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NEWSCONの気になるNEWS(2023年9月第5週)

マサチューセッツ州は全ての州機関で「使い捨てプラスチック包装のボトル入り飲料水の購入を禁止する」事を発表しています。これは州政府機関による使い捨てペットボトルの購入を禁止する大統領令に署名するもので即時発効する予定です。マサチューセッツ州は全米で初めてこの措置を取る州となり、議会にも同様の措置を行うと州知事は言及しています。国際ボトルウォーター協会は知事宛てに書簡を送り懸念を表明し、リサイクル等、別の方法で解決するよう主張しています。マサチューセッツ州の機関は米国では年間約500億本の使い捨てペットボトルが使用されていると推測し環境破壊の原因の一部と分析しています。他の州が追随するか懐疑的ですが「ペットボトル飲料を政府機関で禁止する」という、かなり大きなインパクトのある決断と言えます。
https://bit.ly/48oSGoW

中国でLFPの過剰生産による値崩れが深刻化し始めています。中国のLFP正極材生産能力は2023年9月時点で既に年間292万トンに達しているだけでなく、更に年間1000万トンの生産能力増強が計画されています。LFP正極材料の価格は2023年に下落に転じ、9月21日時点で年初来167%下落し、6万元/トンとなりました。LFPメーカーの設備稼働率は継続的に低下しており、平均稼働率は1月から9月に掛けて50%と予測されています。これは2022年に比べて32%低下しています。しかし将来的な需要は大幅に増加する見られており、LFP正極材料の需要は2026年迄に400万トンを超えると予測しています。中国のLFP正極材料市場は今後数年間に新プロジェクトが集中的に稼働する事から短期的には過剰産能力に悩まされるが、将来的には受給がバランスすると見られています。
https://www.mysteel.net/news/all/5043267-lfp-prices-plunge-167-ytd-amid-deepening-overcapacity

フランスの大手鉱山企業Erametと世界最大級の廃棄物管理会社スエズは、合弁でフランス北部に大型のLIBリサイクル施設を建設します。場所はベルギーと国境を隣接する港町のDunkirkで、フランス政府がバッテリーハブとして企業誘致を進めている地域です。第1段階はBM工場で生産開始は2025年、EV電池パックの解体能力は年間5万トン、第2工場は湿式製錬工場で2024年末迄に詳細を決定し、2027年に稼働開始予定としています。このプロジェクトの為、Erametは欧州連合とフランス国有銀行のBPIから8000万ユーロ(約124億円)の補助金を受けています。フランス政府が主導するダンケルク地域の「バッテリーバレー」構想では数社がLIB生産工場を計画しています。法人税減税や雇用・解雇を容易にする措置、工場の規模に応じた生産税の引き下げ等の恩恵が得られる為、台湾のProLogium、中国のEnvision AESC、フランスの新興企業のヴェルコール、メルセデスやステランティスACCコンソーシアムも近隣地域にギガファクトリーの建設を計画しています。ポーランド、ハンガリー、フランスは政府による誘致と充実したハブ構想がLIB生産とリサイクルを惹きつけています。Eramet社はアルゼンチンのリチウム生産プロジェクトを来年立ち上げる予定です。
https://www.eramet.com/en/medias/press-releases/

インドがLIB生産の次のターゲットとして頭角を現しています。インドの鉄鋼エネルギーグループJSWはインドでの電池製造について韓国のLGエネルギーソリューションと初期段階の協議を行っています。また同社はEV用の現地サプライチェーンの構築を目指して、中国のCATLや日本のパナソニック、東芝等、他の電池企業とも協議しているようです。テスラはインドでの電池生産に補助金を求める提案書をインド当局者に提出しています。テスラはインドで低価格EV(約2万4000ドル)の生産工場を設立する為に、過去数週間インド政府と協議をしています。この協議はモディ首相が直接監督していると伝わっています。
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/tesla-proposes-building-battery-storage-factory-india-sources-2023-09-21/
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/jsw-talks-with-lg-energy-solution-make-ev-batteries-india-sources-2023-09-21/

