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NEWSCONの気になるNEWS(2023年8月第4週)

4月末に欧州では初の本格的LIBリサイクルの湿式製錬工場を稼働させたばかりのフィンランドの大手エネルギー企業Fortum(フォータム)は、リサイクル事業の売却に乗り出している事を発表しています。現在フォータムは、フィンランド、スウェーデン、デンマークで行っている廃棄物管理及びリサイクル事業の運営に約1,300人を雇用しています。同グループの2022年のサーキュラー・ソリューションズ事業(廃棄物管理・リサイクル事業)からのEBITDA(利益)は約7,000万ユーロ(108億円)で、昨年末の同事業の純資産は約7億ユーロ(約1080億円)に達します。サーキュラー・ソリューションズ事業を売却した場合、LIBリサイクル事業だけでなく廃棄物発電への燃料製造事業も売却する事になる見込みです。ただしDDによる評価と取引が成立するかは不透明な状況です。Fortumが売却する背景には、脱炭素エネルギー分野に集中するという事だけでなく、現在は企業価値が高いレベルで推移している事が理由と推測できます。先日SIMSが買収した米国の金属リサイクル企業ボルチモア・スクラップ・コーポレーション(BSC)や今回のフォータムは地域では大手のリサイクル企業で、この業界としてはかなりの金額の買収案件になると見られています。
https://www.fortum.com/media/2023/08/fortum-initiates-strategic-review-its-circular-solutions-businesses

英国では2022年4月1日から「プラスチック包装税(PPT)」がスタートしました。英国で製造、又は英国に輸入されたプラスチック包装材(製品の包装を含む)に30%未満しかリサイクル材が含まれていない場合は、1トン当たり200ポンドが課税されます。先週、最初の会計年度である2022-2023年で得られた税収を政府が発表し、歳入庁が当初予想した税収より4,100万ポンド(約75億円)多い2億7,600万ポンド(約510億円)となりました。現在課税対象となる業者登録数は4,142社です。既に製造及び輸入された包装材の40%には再生材料が30%以上含まれており、それらは免税となっています。
https://www.circularonline.co.uk/news/plastic-packaging-tax-raises-276m-in-first-year-41m-over-target/

海外投資家が中国投資に対する見方を大きく変え、ポートフォリオの組み直しを急いでいます。理由は単純に中国の景気悪化だけでなく、政府の方針に従った方がよりリターンが期待できる、という新たな認識からきています。これは現在の中国をより正確に理解する為には重要なポイントです。具体的には中国の民間企業への投資を控え、より政府の「共同富裕:Common prosperity」政策に沿った国有企業への投資に急速に切り替えています。過去2年、中国政府は「共同富裕政策」のもとで富裕層を対象とした汚職の取り締まり強化や教育・医療機会の平等を推し進めてきました。最近では医療・製薬産業の汚職に対する取り締まりを「過去に例が無いレベルで」強化しています。中国政府は、国民の経済的負担を増大させているあらゆる分野を取り締まる方針です。海外投資家は最近まで成長の鈍化と高い若年失業率から、中国政府は景気回復を優先すると考えていました。しかし、それは大きく外れ、投資家にとっては衝撃的な事でした。海外投資家は中国政府は社会経済政策に容赦なく取り組むと信じ始めており、それはマルクス主義や社会主義に基づいていると考えています。例えばCSI医療サービス指数は年初来20%下落しているにも関わらず、国有医薬品メーカーの株は旺盛に購入し始め、今月は14%も上昇しています。同じく不動産開発でも民間のディベロッパーから国有企業のディベロッパーへと資金が動いています。この転換の背景について、スタンフォード大学中国経済・制度センターの徐成剛博士は「共産党の長年の恐怖は資本主義と民間経済の成長が政権打倒に動く事」である為、指導部が民間部門の信頼回復を行う措置を急いでいない、と分析しています。
https://www.asiafinancial.com/investors-dump-private-china-firms-embrace-common-prosperity

