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NEWSCONの気になるNEWS(2025年1月第4週)
米国の輸入でDe Minimisが廃止される可能性があります。デ・ミニミスとは法律用語で、小規模な問題を規則から免除する原則で、現在、米国への輸入品にも適用されています。これは米国と世界の貿易に大きな問題をもたらします。米国では800ドル未満の輸入品に適用され、欧州でも150ユーロ以下の輸送品には簡易通関が適用されてきました。米国は1938年以来、行政上の負担を軽減する為にデ・ミニミスを適用してきました。オバマ大統領は任期中に免除額を4倍に引き上げ、特に中国から米国に入る税関手続き免除対象荷物の数が爆発的に増加しました。米税関・国境警備局のデータによると、過去10年間で、微量関税を請求する貨物は600%以上増加し、2023年度には10億個を超えます。実はこの制度が麻薬や違法製品の輸入の拡大に繋がっており、関税を好む新大統領はこの制度を廃止する可能性が高くなっています。コンテナの滞留や港の混雑によるドミノが起きる可能性があります。
▶ https://www.jdsupra.com/legalnews/cbp-s-proposed-changes-to-de-minimis-6275658/
ドイツの鉄鋼大手ザルツギッターの第2位株主であるGPギュンター・パペンブルクとTSRリサイクリング社は、同社に対する1株当たり18.5ユーロの買収提案を行いました。買収額を総額で11億ユーロに引き上げたことになります。当初は1株当たり約17.5ユーロの提案でした。金属リサイクル会社であるTSRリサイクリングが、鉄鋼企業を買収するという珍しい例です。しかしザルツギッターの最大株主であるドイツのニーダーザクセン州はこの買収に懐疑的です。同州は提案された買収条件には同社の持続的発展への経済的利益や貢献は見当たらないと述べています。GPギュンター・パペンブルクはザルツギッターの株式25%を保有しています。昨年11月に買収に乗り出し、当時の声明によると投資家グループは少なくとも45%プラス1株の取得を希望していました。
▶ https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-01-23/gp-tsr-recycling-said-to-boost-bid-for-steelmaker-salzgitter
EU政府は中国に対抗する為にEVとEV関連事業に対する補助金を検討し始めています。提案したドイツ首相自身が認めており、どこまでの規模で実現するか疑問視されていますが、今後、一定の援助を行う方針のようです。またEUの補助金を求める外国メーカーや現地生産拠点の設立に対する技術移転要件も拡大する見込みです。EUのテレーザ・リベラ副委員長は、EUが定めた2035年までに事実上EV車の新車販売を切り替えるという方針を貫くことを公言しており、目標達成のための1つの政策と見られています。
▶ https://www.am-online.com/news/eu-exploring-pan-european-subsidies-to-boost-electric-vehicle-demand
World Steelは2024年の世界の銑鉄生産量(予測)を発表しました。前年比1.3%減少し、13億9100万トンでした。高炉は12億6,500万トン(前年比1.6%減)、電炉他で1億2,557万トン(前年比4.5%増)でした。主要国は、中国 : 8億5,174万トン(前年比2.3%減)、インド :1億4,491万トン(前年比6.7%増)、ロシア :5,899万トン(前年比-5.4%)、韓国 :4,411万トン(前年比-2.4%)です。非常にゆっくりですが、中国の生産減もあり高炉シェアが下がり始めています。
▶ https://worldsteel.org/media/press-releases/2025/december-2024-crude-steel-production-and-2024-global-totals/
米国の議会で超党派のアルミニウム議員連盟が再開される中、1月下旬に世界の主要市場でアルミニウムの価格が上昇しています。欧州での需要の伸びと中国での在庫レベルの低下が要因のようです。また、アルミニウムの地金に関する新たな関税懸念が米国で出ています。EU、カナダ、中国、メキシコから米国への輸入に追加関税の憶測が出たことにより、市場は反応しています。
▶ https://www.chemanalyst.com/NewsAndDeals/NewsDetails/global-aluminium-ingot-prices-see-significant-spike-due-to-market-pressures-34138