英国の鉄スクラップトレーダー企業が3500万ドル(51億円)を調達しています。英国のGlobal Metcorpは、スクラップトレーディングを主体とする企業でHSBCより支援を受け過去5年で売上が20%増となり、事業拡大を図っています。今回、英国の輸出信用機関であるUK Export FinanceとHSBCにより約51億円を調達し、スクラップのトレーディングとヤード買収に向ける予定です。今後数年でスクラップ業者を買収し雇用を50-100人程度増やす計画としています。同社の事業開始は2001年で非鉄トレーダーとして子会社にArdor World Limitedを持ち、米国、シンガポール、香港に支社を置いています。脱炭素でスクラップの原料価値が高まる中、よりファイナンスが容易になり、短期的な拡大を図れる状況が生れています。
https://londonlovesbusiness.com/leading-scrap-metal-exporter-secures-35-million-hsbc-uk-funding/

原油に高値シグナルが点灯しています。モルガン・スタンレー(MS)は、すべてのオイルシグナルが「点滅している」と警告を出しています。
石油市場は現在、日量約100万バレルの供給不足となっており、本来在庫に回す量を含めると今四半期は日量130万バレルの供給不足になると見られています。MSは「市場が供給不足である限り、価格は現在の水準付近で十分にサポートされる。」と繰り返しておりエネルギーコストの上昇によるインフレへの影響を懸念しています。
https://oilprice.com/Latest-Energy-News/World-News/Morgan-Stanley-Says-All-Oil-Signals-Flashing-Tightness.html

英国のガソリン車継続延期に続き、欧州理事会は欧州の排ガス規制ユーロ7の緩和に合意しています。スペインが提案していた妥協案を最終的に採用する事で合意しました。欧州委員会提案からの主な変更点は、自家用乗用車及びバンは、既存の試験条件と排出制限(ユーロ6で定められたもの)を維持する事、バス、長距離バス、大型商用車は、ユーロ6/VIよりも排出量は低く設定し、テスト条件も若干変更しています。EUのTransport & Environmentalは「ユーロ7が骨抜きになり、人々の健康よりも自動車メーカーの利益を優先させた」と非難しています。しかし自動車産業が盛んなイタリア、フランス、チェコを含む8ヵ国はこの変更に合意しています。この問題が端的に示していますが、人々の生活を犠牲にするような「行き過ぎた環境規制」をタカ派的に行った結果、景気が悪くなった途端に選挙で環境緩和の右派に敗北し続けるという結果を見て、徐々に巻き戻しが本格的になっているという事です。この問題だけでなく、多くの点で今後新たな環境規制を行う事が難しい状況が生れています。
https://bit.ly/3PQZqox

化石燃料の段階的廃止が政治問題化し始めています。
中国は、世界のGHG排出の約3割を発生させている世界最大の排出国です。その中国の気候変動特使である謝振華氏は「新たなエネルギー源は石炭や石油に代わるほど信頼性がまだ十分ではない」とし「化石燃料エネルギーを完全に廃止するのは非現実的だ」と言及しています。この発言は今年11月にドバイで開催されるCOP28に先立つ北京でのフォーラムで発したものです。中国にとって太陽光パネルに対する米国の貿易制裁は大きな痛手となっています。そのような状況の中、米国は気候変動問題を両国間の緊張と分けようと試みています。しかし中国側はそのやり方を拒否しています。また輸入品に炭素税を課すEUの炭素国境調整メカニズムに対しても反対する姿勢を改めて表明しています。欧米が政治主導でルール作りをしている化石燃料の段階的削減・廃止に牽制する中国の姿勢は新たな緊張の拡大を生み出す要素になりそうです。
https://www.energymonitor.ai/news/signal-chinas-climate-envoy-says-that-phasing-out-fossil-fuels-unrealistic/

