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世界の環境関連ニュース(2021年8月第3週)

プラスチックリサイクルでPETの次のターゲットであるPPのリサイクルのニュースです。韓国の「SKグローバルケミカル」が米国のリサイクル企業と提携して米国でのrPPに乗り出す事が複数のメディアで伝えられています。提携する会社は米国の「Pure CycleTechnologies」で、同社は今年ナスダックに上場した企業です。PP廃棄物から超高純度のrPPを製造する技術を開発しています。元々この技術は「Procter&Gamble(P&G)」が開発したもので(特許取得)、PP廃棄物から色、臭い、汚染物質を分離できる、という極めてユニークなものです。PPは使われる製品の多さと量、更に米国では埋立て廃棄される量が多い事から、プラスチックリサイクルの可能性のある市場と見られています。
https://www.packaging-gateway.com/news/sk-global-chemical-purecycle/

ドイツ証券取引所の指数であるDAX 30が今日史上初めて16,000ポイントを超えています。5ヶ月前に15,000ポイントを超えたばかりでした。パリ市場のCAC 40も本日6,900ポイントを上回り最高値圏、ロンドンのFTSEも2018年の高値付近まで近づく結果となり、米株も含めて欧米に資金が流れています。欧米ではインフレが加速しており、資産バブルもある程度継続していて、アジアがデルタ株で混乱している中、マネーの流れが変わっています。コモディティーにも影響が出そうです。
https://www.morningstar.co.uk/uk/news/AN_1628847934259246800/top-news-summary-paris-and-frankfurt-stock-indices-set-new-highs.aspx

本日、欧州委員会は市民による「Return the Plastics」イニシアチブを正式なものとして登録する事を発表しています。ペットボトルをリサイクルするためのEU全体の預金(デポジット)システムを実施するための市民によるイニシアチブです。同イニシアチブは、欧州委員会に以下の提案求めています。

・ペットボトルをリサイクルするためのEU全体の預金システムを実施する事。
・ペットボトルを販売しているスーパーマーケットに、消費者がペットボトルをリサイクルするための逆自動販売機を設置することを、すべてのEU加盟国に奨励する事。
・ペットボトル製造会社にペットボトルのリサイクルとデポジットシステムに対するプラスチック税を支払わせる事。

EU加盟国全体でデポジットシステムが実施されると、大きな変化になりそうです。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_21_4182

現在、長期化している海上コンテナ輸送の問題のニュースです。海上輸送におけるコンテナ問題を解決する為に米国で議論され始めた海上輸送法に対して国際海運評議会が声明を発表しています。米民主、共和両党の議員から提出された「The Ocean Shipping Reform Act of 2021」という法案で、輸送船舶会社に複数の新しい義務が課される予定です(詳細は下のリンク)。これに対し、国際海運評議会が、コンテナ船の問題はサプライチェーン全体の問題で、海運事業者のみに解決を求める事は公平でない、という立場を取っています。スクラップのISRIや全米トラック協会(ATA)も同法案を承認する側の立場を取っています。法案を提出した民主党のジョンソン氏によれば、「世界トップ10の海運会社が20年前にはコンテナ輸送量の12%のみ管理していたが、現在は80%を管理している」という事で、海運業者の管理(義務)をより求めるものであるとの立場です。 これに関連している内容として、2021年の上期に世界では275隻の貨物船がスクラップとして販売されています。この数は昨年の上半期比40%増、2019年同期比33%増、となっています。船会社の路線や旧型船舶の整理とスクラップ価格の高騰が拍車をかけているようです。
https://www.worldshipping.org/news/wsc-statement-on-the-framework-for-the-to-be-introduced-ocean-shipping-reform-act-of-2021
https://www.freightwaves.com/news/ocean-carriers-shipping-reform-act-doomed-to-fail

