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NEWSCONの気になるNEWS(2025年1月第3週)

国連海運機関のトップによると、海洋からの排出ガスに対する世界的な課税案を支持する政府の数が増えており、気候変動の影響を特に受けやすい太平洋島嶼国はこの課税を歓迎しています。課税にはEU、英国、日本、ナイジェリア、ケニア等が賛成しています。2月と4月にロンドンで開催される会議では、各国政府は船舶の排出量全体に課税するか、燃料基準のみを導入するかを議論する予定です。課税により船主は船舶が排出する温室効果ガス1トンごとに支払いを強いられることになり、現在の石油ベースのバンカー燃料のような汚染度の高い燃料の使用コストが上昇します。この課税はアンモニア、バイオ燃料、メタノール、水素等の排出量の少ない燃料の使用促進が目的となります。
https://www.climatechangenews.com/2025/01/16/support-grows-for-global-tax-on-shipping-emissions-to-fund-climate-action/

スクラップを巡り、2つの業界団体が反対の立場を表明しています。国際リサイクル局(BIR)は、EUからの「鉄及びアルミニウムスクラップの輸出に対する制限の呼びかけ」に反対を表明する公開書簡をEU首脳向けに掲載しました。最近、欧州鉄鋼生産者連合と欧州アルミニウムは連盟でスクラップ輸出の制限をEU政府に要求しました。BIRと欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)は共にリサイクル金属の輸出制限に反対しています。BIRやEuRICは「リサイクル業界の重要性」を主張していますが、生産者側は、国際競争力や雇用への影響を主張しています。この動きは2年前から始まり、現在はより活発化しています。
https://www.bir.org/news-press/news/61-news-featured/1000041986-bir-open-letter-against-eu-export-restrictions-of-recycled-materials

フォルクスワーゲン(VW)がオスナブリュック工場を閉鎖した場合、中国企業が買収に乗り出す可能性があり、大変注目されています。VWは工場の利用方法を模索中ですが、具体的なコメントは控えています。ドイツの労働組合はこの状況を冷静に受け止めており、組合代表は条件付きで中国向け生産に反対しないと発言しました。工場の売却価格は1億300万~3億900万ドルと推定されています。中国はドイツ側に公平な投資環境を求めている状況です。多くの中国EVメーカーは、EU問題回避の為、欧州での工場立地を探しており、一部は既に西欧の工場を調査しています。自動車メーカーは新設工場よりも既存工場を優先する傾向があり、長期目標も視野に入れて買収を模索しています。
https://insideevs.com/news/747593/germany-china-buy-vw-factories/

予想に反して、中国の経済成長は昨年5%を達成する見込みです。2024年Q4のGDPは前年比5.4%増で、こちらも市場予想を上回りました。12月のデータによると工業生産が小売売上高を上回っています。輸出優位の成長は工場デフレによって支えられている状況で、国際競争力を高める一方で、国内では企業利益と労働者の所得を圧迫しています。また、デフレ圧力や不動産・株式市場の低迷が続き、対米懐疑論も強まっています。専門家の中には中国が2024年の成長目標を「正確」に達成出来たかどうか疑問を抱いている人も少なくありません。
https://www.theguardian.com/business/2025/jan/17/china-economy-hits-growth-target-but-rate-among-slowest-in-decades

2月に連邦選挙があるドイツでは、首相に立候補しているドイツ保守派キリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ氏が「グリーンスチールと水素」に関する立場を明らかにしました。メルツ氏は再生可能エネルギーと水素技術、そして環境に優しい鉄鋼の生産を支持していると説明しています。しかし、現実的な目標を設定し、現実的な期限を念頭に置く必要があることも、合わせて述べています。現在の選挙運動の焦点は移民、生活費、エネルギー価格、ロシアのウクライナ侵攻、中東、中国問題です。今のところ、CDUが第一党となり首相に就任する可能性が高いと伝えられていますが、過半数は無理で、政権を樹立するにはSPD、緑の党、FDPのいずれかとの連立が必要になる見込みです。ただし、米国を筆頭に最近の選挙世論調査はあまりあてにならず、右傾化の中で大きく動く可能性があり、その場合はグリーンスチールにも影響が出そうです。
https://gmk.center/en/news/germany-continues-discussions-on-green-steel/

