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世界の環境関連ニュース(2022年7月第1週)

トルコと欧米でインフレと景気後退の懸念が一層高まっています。トルコの6月の消費者物価指数は13ヵ月連続で増加し、1998年以来の最高の前年比78.62%に上昇しています。ドイツは1991年以来最初の貿易赤字を記録しています。またユーロ圏のインフレ率は6月に年率8.6%に達し、1999年EUが作成されて以来最高でした。スイスの6月のCPIも、ほぼ29年ぶりの上昇で年率3.4%に達しています。野村ホールディングスのエコノミストによるレポートでは、今年後半に主要な欧米経済圏での景気後退が続くという予測が出されています。ユーロ圏と英国、日本、韓国、豪州、カナダ、米国が景気後退入りし、複数の中央銀行は2023年には利下げへ向かうが、中国は景気後退しないという予測を出しています。
https://bit.ly/3yHPe9n
https://bit.ly/3ApNrqO
https://bit.ly/3Ic462G

ベルギーのプラスチック材料や化学製品の商社である「Ravago(本社はルクセンブルク))が、英国のプラスチック・リサイクル企業2社を買収しています。 Ravago社は、プラスチック材料であるポリマーと化学薬品の商社として、プラスチック原材料へのリサイクル材の配合に積極的に取り組んでいる会社です。現在、欧州ではプラスチック・リサイクル材料の製品への含有率が規定されているだけでなく、企業もプラスチック戦略として一定のリサイクル材の利用を目標に掲げているところが増えており、需要が高まっています。メーカーや商社がリサイクル会社を買収し投資をする事で高品質なリサイクル材料の確保を目論むという新たな動きの一環と言えます。
https://bit.ly/3nVpaBv

英国のDaily Express紙が、EUが排出する1人あたりの炭素量が英国のそれよりも、およそ20%近く多い事を報じています。シンクタンクFacts4EUがオックスフォード大学のOur World in DataとGlobal Carbon Projectを基に調査したものです。英国は2020年に一人当たり4.85トンのCO2を排出していますが、ヨーロッパの平均は5.84トンで、20.2パーセント高くなっています。ドイツは7.69トンで、英国の数値より58.4パーセント高くなっています。欧州司法裁判所の本拠地であるルクセンブルグは1人あたり年間排出量が13.06トンで英国より8.21トン多く、比率にすると約培(200パーセント近く)になっています。Facts4EUのスポークスマンによれば、英国はEUに比べ1人当たりの炭素排出量が少ないだけでなく、より早く削減を進めている、という事です。実はEUは2030年迄に55%の温室効果ガスを削減すると公約していますが、基準年が1990年で、当時、産油国である英国やデンマーク、水力のある北欧諸国を除いては、(特に東欧では)石炭が主なエネルギー源であった事から温室効果ガスの発生がおよそ50%少ない天然ガスを利用する事で55%の達成はある程度見込める目論見でした。ロシア産の安いガスを利用する事が困難な現在、残された低コストの策は主に風力発電やヒートポンプになっていますが、効果は限定的になる可能性があります。水素は政治的に宣伝されていますが高価すぎてまだ商業利用の段階に至っていません。
https://bit.ly/3bP7og8

欧米の報道では「NEW COLD WAR」という文言が頻繁に出てくるようになりました。そのNEW COLD WARを生み出す主要なコモディティは天然ガスで、石油と同等の地政学を形作る燃料となっています。欧州では天然ガスのスポット価格が2021年初頭から約700%増となり価格が暴騰しています。これが原因で欧州大陸を不況の瀬戸際に追いやっています。米ワシントンの調査会社Clear View Energy Partners LLCは、「これは天然ガスによる1970年代(の石油ショック版)である」と評価しています。ブルームバーグインテリジェンスによると、ヨーロッパのガス投資への取り組みは十分ではなく、LNG輸入は2026年までに欧州のガス需要の40%は満たす事が出来ると計算しています。しかし、この量ではロシアが供給している量には及ばない、と予測しています。LNG貨物の入札でドイツのような先進国と競争しなければならない一部の新興国にとって、結果は既に悲惨なものになっています。これが更なる分断を生み、ロシアの勢力を強める結果となり得ます。ただし、現在の新しい冷戦構造は以前のような完全なブロック状態でない事をAsian Timesが伝えています。
https://bit.ly/3NHM5KH
https://bit.ly/3IdYNQg