中国からの米国向けのEV電池や車輌部品が港湾検査の強化対象になっている事が伝えられています。米国は1年以上前に「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」を施行し、太陽光パネルや綿の衣料品等の強制労働による製造の疑いのある製品輸入を禁止しています。現在、米国税関・国境警備局(CBP)による中国の自動車工場向けの部品への検査が強化され、EVバッテリーと自動車部品の精査が行われている実態が明らかになりました。対象製品にはLIB、タイヤ、アルミニウムや鉄鋼等の主要な自動車原材料を含む部品が含まれ、米国の国境(港)で拘束されるケースが増えています。今後、米国に工場を持つ自動車メーカーはUFLPAの要件を満たす事を証明する証拠が必要となり、メーカーは警戒を強めています。既にUFLPAにより米国では国境に10億ドル以上の太陽光パネルが滞留しています。
https://www.reuters.com/business/us-imports-auto-parts-face-scrutiny-under-law-chinese-forced-labor-2023-08-17/

ブラジル政府は、企業の炭素取引市場、企業排出量の上限、及びカーボン・オフセットに関わる先住民族の保護を法律として検討している事が伝えられています。政府は既に議会に法案を提出しており、今後、企業向けの排出上限と炭素市場の創設について議論される予定です。排出量の上限が設定された場合、石油・ガス産業、鉄鋼、セメント、アルミニウム、食肉加工業者等が打撃を受けると見られています。この法案が議会で承認された場合、排出上限と排出権取引市場が正式に発効するまでには、2年間の監視期間が設けられる予定です。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、就任後に環境政策の強化を打ち出しており、前政権が許したアマゾンでの森林伐採を批判していました。先日のオーストラリアと言い、政権の後退で徐々に炭素取引市場が各国で整備される動きがあります。こうした動きは、何れ自国産業の維持のための炭素国境税に繋がる恐れがあります。
https://oilprice.com/Latest-Energy-News/World-News/Brazil-Looks-To-Introduce-Emissions-Cap.html

カナダのコバルト製錬及びLIB由来ブラックマス(BM)の製錬を行う新興企業Electra社が四半期決算を発表しています。同社はナスダックとトロント証券市場に上場しています。最近のエクイティファイナンスにより2,150万ドルを調達、年間最大2,500トンのBM処理施設を計画し、その状況を詳説しています。財務結果としては2023年Q2の営業損失は450万カナダドル(赤字)で、前年同期比の390万カナダドルから赤字が増大しています。同社はLGエネルギーソリューションとコバルト供給契約を延長、2025年から5年間で19,000トンの硫酸コバルトをLGに供給する計画です。予測EBITDAは施設が完成し商業営業を開始する2025年から年間960万ドル~1,260万ドルの範囲と推定、更に投資回収期間は1~2年と発表しています。発表後に時間外取引で株価は1.4%上昇していました。しかし年初来株価は下落し続けており、既に半分以下の状況が続いています。8月は1年前と比べ、株価が4分の1にまで減少しています。LFPの台頭やナトリウムイオン電池の市販化による環境の変化は徐々に先発で資金を集めた大手3元系LIBリサイクル業者に影響し始めている可能性があります。
https://electrabmc.com/electra-reports-q2-2023-results-and-provides-update-on-cobalt-refinery-project-and-black-mass-recycling-trial/

世界第3位のEV電池メーカーのBYDと韓国のスポーツ用多目的車の専門メーカーKG Mobility Corpは、韓国に合弁で電池工場を建設する交渉に入っています。韓国では海外製の電池セル生産企業と韓国内の自動車メーカーが共同で電池工場を建設するのは、これが初のケースとなる予定です。操業開始は2025年1月を予定していますが、詳細は未だ決まっていません。場所はKG社の工場近くを予定しています。特徴的なのは同社が9月に発売予定の新型SUV「トーレスEVX」にLFPを搭載する事です。同社は2021年からBYDと協議を続けてきました。韓国ではSUVにLFPを搭載する初のケースとなります。KG Mobilityは2025年まで開発コード「O100EV」のピックアップトラックと開発コード「SUV-F100EV」の大型SUVの2車種にもBYDの電池を採用する予定です。SUVやピックアップトラック用の電池はNMCではコストがかさむ為、将来はこのような流れが予測されてきました。技術的にも搭載可能になったという事で中国外でも動きが始まっています。
https://www.kedglobal.com/batteries/newsView/ked202308210009

