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NEWSCONの気になるNEWS(2024年1月第2週)

中国の大手LIB及びEVメーカーのBYDは中国国内で総投資額約14億ドル(約2000億円)規模、年間生産能力が30GWhのナトリウムイオン電池工場の建設を開始しました。今回のギガ工場のターゲットは超小型EVや電動スクーターです。昨年末に中国ではナトリウムイオン電池を搭載したJAC Motors製Yiweiブランドのハッチバックが製造を開始しました。今月中には販売開始が見込まれています。この車両にはHiNa製のナトリウムイオン電池が搭載されています。BYDは淮海グループと2022年11月に提携、2023年1月にはLFP(リン酸鉄リチウム電池)工場の建設を開始しています。同LFP工場の投資規模も14億ドルで、試作開始は2024年3月を予定しています。新たなNMCへの投資の話題は最近減っています。
https://carnewschina.com/2024/01/05/byd-starts-construction-of-30-gwh-sodium-ion-battery-plant-in-china/
https://electrek.co/2023/12/27/volkswagen-backed-ev-maker-first-sodium-ion-battery-electric-car/

最も野心的なEVへの移行義務が始まった英国ですが、昨年の新車におけるEV販売率は2022年の16.6%から2023年は16.5%に若干減少しています。2023年の新車登録台数は前年比で18%近く急増しました。しかしEVの増加は全体程伸びておらず、僅か乍ら比率が減少する結果となりました。ハイブリッド車は新車登録の20%となっています。英国ではノルウェーの様な手厚い助成は行われておらず、補助金も2022年に終了している事から販売の伸びにブレーキが掛かったと見られています。2024年の新規則によりメーカーは販売する乗用車の22%をEVとする必要があります。達成出来ない場合は多額の罰金が課されます。その為、英国の自動車製造貿易協会(SMMT)はEVへの消費税(VAT)を半減するよう請願しています。景気減速での新車登録台数の上昇は、リース車両が牽引しています。大幅なインフレから企業が税制メリットのある車両への転換を急いだ事が要因のようです。
https://www.thisismoney.co.uk/money/cars/article-12929295/New-cars-sales-grew-18-2023-best-year-registrations-pandemic-EV-demand-fell-forecast.html

先月、フランスはEVに対する奨励金規則に「製造時炭素排出量」を追加した事で中国製EVが事実上排除される事になりました。欧州政府も中国製EVに関する中国政府の補助金の正当性の調査を開始しています。それらに対抗する為、中国政府はEUから輸入したブランデーに対する反ダンピング調査を開始しました。これは主にフランスをターゲットにしているものです。フランスはEUのブランデー輸出量の99.8%を占めています。中国市場調査グループのトップは「中国のこの動きは、欧州で高まる保護主義に対して強硬策を講じる事がで出来ることを中国が欧州に知らせる絶好の攻撃だ」と述べています。中国と欧州との貿易紛争は更に悪化する事が濃厚となっています。
https://www.rte.ie/news/business/2024/0105/1424926-shares-in-brandy-companies-drop/