欧州では、議会と理事会が合意し、禁止商行為のEUリストを更新しました。主な更新内容は「グリーンウォッシング」と「商品の早期陳腐化」に関連するマーケティング習慣です。具体的には証拠の無い「環境に優しい」、「自然」、「生分解性」、「気候中立」、または「エコ」等の主張の禁止や承認されていない認証や公的機関によって確立されていない「持続可能性ラベル」を禁止する事が含まれています。一方米国の証券取引員会(SEC)は米国の投資ファンドによる「グリーンウォッシング」やその他の誤解を招くマーケティング慣行を取り締まる新たな規則を採択しています。具体的には、ファンドのポートフォリオの80%がファンド名で宣伝されている資産と一致することが求められる事になります。この措置によりファンド名に含まれる用語と、どの投資がそれに適合するかの基準を定義し、目論見書にその情報を開示する事が求められます。名前だけは「グリーン」で「中身はグリーンで無いものが氾濫」している状況を規制する事になります。
https://bit.ly/451Vndf
https://www.investmentweek.co.uk/news/4127218/us-sec-unveils-esg-labelling-rules-mutual-funds

今年1月にBloombergは「ESG投資バブルが弾ける目前」という見解を出し話題を呼びました。その後、8月までに世界では20を超える大手のESGファンドの閉鎖が相次ぎ、最近ではブラックロックも2つのESGファンドを終了する決断をしています。世界の資産は欧州のグリーンディールや米国のIRAによりESGプロジェクトに投資されてきました。しかし現在、大きな巻き返しが起きています。現在、投資家の間では多くのプロジェクトは「良いアイデアは非常に少なく、補助金が終われば採算性に問題を抱えるものばかり」という認識が強まり、遂に空売り派がグリーンウォッシングで肥大化したESG株への攻撃を始めています。米国のブルー・オルカ・キャピタルはESG格付けで「A」を取得しているバイオマス燃料生産会社のEnvivaを空売りの対象とし、LIBリサイクル企業のLi-Cycle Holdings Corpにも空売りを仕掛けています。Envivaは今年90%近く株価が下落、Li-Cycleも20%下落しています。アルゴノート・キャピタル・パートナーズはグリーン水素株と一部の風力タービンメーカーを、スイスのアナコンダ・インベストは米国の太陽光発電株を空売りしています。豪州のヘッジファンド、プラトン・インベストメント・マネジメントはESGの「危険信号」指標が100以上あり、「賭け」をする前にそれをチェックしていると発言しています。
https://bit.ly/3ETiZGg

歴史の転換期には人々の不満から予想もしない人物が予想もしない勝ち方をするものですが、先週ギリシャでそれが起こりました。
ギリシャのトップ野党であるSYRIZA党は、全く無名で米国に在住する同性婚者であるステファノス・カッセラキス氏を新党首に選出しています。社会民主主義政党であるSYRIZAは、親欧州主義の立場をとっている政党ですが前回の選挙で負けています。1ヵ月前の8月下旬にカッセラキス氏が立候補するまで、ギリシャでもどこの誰かも知られていない人物でした。前労働大臣で党の指導部の最有力候補だったアハツィオグルーがSYRIZA党主に選任されると誰もが思っていました。しかし政治経験の全くない元ゴールドマン・サックスのトレーダーであるカッセラキス氏が勝利しました。ギリシャでの生活経験すらあまりない人物です。前労働大臣のアハツィオグルー氏は、賃金引き上げ、福祉国家の推進、公共インフラの強化、気候危機など具体的な政治課題を掲げて選挙活動を行いましたが、勝った方のカッセラキス氏は、自身を「愛国的左翼」と宣伝し「全てを変え」て「ギリシャの夢」を取り戻したい、という「イメージ先行の運動」をしたのみでした。勝利の要因の1つは、ソーシャルメディアによるキャンペーンで、元々ギリシャ政治とは何の関係もなく、ましてや左派とは何の関係もないカッセラキス氏の「革新的な」イメージを作り上げる事に成功した事です。ここ数年、ギリシャ経済のパフォーマンスは大幅に改善しており、人々の不満はそれ程高く無いように見えます。しかし実態は全く異なり、ギリシャの経済成長は一部の特権階級やネポティズムによるビジネスマンの閉鎖的なサークルに限定されています。前回の選挙ではその不満から右派系の政党に敗れています。ギリシャの出来事は欧州での政治的な混沌を映し出している1つの端的な例と言えます。
https://www.politico.eu/article/ex-banker-stefanos-kasselakiskes-takes-reins-of-greeces-left-main-opposition-syriza/