グリーンスチールの量産に関する原料調達が難しい事情が伝わっています。先日スウェーデンのH2グリーンスチールがDRIに使う鉄鉱石ペレットをカナダとブラジルから輸入する契約を締結した情報をお伝えしましたが、その裏にはスウェーデン国内でのプロジェクトが進まないという事情があるようです。スウェーデンには鉱山会社LKABがあり、H2グリーンスチールの工場から僅か40Kmに位置するスカンジナビア最大級のノールボッテン鉄鉱石採掘所を運営しています。しかし資金調達やPJTのFSの成功確率など様々な要因で合意に至らず、結局大西洋を越えて船で1カ月以上掛けて原料である鉄鉱石ペレットを運ぶという選択をしました。本来スコープ3を含め最大限低炭素と宣伝したH2グリーンスチールでしたが、現実の原料調達は既に鉄鉱石ペレットを製造している施設のある所からの輸入以外での選択肢が無い事を逆に証明してしまいました。グリーンスチールは本当に商業利用でコストが合い実現可能なのか、先行する同社の動きは注視する必要がありそうです。
https://www.highnorthnews.com/en/swedish-steel-company-must-import-iron-ore-abroad-instead-neighboring-town

ドイツの鉄スクラップ市況は、トルコとアジア向けの一部の輸出で上昇傾向があるものの、依然停滞している事が伝えられています。メーカーは8月に鉄スクラップ購入価格を下げる予定でしたが、海外市況が若干持ち直した事で、国内価格を据え置いています。鉄スクラップについては特に構造用鋼のメーカーからの需要が非常に低く、売れ残った製品の在庫が依然として多い状況が続いています。これはドイツに限った事では無く、高金利で資金調達に問題が出始めた事で、相次ぐプロジェクトの遅延が世界中で発生しており、欧米では補助金では追い付かない状況と報告される例も増えています。ドル高もありドル調達コストが上昇している事から、BRICSを中心にドル以外での決済も増え始めています。中国は利下げで人民元安もあり、コスト競争力のある鋼材の海外輸出は依然減らない下地が維持されています。
https://www.euwid-recycling.com/news/markets/export-revival-staves-off-sharper-price-declines-on-the-german-ferrous-scrap-market-in-august-210823/

22日から24日までの3日間の予定でBRICSサミットが開催されます。BRICSは世界人口の40%以上、世界経済の約26%を占めており、欧米が支配する外交ルートの代替フォーラムを提供しています。その政治的・経済的な影響力は年々増しており、サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、インドネシア、エジプト、エチオピアを含む23ヶ国がBRICSの新規加盟を正式に申請しています。正式に申請していない国を含めると40ヶ国以上が拡大BRICSへの参加に興味を示しています。今回のサミットでは米・中の緊張やウクライナ戦争の余波で、西側諸国への対抗勢力になるよう加盟国を拡大し影響力を増大させる目論見があるものの、具体的な成果や行動の一致を実現する事は難しいと見られています。欧州では欧米政治のフィクサーとして長年君臨してきた1人であるジョージ・ソロスと彼の団体であるオープンソサイエティ―財団(OSF)が欧州での活動を大幅に縮小し、将来的に欧州事業の多くから撤退する可能性が報じられました。昨年から欧州では相次ぐ選挙で右傾化が明確になり、OSFが投入した資金や支援が影響力にダイレクトに反映しなくなっている事が背景にあるようです。OSFのブリュッセルのオフィスは180人居るスタッフの80%は削減、バルセロナの支店は年末までに閉鎖される予定です。ソ連崩壊後には同地域にあった7つの支部は、既にキルギス、ウクライナ、モルドバの3つだけになりました。世界で40%のスタッフを一時解雇する予定です。今年ソロスから息子のアレックスに経営をバトンタッチした後、既に財団の取締役会は家族メンバーが大半を占める緊密な組織になっています。OSFは「無制限の資金を提供する数少ない団体の一つ」として認識されており、受益団体は報道、人権、環境等、様々なグループの為、欧州ではこのニュースが一斉に報じられていました。色々な意味で世界のパワーバランスが大きく転換し始めています。
https://www.reuters.com/world/brics-expansion-hopefuls-seek-rebalance-world-order-2023-08-21/

ドイツのポリマー原料製造大手Covestroは、ポリカ―ボネートをケミカルリサイクルで循環させるパイロットプラント計画を発表しています。投資額は数百万ユーロ以上です。対象は含有量が50%以上のポリカーボネート廃棄品で、事前に分別する必要があります。特殊な化学処理プロセスによりモノマーに変換、ポリカーボネート製造の原料として再利用できます。リサイクル技術は現在も開発中で、単純なる熱分解でなく科学的な工程としており詳細は外部に公表されていません。ポリカーボネートは廃棄回収される材料そのものの品質が低い為、機械的にリサイクルするのが困難です。リサイクルの為の化学プロセスでは、薬品の使用や条件が複雑な為、コストが増し、リサイクルの商業化が難しいと言われてきました。
https://www.covestro.com/press/chemical-recycling-of-polycarbonates-reaches-a-major-milestone/