現在草案が出され、2025 Q1中には議会事案となると予想されているEU 使用済み自動車 (ELV) 規則の改訂について、欧州のリサイクル団体が提言をしました。日本でもプラスチックのリサイクル材の利用等が検討されていますが、EU版はプラスチックに限らずリサイクル材利用の宣言を行うという案が示されており、業界団体とリサイクラーで意見の相違があります。EU-ELV規則の改訂は、来年発効する予定で進められています。改正案では車両循環パスポートの導入(材料、部品、リサイクル可能性に関するデジタルデータ記録)、収集の改善、より厳格なリサイクル処理、そして厳格な輸出管理(公道走行に適さない廃車両の輸出禁止)が含まれています。これらの規制により、リサイクラーにとって施設運営コストの上昇や、所有権の移転問題による処理後のマテリアルの再販売規制が現実のものとなる可能性があります。ELVはリサイクラーにとって大きな発生源であることから、なるべく有利な法改正が行われるようロビー活動が続いています。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/reports-studies/eu-recyclers-guide-for-a-circular-competitive-automotive-sector
トランプ政権になり、欧州各国が防衛費を増額する動きが始まっています。これは非鉄(特に銅とニッケル)の特需の可能性を示唆しています。スペインの外相とポルトガルのモンテネグロ首相は2029年迄にGDPの2%を防衛費に充てるという約束を再確認しました。モンテネグロ首相は、この目標が予想よりも早く達成される可能性があると示唆しました。スペイン外相のアルバレス氏はスペインが1982年のNATO加盟以来最大級に防衛費を増加させており、現在はGDPの1.8%に達していると述べました。また、モンテネグロはポルトガル政府や主要野党がこの目標に強い決意を示していることを強調し、外務省や防衛省等によるタスクフォースの設置が目標達成に向けた鍵であると述べました。
▶ https://www.euractiv.com/section/politics/news/spain-portugal-double-down-on-2-defence-target/
中国の南西部都市・綿陽に大規模なレーザー点火核融合研究センターが建設されていることが、米国の分析機関2社の専門家によって明らかになりました。この施設は衛星写真から以下の特徴が確認されています。施設は米国のNIFと似たレイアウトですが、実験室はNIFより約50%大きいと推定されています。この施設は核兵器設計の改良、発電技術の研究、核融合反応の研究等に活用されると見られています。この開発は核保有国の間で競争を示唆しています。レーザー核融合研究は含まれる核実験禁止条約の下で許可されていますが、その軍事利用の可能性については議論が続いています。DeepSeekといい、AIやレーザー核融合という最先端技術で本格的な米中戦争が続いています。
▶ https://www.independent.co.uk/asia/china/china-fusion-mianyang-nuclear-satellite-b2687627.html
EUと英国では2025年にCO2基準やゼロエミッション車(ZEV)義務が強化されるが、自動車業界は目標達成の困難さを指摘しています。S&Pグローバルの予測によれば、EUのバッテリー電気自動車(BEV)販売台数は2025年に約229万台、2035年には1001万台に達し、英国でも2035年に210万台に増加する見込みです。ドイツのショルツ首相は「eモビリティが未来」と強調し、実用的な解決策とEV販売促進の統一インセンティブを提案しています。EU全体では2035年までに内燃機関車の新車販売禁止を目指し、英国も2030年までに新車の80%をZEV化する計画に今のところ変更はありません。一方で補助金撤廃などが市場に影響を与え、各国でBEV販売台数はばらつきがある。英国は2024年に欧州最大のBEV市場となる見通しであり、EVの商品としての魅力よりも、政策対応が各国の販売を左右する傾向は、変わらないようです。
▶ https://www.spglobal.com/commodity-insights/en/news-research/latest-news/metals/012825-eu-europe-focus-on-increasing-ev-uptake-to-phase-out-ice-sales-by-2035
英国の産業界は政府の脱炭素化政策が及ぼすリスクについて懸念を表明しています。エネルギー集約型ユーザーグループ(EIUG)が発行した公開書簡では、高いエネルギーコスト、政策の不確実性、炭素漏出のリスクが英国への投資の競争力を低下させていると指摘しています。産業界はネットワークコスト補償の引き上げや炭素国境調整メカニズム(CBAM)の改善等、具体的な対策を政府に求めています。特にCBAMについては、EUとの実施時期のずれが貿易障壁を生む可能性がある為、2026年迄の延期や貿易保護を含む緩和策を要請しています。また、エネルギー供給の信頼性や再生可能エネルギーへの依存リスク、炭素回収・貯留、水素技術、電化への継続的な資金提供の不確実性も課題として挙げられています。
