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世界の環境関連ニュース(2022年08月第1週)

ここ1-2週間は戦争、インフレ、エネルギー危機とそれに伴う報道が圧倒的に多く、リサイクルや脱炭素への新たな投資や技術の話題は限られています。

欧州のEU ETS(排出権取引制度)で売買される炭素の価格が上がる予測が出ています。これは、ガス供給が足りない為に石炭を利用する事によるもので、今年は1トン当たり88.36ユーロ(90.29ドル)、2023年には97.66ユーロになると予想されています。これに対し、スペイン政府が炭素排出(権)価格を制限する提案を欧州連合にする事が伝えられています。これは、石炭を利用する時に同時に購入しなければならない炭素排出権の価格に上限を設ける事で、インフレと電力価格の上昇を抑える事ができる、としています。特に旧西ヨーロッパを中心とした欧州産業にとってエネルギー危機は大きな打撃となっています。
https://reut.rs/3zJvOkZ
https://reut.rs/3zhh2R1

ドイツの大手鉄鋼メーカーの「Salzgitter AG(ザルギッター)」が相次いでグリーンスチール製造に向けた計画を発表しています。7月13日にSalcos(Salzgitter Low CO 2 Steelmaking)と呼ばれる計画の一環として7億2300万ドルを投資する事を発表しています。2033年迄に3段階で低炭素生産に転換することを目的としており、変革の一環として、水素を利用した直接還元プラントと電気炉が建設される計画です。15日には、Waelzholz Groupと低炭素排出鋼の共同開発と供給を対象とする提携契約を発表しています。また27日には、Salzgitter AGの子会社であるIlsenburger Grobblech GMBH(ILG)が再生可能エネルギー企業であるGRI Renewable Industriesに風力発電向けの低炭素排出鋼を供給する提携契約を締結した事を発表しています。
https://bit.ly/3QlTm4X

欧州の政策に強い影響力のあるWEFが「産業界をネットゼロに向けて軌道に乗せるための5つのステップ」をHPで公開しています。 内容は以下のとおりです。
1.脱炭素化の軌道を導く為の「低排出」生産に向けた「敷居値」を定義する、
2.クリーンテクノロジーのコストを削減する為に、官民投資の課題を設定する、
3.低炭素需要を促進し、生産者間の透明性と可視性を確立する、
4.ネットゼロの政策と規制を強化して、低炭素生産者の競争の場を平準化する、
5.投資のリスクを軽減し、資本を引き付ける為に、リスク共有メカニズム、
  グリーン分類法、及び公的資金を開発する、
WEFは最近車の個人所有を廃止するよう求めています。自家用車の所有権を終わらせる事は、気候変動に対処するために不可欠である、とWEFは主張しています。
https://www.weforum.org/agenda/2022/07/net-zero-tracker/
https://nationalfile.com/wef-calls-for-end-to-private-car-ownership/

米国の上院でリサイクルを促進する為の法律が可決されています。上院にて全会一致で可決された法案は、リサイクル・インフラストラクチャ及びアクセシビリティ法(SB 3742)と、リサイクル及び堆肥化の責任法(SB 3743)となります。今後、この2つの法案は下院に送られます。リサイクル・インフラストラクチャ及びアクセシビリティ法は、環境保護庁(EPA)が地域(州、都市・市・群)のリサイクル施設へのアクセスを改善する為のパイロット助成プログラムを確立することを要求するものです。法案が法制化されれば、EPAは、地方自治体又は官民パートナーシップに助成金を与えることができます。堆肥化責任法は、リサイクル及び堆肥化プログラムのデータ収集、そしてそれらの報告要件を規定します。これには、全国的な堆肥化戦略を実施する能力に関して、EPAに報告を行う事が含まれます。この2つの法案によって埋立てコストが安い米国でのリサイクルを促進する狙いがあります
https://bit.ly/3Jly70A