EVや電池を巡り、地政学の影響が更に高まっています。今まで再三に亘りCATLを擁護してきたフォードはCATLと合弁で設立予定のミシガン州のLFP工場の一時停止を発表しています。予定投資額は35億ドル(約5100億円)で、2,000人以上の雇用をもたらすとして注目されていたプロジェクトでした。米国の共和党と安全保障メンバーは「中国が国内の電気自動車生産の主導権を握れば、地政学的な緊張が高まる中、米国は深刻な国家安全保障上のリスクに晒される」という主張を繰り返してきました。欧州では欧州委員長による「中国製EVへの関税に向けた調査を開始する」という発言を受け、中国メーカーは親中のハンガリー、ポーランド、スロバキア等にEV工場を計画する動きに出ています。今後、政治的な判断で投資が大きく影響を受けそうです。中韓ともに欧米と通商条約があるモロッコに投資を継続している状況は変わっていません。
https://www.foxbusiness.com/politics/ford-suddenly-pauses-massive-ev-battery-project-republicans-probing-ccp-ties

RDF(RPFと同等品)の世界最大の輸出国の1つである英国の廃棄物業界が大きな問題に直面しています。2028年から廃棄物由来のエネルギー(EfW)は英国の排出量(権)取引制度(ETS)に導入される予定の為、EfWとその燃料であるRDFやSRFは、大きな岐路に立たされます。RFDやSRFは、この変更により燃焼燃料として排出係数がETSに取り込まれます。この変更に先立ち、廃棄物の輸出禁止を求める英国の環境サービス協会(ESA)は、RDFの英国からの輸出を禁止する呼び掛けをしていました。これに対しRDF業界は猛反発をしており、政府による財政措置(制度による救済処置)を求めています。環境サービス協会(ESA)はEfWがETSに組込まれる事で、国内でのRDFの消費量が減り輸出に回る事で、リサイクルや廃棄物削減が遅れると主張しています。元々EfWをETSに含める理由の1つは廃棄物削減にあり、廃棄物を削減せずRDFとして輸出する事になれば、制度変更の意味が無いという事が主張です。しかし英国内の廃棄物処理能力は廃棄物発生量に追い付かず、輸出を禁止する事は「近視眼的だ」としてRDF協会は反発しています。EUでもEfW施設は遅くとも2030年までにEU ETSに含まれる予定ですが、EUからのRDFの輸出は殆ど無い為、この問題は島国である英国独特のものと言えます。廃棄物由来の燃料の排出量問題は何れ欧州域外でも問題になると思われます。
https://bit.ly/3ZuPggy
https://www.esauk.org/what-we-say/news-and-views/EfW-inclusion-in-ETS-marks-significant-policy-intervention-for-waste-sector
https://www.rdfindustrygroup.org.uk/