▶ https://www.eiug.co.uk/policy-impacts-on-uk-energy-intensive-industries-open-letter-to-minister-jones/
今年は話題にも上がらなかったWEFのダボス会議では、アメリカの台頭とヨーロッパの衰退が主要な議題となり、トランプ大統領の演説がヨーロッパへの批判を強調しました。彼はEUの規制や米国への不公平な扱いを非難し、防衛費増加を要求しました。ヨーロッパは経済格差や軍事費負担への対応を迫られています。EUは低成長や生産性低迷に直面しており、ドラギ前ECB総裁は協調投資と統合強化を提言しましたが、実現には至っていません。アメリカのハイテク企業が優位を誇る一方、EUは大規模企業の育成に失敗しており、官僚主義が改革を阻害しています。フォンデアライエン欧州委員長は新たな成長戦略を提案しましたが、国内政治や右派勢力の台頭が統合強化の障壁となっています。一方でEU内企業のCEOは欧州への再投資の可能性を示唆しつつ、インフレリスクへの警鐘を鳴らしました。
▶ https://www.theguardian.com/business/2025/jan/24/davos-donald-trump-tariffs-eu-us
欧州の将来を大きく左右するドイツの総選挙が4週間を切り、動き始めました。次期首相候補フリードリヒ・メルツは移民規制強化の為に極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」との協力を示唆し、物議を醸しています。この動きはAfDを排除してきた従来の政治的慣行を覆す可能性があります。 背景には移民による一連の暴力事件があり、特に最近のバイエルン州での幼児殺害事件が選挙戦の焦点を移民問題へと移しました。メルツ氏は厳格な国境管理と強制送還の徹底を訴え、AfDの支持を得て法案を可決しようとしています。 この動きは他の主流政党から強い批判を受けています。この状況はドイツの政治的風景を大きく変える可能性があり、移民政策をめぐる議論が一層激化し、EUの将来にも大きな影響を与えると予想されています。
▶ https://www.eiug.co.uk/policy-impacts-on-uk-energy-intensive-industries-open-letter-to-minister-jones/
投資家はEUのESG基準を持つファンドから記録的な資金を引き揚げています。2021年に採択されたEUの持続可能な金融開示規則(SFDR)に基づき、ファンドはその持続可能性に応じて分類され、第9条ファンドは持続可能な投資を目的としていますが、2024年第4四半期にはこの第9条ファンドから76億ドルの流出がありました。これは過去最高の流出額であり、5四半期連続の純流出を記録しています。流出の主な理由はリターンが相対的に低いことです。一方で持続可能なオープンエンド型ファンドとETFへの流入は2024年の年間流入額で半減しています。米国では持続可能なファンドが2年連続で資金流出し、2023年には133億ドル、2024年には196億ドルに達しました。従来型ファンドは金利引き下げとAI関連株高騰により約7,400億ドルの資金流入があります。低リターンによるESG投資への反発が続いています。
▶ https://www.morningstar.com/lp/global-esg-flows
欧州委員会は待ち望まれていたEUの競争力戦略となる「競争力コンパス」を発表しました。この戦略はイノベーション、脱炭素化、安全保障の3つの主要分野に焦点を当てており、今後5年間の経済原則における最初の主要な取り組みとして位置付けられています。前回は欧州グリーンディールでしたので大きく変わりました。欧州委員会は欧州が競争力を取り戻すには弱点を克服する必要があると述べています。この戦略では冶金、自動車、航空宇宙、クリーンテクノロジー等の戦略的分野に重点を置くとしています。
▶ https://commission.europa.eu/news/steering-eu-towards-greater-sustainable-competitiveness-2025-01-29_en
また、同時に欧州委員会は、自動車産業の将来に関する戦略的対話を開始し、行動計画を発表しています。この対話は欧州の自動車産業が直面する重大な課題に対処し、その継続的な成功を確保することを目的としています。欧州の自動車業界は1,300万人以上の雇用を支え、GDPで約1兆ユーロに達します。しかし現在、EUの自動車業界は根本的な変化に直面しています。委員会は3月5日に包括的な「行動計画」を発表する予定で、これには人材とリソースへのアクセスの確保、技術革新の促進、予測可能な規制枠組みの確立等が含まれます。クリーントランジション、産業バリューチェーン、技術革新とデジタル革新、スキルと社会的配慮の4つのテーマ別作業部門が設置されます。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_378