米国では干ばつの影響で牛肉の市場価格が上昇し、数年続くとの予測が出ています。6月のアメリカの牛挽肉の価格(消費者向けの価格)は昨年より9.7%上昇しました。米国西部地域の80%近くが極端な干ばつ状態にあり、1年近く続いています。この干ばつの影響で飼料穀物の供給に影響が出ており、家畜農家が若い段階で牛を売却する動きが活発化しています。懸念は今後の価格です。繁殖牛が少ない為、今後2年間は、消費者にとって牛肉の価格が高くなる可能性があります。米国産牛肉の価格が回復するのには2-3年が必要との見込みが出ています。米国農務省(USDA)は、来年の牛肉生産の7%減少を予測しています。
https://bit.ly/3cWQEEd
https://cnn.it/3PLY0sS

ドイツと旧西ヨーロッパでの景気減速が一段と悪化しています。深刻なエネルギー危機に見舞われているドイツで小売売上高が過去30年間で最も急速に落ち込んでいます。ドイツの連邦統計局によると、ドイツの店舗売上高は、前年同月比で実質8.8%急落しました。年間インフレ率は6月に8.2%、7月に8.5%に達しています。数値が50未満の場合、民間活動が低下している事を示す指標となる「買管理者指数(PMI)」では、イタリアが48.5、スペインは48.7に、ドイツは49.3、フランスは49.5にそれぞれ低下しています。S&Pグローバルのアナリストは「ユーロ圏の製造業は急激な景気後退に陥っており、景気後退リスクを高めている」と分析しています。
https://yhoo.it/3oJmtmC

タイ証券市場に上場している石油化学会社のIndorama Ventures Public Company Limited (IVL)は、米国のテクノロジー企業であるCapchem Technology USA Inc.(Capchem USA)と契約を締結し、米国で世界クラスのリチウムイオン電池溶剤の工場を建設する計画を発表しています。工場はIVLが持つ石油化学プラント内、もしくは近隣に設立予定です。生産する商品は、リチウムイオン電池で使用される電解質溶液の成分であるエチレンカーボネートとその化学誘導体です。急速に需要が増す電気自動車(EV)用の電池用に供給するものです。
https://prn.to/3oIYYdF

米国のリチウムリサイクル電池のリサイクラー兼電池部品材料の製造業者であるAscend Elements社が、米国のケンタッキー州に3 億 1,000 万ドルを投資して電池のリサイクル工場を設立する事を発表しています。工場は同社の技術である Hydro-to-Cathodeを利用して廃リチウムイオン電池からブラックマスを生成し、電池構成部品の前駆体とカソードの活性物質を抽出します。工場は2022年第 4 四半期に着工する予定であり、その後、工場を拡張する計画で、総投資額が 10 億ドル(1,300億円)になる可能性を示唆しています。リチウムイオン電池のリサイクルとしては、かなりの大型投資の案件となります。
https://bit.ly/3vyl7z4

HSNWが中国のCITIC Securities(中信証券)による(中国)鉄鋼業の第3四半期予測を掲載しています。CITIC Securitiesの調査報告によると、需要の回復と中国鉄鋼企業の生産制限により、鉄鋼の需給バランスは改善すると予想しています。また製鉄所の減産により、原料の鉄鉱石需給が軟化し価格が下がる見込みが出ています。原料価格の低迷によるコスト減が寄与し、鉄鋼業界の収益性は第 3 四半期に回復し始めるとの予測を出しています。供給制限による需給の回復という側面から、原料であるスクラップ需要は引き続き弱含みの可能性があります。
https://bit.ly/3QaonIO

世界最大の木質ペレット消費企業である英国のDrax社(電力会社)に対して、欧米各国の複数のNGOが英国政府に正式に申し立てをした件で、OECD の英国国内連絡窓口 (UK NCP)が結論を出しています。申し立ては、2021 年 10 月 21 日に行われました。苦情(訴状)は、英国、カナダ、エストニア、米国に拠点を置く非政府組織 ( NGO )のグループによって出されました。内容はDraxが様々な誤解を招く、又は事業からの炭素排出量と事業活動の環境への影響に関する不正確な情報を流布している、というものです。英国NCPの結論は、「OECDガイドラインに基づいてさらに検討する価値があると判断した」、というもので、判断を引き延ばす事となりました。Draxについては年間1000万トン近い木質ペレットを米国とカナダから輸入しており、3万トン級の船で30往復以上かけて運んでいます。膨大な量の木を伐採しエネルギーをかけて製造したペレットを大型船で運ぶ事から、トータルでの炭素排出が膨大に上るにも関わらず、炭素会計上で木質ペレットの燃料が炭素排出ゼロとカウントされている事が長い間、問題となっていました。Draxを始め、木質ペレット大手製造メーカーは国際金融資本大手が大株主となっており、強いロビー活動から何度もこの議論をくぐり抜けてきた過去があり、業界ではモンスターと呼ばれて久しいです。今回も同じ様な結論となっています。
https://bit.ly/3OS3HnU