仏マクロン大統領は2027年1月1日までに石炭を完全に廃止すると発表しました。大統領は欧州委員会に対してこの目標を達成する為の更なる投資を求めています。またガスボイラーの段階的廃止を撤回し、代替案としてフランスでは2027年までにヒートポンプを100万台生産する計画を打ち出しています。ガスボイラー禁止撤回は、ドイツ、イギリス、オランダに続いての事です。フランスは既に2027年迄にEV生産100万台を目標としており、マクロン大統領は「フランスは鉱物資源の大規模な在庫を再開するつもりだ」と言及しています。更に原子力エネルギーを強調しており、現在交渉中のEUの電力市場改革を「待つ」事なく、原子力政策を継続する意図を強調しました。フランスはEUの電力市場での既存の核資産を擁護していますが、ドイツや一部の加盟国が核廃絶を訴えており論争となっています。
https://www.france24.com/en/europe/20230925-france-s-macron-says-to-take-back-control-of-electricity-prices-by-end-of-year

利下げや政府支援の効果が期待されてましたが、中国、インド(インドは若干状況は良い)ともに鉄鋼先物が冴えない状況でセンチメントがやや逆回転しているようです。中国は鉄鋼生産量が前年よりやや増えているものの、国内の不動産問題から先物が下落、鉄鉱石も下落となっています。恒大集団の債務再建の滞りで不動産業のメルトダウンの懸念が深まる事態に発展しています。今年後半はこのような動きの繰り返しが続いています。インドは輸出市場の低迷が主な理由となっています。好調だったインドの鉄鋼業のスローダウンは他にも影響が出る可能性があります。
https://in.investing.com/news/steel-dipped-with-concerns-about-financial-problems-in-chinas-property-sector-3821808
https://www.steelmint.com/insights/india-steel-index-stable-w-o-w-in-dull-market-slight-demand-uptick-expected-478813

世界の銅市場で過去30年間みられなかった事が起きています。銅のスポット市場は価格が下落しており、スポット価格とLMEの先物価格のスプレッドが3ヵ月先で1994年以来最大の水準にまで拡大しています。LMEの銅先物曲線は「極端な」コンタンゴ状態(先に行くほど値段が高くなる現象)の(異常)曲線を示しています。これは売れずに品物が倉庫に残る為、保管料が課されるからです。LMEの世界各地の倉庫には銅在庫が7月から増加し続け、9月は単月で50%増加しています(ただし歴史的に見て総在庫量が記録的な状態ではありません)。アナリストは需要の減少の要因は中国経済の低迷と指摘しており、その影響は欧州、米国、他の地域にも及ぶと見ています。銅価格の低迷は世界貿易の今後の低迷を反応している可能性があると指摘する声もあります。今年8月の世界貿易は前年同月比で3.2%減少しており、これは2020年8月以来の大幅な落ち込みとなっています。長年「銅」は、世界経済の先行指標として認識されています。一方でバンク・オブ・アメリカの商品調査チームはGDP成長と密接に相関関係がある銅の「感応度が最近弱まっている」との調査報告を出し、先行指標として銅が果す役割が以前よりは弱まっている実態を報告しています。専門家の一部は世界経済が困難な局面に向かう可能性を示す「新たな兆候」だと見る人が多くなっています。
https://www.marketwatch.com/story/something-unusual-is-happening-in-copper-markets-that-hasnt-been-seen-in-30-years-de7aace7
https://ca.investing.com/news/stock-market-news/copper-market-trends-signal-global-economic-concerns-with-focus-on-china-93CH-3118745

欧州が廃EV由来のブラックマス(BM)の輸出を制限する可能性が報道されています。欧州議会はEU重要な原材料法案を採択しており、その中で、新たにブラックマス(BM)専用の「廃棄物コード」(HSコードと思われる)を設定する事が決められています。今まではブラックマス専用の廃棄物コード分類は存在しませんでした。
これにより欧州政府はブラックマスを(有害)廃棄物に分類する事で、欧州域外への輸出を制限する事が可能になります。この動きは環境活動家だけでなく、欧州のリサイクル産業協会(EURIC)や欧州の自動車及び産業電池メーカー協会(ECOBAT)により支持されています。業界団体は政府に対し輸出禁止措置を取る様に働きかけてきました。特にEURICはブラックマスを「有害物質」と分類するよう働きかけています。現状は来年の選挙まで新たな環境規制の法律が制定されるかは微妙となっていますが、将来、既に重要な原材料を含んでいるBMの域外輸出に何等かの制限が掛かる事は避けられそうにない状況です。
https://www.euractiv.com/section/circular-materials/news/eu-urged-to-restrict-export-of-black-mass-from-used-electric-vehicles/

