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世界の環境関連ニュース(2021年10月第2週)

廃棄物のエネルギー利用(WtE)が今後も促進される可能性のある重要なレポートが発行されています。このレポートはEUのLife Programによってサポートを受けているZero Waste Europeがオランダのコンサルタント会社CE Delftに依頼して調査したものです。CE Delftは欧州でも比較的権威のあるレポートを発行するコンサルタント会社と見られています。このレポートの結論は、現在EU排出権取引制度(EU ETS)に含まれていない自治体の廃棄物焼却(炉)を、同制度に含めると仮定した場合の効果です。自治体は廃棄物焼却で(クレジット購入による)炭素発生のコストが上昇する為、リサイクルの促進とごみ発電へのインセンティブが働くという事です。自治体の廃棄物焼却をEU ETSに含めた場合、2030年までに最大880万トンのCO2排出量を削減できる可能性がある、としています。Zero Waste Europeは欧州政府に廃棄物焼却炉をEU ETSに含めるよう提案した、としています。
https://zerowasteeurope.eu/library/waste-incineration-under-the-eu-ets-an-assessment-of-climate-benefits/

遂にシャネルもバイオプラスチックを一部に使う香水用のボトル(瓶)を発表しています。新しいLESEAUX DE CHANELのシリーズのキャップに使われるもので、供給は以前にもお伝えした事があるプラスチック代替材料を開発するフィンランドの新興企業の「Sulpac」によるものです。シャネルは2018年にスタートアップ企業であったSulapacに投資した最初の企業の1つです。このボトルキャップはSulapacとの2年間の提携の結果で、最終製品に到達するために約48回の試行(試作テスト)を行ったという事です。やはり欧州の大企業は2018年から動いているのですね・・・。
https://www.sulapac.com/blog/les-eaux-de-chanel-elegance-and-simplicity-with-a-sustainable-sulapac-cap-on-top/

欧州経済紙の一番のニュースは、中国の不動産ディベロッパー各社の「簿外債務問題」です。インフラ投資に関わるので、鉄鋼等の生産にも影響が出る可能性があります。恒大集団だけでなく、同業不動産ディベロッパーの多くが簿外債務を抱えており、総額は数十億ドル(数千億円)相当になるとの事です(中国の不動産全体では大きな額ではありませんが・・・・)。問題は、この額が実際の債務としてカウントされた場合、それら企業の市場におけるレバレッジ比率が上昇すると見られています。それにより、一層の資金調達コストが上昇、債務の負のスパイラルが生じる可能性がある、という事です。
https://reut.rs/3Btayyb

ニューヨーク証券取引所に上場する米国最大のフラットロール鉄鋼メーカー「Cleveland-Cliffs Inc.」が、ミシガン州のスクラップ回収業者である「Ferrous Processing and Trading Company(通称:FPT)」の買収を発表しています。FPTは米国で9番目に大きい鉄スクラップの加工業&流通業者で、現在年間約300万トンのスクラップを処理しており、その内の約半分はプライムグレードの鉄スクラップです。買収額は約7億7500万ドル(約850億円)です。鉄スクラップ業者の企業価値がひと昔前には考えられない金額になっており、更に鉄鋼メーカーが同セクターに急速に進出しています。この動きは欧州では1年前から始まり、今年に入り米国でも加速しています。
https://www.clevelandcliffs.com/news/news-releases/detail/533/cleveland-cliffs-enters-the-scrap-business-and-announces

フランスの大手エネルギー会社である「トタル(Total Energies)」が、PPリサイクルを倍増させることを発表しています。2019年に買収した子会社であるの「Synova」が行うもので、既にSynovaはケミカルリサイクルを拡張しており、それに加えた機械リサイクル処理能力の増強となります。リサイクル対象品は、工業用ラップ用フィルム、家庭用品、自動車部品のそれぞれの廃棄物から発生したPPです。
https://totalenergies.com/news/plastic-recycling-inside-synova

ドイツを中心とする欧州最大の廃棄物管理会社の1社である「Remondis」が先月のオランダ「Reym社(エネルギー及び廃棄物管理他)」に続いて、「Diebold Nixdorf社」のリバース自動販売機(RVM)事業を買収する事を発表しています。Remondisは、既にrPET100%の工場をドイツ国内のハンブルク近郊で稼働しており、欧州で良質なPET廃棄物収集網を構築する事が狙いのようです。既に欧州では大手を中心に廃棄物の収集を含めた管理会社や技術プロバイダーの買収が継続しており、今後もこの動きが強まる事が予測されています。
https://www.euwid-recycling.com/news/business/single/Artikel/remondis-to-acquire-rvm-activities-from-diebold-nixdorf.html

銅精錬の大手「Aurubis」が、『Tomorrow Metals by Aurubis』というサステナビリティーを強化する指針をLEMウィーク(年次総会)で発表しています。2030年までに2018年比でスコープ1とスコープ2の炭素排出量を半減、銅1トンあたりスコープ3の排出量を24%削減し、調達におけるパートナー企業の持続可能性とコンプライアンスの基準、評価、更に文書化が含まれています。現在40%の銅カソードがリサイクル材より生産されていますが、これをさらに拡大する、としています。いよいよ、(銅)精錬にも本格的な脱炭素 = グリーンカッパーの波が来ました。
https://www.youtube.com/watch?v=IHuvn_qt_yQ