直接リサイクルには関連しませんが、欧州委員会が「EU 土壌衛生法」の立案に向けて、パブリックコンサルテーションを開始しています。パブリックコンサルテーションは2022 年 10 月 24 日までオンラインで開催されています。意見は「土壌の健康(イニシアチブ)に関する」ものを求めています。欧州委員会は、EU の水、海洋環境、大気と同じレベルの保護を土壌に対し行い、包括的な法的枠組み(法案)を提供する予定です。この法案により新たな土地開発や土壌の投棄に関するあらゆるアセスメントや環境安全保護が要求される事になり、廃棄物の埋立て処理にかなりの制限が課される可能性があります。
https://bit.ly/3PTiqAo

英国のケンブリッジ大学が率いる国際的な研究者チームが、気候変動の最悪のシナリオの研究課題を提案しています。ケンブリッジ大学リスク研究センターのルーク・ケンプ博士は、「温暖化がわずかなレベルであっても、気候変動が壊滅的なものになる可能性があると考える理由は沢山あります」と述べており、この壊滅的なリスクの詳細な研究が必要である事を訴えています。研究者らは、IPCC に対し、壊滅的な気候変動に関する将来の報告書を作成するよう求めています。これは地球の歴史において気候変動により「大量絶滅」が起こってきた経緯があり、少しの温暖化でも大きな影響(これを気候変動のテールファットリスクと呼ぶ)がある可能性が否定できないという事実に基づいています。この内容は一般紙でも取り上げられています。
https://www.cam.ac.uk/stories/climateendgame
https://bit.ly/3bvulW3

現米国大統領の次男であるハンター・バイデン氏のスキャンダル問題ですが、報道を制限してきたメインストリームメディア(主流メディア)でも取り上げる機会が増えている事が伝えられています。元々2020年の大統領選挙当時にバイデン候補(当時)の次男が修理店に残した自分のラップトップパソコンに資金洗浄を含むウクライナ、ロシア、中国企業から合計数百万ドルにも及ぶ資金提供を受けていた事が保存されていた事に端を発しています。当時このスキャンダルは一大センセーショナルとなりましたが、「ロシアからのフェイクニュース」と民主党や主要メディアが一斉に伝えた事で一旦火は消えました。しかし、実際にラップトップがFBIによって保管され、調査が続けられている事が事実として報じられると主要メディアは無視、右系メディアがこぞって標的として加熱報道が続いていました。最近になってもバイデン大統領の人気下降が止まらず、次期大統領としてふさわしいか、というアンケートでは史上最低レベルの不人気で既に身内の民主党内からもサポートが得られにくいという状況が少しずつ生まれているようです。主流メディアのハンター・バイデンの報道は、こうした不人気によるものとの見方も出てきています。台湾訪問で人気回復を図ったとの見方もあるナンシー・ペロシ下院議長ですが、5月に投資家で億万長者の夫が飲酒運転で事故を起こし、薬物接種の疑惑が出ており、更に夫は下院で法案が成立した米国での半導体製造援助法に合わせてチップメーカーの株を大量に購入していた事から倫理上の問題を追及されており、民主党とペロシ氏自身の人気回復の為もあり(大統領が反対したと言われている)台湾訪問に踏み切ったとの見方も出ています。つい最近、上院ではEV車への補助金の継続を含む気候変動対策法案が通ったばかりです。秋の中間選挙次第では、本当に気候変動対策に大きな変化が表れそうです。
https://fxn.ws/3bsC6fn
https://fxn.ws/3BABOxL

USスチールがスクラップよりDRIによるペレットやPig Ironへの投資を積極的に行う意向がある事がRecycling Todayによって伝えられています。鉄鋼業界のアナリストとの 7 月下旬の収益報告電話会議で示したもので、競合他社であるNucor Corp、Steel Dynamics Inc、Commercial Metalsがそれぞれ電炉の拡張とリサイクル会社の買収により原料を確保している戦略と異なった戦略を打ち出しています。
https://bit.ly/3Jq3xmy