アルセロール・ミッタルは環境問題への懸念からティッセンクルップ・スチールからの銑鉄の購入を停止する予定です。このニュースは、欧州の鉄鋼業界が二酸化炭素排出コストの上昇にどれほど苦しんでいるかを示しています。両社は現在深刻な課題に直面しています。アルセロール・ミッタルは最近、グリーン技術への投資計画を延期したばかりです。一方、ティッセンクルップは政府の資金援助を得ましたが、経営難から計画中の脱炭素化プロジェクトを継続できるかどうかを検討しています。CSRDが始まり、欧州では脱炭素化の推進が待ったなしになっている状況が続いています。
https://gmk.center/en/news/arcelormittal-duisburg-to-stop-purchasing-pig-iron-from-thyssenkrupp/

1ヵ月後に迫った欧州最大の経済大国であるドイツの選挙に向けてYouGovが最新の世論調査を発表しています。調査によると、CDU/CSU連立政権が政権に復帰する見通しで、中道右派政党の支持率は2021年の24.1%から29.8%に急上昇する見込みです。しかし2021年に僅か10.4%の得票率で5位に終わった保守政党と言われているAfD(ドイツのための選択肢党)は、支持率が2倍の19.7%と大幅に議席数を増やす見込みです。AfDは146議席を確保し、ドイツ第2の政党としての地位を固める見込みとなり、ドイツで大きな変化が起きる可能性が高くなっています。こうした欧州の右傾化の波は1年以上も続き、既に新たなグリーン化への規制の波はほとんど聞かれなくなりました。
https://www.gbnews.com/news/world/olaf-scholz-german-election-poll-afd

ロシアは既にウクライナのリチウム鉱床4ヶ所の内2ヶ所を奪取しており、グリーンエネルギーに不可欠なリチウムへのアクセスの点で、欧州各国に影響を及ぼす可能性が指摘され始めています。地質調査によると、ウクライナには未開発のリチウムが推定50万トンあり、ヨーロッパでも最大級の埋蔵量です。ウクライナ紛争により、ウクライナのリチウム埋蔵量を活用して重要な鉱物資源における欧州の戦略的自立を支援する取り組みは更に困難を極めそうです。
https://oilprice.com/Metals/Commodities/Russias-Control-of-Ukrainian-Lithium-Mines-Threatens-Europes-Green-Energy-Shif.html

トランプ大統領は就任初日の一連の大統領令及びその他の措置の一環として「国家エネルギー非常事態」を宣言しました。この大統領令には、自動車メーカーに対して2027年以降、新型の小型・中型車両で温室効果ガス排出量を半減するよう義務付けた環境保護庁(EPA) の規則の廃止も含まれています。EPAの規制により、2032年までに新型の小型車の約30~56%、新型の中型車の20~32%をEV化することが、事実上、メーカーに課せられてきました。大統領は新車、又は中古車のEV購入に対する連邦税額控除を付与する政策を大幅に削減し、インフレ抑制法(IRA)またはインフラ投資・雇用法を通じて割り当てられた資金の支出を一時停止します。これにはEV充電ステーションへの資金が含まれます。
https://www.innovationnewsnetwork.com/trump-reverses-bidens-electric-vehicle-mandate-shifting-lanes-on-ev-policy/54707/