インドネシアでは2月14日に大統領選挙が行われます。昨年行われた調査ではインドネシア人の71.1%は中国が東南アジアで最も影響力のある経済大国であると回答し、その比率は、2022年の67.9%から増加しました。インドネシアはアジアのEVハブになる事を目指し、積極的に中国を中心とするEV関連の海外投資を受け入れています。経済的には中国に大きく依存しており、現政権下でその状況は過去最高に達しています。そのような中、先月末に起きたスラウェシ島の中国青山控股集団のニッケル工場での21人の爆発死亡事故は労働者の抗議活動の先鋭化やソーシャルメディアで大きく拡散され、選挙に影響を与えています。インドネシアは石炭輸出からEVハブへと産業転換を図っていますが、実はインドネシアでのニッケルやアルミニウムの生産は石炭火力(発電)への依存度が高く、低品位ニッケル鉱石の処理で発生する大量の有毒廃棄物の処理に問題があり環境問題が深刻化しつつあります。更に米国IRAの「懸念企業規則」やEUの「デューディリジェンス指令」により、インドネシアの目論見に対する外部環境は大きく変化しています。選挙の結果次第ではインドネシアに投資した中国企業の過剰生産能力(主にニッケルとアルミ)が新たな供給過剰とダンピングを国際市場で引き起こす可能性があります。中国では電力需要問題に起因する政府の規制によりアルミニウムの生産能力が年間4300万トン迄となっています。既にその枠は埋まっています。新たな設備投資の多くはインドネシアで行われており影響は軽微では済まない可能性があります。現在のインドネシア議会は4/5以上が連立政党で構成されており「野党」が入る余地は殆ど無い状況の為、政策は大統領選により大きく左右されると見られています。有力な候補者はプラボウォ・スビアント国防相とソロ市長でジョコウィ氏の長男のジブラン・ラカブミン・ラカ氏です。1回目の投票で過半数を獲得する候補者がいない場合、6月に決選投票が行われることになります。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-01-05/explosion-in-indonesia-puts-china-backed-nickel-expansion-in-focus-ahead-of-vote

1月1日からBRICsにサウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、イラン、エチオピアが加わりました。BRICSの人口は約35億人、経済規模は世界経済の約28%です。BRICsの1つの狙いは欧米がコントロールする国際金融システムにおけるプレゼンスの強化です。それには米ドルからの脱却が含まれ、BRICsの決済用統一通貨構想が常に背後にあります。統一通貨構想を最も推しているのは、制裁を受けているロシアであり、イランはBRICsのメンバーではありませんが、統一通貨の創設に関心を示しています。制裁で経済が停滞するロシアは最もBRICsに依存し、中国は不動産バブルを脱却する為に製造業バブルを推し進めているという点で今後もBRICsが本当に上手く機能するのか懐疑的な見方も多いようです。インドは他国にルピーでの決済を要望しましたが、結局どの国も外貨としてインドルピーを持ちたくなく、よりドルへの依存が鮮明になっています。それぞれ歪な国内問題を抱え、資源や製品の対外需要で解決しようとする試は簡単にはいかないと思われます。
https://www.atlanticcouncil.org/blogs/econographics/five-under-the-radar-economic-trends-that-could-define-2024/

欧州委員会はドイツ政府がスウェーデンのノースボルト社に9億200万ユーロの巨額な補助金を出す事を承認しました。ノースボルト社は独ホルシュタイン州ハイデに25億ユーロの投資を行い、ギガ工場を設立する計画です。この巨額な補助金はノースボルト社が米国IRAの恩恵を受ける為に米国に投資する事を回避させる目的で行われました。欧州委員会はフランス政府が自国のグリーンテクノロジー産業を支援する為の29億ユーロの補助金についても承認しています。ドイツ副首相のロベルト・ハベックは「米国、中国との戦いの為に必要な補助金」と述べており、欧・米・中による事実上のグリーンテクノロジー補助金合戦がスタートしました。一部ではノースボルトが日中韓の電池メーカーに対抗する能力があるのか疑問視する声もある中、グリーンテックは今や政治が主導する産業政策の1つとなっています。
https://www.euronews.com/my-europe/2024/01/08/brussels-approves-german-state-aid-for-northvolt-battery-plant-to-avoid-losing-investment-

昨年は世界で約1,280万台のEVが販売され、地域的には中国が60%、西欧が22%、米国が11%、その他の地域が6%と推定されています。米国では新たな規則によりIRAの全額税控除を受けられる車両は43⇒19に激減、更に2025年からは電池材料にも規制が行われる為、対象車両数は更に大きく減ると予想されています。電池サプライチェーンの変更には数年が必要で、価格も上昇する事から米国でのEV販売の伸びが鈍化する事が確実視されています。世界最大のLIBメーカーの1つで価格とシェアで優位に立つ中国CATLの株価は過去6ヵ月で3分の1まで下落しました。同社の株価は予想PERの13倍で取引されており、これは競合する韓国のLGエネルギーソリューションの3分の1にも及びません。こうした中、中国メーカーは2023年後半より新たなEV輸出市場として「東南アジア」に注力しています。
https://www.ft.com/content/470ca89d-3adb-4c98-9532-de3962ea12b5