英国ではEV中古車が過去最大の価格下落を起こしています。Cap HPIの最新データによると、2025年1月の中古車市場において、EVが最も大きな価値の低下(1.1%)をしました。一方、ディーゼル車は0.2%上昇し、ハイブリッド車は安定を維持しました。ガソリン車は0.1%、プラグインハイブリッド車は0.6%の値下がりを示しました。これらの変動にも関わらず中古車市場全体は堅調で、1月の全体下落率はわずか0.1%でした。
▶ https://www.motorfinanceonline.com/news/ev-record-drop-january/?cf-view
かつて欧州のリサイクルのチャンピオンだったドイツは統計によると大きな岐路に立っています。報告書によると同国の廃棄物の40%が国民によって誤って分別されていることが明らかになっています。ドイツ連邦環境省(UBA)のデータによると、ドイツではリサイクル可能な材料が一般廃棄物コンテナに投げ込まれ、その後焼却されるか埋め立て地に送られることが多いことが分かりました。「収集されたごみの質が著しく低下しているケースもある。多くの廃棄物が間違った収集容器に捨てられている」と報告書は記載しています。流入する不法移民の増大、経済の停滞等、様々な要因が重なっているようです。
▶ https://www.msn.com/en-xl/news/other/green-germans-lose-crown-as-best-in-world-for-separating-rubbish/ar-AA1xIvOp
トランプ政権の規制緩和によっても重要鉱物への需要は抑制されない見通しと伝えられています。 アナリストや業界リーダーらによると、トランプ米大統領によるEV生産目標の撤回は、リチウムやその他の重要な鉱物の需要を一時的に鈍化させる可能性があるが、EVの世界的な需要が急増する中、鉱業に悪影響を与える可能性は低いと見られています。世界第2位の米国の自動車市場でEV需要が冷え込んだとしても、アナリストや業界専門家は他国での牽引力がそれを補って余りあると分析しています。ただし、この情報を出しているロイターはEV寄りなので、本当にそうなるのかは疑問視する向きもあります。
▶ https://batteriesnews.com/trump-battery-ev-rollback-not-expected-to-suppress-appetite-for-critical-minerals/#google_vignette
WTOは貿易戦争は世界経済にとって「壊滅的」な影響を与えると警告しています。WTOの事務局長は報復的な貿易戦争は世界経済の成長に壊滅的な結果をもたらすだろうと警告しました。同氏は「もし報復措置が取られれば、それが25%の関税であろうと60%であろうと、1930年代の状態に戻り、世界のGDPは2桁の損失を被ることになるだろう。それは壊滅的だ。誰もがその代償を払うことになる」と述べています。政治リスクの専門家は米政権による報復関税での「最悪のシナリオ」は回避される可能性が高いと確信していますが、当面は影響が出ることは避けられないと分析しています。
▶ https://www.asiafinancial.com/trade-wars-would-be-catastrophic-for-world-economy-wto
▶ https://www.jdsupra.com/legalnews/cbp-s-proposed-changes-to-de-minimis-6275658/
ドイツの鉄鋼大手ザルツギッターの第2位株主であるGPギュンター・パペンブルクとTSRリサイクリング社は、同社に対する1株当たり18.5ユーロの買収提案を行いました。買収額を総額で11億ユーロに引き上げたことになります。当初は1株当たり約17.5ユーロの提案でした。金属リサイクル会社であるTSRリサイクリングが、鉄鋼企業を買収するという珍しい例です。しかしザルツギッターの最大株主であるドイツのニーダーザクセン州はこの買収に懐疑的です。同州は提案された買収条件には同社の持続的発展への経済的利益や貢献は見当たらないと述べています。GPギュンター・パペンブルクはザルツギッターの株式25%を保有しています。昨年11月に買収に乗り出し、当時の声明によると投資家グループは少なくとも45%プラス1株の取得を希望していました。
▶ https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-01-23/gp-tsr-recycling-said-to-boost-bid-for-steelmaker-salzgitter
EU政府は中国に対抗する為にEVとEV関連事業に対する補助金を検討し始めています。提案したドイツ首相自身が認めており、どこまでの規模で実現するか疑問視されていますが、今後、一定の援助を行う方針のようです。またEUの補助金を求める外国メーカーや現地生産拠点の設立に対する技術移転要件も拡大する見込みです。EUのテレーザ・リベラ副委員長は、EUが定めた2035年までに事実上EV車の新車販売を切り替えるという方針を貫くことを公言しており、目標達成のための1つの政策と見られています。