ドイツの連邦鉄鋼リサイクル・廃棄物管理会社協会(BDSV)とドイツ金属取引・リサイクル協会(VDM)は選挙に向けて立場表明書(ポジションペーパー:PP)を発表しました。業界団体はドイツ産業の競争力にとって金属リサイクル部門が重要であることを強調しています。PPでは新しい立法期間(2025~2029年)の優先政策トピックを特定しました。このPPではメーカーが輸出規制を請願している中、逆の立場を取り、鉄鋼や金属などの二次原材料の自由貿易が業界の競争力と供給の安定にとって不可欠であることを強調しています。またドイツの高い電気料金が鉄鋼業界の競争力を脅かしていることを指摘しています。恐らく、このままでは欧州の鉄鋼業が立ちいかなくなる為、何れかの時点で程度の差はあれ、規制が行われる可能性が高くなっています。PPの発行はそれを示唆しています。
https://www.bdsv.org/

欧州自動車工業会(ACEA)が2024年の欧州での新車販売データを公表しました。昨年欧州で販売されたEVは合計199万台で、2023年より1.3%減少しました。欧州におけるEV販売は停滞を示しており、内燃機関(ICE)車からの移行について疑問の声が上がっています。コンサルタント会社ローモーションが先週発表したデータによると、中国での急増によりEVの販売台数は昨年、世界全体で25%増加しました。しかしグリーンを先導した欧米では、あまり伸びませんでした。
https://www.acea.auto/pc-registrations/new-car-registrations-0-8-in-2024-battery-electric-13-6-market-share/

スタンダード・チャータード銀行のCEOは顧客の持続可能性目標達成を支援する事業から今年、約10億ドルの利益を計上する予定だと発言しています。同氏は2030年迄に3000億ドルのグリーンで持続可能な投資を約束しており、引き続き世界の気候変動資金調達で主導的な役割を果たすと発言しています。トランプ大統領は気候変動への投資政策に消極的ですが、過去の米政府のデータでは政治(政策)とは関係なく、経済が好転すればトランプ大統領の最初の任期中にクリーンエネルギーブームが起きたように、同じことが起きると予測しています。米国の共和党の牙城であるテキサス州は、2020年には米国の太陽光・風力エネルギーの拡大を過去最高に導いた経緯があり、景気浮揚により、同じようなことが起きると予測しています。
https://www.reuters.com/sustainability/sustainable-finance-reporting/climate-shift-help-boost-stanchart-income-by-almost-1-billion-ceo-says-2025-01-21/

アメリカ鉄鋼協会(AISI)はトランプ大統領のアメリカ第一主義の貿易政策に支持を表明しました。同協会のCEOは「AISIは貿易政策を国家安全保障の重要な要素とみなし、米国鉄鋼業界の最優先事項の多くに対処する為の強力かつ積極的な政策を継続的に追求するという大統領の決意を称賛します」と声明で述べています。米国は貿易関係の包括的な見直しに着手しています。特にホワイトハウスのウェブサイトに掲載された大統領令では、関係機関に対して、米国の対外貿易赤字の原因を調査し、外国歳入庁の設立の実現可能性を評価し、不公正な貿易慣行を特定し、既存の貿易協定を見直すよう命じています。
https://www.steel.org/2025/01/aisi-statement-on-trump-america-first-trade-policy/

大手の分析機関がグリーン水素の鉄鋼利用について疑問を呈し始めています。調査会社のLux Research社が投稿をし、鉄鋼製造用の水素直接還元鉄(DRI)は、統合水素生産を行っているスカンジナビアのプロジェクトを除き、グリーン水素を一時停止、又は回避するだろうと予測を述べています。米国オハイオ州のエネルギー経済・金融分析研究所(IEEFA)のウェブサイトは1月21日に投稿した記事の中で「様々な問題が鉄鋼生産向けの『ブルー水素』の可能性を著しく阻害する」と書いています。グリーン水素をタクソノミーでグリーン分類する事に固執する為に最も現実性の高いブルー水素への投資が進まないことを訴えています。今月、スウェーデンの鉄鋼メーカーSSABは、米国での水素プロジェクトから撤退する予定と伝えられています。
https://luxresearchinc.com/blog/industrials-innovation-2025-balancing-near-term-wins-and-long-term-growth-for-industrials-innovation/