重要な海上航路での紛争により、国際貿易における「輸送」の混乱が「新たな常態」となる可能性が示されています。アジア・欧州間のスポット料金も2023年の平均から2倍近く上昇し、40フィートコンテナ料金が3,500ドル近くに達しています。中国製EVを欧州に運ぶ船舶も数が少ないだけでなく、迂回ルートによる運賃高騰の影響を受け始めています。欧州に石油や燃料を運ぶタンカーはスエズ運河を通過し続けていますが、殆どのコンテナ船はアフリカの南端を回るルートに迂回し始めています。航海期間も長く、コストも掛かり、GHG排出も増えます。船の種類にもよりますが、大型コンテナ船では燃料費が往復で最大200万ドル増加するケースもあります。中東の情勢は悪化しており「新たな常態」を念頭に置いての国際交易が始まりつつあります。
https://www.asiafinancial.com/shipping-chaos-set-to-be-new-normal-amid-war-climate-change

世界最大の金属リサイクル企業であるSIMSの株価が冴えません。株式に対する高度成長期と安定成長期の両方のフリーキャッシュフローの現在価値を合計して企業価値を算出する「2段階フリーキャッシュフロー方式」を利用すると、SIMSの公正推定株価はAUD($)22.11/株となります。2週間前には株価がAUD15.54でSIMS株は30%過小評価(ディスカウント)されている可能性が指摘されていました。しかし、それ以降も下げ続けており、現在はAUD14.08となっています。2週間前、Simply Wall StreetのサイトではSIMSのSWOT分析を行っています。このSWOT分析は、現在の世界の金属リサイクル企業が抱える問題が示されています。強さについては負債がキャッシュフローで十分にカバーされる余力があり、更に配当は利益とキャッシュフローによって賄う事ができる事です。しかし弱みは過去1年間で収益が減少し、更に金属及び鉱業市場の配当支払企業の上位25%と比較すると、配当性が低い事です。脅威となるものは年間収益がオーストラリア株式市場の平均よりも鈍化すると予想されている事です。これらにより配当と将来見込みの点で投資家の懸念を起こしています。SIMSは先進国で高騰するエネルギーと人件費によって、それらの地域での収益に陰りが見え始めています。1ヶ月前には英国事業の売却の噂が出るなど、金属リサイクル市場の不透明さと併せて、ここ数年の先行きの不確実性から株価が反応しているようです。
https://simplywall.st/stocks/au/materials/asx-sgm/sims-shares/news/is-sims-limited-asxsgm-trading-at-a-30-discount

英国の鉄鋼生産者団体UK Steelが鉄スクラップの輸出禁止を考慮するよう政府に要請した件で、英国金属リサイクル協会BMRAはスクラップ輸出制限はスクラップ事業の破綻につながる可能性があると警告を発しています。英国では鉄鋼生産を電炉化する動きが急速に加速しており、政府援助の交渉も進んでいます。BMRAは現在の英国のスクラップ発生量は年間1,000万トンであり、英国で計画されている電炉が全て稼働してもスクラップの消費量は700万トンとなる為、輸出禁止にする必要は無いと主張しています。しかしUK Steelとしては輸出に一定の制限を掛ける事で原料調達をし易くする意図があり、今後も英国での動きは1つの指標になりそうです。英国の鉄スクラップの主要な輸出先はトルコです。ただし英国でも国境炭素税が2027年から計画されており、スクラップを輸出して製品を輸入する場合の炭素発生量が別の意味でスクラップ輸出と価格に制限を掛けそうです。
https://www.recyclemetals.org/newsandarticles/the-uk-can-have-a-thriving-greensteel-industry.html