PETの次の大きな流れとしてPPの食品グレードのリサイクル材供給の動きが継続しています。包装材メーカーの「Berry社」が、英国で新しいポリプロピレン(PP)リサイクル工場を作る事を発表しています。単なるrPP工場ではなく、目標純度基準が99.9%の食品グレードのrPP材料生産で、主に機械的なリサイクルで達成する事です。「CleanStream」と呼ばれる独自の技術で工程内のセンサーとAI(機械学習アルゴリズム)を統合して廃棄物の選別を行います。このrPP材料から製造されたパッケージは、CO2排出量を35%削減、必要な水消費量を50%削減、化石燃料資源の使用量を90%削減する、としています。また施設の運用は、地元の植樹でCO2排出量を相殺し、ネットゼロとする予定です。
https://www.bpipackagingsolutions.com/showcase/berry-global-invests-in-second-recycling-facility/

複数のメディアで報道されていますが、ドイツが今年、1990年以来最大の温室効果ガスの発生量を増加させる予測が出ています。昨日、ドイツの環境シンクタンク「Agora Energiewen de」の報告で発表しています。今年前半の悪天候が風力と太陽光発電の生産を妨げた、という事で、石炭火力を使った事が原因としています。ドイツは2045年迄に排出量を「ネットゼロ」に削減することを目指しています。ドイツは9月26日に総選挙がありますが、主要な政党の全てが気候変動対応を最重要課題に掲げています。ドイツは過去にも海外から電力を輸入した事もあり、その時は炭素価格が上昇して石炭火力を止めた為に再生可能エネルギーだけでは対応できなかった事が原因でした。
https://www.washingtonpost.com/world/study-germany-to-see-biggest-surge-in-emissions-since-1990/2021/08/15/b3695066-fdb9-11eb-87e0-7e07bd9ce270_story.html

米カリフォルニアの「SA Recycling LLC」がテネシー州を含む米部の州で幾つかの拠点を持つ「Southern Recycling LLC」の資産を購入した事が伝えられています。SA Recycling LLCというのは、鉄鋼メーカーであるAdams Steelを所有するアダムス一家が所有している会社ですが、50 %はオーストラリア(の米国拠点)の「Sims Limited」が所有している会社です。この買収で、SA Recyclingは全米で87のスクラップ処理施設、15基のシュレッダー、更に船舶ドッグを所有する米国有数のスクラップ業者となります。欧米では、鉄鋼メーカー(や精錬メーカー)とスクラップ業者との資本を含む関係が強化されており、今後の脱炭素とサーキュラーエコノミーにより、機会があればこの動きはさらに加速しそうです。
https://bit.ly/3CWnNbK
https://bit.ly/2XyPmI6

先月末に自主的炭素市場の健全性(正当性/完全性)イニシアチブ(VCMI) が立ち上がっている事があまり報道されていないようなので、お知らせします。カーボンオフセットクレジットの為の自主的炭素市場は今や欧米の投資家と金融機関が資金を最も投入する市場の1つとなっています。グリーンウォッシングや不公平性の問題から、その健全性を監視するためにこのイニシアチブが立ち上がっています。VCMIは、炭素クレジットとそれらが表す排出削減量を評価するためのガイダンス、すなわち「標準書」を提供するものです。残念ながら炭素市場と標準化は欧米(資本)の独占のまま、脱炭素(排出取引と課税)の制度だけが他国・地域に同じように課せられるという、過去にも似た歴史が繰り返されそうです・・・・。
https://vcmintegrity.org/
https://vcmintegrity.org/consultation-hub/

Natureのウェブ版が、リチウムイオン電池原材料の将来の不足について本日記事を載せています。既に各方面で言われている事ですが、リチウム、コバルト、ニッケル共に使用量の削減とリサイクルが最も求められていますが、現状では商業的なベースに乗せる為には絶対量が不足しており、リサイクルも課題も多く、今後EVやギガファクトリーが普及する際に今の予測の通りになるのか、科学者の間でも意見が割れており、本記事で述べられています。
https://www.nature.com/articles/d41586-021-02222-1

珍しく航空機リサイクルの話題が一般ニュースで伝えられています。依然、世界では35%以上の待機航空機があり、脱炭素化に向けアップデートの為に分解されているものが多いようです。比較的リサイクルは容易なようですが、資産処理や費用面から待機数を維持してリサイクルに回す迄には至っていないのが現実のようです。ただ、エンジンは今後バイオ燃料対応に順次交換する必要があります。
https://bbc.in/3yT7V7z

