃棄物からリサイクルされた「銅スクラップ」の非OECD諸国への輸出にインフォームドコンセント(相手国の同意と輸入者側の処理能力の評価)と銅スクラップ内の銅純度の「しきい値」を設定して、環境問題を理由にリサイクル資源を外部に出さないような仕組みを作っている。 次のハイパーサイクルでは、欧州以外でもこのような銅に対する資源ナショナリズムの動きが起こる可能性がある。

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