家具大手の「イケア(Ikea)」の親会社である「Inter Ikea」とファッション大手の「H&M Group」が2030年までに再生可能、及びリサイクルされた材料のみを使用することを計画している事が伝えてられています。この計画は、再生材が利用可能かどうかの評価を含む、両社が2019年に行った調査に基づくもので、調査はリサイクル可能な材料を供給できるサプライヤーを見つける事に焦点が当てられました。2020年の秋には、サプライヤー獲得の為にアディダス、ベストセラー、カワセミ、ギャップ社、PVH社が調査に参加しています。両社は調査によるリサイクル繊維の化学物質含有量に関する立法への影響力を行使する、としています。 ファッション(繊維)産業は世界の炭素排出量の10%とも言われており、生産国は圧倒的に途上国が多い為、サーキュラーエコノミーがこの分野で立法化されると、様々な影響が出ると思われます。
https://fashionunited.uk/news/business/large-scale-ikea-and-h-m-group-study-shows-potential-of-recycled-textiles/2021100758245

欧州、特に英国では、現在日本の1973年に起こった「オイルショック」と似たような言葉で、「Energy Crisis」という言葉が使われています。英国では今年に入ってガス卸売価格がおよそ7倍に跳ね上がり、ここ2カ月だけで2.5倍近くなっています。家庭にエネルギーを供給する電力卸会社は既に数社が倒産し、エネルギー価格の暴騰で野菜のハウス栽培工場が閉鎖、製紙や鉄鋼業も大打撃を受けています。ガス価格の暴騰は、コロナ以上に経済に打撃を与えている、との報道が続いています。欧州は、まだフランスの原発や東欧からの石炭発電の供給によるオプションがありますが、島国で石炭のエネルギー利用を急激に減少させてガスと風力に切り替えた英国では、構造的な問題として解決の糸口が無い状況です。先週、EUでも欧州委員会が道路交通と住宅向けに、新たなEU ETS(EU排出権取引制度)を作る案を言及しましたが、エネルギー価格の暴騰により東欧を中心とした豊かでない加盟国からの非難が集中しました。エネルギー転換は、イデオロギーだけでは中々上手くいかないという事が露呈しましたが、その点の報道は控えめです。
https://www.euractiv.com/section/energy/news/eu-countries-slam-new-carbon-market-plans-as-energy-prices-soar/

米国の石油メジャーであるエクソンモービル(Exxon Mobil Corp)がテキサス州に、同社初の大規模なプラスチック廃棄物のケミカルサイクル施設を建設する事を発表しています。2022年末には稼働、2026年までには処理能力を50万トンにまで増やす予定です。大手石油(化学)企業のケミカルリサイクル投資の流れは昨年から始まっていますが、今後アジアでも同様な動きにならざるを得ない情勢になりそうです。
https://exxonmobil.co/3DzhJFK

LEMがLEMパスポートに登録された最初のサステナビリティー企業を公開しています。全部で9社、精錬関連企業が7社とリサイクル関連を事業の一部に持つ企業が2社で、リサイクル関連企業はいずれも精錬企業に原料を納めている会社になります。1社はカナダのTeck Resources Ltd(亜鉛関連)、もう1社は、スウェーデンのBoliden AB(事業の一部にWEEE)です。
https://www.lme.com/en/News/Press-releases/2021/First-sustainability-disclosures-listed-on-LMEpassport

COP26が目前に迫るなかで様々な事が報道されています。欧州委員会が金融市場で世界最大となる120億ユーロ相当のグリーンボンドを発行した事に続いて、IEAが新たなレポートを発行し、想定される3つのシナリオを基に現状(の世界経済成長と脱炭素投資レベルの中)では2050年までに炭素排出量をネットゼロにすることが困難だ、という事を伝えています。特に我々の関連する所では鉄鋼生産の技術革新が挙げられています。IEAの報道は、特に欧州では大きく取り上げられています。
https://bit.ly/3FKzXWA

世界鉄鋼協会(World steel)が2021年と2022年の予測を発表しています。2021年の鉄鋼需要は前年と比較して4.5%増加、2022年はさらに2.2%増加し、鉄鋼生産が18.9億トン以上となると予測しています。2021年は中国を除き全体的な予測が上方修正されています。現在、世界的に鉄鋼メーカーは在庫の積み増しをしており、発展途上国でのワクチン接種の進展により、大量の受注残も相まって、2022年も鉄鋼需要は回復し続けると予想しています。

リサーチ会社の「RaboResearch社」が発表した最新のレポートによると、2025年までに世界中に140のプラスチック廃棄物の高度なリサイクル工場(ケミカルリサイクル)が設立され、総処理容量は300万~400万トンになる可能性がある、としています。大手企業によるケミカルリサイクル施設への投資以外にも注目すべき点は、廃棄物のトレサビリティ―を行うブロックチェーン対応のソリューションの相次ぐ発表です。現状問題となっているプラスチック廃棄物とそのリサイクルをトレサビする新しいソリューションの登場です。
https://bit.ly/3DEVle3

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