▶ https://www.am-online.com/news/eu-exploring-pan-european-subsidies-to-boost-electric-vehicle-demand
World Steelは2024年の世界の銑鉄生産量(予測)を発表しました。前年比1.3%減少し、13億9100万トンでした。高炉は12億6,500万トン(前年比1.6%減)、電炉他で1億2,557万トン(前年比4.5%増)でした。主要国は、中国 : 8億5,174万トン(前年比2.3%減)、インド :1億4,491万トン(前年比6.7%増)、ロシア :5,899万トン(前年比-5.4%)、韓国 :4,411万トン(前年比-2.4%)です。非常にゆっくりですが、中国の生産減もあり高炉シェアが下がり始めています。
▶ https://worldsteel.org/media/press-releases/2025/december-2024-crude-steel-production-and-2024-global-totals/
米国の議会で超党派のアルミニウム議員連盟が再開される中、1月下旬に世界の主要市場でアルミニウムの価格が上昇しています。欧州での需要の伸びと中国での在庫レベルの低下が要因のようです。また、アルミニウムの地金に関する新たな関税懸念が米国で出ています。EU、カナダ、中国、メキシコから米国への輸入に追加関税の憶測が出たことにより、市場は反応しています。
▶ https://www.chemanalyst.com/NewsAndDeals/NewsDetails/global-aluminium-ingot-prices-see-significant-spike-due-to-market-pressures-34138
現在草案が出され、2025 Q1中には議会事案となると予想されているEU 使用済み自動車 (ELV) 規則の改訂について、欧州のリサイクル団体が提言をしました。日本でもプラスチックのリサイクル材の利用等が検討されていますが、EU版はプラスチックに限らずリサイクル材利用の宣言を行うという案が示されており、業界団体とリサイクラーで意見の相違があります。EU-ELV規則の改訂は、来年発効する予定で進められています。改正案では車両循環パスポートの導入(材料、部品、リサイクル可能性に関するデジタルデータ記録)、収集の改善、より厳格なリサイクル処理、そして厳格な輸出管理(公道走行に適さない廃車両の輸出禁止)が含まれています。これらの規制により、リサイクラーにとって施設運営コストの上昇や、所有権の移転問題による処理後のマテリアルの再販売規制が現実のものとなる可能性があります。ELVはリサイクラーにとって大きな発生源であることから、なるべく有利な法改正が行われるようロビー活動が続いています。
▶ https://euric-aisbl.eu/resource-hub/reports-studies/eu-recyclers-guide-for-a-circular-competitive-automotive-sector
トランプ政権になり、欧州各国が防衛費を増額する動きが始まっています。これは非鉄(特に銅とニッケル)の特需の可能性を示唆しています。スペインの外相とポルトガルのモンテネグロ首相は2029年迄にGDPの2%を防衛費に充てるという約束を再確認しました。モンテネグロ首相は、この目標が予想よりも早く達成される可能性があると示唆しました。スペイン外相のアルバレス氏はスペインが1982年のNATO加盟以来最大級に防衛費を増加させており、現在はGDPの1.8%に達していると述べました。また、モンテネグロはポルトガル政府や主要野党がこの目標に強い決意を示していることを強調し、外務省や防衛省等によるタスクフォースの設置が目標達成に向けた鍵であると述べました。
▶ https://www.euractiv.com/section/politics/news/spain-portugal-double-down-on-2-defence-target/
中国の南西部都市・綿陽に大規模なレーザー点火核融合研究センターが建設されていることが、米国の分析機関2社の専門家によって明らかになりました。この施設は衛星写真から以下の特徴が確認されています。施設は米国のNIFと似たレイアウトですが、実験室はNIFより約50%大きいと推定されています。この施設は核兵器設計の改良、発電技術の研究、核融合反応の研究等に活用されると見られています。この開発は核保有国の間で競争を示唆しています。レーザー核融合研究は含まれる核実験禁止条約の下で許可されていますが、その軍事利用の可能性については議論が続いています。DeepSeekといい、AIやレーザー核融合という最先端技術で本格的な米中戦争が続いています。
▶ https://www.independent.co.uk/asia/china/china-fusion-mianyang-nuclear-satellite-b2687627.html