MySteel Globalが電池材料の短期見通しを出しています。総じて供給過剰による価格の下落が見込まれ、炭酸リチウム生産業者については1月の休暇もあり、一部は生産停止を行う見込みです。BMに関しては、BM生産者がオファーを控えている事もあり、横ばいに推移する可能性が指摘されています。LFPは予想を下回る需要が予測されています。三元系の前駆体市場は調整局面ですが、関連企業は2024年について楽観視しているという事です。
https://www.mysteel.net/news/all/5046596-a-glance-of-china-lithium-ion-battery-materials-market-20240109

金価格が高値に維持される予測が相次いでいます。先週、英国王立造幣局は、2023年に金を中心とする貴金属へ投資する投資家の数が急増し、前年比で7%増加した事を報告しました。ドル高、長期金利の上昇は、本来、金にとって投資家を集めるには悪い環境ですが、金への投資が進みました。現在、中国を先頭に、世界の中央銀行の金購入は継続しており、2024年も弱まる兆しがありません。ワールド・ゴールド・カウンシルが行った調査では、世界の中央銀行の24%が今後12ヵ月間に金準備を更に増やす計画を示していました。調査対象となった中央銀行の71%は世界の外貨準備の全体的な水準が今後12ヵ月で増加すると考えています。これは前年に比べて10ポイント増加していました。不確実性が高まり、特に米国国内での分断がより深まる2024年は、金への投資が続くものと見られています。
https://www.litefinance.org/blog/analysts-opinions/gold-price-prediction-forecast/

インドでは1月10~12日まで、2年に1回開催される「グジャラート・グローバル・サミット」が行われます。今回は133ヶ国からCEO、閣僚、外交官を含む約10万人の来場者が見込まれている大型イベントとなります。インド政府はこのサミットが過去最大となると見込んでいます。特に米国からは50社以上の企業が出席し、改めて米国企業の投資が中国からインドにシフトし始めている事を印象づけています。期間中、インドのモディ首相はイベントに出席し、特にインドで遅れている半導体やEV関連の投資を呼び込むと見込まれています。インド当局者によれば、モディ首相はこのサミットで多くの企業幹部らと非公開で会談する予定だという事です。
https://www.vibrantgujarat.com/

米国での自動車販売価格が上昇し、販売が年末からやや鈍化しています。2023年の1台当たりの平均車両価格は約4万8000ドルまで上昇しました。この傾向は2024年も続く為、自動車販売数の伸びは2%未満と予測されています。2023年の総販売台数は1530万台と予測されており、これはコロナ前の1700万台を下回っています。現在、販売価格と金利の両方が上昇している為、新車の購入は主に収入の上位20%世帯に依存しています。またEV販売も予測を下回り、2023年には160万台と予測されていたものが、130万台に留まると見られています。130万台は過去最高ですが予測をかなり下回るものとなり、現在もEVの在庫問題が続いています。
https://www.zerohedge.com/markets/automobile-sticker-shock-sinks?ref=biztoc.com

欧州リサイクル産業協会(EuRIC)は欧州のリサイクル業者が2024年~2029年の間に優先すべきtop4を戦略として打ち出しています。
内容が曖昧で分かりにくいので意訳します。
欧州のリサイクル産業は:
1) 欧州の産業界が気候中立と循環経済を実現する為の中心となる
2) 欧州と世界の両方で競争力を増す
3) 気候中立と循環経済に適した材料を製造し、エコデザインとインセンティブに対応する事で競争力を昇華させる
4) 循環型のバリューチェーンを構築する為の課題を克服し、循環経済の法的要件確立をリードする
リサイクル産業が価値を増す為のキーワードは気候中立(ネットゼロ)に対応出来るバリューチェーンの一部となる事、循環経済に対応した原材料製造ができる事、そして、それらを活用してネットゼロと循環経済の法的要件をクリアして産業界をリードする事、のようです。
https://euric-aisbl.eu/resource-hub/position-papers/recyclers-top-4-priorities-for-2024-2029