フランス政府は月額100ユーロ(約15,500円)のEVリース制度を発表しており、対象はEUで生産されたEVに限定となります。このリース制度は11月から導入予定で、2024年は数万台規模でのリースが予定されています。欧州では中国製EV価格が2015年から2022年の間に大幅に下落しています。2015年には約6万7000ユーロだったものが、2022年には約3万2000ユーロへと50%以上も下落しました。一方で欧州製のEV価格は、同期間に4万9000ユーロ弱から5万5000ユーロ超へと17%上昇しています。その為、多くの一般人には欧州製EVは手の届かない価格となっています。フランス政府は2030年迄に欧州での車両販売を100%EVとするルノーの株式の15.01%を保有する筆頭株主です。自国産業の保護政策と補助金漬けにまで追い込まれている実態が、この政策の背景と言えます。VWは販売不振よりドイツの2工場でEV生産を削減する等、欧州製EVの販売環境はやや後退し始めています。
https://www.euractiv.com/section/electric-cars/news/macron-unveils-e100-month-leasing-scheme-for-eu-made-electric-cars/

アルミニウムがインド市場で急増する予測が出ています。インドのアルミニウム需要は今後10年以内に倍増し、900万トンになると予測されています。インドのアルミニウム生産の世界のシェアは現在約5%(400万トン)です。中国は凡そ10倍の4,100万トンを生産しています。インドではこれらの需給ギャップを埋める為、アルミニウム生産インフラの増強が行われる見込みです。インドのボーキサイト埋蔵量は世界第7位であり、広大な埋蔵量を持つ東海岸は未開拓の状態です。インド政府はアルミニウムの生産を促進する為、最近「国家鉱物探査トラスト」を設立しています。中国は既にエネルギーの利用制限と環境汚染問題から国内でのアルミニウム生産能力を年間4500万トンと制限しており、生産の海外進出により更に1,000万トンの生産能力を持つ計画があります。そこにインドの生産能力増が加わる事で価格上昇に大きな負圧がかかる可能性が指摘され始めています。
https://agmetalminer.com/2023/09/27/india-and-aluminum-prices/

中国とカナダの険悪な関係が重要な原材料にまでエスカレートしそうです。今年、互いに外交官追放を行い関係が悪化している中・加関係ですが、カナダ当局の閣僚が「重要な鉱物資源の供給や加工について、中国よりも「信頼できる」貿易相手国との協定を結びたい」と発言し炎上しています。ロンドンで開催されたカナダ・英国重要鉱物投資フォーラムの公式の場での発言となり、カナダが中国無しで供給の安全性を高める事を強調しています。資源国のカナダは、重要な鉱物資源の需要増に対応する為に日本、米国、英国、欧州連合加盟国を含む国々と既にパートナーシップ協定を結んでいます。
https://www.reuters.com/markets/commodities/canada-sees-china-less-dependable-partner-critical-minerals-minister-says-2023-09-26/