COP26で段階的な削減の誓約が行われた石炭ですが、エネルギー危機の中で価格は高騰しており、世界の石炭消費量はほぼ 10 年前のレベルに戻ると予想されています。アナリストによると、石炭価格の高騰により石炭関連株の投資家は元気に活動ており、市場や政府がウクライナ戦争によるボトルネックの中で従来のエネルギー供給を確保しようと躍起になっている為、炭素排出量の抑制は後回しになっているという事が伝えられています。IEA(国際エネルギー機関)によるとEU の石炭消費量は、2022 年には 7% 増加すると予想されています。
https://cnb.cx/3cSt0c4

インドがネットゼロに向けて2030年迄に発電能力の内、半分をクリーンエネルギーにする事を発表しています。8月3日、モディ首相の内閣は2030年迄に発電能力の内、半分を非化石燃料及び原子力を利用し、排出原単位(GDP換算単位あたりの排出量)を2030年迄に2005年のレベルから45%削減する計画を承認した事を声明として出しています。インドは最新のこのような公約、またはNationally Determined Contribution( NDC:国家決定貢献)を国連に提出し、パリ協定下で義務を履行する最後の主要排出国の 1つになります。インドは消費者にクリーンな燃料を使用するよう命じる計画を立てており、同国の取り組みを強化する為に法律に基づいて炭素市場を確立することを目指しています。政府の計画では、バイオマス、エタノール、グリーン水素、アンモニア等の非化石燃料源を発電用、または製造用原料として最小限の割合で使用することが義務付けられています。新しい法律やエネルギー消費基準を満たさない産業活動、車両、船舶、大規模な建物に対しては、罰則を課すことになります。
https://bit.ly/3vEzXnK

英国の国立経済社会研究所(NIESR)がインフレの長期化、金利の長期上昇、不況の長期化という悪いシナリオを発表しています。様々なメディアで報道されていますが、英国のインフレは来年に掛けて「天文学的な」レベルに急上昇し、イングランド銀行は以前の予想よりも高い金利を長期間にわたって引き上げることを余儀なくされる、と結論づけています。NIESR によると、年末までにインフレ率が 11% 、小売物価指数 (RPI) は 17.7%に達するとしています。 NIESR はまた、中銀が 3% に達するまで利上げを続け、来年末までにインフレ率を 3% に引き下げる為に、以前に予想されていたよりも長く(高)金利を維持すると予想しています。これは英国に限った内容ですが、欧州全体として多かれ少なかれ似たような傾向の国がいくつか存在しており、欧州の景気低迷は長引きそうです。また、米国でも個人の債務が膨張しており(日本では報道されていませんが)問題が地下でマグマのように膨張し始めています。ニューヨーク連邦準備銀行の新しいデータでは、米国の家計債務は第 2 四半期に初めて 16 兆ドルを超えました。借入コスト(借金をする金利コスト)が上昇し続けているにも関わらず、クレジットカードの残高は前四半期だけで460 億ドル増加したことが判っています。過去12 ヵ月でクレジットカードの負債は1,000 億ドル (13%) 急増しました。これは過去20 年以上で最大の増加です。
https://bit.ly/3brSCw4
https://bit.ly/3zq0pTa

高騰するリチウムに代わる電池材料として研究が進められているカソード材料としてのナトリウムイオンですが、新材料がNature Communicationsに掲載され、専門誌で報道されています。新しい材料は、特定の結晶構造を持つナトリウム-バナジウムリン酸フッ化物の粉末でバッテリーのカソードで使用します。新しいカソード材料は、現在の材料より 10%~ 15%増のエネルギー密度が得られるという事です。開発したのはSkoltech教育機関と Lomonosov モスクワ州立大学の研究者のグループです。ナトリウムイオン電池に関しては重量やエネルギー密度の関係から実用に向けて課題が多い段階ですが、スタートアップや研究が進められている分野が多く、資金も流入し、報道も頻繁になされるようになっています。
https://bit.ly/3Q1kGFA

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