米国を中心に気候変動に対する後退がありますが、英国では「気候と自然法案」の審議が継続しています。下院で第二読会が行われる予定で投票を前に労働党議員90名を含む195名の議員が支持しています。法案が次のステージに進むには100票が必要です。この法案に対して、オックスフォード大学やケンブリッジ大学、ロンドン動物学会の代表者を含む1,000人を超える気候科学者、学者、医療専門家が書簡に署名しました。法案の支持者は国会議員と現政権に対して「科学を無視するのではなく」、むしろ「人類が単に生き残るのではなく、繁栄する未来へと向かう道筋を導くために、英国がリーダーシップを発揮する最後の絶好のチャンスであるこの歴史的瞬間に立ち向かうよう」求めています。
https://bills.parliament.uk/bills/3707

EUは戦争で敵対し制裁を課しているはずのロシアから昨年11カ月で504万トンの鉄鋼原料を輸入しました。安価なロシア産の半製品に頼らざるを得ない欧州の鉄鋼業界の事情が伺えます。輸入の大半は半製品鋼材、還元鉄、銑鉄で占められていました。ロシアからのスクラップ輸入量は42.61千トン、調達コストは2358万ユーロ。鉄鉱石供給量は936万トン、133万ユーロ。同時に、この期間の直接還元鉄輸入量は994.65千トン、3億3305万ユーロに達しました。水面下でこの状況は続きそうです。
https://gmk.center/en/news/eu-imported-5-04-million-tons-of-steel-raw-materials-from-russia-in-january-november/

かつて欧州のリサイクルのチャンピオンだったドイツは統計によると大きな岐路に立っています。報告書によると同国の廃棄物の40%が国民によって誤って分別されていることが明らかになっています。ドイツ連邦環境省(UBA)のデータによると、ドイツではリサイクル可能な材料が一般廃棄物コンテナに投げ込まれ、その後焼却されるか埋め立て地に送られることが多いことが分かりました。「収集されたごみの質が著しく低下しているケースもある。多くの廃棄物が間違った収集容器に捨てられている」と報告書は記載しています。流入する不法移民の増大、経済の停滞等、様々な要因が重なっているようです。
https://www.msn.com/en-xl/news/other/green-germans-lose-crown-as-best-in-world-for-separating-rubbish/ar-AA1xIvOp

トランプ政権の規制緩和によっても重要鉱物への需要は抑制されない見通しと伝えられています。 アナリストや業界リーダーらによると、トランプ米大統領によるEV生産目標の撤回は、リチウムやその他の重要な鉱物の需要を一時的に鈍化させる可能性があるが、EVの世界的な需要が急増する中、鉱業に悪影響を与える可能性は低いと見られています。世界第2位の米国の自動車市場でEV需要が冷え込んだとしても、アナリストや業界専門家は他国での牽引力がそれを補って余りあると分析しています。ただし、この情報を出しているロイターはEV寄りなので、本当にそうなるのかは疑問視する向きもあります。
https://batteriesnews.com/trump-battery-ev-rollback-not-expected-to-suppress-appetite-for-critical-minerals/#google_vignette

WTOは貿易戦争は世界経済にとって「壊滅的」な影響を与えると警告しています。WTOの事務局長は報復的な貿易戦争は世界経済の成長に壊滅的な結果をもたらすだろうと警告しました。同氏は「もし報復措置が取られれば、それが25%の関税であろうと60%であろうと、1930年代の状態に戻り、世界のGDPは2桁の損失を被ることになるだろう。それは壊滅的だ。誰もがその代償を払うことになる」と述べています。政治リスクの専門家は米政権による報復関税での「最悪のシナリオ」は回避される可能性が高いと確信していますが、当面は影響が出ることは避けられないと分析しています。
https://www.asiafinancial.com/trade-wars-would-be-catastrophic-for-world-economy-wto



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