ZeroHedgeによる世界の中央銀行の推定「金(Gold)」準備量は、2023年第2四半期に3万8764トンに達しており、この量は1965年の最高記録を上回りました。この記録的な数量の増加は米ドル(米国債券)からの分散を図る各国の中央銀行の政策によって起きています。地政学的な緊張と世界的な債務問題の中で、各国の中央銀行は今後も金の購入を続けると予想されており、基軸通貨としての米ドルの魅力は更に低下する見込みです。金の保有量は各国の中央銀行が必ずしも正確な量を公表しておらず、ワールド・ゴールド・カウンシルが発表している各国の推定購入総額と全ての中央銀行が発表した保有合計数量変更との差を計算する事により推測値を割り出す事ができます。その結果、明らかに各国の中央銀行が保有資産を米国債から金に変えている事が示されました。かつて産油国が石油利権を7シスターズ(欧米)から奪取した1970年代初頭、彼らが石油を売って得た「ドル(オイルダラー)」は、再び米国債(や英・仏債)に還元される事で、基本的に石油利権は動かなかったのです。その後、中東での地政学の変化や政府系ファンドの設立、ドバイ経由での直接運用等が重なり、オイルダラーの勢力が国際政治で台頭すると、欧米は「脱石油=脱炭素運動」を強化してきました。そして戦争を機にデカップリングが始まり、欧米以外が基軸通貨ドルでの資産保有から金への流れとなったのは、歴史の必然と言えるかも知れません。
https://www.zerohedge.com/markets/new-era-gold-estimated-world-official-gold-holdings-reach-record-high

The Brainy Insightsが報告書を発行し、ゴムチップ(世界ではクラムラバー:Crumb Rubberと呼ばれる)の世界市場規模が今後10年で16億8,000万ドルから27億9千万ドルに急成長すると予想しています。市場を牽引する分野は「アスファルト」です。最近の研究ではアスファルトと使用済みタイヤのゴムを組み合わせる事で、太陽光による道路の劣化を半分に減らす事が分かっています。オーストラリアではRMIT大学の研究者らがタイヤ・スチュワードシップ・オーストラリア(TSA)と協力して、耐紫外線性と交通負荷に耐えられる混合物を開発しています。この開発により道路維持費を大幅に節約できる可能性があると主張しています。道路は日光から保護するように設計されていない為、ひび割れが発生し易く、その欠点に対応します。その他の利用用途としては、自動車部品、接着剤やシーラント、ゴム及びプラスチック製品、スポーツ用品、建設資材、衝撃吸収及び安全製品です。特に伸びが期待されているものが途上国で増加するインフラ投資に対応した道路や建設資材となっています。
https://www.globenewswire.com/news-release/2023/09/25/2748754/0/en/Crumb-Rubber-Market-to-Reach-USD-2-79-Billion-by-2032-Increasing-Highway-Bridges-and-Other-Asphalt-Related-Construction-to-Propel-Growth.html
https://www.tyrestewardship.org.au/tsa-news/

西オーストラリア州は2024年1月1日から電気・電子製品に由来する廃棄物(e-waste)の埋め立て処分を禁止する事を発表しています。同州でリサイクルされている電子廃棄物は僅か4分の1の為、対応が急がれています。この禁止措置に伴い、地方政府はリサイクル業者や回収業者に様々な助成金を提供しています。これらのコストは将来納税者に転嫁されると発表しています。同州では電子廃棄物のリサイクルには1トン当たり最大700豪ドルのコストが掛かると見ています。オーストラリアでは、国全体でE-wasteに関する生産者責任制度(EPR)を含む大規模な制度改革を準備中で、施行されるのは2025年半ばになる見通しです。同国は一人当たり年間約20KgのE-wasteを排出していると試算しており、家庭や個人に「罰則」を課す予定は無く、EPRを制度として強化する計画です。
https://www.wa.gov.au/government/media-statements/Cook-Labor-Government/Consultation-on-e-waste-ban-to-landfill-regulations-begins-20230927