EUと英国では2025年にCO2基準やゼロエミッション車(ZEV)義務が強化されるが、自動車業界は目標達成の困難さを指摘しています。S&Pグローバルの予測によれば、EUのバッテリー電気自動車(BEV)販売台数は2025年に約229万台、2035年には1001万台に達し、英国でも2035年に210万台に増加する見込みです。ドイツのショルツ首相は「eモビリティが未来」と強調し、実用的な解決策とEV販売促進の統一インセンティブを提案しています。EU全体では2035年までに内燃機関車の新車販売禁止を目指し、英国も2030年までに新車の80%をZEV化する計画に今のところ変更はありません。一方で補助金撤廃などが市場に影響を与え、各国でBEV販売台数はばらつきがある。英国は2024年に欧州最大のBEV市場となる見通しであり、EVの商品としての魅力よりも、政策対応が各国の販売を左右する傾向は、変わらないようです。
▶ https://www.spglobal.com/commodity-insights/en/news-research/latest-news/metals/012825-eu-europe-focus-on-increasing-ev-uptake-to-phase-out-ice-sales-by-2035
英国の産業界は政府の脱炭素化政策が及ぼすリスクについて懸念を表明しています。エネルギー集約型ユーザーグループ(EIUG)が発行した公開書簡では、高いエネルギーコスト、政策の不確実性、炭素漏出のリスクが英国への投資の競争力を低下させていると指摘しています。産業界はネットワークコスト補償の引き上げや炭素国境調整メカニズム(CBAM)の改善等、具体的な対策を政府に求めています。特にCBAMについては、EUとの実施時期のずれが貿易障壁を生む可能性がある為、2026年迄の延期や貿易保護を含む緩和策を要請しています。また、エネルギー供給の信頼性や再生可能エネルギーへの依存リスク、炭素回収・貯留、水素技術、電化への継続的な資金提供の不確実性も課題として挙げられています。
▶ https://www.eiug.co.uk/policy-impacts-on-uk-energy-intensive-industries-open-letter-to-minister-jones/
今年は話題にも上がらなかったWEFのダボス会議では、アメリカの台頭とヨーロッパの衰退が主要な議題となり、トランプ大統領の演説がヨーロッパへの批判を強調しました。彼はEUの規制や米国への不公平な扱いを非難し、防衛費増加を要求しました。ヨーロッパは経済格差や軍事費負担への対応を迫られています。EUは低成長や生産性低迷に直面しており、ドラギ前ECB総裁は協調投資と統合強化を提言しましたが、実現には至っていません。アメリカのハイテク企業が優位を誇る一方、EUは大規模企業の育成に失敗しており、官僚主義が改革を阻害しています。フォンデアライエン欧州委員長は新たな成長戦略を提案しましたが、国内政治や右派勢力の台頭が統合強化の障壁となっています。一方でEU内企業のCEOは欧州への再投資の可能性を示唆しつつ、インフレリスクへの警鐘を鳴らしました。
▶ https://www.theguardian.com/business/2025/jan/24/davos-donald-trump-tariffs-eu-us
欧州の将来を大きく左右するドイツの総選挙が4週間を切り、動き始めました。次期首相候補フリードリヒ・メルツは移民規制強化の為に極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」との協力を示唆し、物議を醸しています。この動きはAfDを排除してきた従来の政治的慣行を覆す可能性があります。 背景には移民による一連の暴力事件があり、特に最近のバイエルン州での幼児殺害事件が選挙戦の焦点を移民問題へと移しました。メルツ氏は厳格な国境管理と強制送還の徹底を訴え、AfDの支持を得て法案を可決しようとしています。 この動きは他の主流政党から強い批判を受けています。この状況はドイツの政治的風景を大きく変える可能性があり、移民政策をめぐる議論が一層激化し、EUの将来にも大きな影響を与えると予想されています。
▶ https://www.eiug.co.uk/policy-impacts-on-uk-energy-intensive-industries-open-letter-to-minister-jones/
投資家はEUのESG基準を持つファンドから記録的な資金を引き揚げています。2021年に採択されたEUの持続可能な金融開示規則(SFDR)に基づき、ファンドはその持続可能性に応じて分類され、第9条ファンドは持続可能な投資を目的としていますが、2024年第4四半期にはこの第9条ファンドから76億ドルの流出がありました。これは過去最高の流出額であり、5四半期連続の純流出を記録しています。流出の主な理由はリターンが相対的に低いことです。一方で持続可能なオープンエンド型ファンドとETFへの流入は2024年の年間流入額で半減しています。米国では持続可能なファンドが2年連続で資金流出し、2023年には133億ドル、2024年には196億ドルに達しました。従来型ファンドは金利引き下げとAI関連株高騰により約7,400億ドルの資金流入があります。低リターンによるESG投資への反発が続いています。