世界最大の船舶チャーター会社の1つであるカーギルが、2023年第一四半期に最先端の「帆」を船に装備する事で炭素排出量を削減する試みを行う事が伝えられています。実際に貨物を運搬する商業利用での試みとなるようです。テスト期間は3〜6か月で、実際の機能を確認する作業が含まれます。同社によれば、風に対して完全に最適化された(帆を装備した)船は、炭素排出量を30%削減出来る、としています。同社は、風力発電とゼロカーボン燃料を組み合わせたソリューションも模索する事を付け加えています。
https://reut.rs/3yCao7F

英国で年に1度行われる音楽の野外フェスティバルであるグラストンベリー・フェスティバルが6月に行われました。この野外音楽祭は世界で最も象徴的なもので、コロナ後の今年は3年振りの開催とあって推定20万人が参加したと言われています。サプライズで参加したのは気候変動活動家の「グレタ・トゥーンバーグ」さんで、地球を救う為の緊急行動を呼びかけました。フェスティバル終了後に撮影されたとする大量のごみが散乱する会場の写真が保守系のメディアであるDaily Mail紙に掲載され、「大いなる偽善」と紹介されました。しかし、実はこの写真が今年(2022年)のものではなく、2015年当時に撮影されたものである事が事実として暴露されています。同じ会場ですが、2015年当時フェスティバル終了後のごみが2,000トン近く投機されたままになった事が問題となっていました。その写真を利用したのです。実は、この話はここで終わらず、グレタさんが参加する事でグラストンベリー・フェスティバルを(音楽の祭典というだけでなく)「政治的なプラットフォーム」として利用しようとする勢力と、彼女を利用する一種の社会主義的リベラル勢力の対抗勢力とのせめぎ合いのような構図を指摘する報道もあります。一種の社会主義的リベラル勢力と言っているのは、あくまでその対抗勢力の側です。対抗勢力は、地球環境を保ち汚染を止めるべきだが、単純に大気汚染について嘆き、人類の活動が世界の終わりにつながると言う主張に反論しています。気候変動には他にも多くの要因があり、現代の人間・経済活動だけが「悪」であるという、他に何も考慮されていない点に反論しています。いずれにしても、ミスリーディングを起こす報道にまで発展する環境や気候問題は、注意深くファクトチェックをする必要があります。
https://bit.ly/3Ashazd
https://bit.ly/3AsC8y3
https://bit.ly/3yKGaAg

欧米のエネルギー危機に伴う、インフレの1つの追加トリガーとして噂されていたカザフスタンから黒海を経由する石油供給経路であるカスピ海パイプラインコンソーシアム(CPC)に関して、ニュースがありました。世界最大のパイプラインの1つを経由してカザフスタンから黒海に石油を運ぶカスピ海パイプラインコンソーシアム(CPC)は、ロシアの裁判所から30日間活動を停止するよう言い渡されました。しかし、ロイターによれば、7月6日時点では、まだ石油のフローは停止していません。このニュースで一旦上がった原油価格も欧米に端を発する景気後退の影響で再び下げています。米国企業のシェブロンとエクソンを含むコンソーシアムは、ロシアの裁判所の決定に従わなければならない、との見解を示しています。カザフスタン政府はCPCの制限に対応する措置を検討している、という事です。日産120万バレルの供給力がある事から、もし停止された場合には影響が出ると言われていました。
https://reut.rs/3Ar2kJ9

同じく原油市場ですがサウジアラビアがアジア向けの販売を8月から引き上げる事を発表しています。アジアに積み込む8月の公式販売価格は、7月から1バレル2.80ドル上昇します。この上昇により、サウジ産はオマーン/ドバイ産の原油相場を1バレル当たり9.30ドル上回るものです。OPEC +は、英米を含む先進経済国が再三にわたり増産の要求をしている中、8月は計画された生産量の引き上げに留める事も決定しています。これに対し、アジアの原油需要は旺盛で、ガソリン、軽油、ジェット燃料の精製は過去最高を記録しています。
https://bit.ly/3OQvwh2

7月6日に、欧州議会は原子力、及びガスプロジェクトを「グリーンな投資」とする事を決めています。EUの持続可能な金融分類法(EUタクソノミー)に原子力とガスを含めるという提案は、欧州委員会より出されていました。この提案に反対する決議が否決された事で、事実上、欧州委員会の提案の通り、原子力とガスのプロジェクトはEUタクソノミーで「グリーン投資」というラベル付けとなります。これは、最近議論が過熱してきたテーマでした。最終決定はEUの27の加盟国を代表するEU理事会の投票となりますが、理事会で提案を拒否するには20か国の過半数が必要であるため、却下される可能性はほとんどない事が伝えられています。天然ガスは「化石燃料」なのですが、欧州らしい結果です。ルールは、科学や正義よりもその時の都合で決める・・・という歴史が繰り返されるという象徴でもあります。
https://bit.ly/3ApwBIu