企業による卓上で計画されたプラスチック廃棄物の循環利用が中々上手くいかない典型的な例がLEGOから発せられています。世界的な玩具メーカーのLEGO社はペットボトルをリサイクルしたrPETからLEGOを製造する計画を撤回しています。元々FTが9月25日にすっぱ抜き、LEGOも慌てて?HP上で27日に発表しています。理由は、結果的にrPETを使う方が炭素量が増えるというものです。rPETでは材料が柔らかく耐久性が無い為、別の成分を添加する必要があり、加工や乾燥でより大きなエネルギーが必要という結果となりました。バイオベース材料や他の素材(所謂化石燃料フリー材料)についても開発を進めてきましたが、品質、安全性、耐久性要件を満たす事が出来ず、二酸化炭素排出量の削減にも貢献せず、採用が見送られています。同社は2025年迄の4年間で持続可能性への取り組みの支出を14億ドルに増やし、2032年迄に炭素排出量を37%削減する計画です。今年上半期は19年振りの大幅減益となっていました。現在ベトナムと米国に2つの新工場を建設中で、それぞれ2024年と2025年に操業を開始する他、既存の5つの工場の内、4つを拡張しています。
https://www.lego.com/en-gb/aboutus/news/2023/september/the-lego-group-remains-committed-to-make-lego-bricks-from-sustainable-materials

スウェーデンのLIBメーカー「ノースボルト」は、カナダのケベック州に52億ドル(約7700億円)を投資し工場を建設する事を発表しています。モントリオール郊外の工場の建設は今年中に開始、2026年に稼働する予定です。第1段階の生産能力は30GWhで(リサイクル工場も含まれる)、その後、最終的には約90億ドルまで投資を拡大し60GWhまで拡大する予定です。既に何社かの顧客は決まっているようですが明らかにしていません。IRAの様な保護が無い欧州では中・韓勢に太刀打ちできず、北米への投資がここ1年噂されていました。同社は2017年以来、既に90億ドル以上の資金調達をしており、主に欧州の顧客と550億ドル以上の契約を結んでいます。スウェーデンの再生可能エネルギーを利用した世界No.1のグリーンLIBを製造すると宣伝し、巨額な資金を集め派手な宣伝をしてきましたが、ここ1年は相次ぐ計画の延期が続いていました。米国共和党はEV政策に対する攻撃を継続しており、オハイオ州の上院議員がEV税額控除を廃止する法案を発表する等、政争の具となっています。次期選挙結果によってはIRAのEV政策が大きく揺らぐ可能性も出てきました。
https://northvolt.com/articles/northvolt-six/

現代のネット社会において、海底ケーブルネットワークの支配権が重要な事は既に共通認識となっています。世界のデータの約98%は国際海底ケーブルで伝送されています。諜報機関は領土に接続されるケーブルを簡単に盗聴する事が出来ます。海底ケーブルは世界の諜報機関にとって「監視の宝の山」である事は誰もが認める事実です。海底ケーブルの建設業界で、過去10年間の間に急速に勢力を伸ばした企業は、中国のHMN Technologies Co Ltd (旧Huawei Marine Networks Co.,Ltd.)です。幾つかのプロジェクトでは中国電信公司(チャイナテレコム)、中国移動通信有限公司、中国聯合網絡通信集団有限公司(チャイナユニコム)がコンソーシアムのメンバーとなり資金提供を行い、事業を拡大してきました。つい最近、米政府は新しい中央太平洋ケーブルの調査に300万ドルを投資し、このプロジェクトが実現時には世界銀行、米国、豪州、ニュージーランド等の多国間援助機関が支援する見込みです。更に現米政権は追加ケーブルネットワークの為、米国議会に最大1,200万ドルを要求する予定です。インドのクアッドパートナーである豪州、日本、米国は既に東ミクロネシアケーブルプロジェクトを推進しており、キリバス、ナウル、ミクロネシア連邦のコスラエ州にデジタル接続を提供する予定です。最近、中国が新しい地図を発行し南シナ海の多くの場所を自国領土としていましたが、こうした背景も1つの要因です。現在世界の4大海底ケーブルネットワークサプライヤーはAlcatel Submarine Networks(フランス)、SubCom(米国)、NEC(日本)、そして新規参入のHMN Technologies Co Ltd(中国)で、HMNは市場シェアを徐々に伸ばしてきていました。目に見えない支配権の争いは太平洋の海底で起こっています。
https://www.indianarrative.com/world-news/us-china-battle-for-undersea-cables-flares-after-washington-announces-new-plan-for-pacific-island-territories-152444.html




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