日本は長雨による水害が顕著だと思いますが、米国南西部から南米全体にかけて今年は干ばつが厳しく、チリ、ブラジル、そして米カリフォルニア州やネバダ州では水力発電が機能せず、火力発電の比率を上げる政策を実施して、脱炭素に対するリスクが報告されています。日本も夏は暑いですが、ここ数年の欧州、特に地中海近隣の国々は熱波で山火事が多発しています(今現在も南仏、イタリア、トルコ、ギリシャで山火事)。7月は西ヨーロッパでドイツ西部を中心にスイス、オランダ、ベルギーでも洪水被害が報告されています。本来、水害は治水管理、山火事は森林管理の問題が一番初めに政治的な責任追及が来るのですが、批判を恐れる欧州の政治家は、これらが炭素による温暖化が原因という主張を繰り返して、また主要メディアも同じ論調が大勢を占めており、11月のCOP26でより先鋭的な脱炭素規制の枠組みが出来る、と言われ始めています(既に欧州では、その呼び掛けが始まっています)。
https://bit.ly/2W6r4Vb

欧州ではいよいよグリーンスチール(CO₂を排出しない方法で製造した鉄)の時代が始まったというニュースです。以前も紹介したグリーンスチールを製造するスウェーデンの会社「Hybrit社」が最初のグリーンスチールのデリバリを始めた事が、一般紙でも伝えられています。商業生産は2026年からですが、最初のパイロット製品はトラックメーカーの「Volvo AB」に出荷されています。Volvoはグリーンスチールを採用するにあたり、スウェーデン最大の鉄鋼メーカーである「スウェーデン・スチール(SSAB))と共同開発協定を結んでおり、そのSSABが他社(スウェーデンの「LKAB(鉱業会社)」、「Vattenfall(国有電力会社)」)とグリーンスチールを製造する為に共同出資した会社が「Hybrit社」です。同じ高級車とトラックのメーカーである独メルセデスベンツも2025年からグリーンスチールを自社製品に採用する為、スウェーデンのH2 Green Steelに出資しています。
https://bit.ly/3B0TpeN

ジョンソンマッセイやグレンコアという原材料開発や鉱工業の国際的な大手企業がバックアップする英国最大の新興電池メーカー「Britishvolt(ブリティッシュボルト)」がオックスフォード大学を含めた民間、政府研究機関とコンソーシアムを作り「全個体電池」開発のMOUを結んだ事を発表しています。現在、スウェーデンでは政府や同国の企業を上げてノースボルトを全面的に支援していますが、英国でも同じようにブリティッシュボルトを国家戦略の1つとして支援しています。車載駆動バッテリーでは圧倒的に日本のメーカーの特許数が多いのですが、全く新しいイノベーションは英米が得意とするところなので、今後どのようになるのかウォッチするネタです。
https://bit.ly/37WO4Zl

ナスダックに上場する米国の大手金属リサイクラーである「シュニッツァー( Schnitzer Steel Industries Inc.)」が米南部の「Columbus Recycling」を買収する事を発表しています。ミシシッピ、テネシー、ケンタッキーを含む南東部のいくつかの州にまたがる8つの運営施設を買収するという事です。又、同社が保有する鉄鋼(線材)メーカーの「Cascade Steel Rolling Mills」のオレゴン州の工場での生産を再開した事も発表しています。同工場は、火災により一時休止していました。
https://bit.ly/3z0sIWF

金属リサイクルの世界最大手Sims Limitedが年次決算報告を出しています。売上高は、前会計年度20.5%増加、収益(EBITDA)は300%以上の急増です。大幅増の影響は前年のCOVID-19もありますが、収益(最終利益)の増加は世界的に他の金属リサイクル業者と同様、売上以上に急増しています。特に改善したのは北米事業部門で前会計年度の2,820万米ドルの損失に対して2021会計年度では9,910万米ドルの収益でした。英国、オーストラリア、ニュージーランドでの金属リサイクル事業も、2020年度と比較し大幅に健全性が増し利益を上げた、という事です。
https://bit.ly/3st0TnH

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