LIB材料の鉱山開発企業の停止や破堤が相次いでいます。一部のアナリストが2028年まで続くと予想するLIB材料の供給過剰が拡大しており、価格が低迷しています。その為、過去3~4年の間に投資が行われた鉱山開発に大きなリバウンドの影響が出ています。直近ではコバルト価格の低迷で、コンゴ民主共和国のChemaf Resources Ltd社が身売りを模索し、英国のHorizonte Minerals Plc社はブラジルのニッケル鉱山探索を縮小、更に資金難から2,000万ドルの緊急融資を呼び掛けました。豪州のCore Lithium Ltd社はグランツ鉱山の採掘作業を停止、ニッケル鉱山会社Panoramic Resources Ltdは経営破綻しました。LIB材料価格の急落により、鉱山や権益を売却しようとする企業は更に困難に直面しています。北米の自動車メーカーを中心に権益を購入する動きがありましたが、何れも成功していません。中国でも同様の過剰投資による関連企業の倒産危機が噂されています。実はこの状況を利用し鉱山権益の買収を試みているのがオイルマネーのあるサウジアラビアで、今後、石油オンリーからの脱却を図るサウジのLIB材料権益のプレゼンスは上がると見られています。
https://www.mining.com/web/battery-metal-price-plunge-is-closing-mines-and-stalling-deals/

インド政府は鉄鋼輸入の急拡大に対し関税の引き上げを行わない方針を示しています。インドの鉄鋼生産者業界は特に中国からの輸入の急増により影響を受けている事から輸入関税(7.5%)を引き上げるよう要請してきました。しかし関係者によるとインドの鉄鋼省は内需の堅調な拡大が続いている事から増税を行う方針が無いと伝えられています。先月まで関税引き上げの可能性が伝えられていましたが、一転して今の鉄鋼純輸入国としての状況が続く見込みです。鉄鋼需要が将来に亘り堅調とされるインドではアルセロール・ミタル新日鉄インド(AM/NSインド)がグジャラート州ハジラに単一の製鉄所としては世界最大となる粗鋼生産能力2400万トン/年の製鉄一貫工場を設立する事を示したばかりです。プロジェクトは2段階で、第一段階目は2026年、第二段階目の工事は2029年に完了する見込みです。
https://www.business-standard.com/industry/news/govt-not-planning-higher-taxes-on-steel-imports-despite-industry-s-demand-124011000415_1.html

OECDは1月9日に報告書発行とウェビナーを開き、世界最低法人税(グローバルミニマム税)の導入によって世界の大企業投資が変化する可能性を説明しました。グローバルミニマム税は2024年1月1日から、EU、英国、その他の主要経済国の多くで発効しました。大手多国籍企業の利益に対して最低15%の実効税率を適用します。OECDはこの税制の導入により企業がタックスヘイブン(租税回避地)での利益を失う為、多国籍企業の海外投資の流れが再構築されると見ています。
グローバルミニマム税は2021年に140ヵ国による協定で合意され、今年から施行されています。既に36ヶ国が法人税の下限を15%以上に設定する法律を導入しており、更に今後も国数は増える見込みです。グローバルミニマム税は年間売上高が8億2000万ドルを超える企業グループに適用されます。特に大手多国籍企業がアイルランドやオフショアタックスヘイブンの低税率国で利益を得る事を阻止する事を目的としています。グローバルミニマム税が導入されれば、タックスヘイブンとその他の国との税率の平均差は14%から7%に半減します。現在、世界の企業利益の約36%の課税率は15%未満と推定されていますが、グローバルミニマム税の導入後はその閾値(15%)を下回るのは僅か7%(36%⇒7%)に止まると予想されています。この税制の導入によりOECDが「投資ハブ」として定義したバミューダ、イギリス領ヴァージン諸島、アイルランド、ジャージー島、ガーンジー島、ルクセンブルク、オランダ、スイス、シンガポール等の管轄区域は税率が上がる事で税収が増える事になります。短期的には低法人税率と過去の2国間租税協定により実効法人税率が極端に低いアイルランドとオランダ両国の法人税収入が増える事になります。しかし長期的には、税制メリットが無くなる企業は投資を他地域に向ける事で資金の流れが緩やかに変化すると見込まれています。
https://www.oecd.org/tax/beps/webinar-economic-impact-assessment-two-pillar-solution.htm