東南アジア諸国連合(ASEAN)は、相互運用可能な炭素市場の強化、GHG排出量、エネルギー効率報告の標準化等、8つの目標を掲げた「カーボンニュートラル戦略」を立上げ、署名しました。ASEANの経済大臣らは、この戦略は同地域に5.3兆ドルの経済効果を生み出す可能性があると言及しています。ASEANがカーボンニュートラルを達成するには約.6ギガトンの二酸化炭素排出を削減する必要があります。ASEANは一人当たりのGHG排出量は先進諸国に比べ少ない地域です。しかし近年この地域の経済・金融ハブとしての役割は増大しており、投資額は2023年の9,620億ドルから2030年までに2.1兆米ドル以上に倍増すると予測されています。その為、同地域を魅力ある投資先とする為に、この戦略は重要なものと位置付けられています。ASEANにとって持続可能な経済圏の創設は国際的なプレゼンスを上げる為にも重要な課題と捉えられています。
https://asean.org/asean-charts-course-for-a-sustainable-future-with-ambitious-asean-strategy-for-carbon-neutrality/

米国鉄鋼メーカーの再編に繋がる動きが続いています。米国の大手鉄鋼メーカーであるクリーブランド・クリフスがUSスチールの買収を提案し、一旦否定されていました。提案はUSスチール株を1株当たり35ドル(提案当時の時価の43%のプレミアム相当)で購入する事に加え、現金を追加し買収案を提示しました。それに対し今回は世界第2位で欧州最大の鉄鋼メーカーであるアルセロールミタルも、USスチールの買収を検討している事が伝えられています。アルセロールミタルはUSスチールの株を1株あたり38ドルで入札する可能性があり、実現すればクリーブランド・クリフスを含めた入札合戦になる可能性があります。ただしアルセロールミタルは投資家との協議中という事で正式な発表はしていません。同社はUSスチールの買収提案についてアドバイスを受ける為、バンク・オブ・アメリカと契約したという事です。
https://seekingalpha.com/news/4004742-arcelormittal-may-have-been-the-first-to-express-interest-in-us-steel-report

EVと電池市場に関して幾つか異なった動きが出始めています。
中国では既に供給過剰からEV電池在庫が増加し続けています。2週間程前、中国の電池メーカーの生産能力が2025年迄に年間4800GWhになり、需要の4倍になるというセンセーショナルな記事を乗せた中国のGelonghuiは、過剰供給による在庫の増加がサプライチェーンを圧迫し始めている現実を詳説しています。またFTは中国で電池技術やプロジェクトへの起業家の数が「劇的に」増加し、「ゴールドラッシュ」の状態が続いており、最大のリスクは増え続ける過剰生産能力であると警告しています。中国最大の食品メーカーの1社である南方黒胡麻集団までもが、今年リチウム電池の製造に35億元を投じると発表しています。これは政府から旺盛な補助金が得られるEVへの投資を見越したものです。不動産や鉄鋼も同じですが、あっという間に過剰供給が生れます。
米国ではEV在庫が予想以上に販売店に積み上がり始めています。スイスの大手金融機関であるUBSは最近、投資家向け情報で米国のEVが今年100万台の販売に達する見込みであるが、既に米国の販売店に積み上がった在庫は100日分の販売量を超える台数に達しており、内燃機関車の在庫数量が53日分なので、その倍に積み上がっている現状を伝えています。米国では2023年の新車販売総額に占めるEVの割合は8%未満にとどまる見込みで、中古車では市場全体の約1%に留まると見られています。米国の場合、最大の課題は価格で、消費者は高価格なEVを車を購入する最終判断の時点で敬遠する傾向にあります。しかしメーカーは価格維持の為にライン稼働率を上げる強気の生産を続けており、年末までには価格下落が顕著になる可能性が指摘されています。米国での車の供給過剰は内燃機関車でも同様な動きが見られます。こうした状況もあり、先週SPACを通じてナスダックに上場し、直後に時価総額でフォードの2倍近くまで株価が急上昇していたベトナムの新興EVメーカーのVinFastの株価は急落しています。米国での同社の展開は難航しており、初期納入の車輛はソフトウェアの不具合により全てリコールされ、この夏、米国の道路を走っているのは約350台にとどまっています。相次ぐ補助金で計画を早めて先行利益を狙ったEV新興企業や関連製品企業ですが、米国では需要が追い付かず、スタートして一旦供給過剰が始まっているようです。
またドイツでは、政府目標のEV保有台数に遠く届かないという現実が指摘されています。これは欧州のベルギッシュ・グラードバッハの自動車管理センター(CAM)が発表したものです。ドイツは2030年迄にドイツ国内のEV保有数を1500万台にする、という政府目標を掲げています。今年上半期の総EV保有数が120万台弱に増加していますが、政府目標を達成するには今年75万台の新車EVを販売(新規登録)する必要があります。しかし現実には上半期での新車EV登録は22万台、通年でも多くて45万台前後と見られています。このペースでは2030年迄の総登録台数は700-800万台となり、目標の半分にしか達しません。ドイツでは9月1日以降、法人に対するEV補助金が削減、又は条件により非対象となります。法人はEVの新規登録の3分の2を占めています。現在EVには個人で購入する場合に最大4500ユーロの補助金が出ますが、これも3000ユーロに削減されます。
https://bit.ly/3YIDsGU