1月にこのメッセージでも同様な法律の可決がサウスカロライナ州で行われた事を伝えましたが、ミズーリ州とニューハンプシャー州が高度なリサイクル法(advanced recycling legislation)を可決した事が伝えられています。高度なリサイクル法とは、州が高度なリサイクル技術を固形廃棄物処理事業としてではなく「製造事業」として規制することです。高度なリサイクルとは主にプラスチックのケミカルリサイクルです。ケミカルリサイクルでは油化工程を「製造業」とほぼ同じ扱いとし、固形廃棄物の法律および規制の対象から外れます。2022年1月に採用したサウスカロライナ州は全米でこの法律を採用した15 番目の州になります。 この法律では、収集運搬と選別は廃棄物管理法に準拠しなければなりませんが、その後のケミカルリサイクル工程は固形廃棄物処理とは定義しない事が新たな進歩です。背景にはケミカルリサイクルに投資する企業は石油化学系の企業が多いからです。
https://bit.ly/3yrrpRU

アルジャジーラが世界的なリチウム供給の状況をまとめて報道しています。既に様々な所で分析予測が出され始めていますが、リチウムの需要急増に伴う供給の遅れから、価格が高値圏で推移する可能性が指摘されています。Fastmarketsによると、リチウム生産は2030年までに4倍になると予測されています。価格は既に今年の年初($10,000/t)から600%以上も上昇し、6月には$62,000/tに跳ね上がっています。リチウムの生産には多大な環境負荷とコストが伴います。Fairfield Market Researchによると、1トンのリチウムを採掘する為には220万リットル以上の水が必要です。また、リチウム金属の抽出には、ホウ砂、カリウム、マンガンが地元の水道に混入するという環境汚染問題も抱えています。リチウムの大産地であるアルゼンチン、ボリビア、チリの南米リチウム「三角地帯」では、リチウムの急激な需要の増加で資源ナショナリズムの波が起きています。その為、各国で様々な技術革新とリチウム代替品に投資する動きが出ています。現在のリチウムを取り巻く動きの詳細は下記のリンクに良くまとめられています。
https://bit.ly/3yrypOi

Minig.comが銅価格の短期先行きに対する懸念を示しています。Sucden Financial Ltdのリサーチ部門によれば、「不況に突入したとは言えないが、欧米では成長が鈍化しているため、ここから銅価格が回復する見込みはない」、との見解を示しています。また「米国は景気後退のリスクに直面しており、インフレを殆ど抑える事ができていない。これは銅にとって弱気な金融引き締めにつながる」との見解を加えています。中国のGuoyuan Futures Coのアナリストによれば、「中国経済は新たなコロナの再燃と予想以下の需要回復という二重の経済的打撃に直面している」為、銅価格が上昇する見込みが無い事を伝えています。
https://bit.ly/3RkDYH1

米バイデン大統領の支持率が自身の任期中で最低の36%にまで落ちている事が伝えられています。これは、モンマス大学が最近行った世論調査によるものです。調査会社のGallupによると2018年までの中間選挙では、大統領の承認率が50%を下回った場合、下院における中間選挙での大統領所属政党の議席損失の平均数は37議席で、50%以上の場合では、大統領の所属する党の平均議席損失数は14です。元々、中間選挙は大統領の所属する党に対しては厳しい側面があります。CNNが報じている分析では、下院は共和党が奪還し、上院は共和党優勢でも民主党が健闘する可能性もある、としています。バイデン政権は気候変動対策を最優先事項の1つとして誕生しており、巨額なグリーンインフラ投資や石油パイプライン開発の閉鎖等を行ってきました。中間選挙での敗北は現政権の後半2年がレイムダックとなり、気候変動対策を優先しない共和党により大幅にスローダウンする可能性が既に指摘されています。日本の政策もバイデン政権誕生と同時に脱炭素26%⇒46%(2030年)と大幅に進展し、報道も投資も脱炭素が色濃くなった経緯があります。景気後退以外でエネルギー価格を下げる方法となるのが米国でのシェールの増産なので、化石燃料の開発・増産による脱炭素化のスローダウンは、これまでグリーンインフラに投資してきた投資家にとっては好まざる展開となります。エネルギー転換によって銅を始めとする非鉄金属がスーパーサイクル入りしてきましたが、インフレと戦争によるサプライチェーンの分断で、米国が前政権のように化石燃料増産に力を入れると、非鉄金属にも影響が出る可能性があります。
https://cnn.it/3RfWr7A
https://cnn.it/3Ij9gdq

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