米国でリサイクル施設への保険金額が大幅に上昇しているニュースです。米国の廃棄物及びリサイクル協会は、廃棄物リサイクル施設における廃リチウム電池の火災に関する報告書を発表しています。米国では大小合わせて年間約5,000件のリチウムイオン電池が原因とされる火災が発生しています。特にリサイクル施設での火災リスクが増大している事から保険金額が上昇し始めています。リサイクル施設が大きな損傷を負ったケースは過去5年間で41%増加しました。保険業界はリサイクル施設の危険性を認識し始めており対応しています。今までは対象資産価値100ドル当たり20セント未満であった保険料を、保険対象100ドル当たり10ドルにまで大幅に上昇させています。これは保険金額が50倍に跳ね上がった事を意味します。今後数年でリサイクル施設への保険のコストは更に上昇すると予想されています。同じような事が英国でも起きており、分別収集が厳格でない国での保険料金には今後も影響が出そうです。
https://wasterecycling.org/press_releases/nwra-and-rrs-release-report-on-threat-of-lithium-batteries-to-waste-and-recycling-infrastructure/

既に昨年議会を通過していた米国ニュージャージー州のEVとHV用バッテリー管理法が正式に成立しました。この法律は米国の州としては初めてEVバッテリーにEPR(拡大生産者責任)を課した事が特徴と言えます。今後バッテリーの製造業者はバッテリー管理計画を策定する必要があり、その管理計画はニュージャージー州環境保護局(NJ DEP)に提出し承認を得なければなりません。また計画は少なくとも5年毎に見直しする必要があります。既に一般的なバッテリーへのEPRを課している州は3つあり、バーモント州、ワシントンDC、そしてカリフォルニア州がそれにあたります。
https://www.njleg.state.nj.us/bill-search/2022/S3723

英国政府はネットゼロに向けて過去70年で最大の原子力発電拡大計画を発表しました。英国政府の計画では2050年迄に24GWhの発電容量を持つ設備を稼働させる予定です。スナク首相は「原子力は英国が直面するエネルギー問題に対する完全な解決策です。環境に優しく、長期的にはコストが安く、英国のエネルギー安全保障を確保するだろう」と述べ、計画の正当性を訴えています。欧州でも脱原発イデオロギーの強いドイツと太陽光発電を中心とする巨額な資金を再生可能エネルギーに呼び込んでいるスペインを除き、原子力発電への積極的な投資計画が最近復活しています。現在、英国のエネルギー価格は歴史的な平均価格の倍以上となっており、相次ぐ再生可能エネルギー計画のコスト高から家計への圧迫が問題視されています。元々ロシアの安価なガス政策を推し進めたドイツの「緑の党」による原子力発電を悪者扱いするプロパガンダに端を発した脱原発への動きは大きな逆転となっています。
https://www.gov.uk/government/news/biggest-expansion-of-nuclear-power-for-70-years-to-create-jobs-reduce-bills-and-strengthen-britains-energy-security

Fast Marketは中国の2024年鉄鋼業のグリーン化について特別コラムを載せています。興味深いのは鉄鋼業向けのバナジウム需要の大幅減と反比例する形で2025年にブームが起こると予想しているバナジウム・フロー・バッテリー(VFB)について言及されている事です。中国ではバナジウムの80%以上が鉄鋼生産に使用されています。中国の不動産業の不振からバナジウムは世界的に供給過剰となり価格が下落しています。つい最近、豪州のVSUN Energyはバナジウムフローバッテリーの電解液工場を稼働させたばかりで注目を集めていました。Fast Marketによれば2024年の中国の鉄鋼業のグリーン化は1)技術開発と設備のアップデート、2)水素の利用、3)コークス代替材の開発と利用、の3つが挙げられています。
https://www.fastmarkets.com/insights/green-ferro-alloys-to-create-new-opportunities-for-china-2024-preview/



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