米国商務省は中国産の錫メッキ鋼板とそのメーカーに122.5%の予備的反ダンピング関税を課すことを決定しています。この関税は中国の大手メーカー宝山鉄鋼にも適用されます。中国だけでなくドイツ産には7.02%、カナダ産には5.29%の関税を適用する予定です。ティッセンクルップやアルセロールミタル等の企業を含む、対象国の主要製品に影響を与えると予測されています。米国の輸入量に占める中国産錫メッキ鋼板の割合は約14%、カナダとドイツを合わせると約30%になります。英国、オランダ、韓国、台湾、トルコからの輸入品には反ダンピング関税を課しません。このダンピング関税措置は、米国の鉄鋼メーカーであるクリーブランド・クリフスの請願を受けて、今年2月に始まった調査から来ています。同社は近年米国の多くの生産拠点が閉鎖されたブリキ分野での外国ダンピングの事例をあげ、政府にロビーをしていました。商務省の今回の決定はクリーブランド・クリフスが錫メッキ鋼板の主要競合会社であるUSスチールを買収する意向を発表してから1週間も経たないうちに下されました。業界の専門家らは、この動きにより米国の鉄鋼生産環境の統合が加速すると指摘しています。
https://www.commerce.gov/news/press-releases/2023/08/commerce-issues-preliminary-determinations-antidumping-duty

欧州でバージンプラスチック価格が下落する中、リサイクル会社は苦戦しています。業界サイト「Sustainable Plastic:サステナブル・プラスチック」は、今年Q2より何度か過去最低レベルになっているR-Plastic(リサイクルプラスチック)の需要と価格、更にエネルギーの高騰による工場の稼働率の低下や一時休止を詳説してきました。アジアでもプラスチックリサイクル会社は同様で、リサイクル材料の需要低迷により資金繰りが逼迫していると報告しています。そのような中、1年前に鳴り物入りでシンガポールに世界本社を設立したばかりのプラスチックリサイクルと代替材のエンジニアリング企業であるArchweyが、自主清算手続きに入った事が伝えられています。同社は2015年に設立された主力のオランダでの事業を縮小、中国、オーストラリア、ベトナム、米国、英国、スペインの事業所も閉鎖しています。同社の顧客にはリーバイスやアンダーアーマー等の大手アパレル企業や英国の高級小売店セルフリッジ等が含まれ、シンガポールの再生可能エネルギー会社EDPR Sunseapとの提携により太陽光発電を進める等、1年前にはセンセーショナルなプラスチックリサイクル企業として何度も取り上げられていました。
https://bit.ly/3KTKnHD