▶ https://www.morningstar.com/lp/global-esg-flows
欧州委員会は待ち望まれていたEUの競争力戦略となる「競争力コンパス」を発表しました。この戦略はイノベーション、脱炭素化、安全保障の3つの主要分野に焦点を当てており、今後5年間の経済原則における最初の主要な取り組みとして位置付けられています。前回は欧州グリーンディールでしたので大きく変わりました。欧州委員会は欧州が競争力を取り戻すには弱点を克服する必要があると述べています。この戦略では冶金、自動車、航空宇宙、クリーンテクノロジー等の戦略的分野に重点を置くとしています。
▶ https://commission.europa.eu/news/steering-eu-towards-greater-sustainable-competitiveness-2025-01-29_en
また、同時に欧州委員会は、自動車産業の将来に関する戦略的対話を開始し、行動計画を発表しています。この対話は欧州の自動車産業が直面する重大な課題に対処し、その継続的な成功を確保することを目的としています。欧州の自動車業界は1,300万人以上の雇用を支え、GDPで約1兆ユーロに達します。しかし現在、EUの自動車業界は根本的な変化に直面しています。委員会は3月5日に包括的な「行動計画」を発表する予定で、これには人材とリソースへのアクセスの確保、技術革新の促進、予測可能な規制枠組みの確立等が含まれます。クリーントランジション、産業バリューチェーン、技術革新とデジタル革新、スキルと社会的配慮の4つのテーマ別作業部門が設置されます。
▶ https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_378
英国ではEV中古車が過去最大の価格下落を起こしています。Cap HPIの最新データによると、2025年1月の中古車市場において、EVが最も大きな価値の低下(1.1%)をしました。一方、ディーゼル車は0.2%上昇し、ハイブリッド車は安定を維持しました。ガソリン車は0.1%、プラグインハイブリッド車は0.6%の値下がりを示しました。これらの変動にも関わらず中古車市場全体は堅調で、1月の全体下落率はわずか0.1%でした。
▶ https://www.motorfinanceonline.com/news/ev-record-drop-january/?cf-view
かつて欧州のリサイクルのチャンピオンだったドイツは統計によると大きな岐路に立っています。報告書によると同国の廃棄物の40%が国民によって誤って分別されていることが明らかになっています。ドイツ連邦環境省(UBA)のデータによると、ドイツではリサイクル可能な材料が一般廃棄物コンテナに投げ込まれ、その後焼却されるか埋め立て地に送られることが多いことが分かりました。「収集されたごみの質が著しく低下しているケースもある。多くの廃棄物が間違った収集容器に捨てられている」と報告書は記載しています。流入する不法移民の増大、経済の停滞等、様々な要因が重なっているようです。
▶ https://www.msn.com/en-xl/news/other/green-germans-lose-crown-as-best-in-world-for-separating-rubbish/ar-AA1xIvOp
トランプ政権の規制緩和によっても重要鉱物への需要は抑制されない見通しと伝えられています。 アナリストや業界リーダーらによると、トランプ米大統領によるEV生産目標の撤回は、リチウムやその他の重要な鉱物の需要を一時的に鈍化させる可能性があるが、EVの世界的な需要が急増する中、鉱業に悪影響を与える可能性は低いと見られています。世界第2位の米国の自動車市場でEV需要が冷え込んだとしても、アナリストや業界専門家は他国での牽引力がそれを補って余りあると分析しています。ただし、この情報を出しているロイターはEV寄りなので、本当にそうなるのかは疑問視する向きもあります。
▶ https://batteriesnews.com/trump-battery-ev-rollback-not-expected-to-suppress-appetite-for-critical-minerals/#google_vignette
WTOは貿易戦争は世界経済にとって「壊滅的」な影響を与えると警告しています。WTOの事務局長は報復的な貿易戦争は世界経済の成長に壊滅的な結果をもたらすだろうと警告しました。同氏は「もし報復措置が取られれば、それが25%の関税であろうと60%であろうと、1930年代の状態に戻り、世界のGDPは2桁の損失を被ることになるだろう。それは壊滅的だ。誰もがその代償を払うことになる」と述べています。政治リスクの専門家は米政権による報復関税での「最悪のシナリオ」は回避される可能性が高いと確信していますが、当面は影響が出ることは避けられないと分析しています。
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