英国の大手金属リサイクル企業EMR(European Metal Recycling)は、英国中部のバーミンガム地区にバッテリーのリサイクル工場を建設する計画です。4日前に英国環境省に許可申請を出しており、金属、バッテリー、自動車部品、その他の廃棄物の処理研究施設とEVバッテリーのリサイクル工場という2つの許可を求めています。工場は年間最大2,000トンの非有害廃棄物、少量の有害廃棄物、更に年間最大250台の車両を処理するものです。同社は既にドイツのハンブルク近郊にバッテリーのリサイクル工場を計画しており、正式な発表は近日中に行われると見られています。
https://bit.ly/3QSpzUY

インドネシアは炭素取引市場を今年末迄に設立する事を目指し、設立の為の規則を発表しました。インドネシアは2030年迄に排出量を30%以上削減し、2060年迄にはネットゼロを達成する事を目標としています。取引所は当初9月に開設予定となっていましたが、現状では時期については明確なアナウンスはありません。排出権の取引形態は欧州で行っている「キャップ・アンド・トレード」方式になります。これでカーボンフットプリントが証明される原料の輸出が可能なります。
https://www.reuters.com/sustainability/indonesia-issues-rule-how-run-its-first-carbon-market-2023-08-23/

欧州委員会で気候変動政策のトップを担ってきたフランス・ティメルマンスは、オランダ首相に立候補するために正式に辞任しました。後任はスロバキア出身の欧州委員会副委員長、Mr. Fix Itと呼ばれ関係調整役としてエネルギー問題等で手腕を発揮してきたマロシュ・シェフチョヴィッチとなりました。シェフチョヴィッチは同時に欧州委員会の執行副委員長という役割も託されています。既に欧州では科学的な気候変動に対する早急な対応よりも、産業政策としての「グリーンディール」を執行する事に大きく舵を切っており、米国のIRAへの対応や、地政学で分断するサプライチェーンの再構築等、急務な課題に取り組む事になると見られています。欧州委員会は再三に亘り催促されているにも関わらず、産業や生活コストの増加により、これ以上の(気候変動に関する)政治的介入が産業や市民からの反発を招く為、具体的な2040年の気候目標を開示していません。シェフチョヴィッチはモスクワ国際関係大学出身で、元チェコスロバキア共産党員、LGBTや欧州政府の統一的な税制政策、自治・移民政策、家族法の問題に一貫して反対し、比較的親ロシア派の政治家です。シェフチョヴィッチ10日を切っても殆ど盛り上がらない今年のCOP28での、シェフチョヴィッチ手腕とプレゼンスに注目が集まっています。
https://www.politico.eu/article/frans-timmermans-quit-eu-climate-chief-return-dutch-politics/
https://en.wikipedia.org/wiki/Maro%C5%A1_%C5%A0ef%C4%8Dovi%C4%8D

世界的な電子廃棄物(WEEE)の流れが変わる可能性のあるニュースです。インドの大手コングロマリットAditya Birlaグループの子会社Hindalco Industries(ヒンダルコ)はインドで初となる銅とWEEEの高度リサイクル施設を建設する為に2,000億ルピー(約3,000億円)という巨額の投資を行う事を発表しています。リサイクル施設への投資は増加するインドでのWEEEに対応するもので、重要な原材料の確保を狙ったものです。インドでは国内に高度な金属抽出・精製施設が不足しており、相当量のWEEEが他国に輸出されています。ヒンダルコのトップは、インドに最先端技術を導入し、循環経済の課題に対する変革の一歩であると強調しています。インドは世界の工場としての地位を近い将来中国から引き継ぐと言われており、経済に占める製造業の割合は2031年迄に現在の16%未満から21%に上昇する見込みです。膨大な人口で購買力が上がれば、2000年代の中国のようなコモディティの購買力を持つ事は容易に予測できます。既に海外からの投資も活発化しており、今年に入りインド証券市場のPERは中国市場の倍になって割高感が増しています。ASEANでもWEEEリサイクル施設への投資が始まっており、先進国はバーゼルや他規則を理由に欧州のように保護貿易で防衛する動きがみられる可能性があります。
https://economictimes.indiatimes.com/industry/indl-goods/svs/metals-mining/hindalco-set-to-invest-rs-2000-crore-in-copper-e-waste-recycling/articleshow/102955677.cms

ドイツのハンブルク近郊で、スウェーデンのノースボルトと英国の金属リサイクル業者であるEMRがEVバッテリーのリサイクル工場を稼働させています。ノースボルトは今週追加で12億ドルの資金を調達した事を発表し、これで2017年からの総資金調達額は90億ドル(1兆3200億円)に達しています。ノースボルトは、欧州の主要自動車メーカーであるBMW、スカニア、ボルボ、VW等から550億ドル以上の受注を獲得しており、自社の企業価値が200億ドルと推計しています。IPOの噂が絶えませんが、果たしてポーランドやハンガリーでギガファクトリーを拡大しつつある中・韓勢に本当に性能、価格、納期で勝てるのか?相次ぐ遅延で実態は定かではありません。
https://www.marketscreener.com/news/latest/Recycling-plant-for-e-car-batteries-in-Hamburg-starts-operation–44684430/

建築や自動車の資材を生産する国際的な大手企業SIKA AGはコンクリートリサイクル技術に対する1,000万スイスフラン(16億5000万円)の資金支援を得ました。同社が開発し、パイロット工場でのテストが完了したリサイクル技術reCO2ver?は古いコンクリートを砂利、砂、セメントの成分に分離し、後工程の化学処理でCO2排出を削減できます。この処理により、コンクリート解体廃棄物1トン当たり約15KgのCO2の排出を防ぐことができます。また処理中に生成される再生セメント粉末は同社の添加剤を使用し最適化する事で、代替品として再利用することが可能になります。パイロット工場でのテストは2021年10月から開始されていました。セメントやその関連産業だけで世界の温室効果ガス排出量の8%以上を占めていると言われています。
https://www.sika.com/en/media/media-releases/2023/support-for-sikas-innovative-concrete-recycling-technology.html

インドの鉄鋼省は、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM:国境炭素税)に対応する為、インドの製鉄メーカーと対応を検討する会議を招集しています。この検討会議は8月25日に予定されています。この会議を皮切りに国内に存在する製鉄メーカーの現在の準備状況を確認する作業に入る事になります。CBAMは10月1日から「移行期間」として段階的に開始されます。インドから輸出される鉄鋼については工場毎に複数の方法で総排出量を計算する必要が生ずる為、その点を精査する必要があります。CBAMは当初、鉄鋼製品等の炭素集約型の特定商品に適用されますが、徐々に適用範囲を広げる予定です。
https://www.thehindubusinessline.com/companies/steel-ministry-to-review-cbam-preparedness-of-indias-steel-mills/article67223122.ece

欧州で炭素国境調整メカニズム(CBAM:国境炭素税)が導入されるのに伴い、段階的で現在EUの鉄鋼メーカーに与えられている炭素の無償排出枠が削減されます。無償枠が無くなった場合、高炉では鋼材1トン当たり約144.72ユーロ、電炉でも18.93ユーロのコスト高が予測されています。これは7月の平均EU炭素価格を基にS&P Global Commodity Insights が行った分析によるものです。無償排出枠の廃止はEUの鉄鋼メーカーにとって現在行っているベンチマークを超えるコスト増につながる可能性があります。その為、低排出鉄鋼を製造する為の新しい工場やプロセスへの投資を行う必要があり、ザルツギッターやティッセンクルップ等の鉄鋼会社は政府の補助金を求めています。欧州の鉄鋼生産者の団体であるEUROFERは一貫して鉄スクラップを「EU重要な原材料」に含めるよう強い政策提言を続けており、アルミがそうだったように、今後鉄鋼製品の炭素コストが予測を上回る場合には、保護的な政策(セーフガードや重要原材料に含める)が行われる可能性が指摘され始めています。
https://bit.ly/3KSdz1M

South China Morning Postはトップで「中国の深刻な債務ジレンマ:待てば待つほど代償は大きくなる」という記事を上げています。先日IMFは中国の地方政府金融機関(LGFV)の負債総額が過去最高の66兆元(9兆ドル=約1300兆円)に達すると推測し、世界的に話題となっています。同紙は現在行われている中国中央政府の内部審議に時間が掛かる為、効果的な政策対応が遅れる可能性が高く、その場合、代償が巨額になると警告しています。地方政府が中国の財政資源の90%を占めている中で、中国政府が不動産市場危機の解決に向けて十分なスピードで動かなければ、地方政府にも大きな影響を及ぼす事になります。問題は今後いかなる方法で債務解決策を出しても(中国の金融)システム全体で巨額な損失負担が発生し、その損失の大部分は中国の銀行とノンバンクが負担することになるという事です。その場合にどのような負の波及効果があるのか、まだ明確に示しているものは有りません。
https://bit.ly/47Hq8qz


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